
早期離職を防ぐには、新入社員一人ひとりがセルフケアを学び、自分のストレスとうまく付き合っていく方法を知ることが大切です。
今回は精神科専門医・産業医として医学研究にも取り組む一方、起業家としても活躍し、企業におけるメンタル不調の予防に注力する小林伸行氏に、新入社員向けのセルフケアについて解説していただきます。
※本記事の内容は2026年8月時点のものです。
【監修・取材先】
小林伸行氏
医師・医学博士
精神科専門医・産業医
Maintain Brain株式会社 代表取締役
新入社員の多くが 仕事でストレスを感じている
「採用や育成に多大なコストをかけた新入社員が、現場で活躍する前に退職してしまう」
—— 今、多くの企業が若手従業員の早期離職に悩まされています。
厚生労働省が令和7年に発表した調査結果によると、令和4年の新規学卒就職者の就職後3年以内の離職率は、新規高卒就職者が37.9%、新規大学卒就職者が33.8%でした。
この現状に管理職や経営者の方々も歯がゆい思いをしているでしょうが、同時に新入社員も苦しんでいます。
今の時代、ベテランの従業員と新入社員では、根本的な価値観に違いがあります。それは受けてきた教育の違いでもあり、若い世代に「苦しい状況に耐え抜いてこそ」といった精神論は通用しません。彼らは互いの痛みや苦しみに目を向け、できるだけストレスを避けることを良しとする世代です。
そのため、学生から社会人への大きな環境の変化によって、初めての大きな挫折感を抱く人も少なくありません。仕事で否応なく生じるストレスへの対処の仕方が分からず、メンタルに不調をきたしてしまうのです。
企業側には、新入社員が苦しんでいる状況を理解し、彼らが適度に休息をとって心と体を労りながら、仕事を継続していけるようにサポートすることが求められています。
ストレスによる不調のサインを知る【セルフケアの前に】
精神科医としての経験が長い小林氏によると、実際にメンタルクリニックなどに来院する人の中には、動けなくなるまで無理をして頑張ってしまう人も多いといいます。
そのような状態になってしまうと仕事の継続も難しく、長期休職や離職を選ばざるを得なくなる場合もあります。 大切なのは、自分の状態を日頃からモニタリングして、不調のサインを見つけることです。
ここでは新入社員に注意してほしい、3つの不調のサインを紹介します。
1.眠れなくなる
最も分かりやすいのは、睡眠です。「寝入りが悪くなった」「夜中に起きる」「朝早くに目が覚めてしまう」といった睡眠のトラブルは、仕事のストレスによってメンタルに不調をきたしているサインかもしれません。
2.体のだるさ
「体を起こしているのがしんどい」「体がだるく感じる」というときも要注意です。特に、仕事が休みの日にもずっと疲れを感じているような状態だとすると、それはストレスによるメンタル不調が原因の可能性があります。
3.周囲の心配の声
新入社員のうちは新生活で気が張っているため、なかなか自分自身の変化にも気づけないかもしれません。そのようなときは家族や友人の声に耳を傾けることも大切です。「最近笑わなくなったね」など、周囲から心配されたときには、一度しっかり休んでワークライフバランスを見直す機会と考えたほうがよいでしょう。
入社してすぐに使えるセルフケア3つのポイント
新入社員にとって仕事は緊張の連続であり、一定のストレスを感じるのは当たり前といえます。大切なのは適切なケアによってストレスを緩和し、仕事を続けていくことです。
ここでは仕事のストレスに対処する方法を、3つのSTEPで紹介していきます。
STEP1.オーバーワークを避ける
まずは働き過ぎず、しっかりと休息することが大切です。メンタル不調の初期の段階であれば、ちゃんと睡眠を取って体を休ませれば改善するケースも多く見られます。
新入社員の間は、職場に早く馴染もうとして仕事を頑張りすぎてしまう傾向にあります。また新しい人間関係を広げるために、終業後や休日に予定を詰め込んでしまう人もいるでしょう。
忙しくなると、多くの人が睡眠時間を削って対応しようとしてしまいます。しかし、メンタルを健康に保つためには何よりも睡眠時間の確保が欠かせません。
STEP2.会社に相談する
新入社員がメンタル不調をはっきりと自覚するようになれば、早めに会社に相談してもらうのが一番です。
企業内に健康管理室や相談窓口が設けられている場合は、そうした窓口を利用しましょう。 専用の窓口がない場合でも上司や先輩など信頼できる身近な人に相談することで、ストレスの原因を取り除く方法が見つかるかもしれません。
新入社員は「先輩たちも忙しいのに、こんなことを相談していいのかな」と遠慮しがちで、なかなか気軽には相談できません。また、身近な先輩や上司との関係こそが悩みの種になっている場合もあります。
そのため、経営者や管理職は、社内外に産業カウンセラーなどの第三者的な窓口を設けて、「早めに相談し、メンタル不調に対処する方が会社のためになる」と新入社員に伝えましょう。相談しやすい雰囲気をつくることが大切です。
STEP3.医療機関 を受診する
休息を取ったり、会社に相談したりしても 改善がみられない場合、メンタルクリニックや精神科、心療内科などの医療機関を受診することも選択肢の一つです。
ストレスによる不眠に悩まされている場合は、医師が症状や体調を確認したうえで、必要に応じて治療や薬の処方を行います。適切な治療を受けることで、十分な休息を取りやすくなることもあります。
また専門医に仕事の状況を話せば、ストレスの原因となっている職場環境の調整にも相談に乗ってもらえます。
薬の処方や診断書の作成が必要かどうかは、症状や本人の状況に応じて医師が判断します。受診を「最後の手段」と捉えて我慢し続けるのではなく、日常生活や仕事に支障が出ている場合は、早めに専門家へ相談することが大切です。
仕事のストレスに対する意識改革で、長く働ける職場づくりを
従業員の早期離職は企業にとって大きな課題ですが、学生から社会人になるという環境の変化に 直面し、新入社員自身も苦しんでいます。「つらいけれど職場に迷惑をかけたくない」という思いから、メンタル不調が深刻化するまで無理をしてしまい、結果的に離職に追い込まれてしまう新入社員も一定数います。
もちろん、経営者や管理職の方々も、せっかく入社してくれた新入社員を決して苦しめたくはないでしょう。互いに相手へ気を使うあまり、本音を伝えられず、ちょっとした認識のずれが早期離職につながる場合があります。
世代間の価値観のギャップを理解することが、若手の従業員が長く働ける環境づくりの第一歩となります。産業医であり、自身も会社経営者という一面を持つ小林氏は、そのために経営者や管理職側の意識改革にも取り組んでいます。
「適応障害」や「うつ病」など、近年関心が高まっている病気についても、専門医の立場から講演で詳しく解説し、すべての人がメンタルヘルスの問題を理解する重要性を伝えています。
小林氏の講演は、健康経営に取り組む企業にとっても「多くの学びが得られる 」と好評です。従業員のメンタルヘルスを改善するための運動習慣など、職場や日常生活で実践できる具体的な改善策も紹介されています。
新入社員のセルフケア研修をはじめ、管理職向けのメンタルヘルス研修を予定している企業の方も、ぜひ次回研修企画としてご検討ください。
📌 新入社員のセルフケアに関するQ&A
Q1.なぜ今、新入社員のセルフケアが重要なのでしょうか?
A. 環境の変化による強いストレスでメンタル不調をきたす新入社員が多く、早期離職を防ぐために、一人ひとりがストレスと上手く付き合う方法を学ぶことが大切だからです。
Q2. どのような状態がメンタル不調のサインと言えますか?
A.「眠れなくなる(不眠)」「体のだるさが続く」「周囲から心配されるほど雰囲気が変わった」といった状態が代表的なサインです。
Q3. セルフケアのSTEP1として、最も意識すべきことは何ですか?
A. オーバーワークを避けることです。特に忙しい時期でも、健康を維持するために睡眠時間を確保して体をしっかりと休めることが不可欠です。
Q4. もしメンタル不調を自覚した場合、どうすればよいですか?
A. 早めに社内の相談窓口、または上司や信頼できる先輩に相談することが推奨されます。相談しにくい場合は産業カウンセラーなどの第三者窓口の利用も有効です。
Q5. 医療機関の受診はどのような場合に検討すべきですか?
A. 休息や相談を行っても改善が見られない場合や、睡眠障害などで日常生活・仕事に支障が出ている場合は、我慢せずに専門医(精神科、心療内科等)を受診し、適切な治療や職場環境調整の相談をすることが大切です。
小林伸行 こばやしのぶゆき
医師・医学博士 精神科専門医・産業医 Maintain Brain株式会社 代表取締役

医学博士。慈恵医大でアルツハイマー病に関する特許を取得し、研究成果を早期発見に活かすため、会社設立。精神科医・産業医として企業での不調者対応・不調を生まない組織づくりを支援する。講演では、管理職向けメンタルヘルス対策や休職・復職支援など、健康経営についてわかりやすく伝える。
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講師ジャンル
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ビジネス教養 | メンタルヘルス |
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| 社会啓発 | 福祉・介護 |
プランタイトル
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