
「業務改善を命じても、現場から『忙しくて無理』と反発される」
「良かれと思って導入したツールが全く使われず、形骸化している」
多くの人事担当者や経営者が抱えるこうした悩み。その根底にあるのは、社員の「問題解決能力」の不足だと言われます。しかし、スキルを教えれば解決するほど単純な話ではありません。
九州情報大学教授であり、長年経営コンサルタントとして数多くの企業を再建してきた井上善海(いのうえ ぜんかい)氏は、問題の本質を突く鋭い一言を投げかけます。
「問題解決が苦行になっているうちは、絶対に成功しません」
本記事では、中村信夫氏開発の「ビジネスデザイン法」をベースに井上氏が独自に改良した実践的手法「ZBD型」を軸に、社員が自走し、自発的に成果を出し続けるための「問題解決能力の身につけ方」を徹底解説します。
※本記事の内容は2026年4月時点のものです。
【監修・取材先】
井上善海氏
九州情報大学教授
経営コンサルタント
問題解決能力とは「自分の仕事を楽にするスキル」である
多くの社員にとって、「業務改善」や「問題解決」は、「会社のために追加でやらされる面倒な仕事」というイメージが定着しています。この「やらされ感」こそが、組織の生産性を阻む最大の壁です。
1.「やらされ感」を「自発性」に変える
問題解決とは、究極的には「自分が今抱えている面倒な仕事や、無駄な残業を減らして楽にするための技術」です。「会社のため」ではなく「自分のため」のスキルだと捉え直すことで、社員の心理的なハードルは劇的に下がります。
2.才能ではなく「磨けるスキル」
「あの人は地頭が良いから解決できるんだ」と諦める必要はありません。問題解決はセンスではなく、適切な手順(型)を学び、繰り返し練習すれば誰でも習得できる実技なのです。
3.日常の「なぜ?」が洞察力を養う
ビジネスの現場だけで考えようとせず、日常生活から「なぜこの店はいつも混んでいるのか?」「なぜ家族の機微が変わったのか?」と問いかける習慣を持つこと。この小さな訓練が、いざ業務に向き合った際の鋭い洞察力へとつながります。
なぜ従来の改善は失敗するのか?「真因」を見逃す落とし穴
「残業が多いからノー残業デーを作る」
「ミスが多いからチェックシートを増やす」。
こうした施策の多くが失敗に終わるのは、目に見える「現象」だけを叩いているからです。
1.問題と課題の混同
論理的に物事を進める上で、この二つの定義を厳格に分けることが重要です。
- 問題: すでに発生していること(事象)
- 課題: 問題を解決するために何をすべきかを設定したもの(取り組み)
例えば、「残業が減らない」というのは「問題」です。これに対し、多くのリーダーは「残業を減らせ!」と指示を出しますが、これは単に問題を先送りしているだけで「課題」ではありません。「入力作業の重複をなくすために、共通のExcelフォーマットを導入する」といった具体的な行動に変換されて初めて、それは「課題」となります。
2.表面的な解決策の限界
現象だけを取り繕っても、根本にある「なぜ残業が発生しているのか」「なぜミスが起きる仕組みになっているのか」という火種を消さない限り、問題は形を変えて再発し続けます。
3.真因(しんいん)の追求
トヨタ生産方式でも重視されるように、トラブルの奥底に潜む「真の原因」を特定することが不可欠です。表面的な「原因らしきもの」に惑わされず、論理的に深掘りする姿勢が求められます。
4.フレームワークという「回答枠」の重要性
「自由に考えてみて」と言われて思考が止まってしまうのは、真っ白な紙を前にしているからです。回答枠(フレームワーク)を用意することで、人間の思考は初めてスムーズに動き出し、漏れやダブりのない分析が可能になります。
【思考を整理する代表的なフレームワーク:ロジックツリー】
問題解決のプロセスでは、上図に示す2つのロジックツリーが大きな役割を果たします。
- WHYツリー: 「なぜ?」を繰り返し、問題の根本的な原因(真因)を深掘りする
- HOWツリー: 「どうやって?」を積み重ね、実効性の高い解決策を導き出す
これらの枠組みを使うことで、個人の経験や勘に頼ったバラツキのある判断から脱却し、誰が見ても納得感のある解決策を導き出せるようになります。
井上式「ZBD型」で実践する問題解決の3ステップ
井上氏が提唱する「ZBD型」メソッドは、複雑な問題を整理し、確実に成果へ繋げるための極めて実践的なプロセスです。ここでは「社員の残業が多い」という課題を例に、具体的な解決へのステップを追ってみましょう。
Step 1:あるべき姿の描画(現状とのギャップを可視化する)
まずは「理想の状態」を定義します。ここでのポイントは、単に精神論で「頑張る」のではなく、論理的なゴールを設定することです。
- 【あるべき姿】:今の業務量を一切落とさず、かつ残業をせずに全員が定時で帰れる状態。
- 【現状の可視化】:理想と現状を比較し、「1人あたり月40時間の残業が発生している」といったギャップを明確にします。
Step 2:真因の抽出(多角的な分析で本質を突く)
次に、「なぜ社員の残業が多いのか」を多角的に分析します。単なる「忙しい」という言葉の裏にある真実を探ります。
- 【分析の結果】:業務量を棚卸ししたところ、特定の社員に過度に業務が集中していることが分かりました。
- 【真因の特定】:業務が属人化しており、「その人にしかできない仕事」が多いことが、組織全体の停滞を招いている「ボトルネック」であると特定します。
Step 3:解決策の実行(優先順位をつけて具体化する)
特定した真因を叩き潰すためのアクションを、優先順位を決めて実行します。
- 【再配分】:残業が集中している社員の業務内容を洗い出し、他の社員へ適切に割り振ります。
- 【マニュアル・システム化】:ルーチンワークについては、誰でも対応できるように標準化。さらに、AIの活用やシステム化を進め、人間がやらなくてよい仕事を自動化します。
- 【実行計画】:これらに優先順位をつけ、短期的な改善と中長期的な仕組み作りを並行して進めます。
成功の秘訣は「3ヶ月のスモールステップ」と「3の法則」
いくら優れた手法でも、継続できなければ意味がありません。井上流メソッドには、挫折を防ぎ、成功体験を積ませるための「仕掛け」が組み込まれています。
1. 3ヶ月の壁を突破する「20〜30%の改善」
企業が掲げる「コスト50%削減」「残業ゼロ」といった高すぎる目標は、往々にして「どうせ無理だ」という諦めを生みます。井上氏は、「3ヶ月で20〜30%の成果」を目指すことを推奨します。この期間は「飽きずに頑張れる限界」であり、かつ「効果を実感できる最短」の期間です。
2. 人間が最も動きやすい「3の法則」
井上氏は、心理学的な観点から「3」という数字を徹底的に活用します。
- 3人1組のチーム:コミュニケーションが最も活性化し、相互補完が機能する最適な最小単位です。
- 3つの目標:解決策を出しすぎず、最重要の3つに絞り込むことで、リソースを集中させます。
3. 自分専用の「3分割マニュアル」
研修の出口として作成するのが「自分専用の改善マニュアル」です。あらゆる業務プロセスを「準備・実行・確認」の3段階に分けて整理することで、現場への定着を圧倒的に早めます。
現場が自走し始める「問題解決型リーダー」育成研修
井上氏の研修が全国の企業や自治体で支持される理由は、単なる知識の伝達ではなく「現場の顔つきが変わる」ことにあります。
✅これなら自分にもできる」という確信
ワークショップを通じて、自分たちが長年悩んでいた「泥臭い課題」がロジカルに解けていく体験をすると、受講生の顔つきは劇的に変わります。「やらされる改善」が「自らを楽にする改善」に変わる瞬間です。本研修後に行ったアンケートでは、約96%が「活用できる」と答えており、学んだその日から業務改善に着手できる即効性も大きな魅力です。
✅企業ごとの課題に寄り添うカスタマイズ
人間関係の摩擦、情報伝達の滞り、部門間の壁など、組織特有の課題に合わせた事例を用意。理屈だけで終わらない、血の通った改善案を引き出します。
✅組織全体の底上げ
共通の「問題解決の型」を持つことで、組織全体のコミュニケーションが円滑になり、会議の短縮や意思決定のスピードアップが実現します。
問題解決の型を学び、強い組織へ
問題解決能力は、一部の限られたリーダーだけが持っていれば良いものではありません。現場の一人ひとりが「今の仕事をもっと楽にできる」という確信を持ち、共通のプロセス(型)で課題に挑むことで、組織の生産性は最大化されます。
- 問題解決は訓練で身につくスキルである
- 表面的な現象ではなく、真因を特定することが成功の近道である
まずは自社の「真因」を探ることから始めてみませんか?
井上善海氏による「業務改善・問題解決能力向上研修」では、貴社の実課題をテーマにした実践的なプログラムを提供しています。現場の停滞感を打破し、社員が生き生きと改善に取り組むきっかけを作りたいとお考えの方は、ぜひ一度お問い合わせください。
📌 問題解決能力を活用するためのQ&A
Q1.井上氏が提唱する「問題解決能力」とは、どのようなスキルですか?
A.「会社のため」ではなく、「自分の仕事を楽にするためのスキル」と捉え直すべきものです。
自分が抱えている面倒な仕事や無駄な残業を減らすための技術と認識することで、社員の「やらされ感」が「自発性」へと変わります。
Q2. なぜ、従来の業務改善は失敗に終わることが多いのでしょうか?
A. 目に見える表面的な「現象」だけを解決しようとしているからです。
「残業が多いからノー残業デーを作る」といった表面的な対策では、根本にある「なぜ発生しているのか」という真の原因(真因)を解決できないため、問題が再発し続けます。
Q3. 問題解決において重要な「問題」と「課題」の違いは何ですか?
A.「問題」はすでに発生している事象を指し、「課題」は問題を解決するために何をすべきか設定した取り組みを指します。
例えば「残業が減らない」のは問題であり、それを解決するために「共通のフォーマットを導入する」といった具体的な行動に変換されたものが課題です。
Q4.井上式「ZBD型」による問題解決の3ステップを教えてください。
A. 以下の3つのプロセスで進めます。
Step 1:あるべき姿の描画: 理想の状態を論理的に定義し、現状とのギャップを可視化します。
Step 2:真因の抽出: 「なぜ?」を繰り返し、組織の停滞を招いている根本的な原因(ボトルネック)を特定します。
Step 3:解決策の実行: 特定した真因を解消するためのアクションに優先順位をつけて実行します。
Q5. 改善活動を継続させ、成功させるためのコツは何ですか?
A.「3ヶ月のスモールステップ」と「3の法則」を活用することです。
高すぎる目標ではなく「3ヶ月で20〜30%の成果」を目指すことで挫折を防ぎ、また「3人1組のチーム」や「3つの目標への絞り込み」など、心理的に動きやすい「3」という数字を徹底活用します。
井上善海 いのうえぜんかい
九州情報大学教授 経営コンサルタント

経営者(儲かることは何でもやっていたら失敗)から経営コンサルタント(自身の失敗経験を活かし約300社の事業再生)、社会人大学院教授(ビジネススクール)などを経て、現職。長年、企業経営にかかわってきた経験を活かし、“現場主義”をモットーとしたコンサルティングや講師活動を行っている。
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講師ジャンル
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ビジネス教養 | 時局・経済 | 経営哲学 |
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プランタイトル
業務改善・問題解決能力向上研修/p>
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