環境が大きく変わるこの時代、新人教育についても見直すべきことがたくさんあります。 「最近の新人は理解できない…」などと嘆くばかりでは、社員も会社も成長しません。
今回は、新入社員の意識をより引き上げるための新人研修のあり方や方法について、元劇団四季の劇団員で現在は人材育成トレーナーである佐藤政樹氏に解説していただきます。

Your Image【監修・取材先】
佐藤政樹氏

劇団四季 元 主役の感動創造トレーナー

意識を引き上げる新人研修とは

新入社員の研修をどのように行うか、悩んでいる方も多いことと思います。
その原因のひとつとしては、研修を開く側が、研修を受ける側である現代の新入社員を理解できていないことが挙げられます。これまでと同じようなやり方をしながら、「最近の新人は理解できない」とこぼしているだけでは、何も変わりません。今の時代の新入社員研修は、“引き上げること”を意識した研修でなければならないのです。
例えば、最近の新入社員の境遇・特徴として挙げられる問題には、以下のようなものがあります。

  • コロナ禍でのオンライン就職活動において、入社動機があいまいな新入社員がいる
  • 働き方改革世代であり、長時間労働を是としていない
  • 大震災の経験から、家族や友人との時間を大切にしている
  • 2002年度以降の「ゆとり教育」により、小中学校時代に怒られる、比べられるなどの経験が少ない
  • インターネット(主にスマートフォン)での情報収集がメインのため、入ってくる情報に偏りがあ

ひと昔前と比べると、育ち方や価値観が全く異なることに気づくでしょう。
これまでの講義型での詰め込み研修や、強制・矯正スタイルの研修では、結果的に受け身体質の人材しか残らなくなってしまいます。
今の若手を育てるには、主体的な思考・行動ができるようになる、帰属意識が高まるといった効果が期待できる“引き上げる新人教育”が必要なのです。

マインドセット転換の重要性

新入社員に向けて、仕事のやり方やスキル、マナーなどを一方的に叩き込むやり方にも一定効果はありますが、これでは、人がもともと持っている自ら成長する力が奪われ、「言われなければ動かない」「何事も受動的」といったマインドが形成されてしまう可能性もあります。

例えば、マナー研修は社会人の基礎として重要な研修ですが、一方的に叩き込む研修手法よりも、事前に課題を与えて新人に講師をやってもらう(発表してもらう)、反転学習の研修手法の方が遥かに学習効果が高まり主体性と内発的なやる気がうみだされます。

そして最も大切なのは、社会に一歩踏み出すタイミングで、プロとしてのマインドセットへと変えることにあります。

マインドセットとは、自分の中にある「無意識の思考や行動パターン」「固定概念や思い込み」「物事を捉えるときの思考のクセ」などです。
例えば、失敗をしたときに「これは成長のチャンス」と捉える人と、「結局自分はできないんだ」と悲観する人がいます。
スタンフォード大学のキャロル・S・ドゥエック教授は、この思考パターンをそれぞれ、「成長型」「固定型」と大別しています。もちろん、大きく成長できるのは「成長型」のマインドセットですが、では「固定型」(マイナス思考)のマインドセットでは成長できないのでしょうか?

答えは「NO」です。「固定型」であっても、自分の中にある思考パターンを「自覚する」ことで対処と改善ができます。自覚しなければ、対処と改善することさえ思いつきません。この「自覚」こそが、成長への第一歩となります。

マインドセットのチェック項目

私はこれまでの経験から、新入社員には次のような「成長型」のマインドセットが必要だと感じています。重要なのは、この成長型マインドセットと自分の思考パターンとを照らし合わせ、いま自分はどのようなマインドセットなのかを「自覚する」ことです。全部で13のチェック項目がありますが、ここではその中の5つを紹介します。成長のきっかけにしてください。

1. 主体的か受け身か

自ら主体的に考えて行動に移すか、他人からの働きかけを待っているだけか。勇気を持って自分から一歩踏み出すことで、今後の成長に大きくつながります。

2. 生産者視点か消費者視点か

特に新入社員の場合、それまでは消費者視点であることが多かったでしょう。しかし、開発や生産など、サービス提供を行う視点に立つことで、価値の届け方を学んでいくことができます。

3. 好転思考か暗転思考か

失敗したときに落ち込み続ける暗転思考か、次は同じ失敗をしないためにどうしたらよいか、失敗を糧として成長を目指せる好転思考、どちらを持つべきでしょうか。柔軟に考えられる力は、今後ますます必要になってきます。

4. 当事者意識か人任せか

自分には関係ないからと後回しにして、誰かがやってくれるのを待つ。人任せにしてばかりでは、何も身に付かないまま時間だけが過ぎてしまいます。
自分ならどんなことができるのかという当事者意識で対処すれば、最初はきつくても、それらは何にも代えがたい経験となり、いずれ実績として実を結びます。

5. 自責か他責か

何かしら問題が起こった際に、「〇〇のせいでこうなった」「〇〇がサポートしてくれなかったから」と他人のせいにしてしまうクセはありませんか? 常に人のせいにしていては成長できず、ましてや問題を解決することもできません。まずは、自分の中に「他責型」の部分があるか思い返し、自覚することが大切です。

「固定型」から「成長型」へ、マインドセットの転換方法

マインドセットを転換するには、まず、今の自分の思考と行動のパターンを「自覚する」ことが必要です。自覚することで、次に何をすべきかが分かります。本を読んだり、能力開発研修を受けるなどしてもよいでしょう。

自分に足りていない知識やスキルを習得したなら、次は実践して、それを習慣として定着させることです。身に付けた知識やスキルは、実践して生かさなければ意味がありません。行動に移し、それを定着・習慣化させることで、自ずと成果につながります。

新しく習った知識やスキルを定着させる時には、文字やイラストを使い、なりたい自分をビジュアル化するのも一つの手です。それを毎日眺めれば、「なりたい自分」をより具体的に想像でき、モチベーションアップにもつながります。また、ときには、「成長過程の自分」と「なりたい自分」を照らし合わせて、どこまで到達できたのか振り返ることもできます。

私の研修では以上のような内容をワークを取り入れながら解説しています。

劇団四季で学んだ言葉の意識をビジネスに

コミュニケーションでは、「話す」「伝える」と同様に「聞く」ことも重要です。 聞く姿勢でその人の価値を判断されることもビジネスシーンでは多々あります。

演劇では相手の言葉を集中して聞いていなければ、セリフは自然に出てきません。ただ自分の番が来たからセリフを発するのは、「アマチュア」のやり方です。

  • 耳で聞く=言葉、音程などの語調
  • 目で聞く=姿勢、表情、動作、装い
  • 口で聞く=相槌をうつ、質問を返す
  • 心で聞く=話しやすい雰囲気をつくる
  • 肚で聞く=相互理解を深める

表面的に耳で聞いているだけでは、相手の意図あるいは真意を受け取ることはできないでしょう。
私はこれまで、上記5つの姿勢を習慣化し、営業活動にも取り入れてきました。そのおかげで、トップセールスマンの仲間入りをしたこともあります。講演では、この「聞く」スキルについても詳しくお伝えします。

主体性を引き出す新入社員研修

かつての研修方法を受け継ぎそのまま行うだけでは、人は離れていきます。研修受講者の主体性を引き出すには、現代の新入社員を理解することから始めましょう。
その上で、新入社員研修では「新入社員自らが自分のマインドセットに気づき、それを成長型へと変えるには何が必要か」、それを考えるための時間を与える必要があります。

私が行っている新入社員研修では、私が実際に劇団四季で経験したことや営業でトップを獲得した経験をもとに前述した内容をさらに詳しく解説しています。主体的な新入社員を育成したいとお考えの研修担当者の方々から、高い評価をいただいております。ご興味のある方はシステムブレーンまでお問合せください。

佐藤政樹 さとうまさき

劇団四季 元 主役の感動創造トレーナー


コンサルタントタレント・芸能関係者

劇団四季の主役を経験し、営業で500人中2位の成績を残した表現のプロ。俳優・営業ともにトップを経験し、理論に裏付けられた「人を感動させるコミュニケーションの極意」は「成果に直結する」と好評。歌あり、踊りありで楽しく学べる講演構成も人気。

プランタイトル

「主体性を引き出す」新人社員研修

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