
マネーリテラシーという言葉が注目される中、子ども達にもお金について学んでほしいと考える保護者は増えています。しかし、一口にお金の勉強と言っても、その内容はお小遣いの使い方から資産づくりまで様々です。
今回は金融教育・金銭教育アドバイザーの安藤貴志氏に、「幸福に生きる」という観点から、家庭で取り組むべきお金の勉強方法についてお聞きしました。
※本記事の内容は2026年3月時点のものです。
【監修・取材先】
安藤貴志
NPO法人マネースマイル探究所 理事長
金融教育・金銭教育アドバイザー
ファイナンシャルプランナー(AFP 日本FP協会認定)
小学生にお金の勉強は本当に必要?

「勉強なんてしなくても、お金の使い方は自然と身につけるもの」。
そのように考える保護者の方は多いかもしれません。確かに、これまで学校にもお金の授業はなく、特別な教育を受けなくても、誰もが大人になれば当たり前にお金を使うようになっています。
その点で、“お金の使い方”は言葉の使い方に似ています。特別な勉強をしなくても、言葉を話せるようにはなりますが、学校で国語を学ぶことで、より効果的なコミュニケーションを取れるようになるのも事実です。
お金もそれと同じで、ただ「稼ぐ・増やす・使う」ことはできても、「幸福を感じられるような正しい使い方」をするには勉強が必要になります。
重要なのは、お金それ自体は目的でなく、あくまでも人生を豊かにするための「ツール」という位置づけであると理解することです。ここを履き違えてしまうと、「お金が増えれば増えるほど幸せになれるはず」という間違った価値観に支配されて、「ツール」であるはずのお金に逆に振り回されてしまいます。
「幸福を感じるためのお金の使い方」を勉強してこなかった大人の中にも、そういった人は多く見受けられます。大人になったときにお金に苦しめられることがないよう、小学生のうちからお金と幸福の関係を知っておくことは非常に大切です。
小学生のうちに勉強しておきたい!お金と幸福の関係
正しいお金の使い方を知るには、まず「人間はどのようなときに幸せを感じるのか」を、心理学の観点から考える必要があります。
特に深く、永続的な幸福感を得やすいのは、他者とのつながりです。他の人と共有できる体験にお金を使う、あるいは他の人を喜ばせるためにお金を使うことは、幸福のための最も効果的な投資といえるでしょう。
反対に、お金そのものを重視するあまり、他者とのつながりを損なってしまうこともあります。代表的なのは、お金の多寡によって人を妬んだり、蔑んだりするケースです。このようなネガティブな感情に囚われることで、豊かな人間関係を築くチャンスを失うのは、大きな損失になります。
また、他者とのつながり以外では、自分のための経験にお金を使うのも効果的です。心に深く刻まれた経験は、幸せな記憶としてずっと残り続け、人格を作り、豊かな人生を生きるための武器にもなります。
一方、欲しい物を買う「モノ消費」はどうでしょうか。買った瞬間には大きな満足が得られますが、その幸福はあまり長続きしません。
さらに、モノ消費が生活水準を形成することにも注意が必要です。贅沢なものに囲まれて生活水準を上げても、人はすぐにその生活に慣れてしまいます。しかも一度生活水準を上げると、それが下がったときには確実に不幸を感じます。
幸福のために使うはずのお金が、かえって不幸の原因になってしまうこともあるのです。
家庭でこそ実践できる!小学生向けの3つの勉強法

お金と幸福の関係について、小学生に言葉だけで説明しようとしても、なかなかすぐに理解することは難しいでしょう。だからこそ、家庭での日々の声かけや経験の積み重ねが重要になります。
ここでは正しいお金の使い方が身に付く、家庭での3つの実践方法を紹介します。
1. お金を使った経験を親子で話す
家庭での勉強の土台となるのが、お金について親子が笑顔で話すことができる雰囲気です。
「子どもの前で、お金の話をするのは恥ずかしい」と感じる方もいるかもしれません。しかし、子どもに正しいお金の使い方を教えるには、まず気軽にお金の話ができる関係作りが欠かせません。
最初は「お肉がいつもより安く買えた」といった小さなことでもかまいません。ポイントは親のほうから楽しそうにお金の話をすることです。その姿を見て、子どもも「自分もお金の話をしていいんだ」と安心できます。
次に子どもから「今日は友達と一緒にジュースを飲んだ」といった話が出たときも、親は笑顔で受け止めましょう。良いお金の使い方をした際に誰かに話すことで、成功体験がより深く根付きます。
2. お出かけのときのおやつを自分で買う
お金の使い方は、教わったからといってすぐに身に付くものではありません。実際に使ってみて、試行錯誤のうえで体得していくものです。
たとえば家族でピクニックなどに出かけるとき、子どもにお金を渡して「この1,000円で家族みんなが笑顔になれるおやつを買ってくれる?」と伝えてみましょう。決められた金額を意識しつつ、家族全員が満足できる量と種類のお菓子を買うのは、予算管理の良い練習になります。
最初は親が期待するようなお金の使い方ができないかもしれませんが、「次はどうすれば、もっと良い買い物になるかな」と一緒に考えてあげれば、それも失敗を乗り越えた成功体験としてインプットされます。
何より重要なのが、お金を使った結果として「家族が笑顔になった」「『ありがとう』と言ってもらえた」という経験が得られることです。誰かと一緒に楽しむためにお金を使えば幸せな気持ちがずっと残るという、最高の教訓となるでしょう。
3. お小遣い帳に感想を書く
お小遣い帳は、お金の使い方を客観視し、改善するために非常に有効な手段です。幸せに生きるための使い方も意識させたいと思うなら、買ったものや金額だけでなく、そこに「何を感じたか」を付け加えるよう促してみましょう。
たとえば「友達の○○君と一緒におやつを食べた。楽しかった!」など、日記のような一言があれば、その支出がどんな感情につながったかが可視化されます。良い使い方を書き、後で見返すことで、お金への成功体験が強く刻まれることになるのです。
これはお金の使い方を話題にするのと原理は同じですが、成長してからも継続しやすい習慣です。年齢が上がって小さい頃のように親に何でも話さなくなったときにも、お小遣い帳や日記に書く癖がついていれば、子どもの価値観を形成するのに長く役立ってくれるでしょう。
小学生のうちから、お金と正しく付き合って幸せになる方法を勉強する
お金を幸福のツールとして正しく使うための素養は、家庭で築かれるものです。子どもは親との会話を通して、お金や幸福についての価値観を形成していきます。
たとえば親が自分の仕事について誇らしく語ることで、子どもは、労働を通して人とつながり、「ありがとう」という言葉と共にお金を受け取る素晴らしさを学びます。
家族のため、友達のため、あるいは将来の自分のためといった、幸福に結びつきやすいお金の使い方の手本を、一番身近で示すのが親の役割です。そのためには、まず親自身がお金と幸福の関係を正しく理解しておく必要があります。
金融教育・金銭教育アドバイザーとして活動し、ファイナンシャルプランナーの資格も有する安藤氏の講演では、科学的なバックボーンに基づく「幸福につながるお金の使い方」をわかりやすく解説しています。モノ消費と経験消費の違いなど、大人にとっても気づきが多いと好評です。
小さなお子さんがいる世帯向けのセミナーや講演会を開催したいとお考えの自治体・行政ご担当者様は、ぜひ次回の企画としてご検討ください!
📌 「幸せに生きるためのお金の勉強」のためのQ&A
Q1. 小学生のうちからお金の勉強が必要なのはなぜですか?
A.単に「稼ぐ・増やす」技術だけでなく、「人生を豊かにするための正しい使い方」を身につけるためです。言葉を学ぶことでコミュニケーションが豊かになるのと同様、お金を「ツール(道具)」として正しく扱う学びがないと、将来お金に振り回されたり、執着したりして不幸を招く恐れがあるからです。
Q2. 「幸福につながるお金の使い方」とは具体的にどのようなものですか?
A.心理学の観点から、特に「他者とのつながり」や「自分の経験」にお金を使うことが、永続的な幸福感を得やすいとされています。誰かを喜ばせるためのプレゼントや、家族との旅行、新しいスキルの習得など、形に残らない「体験」への投資は、満足度が長続きするのが特徴です。
Q3. 逆に、幸福感が長続きしないお金の使い方はありますか?
A.欲しい物を買う「モノ消費」は、買った瞬間の満足度は高いものの、幸福感はすぐに減退します。また、贅沢に慣れて「生活水準」を上げすぎてしまうと、一度上げた水準を下げることが困難になり、かえって将来の不幸やストレスの原因になるリスクがあります。
Q4. 家庭で、子どもがお金の話をしやすい雰囲気を作るには?
A. まず親自身が、お金の話をポジティブに発信することが大切です。「お肉が安く買えて嬉しい」「この買い物は役に立った」など、日常の小さな成功体験を笑顔で話しましょう。親が楽しそうにお金と向き合う姿を見せることで、子どもも安心して自分のお金の使い方を相談できるようになります。
Q5. 実践的な練習として、家庭ですぐに始められることは?
A.以下の3つが効果的です。
- 買い物体験: 予算を渡し、家族全員のおやつ選びなどを任せて試行錯誤させる。
- お小遣い帳への一言: 金額だけでなく「楽しかった」などの「感情」を書き添える。
- 対話の習慣: お金を使った結果、誰が笑顔になったかを親子で振り返る。
安藤貴志 あんどうたかし
NPO法人マネースマイル探究所 理事長 金融教育・金銭教育アドバイザー ファイナンシャルプランナー(AFP 日本FP協会認定)

高校時代にアメリカへ留学、青学国際政治経済学部卒業。精密機器メーカー(営業・企画)で「お金」に関する無知を痛感し生保に転職。独立後、FP(生保コンサル)の業務に加え、独学で子どものお金教育を学ぶ。NPO法人理事長として、「お金と心」をテーマに家庭での実践的なお金教育の情報を届ける。
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