
「相手を大切に思っているつもりなのに、なぜか伝わらない」
「よかれと思ってかけた言葉が、相手を傷つけてしまった」
教育や子育ての現場では、こうした“思いと伝わり方のずれ”が、時として深刻な問題につながります。
そんな伝わりのズレを解消する道しるべを示したのが、スクールコミュニケーションサポート代表でアンガーマネジメント講師の齋藤由起子さんの講演でした。
公立保育園・小中学校の教員・管理職向けに行われた本講演では、日常の表情や言葉、無意識の思い込みが、職員や子ども、保護者に与える影響についてお話しいただきました。
相手を思う気持ちを「見える形」にする方法や、心理的安全性の高い組織をつくるためにリーダーが実践すべきこととは何か。具体的な事例を交えながら進められた、当日の講演の様子をレポートします。
官公庁・学校・PTAチーム
講師 : 齋藤由起子 氏
開催時期 : 2026年6月
主催者 : H市(自治体主催)
講演時間 : 90分
聴講者人数: 約250人
講演タイプ: オンライン(ライブ)開催
良かれと思った指導が摩擦を生む?「無意識の加害者」の正体
講演の大きなテーマとなったのが、「見えない心を、どのように相手へ届けるか」ということです。
「心は見えないが、心遣いは見える。思いは見えないが、思いやりは見える」
この言葉を紹介しながら、齋藤氏は、どれほど相手を思っていても、行動や表情、言葉として表さなければ、その思いは相手に伝わらないと語ります。
特に管理職やリーダーの立場にある人は、自分が思う以上に周囲から見られています。険しい表情、忙しそうな態度、視線を合わせない挨拶、強い口調。本人に悪意はなくても、職員や子ども、保護者には「話しかけてはいけない」「否定されるかもしれない」というメッセージとして届くことがあります。
齋藤氏は、コミュニケーションにおいて表情や態度、声の調子といった非言語情報が大きな影響を与えることを説明。参加者の皆様も、自身の日頃の振る舞いを思い返しながら、真剣な表情で耳を傾けていました。
マナーは、相手への敬意を可視化するもの

▲イメージ画像
元日本航空国際線客室乗務員として接遇の最前線に立ち、その経験を教育・医療分野の研修へと発展させてきた齋藤氏。講演では、マナーを単なる作法や形式ではなく、「相手を尊重する気持ちを目に見える形にするもの」として紹介しました。
表情、身だしなみ、挨拶、態度、言葉遣いという「マナーの五原則」についても、学校や保育現場で起こり得る具体的な場面を交えながら解説されました。
例えば挨拶は、ただ言葉を発すればよいものではありません。相手に視線を向け、存在を認め、「あなたを大切にしています」という気持ちが届いて初めて、挨拶としての役割を果たします。
言葉遣いについても、敬語が正しいかどうかだけではなく、声の大きさや速さ、表情、話しかけるタイミングまで含めて考える必要があります。正しい言葉を使っていても、威圧的な口調であれば、相手は安心して話すことができません。
接遇の専門家としての実践的な視点と、教育現場への深い理解が組み合わされているため、参加者が「自分の職場ではどうだろう」と置き換えて考えやすい内容です。講演を聴いて終わるのではなく、翌日の挨拶や声のかけ方から行動を変えられる点も、研修として高い効果が期待できます。
「普通は」「こうあるべき」が相手を追い詰める
講演の後半では、アンコンシャス・バイアス、すなわち無意識の思い込みについて取り上げられました。
「最近の若い職員は打たれ弱い」
「管理職ならこれくらいできて当然」
「保護者は学校の方針を理解するべき」
こうした考えは、教育現場の管理者にとっては経験に基づく常識かもしれません。しかし、その常識を相手にも当てはめることで、発言しにくい雰囲気をつくったり、相手の事情や価値観を見落としたりする可能性があります。
特に印象に残ったのが、怒りと「べき」の関係です。
齋藤氏は、自分の中にある「こうするべき」「こうあるべき」という価値観が裏切られたとき、怒りが生まれやすいと説明しました。しかし、自分の「べき」と相手の「べき」は、必ずしも同じではありません。
参加者からは、
「学校現場は“べき”だらけだと気づいた」
「教職を始めた頃の“べき”と、長年働いてきた今の“べき”が変わっていることを改めて認識した」
といった感想が寄せられました。
齋藤氏の講演は、参加者を責めたり、正解を押し付けたりするものではありません。誰にでも無意識の思い込みがあることを前提に、自分の価値観を穏やかに見つめ直せるよう導いていきます。そのため、人権やハラスメントといった繊細なテーマであっても、参加者が身構えず、自分事として受け止めやすい講演となっています。
出来事への「意味づけ」を変える
同じ出来事でも、どのように意味づけをするかによって、その後の対応は大きく変わります。
職員から必要な報告がなかったとき、「自分を軽視している」「責任感がない」と決めつければ、問いただすような言い方になるでしょう。
一方で、「報告しにくい雰囲気があったのではないか」「業務が集中し、余裕がなかったのではないか」と考えれば、相手の事情を聴く対話が始まります。
子どものトラブルについても、「指導の失敗」と捉えるのか、「本人の背景を知り、成長を支える機会」と捉えるのかによって、対応の方向性が変わります。
齋藤氏は、起きた事実と自分の解釈を切り分け、相手の話を丁寧に聴くことの重要性を伝えました。
相手の話を途中で判断せずに聴く。質問によって思いを引き出す。そして、安心して次の一歩を踏み出せるように働きかける。こうした積み重ねが、失敗や困り事を隠さずに話せる組織文化につながります。
具体的な場面を通して、考え方をどのように切り替えれば良いかまで示されるため、管理職研修や教職員研修において、職場のコミュニケーションを見直す実践的な学びとなるでしょう。
リーダーの小さな変化が、組織の空気を変える

▲イメージ画像
齋藤氏の講演は、「無意識の言動に気をつけましょう」という注意喚起だけでは終わりません。
- 自分の表情を整える
- 相手に視線を向ける
- クッション言葉を添える
- 自分の中の「べき」に気づく
- 出来事への意味づけを変える――。
紹介されるのは、特別な準備をしなくても、その日から始められる行動です。
また、元国際線客室乗務員として培った接遇の視点、教育現場で数多くの研修を担当してきた経験、さらに4人の子どもを育ててきた母親としての実感が重なり、理論だけに偏らない説得力のある内容となっていました。
講師から一方的に答えを示すのではなく、参加者が自身の日頃の言動を振り返り、「自分にも思い当たることがある」「明日からここを変えてみよう」と気づけるように進められる点も、本講演の特長です。
参加者一人ひとりが自分の立場や経験に照らして考えられるため、講演終了後も職場での対話や行動の見直しへとつながる、余韻の残る講演となりました。
心理的安全性の高い教育現場を目指す研修に
職員や子どもたちが安心して意見を伝えられる組織をつくるには、制度やルールを整えるだけでは十分ではありません。リーダーの日々の表情、声、言葉、聴く姿勢が、その組織の空気をつくります。
管理職が自らの振る舞いを振り返り、心遣いや思いやりを「見える形」にする。
その小さな変化が職員へと広がり、やがて子どもたちや保護者との関係にも良い変化をもたらします。
齋藤氏の講演は、人権、マナー、アンコンシャス・バイアス、感情のコントロール、心理的安全性といった幅広いテーマを、日常のコミュニケーションという一つの軸で結び付けている点に魅力があります。
人権教育指導者研修をはじめ、学校管理職研修、教職員研修、保育者研修、PTA研修、教育委員会主催の研修など、立場や価値観の異なる人々が関わるさまざまな場におすすめできる講演です。
- 「職員が安心して相談や報告をできる組織をつくりたい」
- 「無意識の言動によるハラスメントや人権侵害を防ぎたい」
- 「管理職や教職員のコミュニケーションを見直す機会を設けたい」
こうした課題を持つ主催者にとって、本講演は、参加者の意識を変えるだけでなく、具体的な行動変容を促す研修となるでしょう。
「心は見えないが、心遣いは見える。思いは見えないが、思いやりは見える」
相手を大切に思う気持ちを、相手に伝わる「形」へと変える方法を学ぶ齋藤由起子氏の講演。心理的安全性の高い教育現場や組織づくりを目標とする教育現場や組織におすすめの内容です。
齋藤由起子 さいとうゆきこ
スクールコミュニケーションサポート代表 日本アンガーマネジメント協会認定コンサルタント コミュニケーションマナー講師

医療介護・教育機関での研修実績は延べ5万人以上。「想いを形に・心を形に・無意識の加害者にならない」をテーマにした研修講演はリピート率100%近い。事例を交えた楽しい研修は毎回会場全体がとても盛り上がると好評を得ている。
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講師ジャンル
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実務知識 | 医療・福祉実務 |
|---|---|---|
| 社会啓発 | 教育・青少年育成 |
プランタイトル
想いを形に・心を形に
~無意識の加害者にならないために~
講師候補」に登録されました
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