「役員のなり手がいない」
「若い世代が入ってくれない」
「毎年同じ人に負担が集中している」…。

自治会・町内会に関するこうした悩みは、今や全国どの地域でも聞かれる切実な課題です。地域のつながりを守りたい。一方で、これまで通りのやり方では続かない。そんな葛藤を抱える自治体・地域団体の皆さまに向けて開催されたのが、地域活性化・まちづくりコンサルタント・水津陽子さんによる講演「消えゆく『町内会』をアップデートせよ:持続可能な地域コミュニティへの4つの逆転発想」です。

本講演では、自治会を“昔ながらの義務的な組織”として維持するのではなく、令和の暮らしに合った「参加したくなるコミュニティ」へ変えていくための実践的なヒントが、具体例を交えながら紹介されました。

官公庁・学校・PTAチーム

講演テーマ:消えゆく『町内会』をアップデートせよ:持続可能な地域コミュニティへの4つの逆転発想
講師   : 水津陽子 氏
開催時期 : 2026年5月
主催者  : N市 連合町内会(自治体主催)
講演時間 : 90分
聴講者人数: 約200人
講演タイプ: リアル開催

自治会はなぜ敬遠されるのか

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講演の冒頭で示されたのは、自治会・町内会が置かれている厳しい現実です。
「役員を押し付け合い、最後はくじ引きで決める」「若い世代は最初から入会する気がない」「活動内容が見えず、何をさせられるのか分からない」――。会場にいた多くの方が、思わずうなずく場面が見られました。

講師の水津さんは、自治会の衰退を単なる“ご近所付き合いの希薄化”として片づけるのではなく、「古い仕組みが今の生活様式に合わなくなっている」と指摘。だからこそ必要なのは、加入をお願いすることではなく、自治会そのものをアップデートすることだと語りました。

自治会は本来、防災、防犯、見守り、環境整備など、地域の暮らしを支える大切なセーフティーネット です。しかし、その価値が住民に伝わらず、負担ばかりが前面に出てしまえば、人は離れていきます。講演は、まさにこの「伝わらなさ」と「負担感」に切り込む内容でした。

「加入率」より「参加率」を見る

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特に印象的だったのは、「加入率を追うのではなく、参加率を追う」という視点です。

自治会の課題を語るとき、多くの場合「加入率の低下」が問題視されます。しかし水津さんは、数字上の加入者を増やしても、実際に活動に関わる人が少なければ組織は活性化しないと説明しました。

大切なのは、「入ってください」とお願いすることではなく、「面白そうだから行ってみよう」「これなら自分にも関われそう」と思える入口をつくること。たとえば、保健師を招いた健康体操、子育て世代が気軽に話せるパパ・ママサロン、VR体験やクイズ、スタンプラリーを取り入れた防災イベントなど、参加者が主役になれる企画が紹介されました。

会場では、従来型の避難訓練や定例会とは異なる発想に、熱心にメモを取る参加者の姿も見られました。「お話を聞くだけ」で終わらせず、地域の人が自然に集まりたくなる場をどうつくるか。自治会運営を担う方々にとって、すぐに持ち帰れるヒントが多く詰まったパートでした。

生成AIは自治会運営の味方になる

続いて取り上げられたのが、自治会運営のデジタル化です。
「高齢者にはデジタルは難しい」という思い込みに対し、水津さんは、今や70代でもスマートフォンを使う人が増えている現状を踏まえ、シニア世代こそITの恩恵を受けるべきだと話しました。

なかでも注目されたのが、Google Geminiなどの生成AIの活用です。広報誌やチラシ、イベント告知文、簡単なイラストやキャラクター入りの案内なども、AIを使えば短時間でたたき台を作成できます。

水津さんが強調したのは、「最初から100点を目指さなくてよい」ということでした。AIにまず40〜50点の案を出してもらい、それを人が少し手直しする。これだけでも、役員の事務作業は大きく軽減できます。

自治会の会長や役員がITの専門家になる必要はありません。「何をしたいか」を伝え、得意な人に形にしてもらうだけでも十分です。デジタル化を難しく考えすぎず、“負担を減らす道具”として取り入れるという考え方は、参加者にとって新鮮な驚きだったようです。

「押し付け合い」から「ジョブ型」へ

自治会が敬遠される大きな理由の一つが、役割の重さです。
従来の輪番制では、興味や得意分野に関係なく役員を引き受けざるを得ず、結果として「できれば関わりたくない」という空気を生み出してしまいます。そこで水津さんが提案したのが、「ジョブ型」への転換です。

すべてを一部の役員が担うのではなく、防災、広報、イベント、見守り、会計など、活動を小さなプロジェクトに分け、関心のある人が関われる形にする。これにより、「1年間すべてを背負う」のではなく、「この企画だけなら手伝える」という参加が可能になります。

また、組織そのものをスリム化する重要性についても触れられました。三役や事業部の見直し、慣例的な支出の整理、不透明なお金の使い方の改善など、住民が納得できる運営に変えることが、信頼回復につながると語られました。

特に、意思決定の場に女性や若い世代が少ないことは、自治会の構造的な課題です。水津さんは、彼らを単なる「お手伝い役」にするのではなく、企画を動かすプロデューサーとして迎えることが大切だと訴えました。

若者を“お客様”にしない地域づくり

講演の後半では、若者の地域参加についても語られました。

「若者は地域に興味がない」と言われがちですが、水津さんはそれを大人側の思い込みだと指摘します。若者が参加しないのは、関心がないからではなく、自分たちが主役になれる場所が少ないからです。

実際に、若い世代が祭りの実行委員長を務めたり、最年少役員として地域活動に関わったりする事例も紹介されました。若者をイベントの“にぎやかし”や“お客様”として扱うのではなく、責任ある立場を任せてみる。大人が細かくレールを敷くのではなく、発想を支え、実現を後押しする

この発想に、会場の空気が少し変わったように感じました。担い手不足を嘆くだけでなく、任せ方を変えることで地域は変わる。そう実感できる内容でした。

10年後の地域をつくる小さな変革

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講演の締めくくりで語られたのは、「自治会は義務ではなく、暮らしを豊かにするためのツールである」というメッセージでした。

ゴミステーションの管理、防災活動、見守り、交流の場づくり。どれも、地域で暮らす人にとって必要な仕組みです。ただし、それを昔ながらの属人的・不透明・アナログな形のまま続けるには限界があります。

ルールを明文化する。役割を小さく分ける。デジタルを使って負担を減らす。若者や女性に意思決定の場を開く。楽しく参加できる入口をつくる。こうした一つひとつの小さな変革が、10年後の地域コミュニティを支えていきます。

今回の講演は、自治会・町内会の課題を抱える方々にとって、「もう無理だ」と諦めるのではなく、「変えれば続けられる」と前向きに捉え直すきっかけとなる内容でした。

地域活動の担い手不足、自治会加入率の低下、住民参加の促進、防災・見守り体制の再構築に課題を感じている自治体・地域団体の皆さまに、ぜひおすすめしたい講演です。

水津陽子 すいづようこ

合同会社フォーティR&C 代表 経営コンサルタント 地域活性化・まちづくりコンサルタント

自治会・町内会の活性化などの共助コミュニティの再生、持続可能なまちづくりがテーマ。それぞれの地域で抱えている現状と課題、解決法など、他にはない具体的な事例を交えた分かりやすい講演が好評。著書『若い世代や女性が活躍する自治会・町内会の極意』(実業之日本社)など。

講師ジャンル
ビジネス教養 地域活性

プランタイトル

加入率から参加率へ!
若い世代や女性が活躍する自治会・町内会の極意に学ぶ、担い手獲得セミナ

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