
どの業界も商品やサービスが飽和している現在、それぞれの企業には、価格の安さではなく、「付加価値」や「ブランド力」による差別化が求められています。必要なのは、企業のブランドを体現し、顧客との接点において特別なサービスを提供できる人材です。
今回は人材育成アドバイザーの首藤敦子氏に、ホスピタリティの観点から価値を創出できる人材の重要性と、そうした人材になるための実践のポイントについてお聞きしました。
※本記事の内容は2026年3月時点のものです。
【監修・取材先】
首藤敦子氏
国家資格キャリアコンサルタント
産業カウンセラー
人材育成アドバイザー
利益を生む「芸術的サービス」という価値の創出

「良質なサービスで付加価値を生む」と聞いたとき、無意識のうちに「それを無償で提供する」というイメージを持ってはいないでしょうか?
長年、日本のサービス産業における顧客満足度は、「こんなサービスも無料で受けられるのか!」という驚きから生まれるものだと考えられてきました。ホテルや高級レストランでの記念日のサプライズも、スタッフが通常の業務の合間に「手間」を惜しまず提供してきたというケースが多いでしょう。
しかし、こうした自己犠牲的な手法は、いずれスタッフの疲弊を招き、結果的にサービスの質そのものを低下させかねません。「作業」ばかりが増える現場では、スタッフの「お客様に喜んでいただきたい」という純粋な気持ちも擦り切れてしまいます。
一方、海外では、こうした付加価値に対して対価を払うのは当たり前のことです。本来のホスピタリティとは、お客様が喜んで対価を払ってくださるような価値を創出することにあります。それが確実な収益に結びつけば、従業員の待遇向上につながり、「プラスのスパイラル」が生まれます。
そのためにも、従業員は単なる労働としてお客様に接するのではなく、自分自身の個性と人間的な魅力を発揮し、一つの「芸術」と言える域までサービスを高めることが求められます。
お客様を「安さ」や「無償であること」で驚かせるのではなく、「芸術的価値」で感動させること。これこそが、利益と満足度を両立させる「至高のホスピタリティ」の根幹です。
価値創出ができる人材の重要性
「ホスピタリティ」という価値を創出するのは、現場でお客様と接するスタッフ一人ひとりです。目の前のお客様をよく見てニーズをくみ取り、思いやりをもって対話することが、お客様の感動を生みます。
しかし、こうしたスキルは一朝一夕で身に付くわけではありません。PCスキルのように、講習を受けてすぐに実践できるというものではなく、一人の人間としての豊かな経験が、「目の前の人に喜んでもらいたい」というホスピタリティの土台となります。そしてその経験は、仕事の中だけで得られるとは限りません。
たとえば女性が出産や育児で仕事を離れるとき、その期間は通常「ブランク」と認識され、キャリアにおいてはマイナスと捉えられがちです。しかし、ホスピタリティの観点から言えば、育児や地域活動を通じて得られる経験は、他には代えがたい大きな強みとなります。
自分自身が子育てをすることで初めて、子ども連れのお客様が何を求めているかが分かるようになります。また、地域活動を通じて多様な世代・価値観の人々と関わることで、接客における視野も広がるでしょう。仕事上の関わりよりも一歩踏み込んだ人付き合いの経験が、接客マニュアルを超えた「感動的なホスピタリティ」を生むのです。
このような経験とスキルを持つ人材を育成するのには時間がかかりますが、一度体得したホスピタリティの本質は、時代がどれだけ変わってもその価値は変わりません。女性スタッフの場合、出産を機に一度現場を離れたとしても、復帰後はその期間の経験を糧に、より価値の高いホスピタリティを発揮してくれるはずです。
芸術的価値のある接客ができるようになるまでは時間がかかりますが、「至高のホスピタリティ」のスキルを持った人材は、圧倒的ブランド力で他との差別化を実現します。大切なのは、中長期的な視点で人材育成に取り組む「経営の勇気」なのです。
「至高のホスピタリティ」という価値を創出する3つのポイント
ホスピタリティで価値を創出できる人材になるためには、日頃から以下の3つのポイントを意識することが求められます。
1.感性を磨く
多くの芸術と同じように、まずはホスピタリティに対する自分自身の感性を磨かなくてはなりません。
上質なサービスに触れる機会を作り、「何が心地よいのか」をサービスを受ける側の視点で感じることが大切です。接客する人の美しい所作やお辞儀一つに感動できる感性を持つことではじめて、接客する側になったときに振る舞いの一つひとつに品格が出てきます。
業務を離れて一人の生活者として過ごしているときにも、「自分のホスピタリティをもっと高めたい」という向上心を持って周囲を見渡せば、自ずと感性は磨かれていきます。
2.自分の「引き出し」を増やす
接客の大きな付加価値となるのが、お客様との会話です。そのため、スタッフには話題の「引き出し」を多く持っておくことも求められます。
「引き出し」を増やすには、伝統文化、スポーツ、グルメなど、幅広い分野にアンテナを張ることが大切です。
お客様と楽しく会話ができるスタッフは、その人間的魅力が最大の強みになります。「また話したいと思ったから」という気持ちで再訪してくださるお客様は、価格の安さなどを理由に他店に流れることはないでしょう。
3.「自分らしさ」という個性を商品にする
スタッフ一人ひとりが自分の個性を見つめて、それを接客に生かすことも大切です。
他人の模倣ではなく、自分の個性を反映することで「あなたのサービスを受けたい」と言ってもらうことができます。他の店、他のスタッフでは決して替えが効かないサービスにこそ、価値があるのです。
自分ならではの知識や特技を棚卸しして、それを駆使していかにお客様のお役に立つかを考えることが、唯一無二のサービスを生むための第一歩となります。
価値を創出する人材を育成して、企業のブランド力向上へ
「至高のホスピタリティ」を体現できる人材を育成するには、相応の時間を要します。しかし、一度磨き上げられたホスピタリティは、唯一無二の価値を創出します。それは、圧倒的ブランド力で他社との差別化を実現する、企業にとってかけがえのない財産となるはずです。
経営層や管理職には、多様な経験を持つ人材がそれぞれの強みを発揮できるように、中長期的な視点で育成に投資する姿勢が求められます。
特に女性の人材の場合、産休・育休で業務を離れる可能性が高いことをリスクと捉えず、その間に本人が得た新たな視点や経験こそが、企業の成長を加速させる「資産」になると発想を転換することが重要なポイントです。
実際に、10年間の専業主婦期間を経てからホテルの総支配人になった首藤氏は、自らの育児経験を活かし、当時稼働率の低かった和室を「赤ちゃん連れに最適な宿泊プラン」として再定義しました。その結果、不人気だった和室プランを予約が殺到するまでの人気プランへと生まれ変わらせたのです。
女性がライフイベントを通じて得た視点は、より上質なサービスを提供するうえで強力な強みとなります。首藤氏は自身の育児期間中の経験と、それを仕事にどのように活かしたかを講演の中で解説しており、女性たちのキャリア構築のモチベーションにもつながると高く評価されています。
利益を生むサービスの実現、そして人材活用にご興味をお持ちの企業ご担当者様は、ぜひ次回の研修企画としてご検討ください!
📌 価値を創出できる「ホスピタリティ」のQ&A
Q1. ホスピタリティとは何ですか?サービスとの違いは?
A.ホスピタリティとは、お客様の期待を先回りして満足や感動を生み出す姿勢や行動を指します。単なる業務としてのサービスとは異なり、相手の気持ちをくみ取り、自発的に価値を提供する点が大きな特徴です。
Q2. ホスピタリティで企業の付加価値を高める方法とは?
A.商品や価格だけでなく、接客や顧客体験の質を高めることが重要です。スタッフが顧客のニーズを深く理解し、期待を超える対応を行うことで、ブランド力の向上やリピーター獲得につながります。
Q3. 良い接客やホスピタリティを身につけるにはどうすればよいですか?
A.上質なサービスを体験して感性を磨くことや、文化・趣味など幅広い知識を身につけることが大切です。多様な経験を積むことで、マニュアルでは対応できない場面でも心に響く接客ができるようになります。
Q4. 日本のサービス業が抱える課題とは何ですか?
A.日本では高品質なサービスを無料で提供する文化が強く、現場の負担が大きくなることがあります。価値のあるサービスに適切な対価を得る仕組みを作ることが、持続可能なサービスの実現につながります。
Q5. ホスピタリティ人材の育成が企業にもたらすメリットは?
A.顧客満足度の向上だけでなく、企業ブランドの強化や収益向上にもつながります。個々のスタッフが価値を生み出せる組織は、価格競争に巻き込まれにくく、長期的な競争力を持つ企業へと成長します。
首藤敦子 しゅとうあつこ
国家資格キャリアコンサルタント 産業カウンセラー 人材育成アドバイザー

フェリス女学院大学卒後、大手ホテル勤務を経て米国でホスピタリティビジネスを学ぶ。帰国後は外資系ホテルでVIPの接遇や、ブライダル施設支配人を歴任。都市型ホテル総支配人時代、組織改革・サービス向上によりエリア人気1位達成。起業後はビジネスマナーや安全大会等の講演、キャリア教育に尽力。
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講師ジャンル
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実務知識 | 人材・組織マネジメント | 顧客満足・クレーム対応 |
|---|---|---|---|
| 安全管理・労働災害 | 営業・販売・マーケティング |
プランタイトル
至高のホスピタリティによる「価値創出」を学ぶ
~価値を創るひとになる~
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