通常、オンライン講演はインターネット回線を介し、Zoomなどの配信ツールを使って開催されています。
しかし、インターネットを使用しなくても電話回線を使って行う方法もあります。
それが、テレカンファレンスです。一般的に「テレカン」と呼ばれ、電話回線で複数の拠点をつなぎ、電話や専用の機械を使い、遠隔で会議を行うシステムのことです。
先日、J証券会社さまよりこのテレカンを使ったオンライン講演の依頼があり、私が担当させていただきました。
社内でもなかなか例のないケースとなります。こちらを開催した所感や当日の様子、テレカンのメリットについて解説します。
金融法人(証券会社・都市銀行・政府系金融機関)・業界団体 担当 松田 隆平
講演テーマ: 今後の政局とアベノミクスの行方
講師 : 高橋洋一 氏
主催者 : J証券会社 様
開催日時 : :2020年9月中旬
講演時間 : 1時間半
聴講者人数: 約50人
使用ツール: WebEx テレカンファレンス
講演タイプ: C. 講師から個別視聴者へ生配信
講演テーマ: 菅政権下の日本経済
講師 : 竹中平蔵 氏
主催者 : J証券会社 様
開催日時 : :2020年10月初旬
講演時間 : 1時間半
聴講者人数: 約100人
使用ツール: WebEx テレカンファレンス
講演タイプ: C. 講師から個別視聴者へ生配信
依頼から開催まで2週間の特急スケジュール
昨年(2020年)8月末頃、弊社のサイトから一件の問合せがありました。
1週間後の開催希望で政治経済・金融分野に明るい講師を探しているとのこと。
ちょうどそのころ当時の安倍晋三首相が辞意を表明したばかりで、政界や経済界に大きな波紋が起きていた時期です。担当者に電話をして詳細をお聞きすると、「次回の首相はだれになるのか、また新内閣が経済に与える影響について、外国や日本の投資家に ”総裁選のこのタイミングで” 解説してほしい」という内容でした。
開催のリミットは「総裁選の当日まで」それ以降の開催は不可。さすがに、1週間後の開催でそれ相応の講師を探すのは難しく、開催日をリミットぎりぎりの2週間後に延長していただきました。とはいえ、2週間でもかなりタイトなスケジュールです。
急いで講師を探し、元財務官僚で経済学者でもある高橋洋一さんを推薦し、ご依頼をいただきました。
講師と同時に、問題はオンライン講演の方法です。
最初はZoomを使用する話も出ていましたが、今回はニューヨークや香港、日本を結んで開催するため、回線が安定しているテレカンを用いることになりました。
今回の主催者さまであるJ証券会社は、ニューヨークや香港などにも拠点のある外資系の証券会社です。日ごろ多国間で会議を行う際にも、このテレカンを使用されているようで、自社が所有するテレカンのシステムを使用したいという要望がありました。
「わかりました」と返事はしたものの、テレカン自体をよくわかっておらず、インターネットでテレカンの仕組みから調べるところから始めました。テレカンは、電話回線を使った会議システムで、Zoomよりも古く、主要な国際会議でも使用されています。最近では、テレカン会議の様子をニュース映像等でも目にすることが増えてきました。
テレカンのメリットとして、以下のようなものが挙げられます。
- スマートフォンや電話のみで接続が簡単
- インターネットより回線が安定している
- 音声が高音質である
- ITリテラシーの問題がなく、誰でも使える
- インターネットのインフラが整備されていない地域からも安定して会議が行える
その反面、顔が見えないためうまく双方の意図が伝わらなかったり、資料が共有できないため事前に送っておかなければならないといったデメリットもあります。資料については、事前に高橋先生が作成したものを主催者さまに送付して、聴講者の方々に共有していただきました。
また、今回は外国人の聴講者に向けて、日英の翻訳者がつくことになりました。顔が見えないのに、どうやって同時通訳を行えばいいのか…。さらなる課題が出てきました。
2週間という短い準備期間の中で、スピーディーな対応を求められました。本部のあるアメリカに契約書を送らなければならないため、早朝に来た契約書をその日の昼までにサインして戻したこともありました。契約書はもちろん英語です。英語を訳しながら、契約書の内容を確認したため、かなりの時間がとられました。
リハーサルなしの本番
講師の高橋先生はご多忙な方で、テレカン上での3者揃ってのリハーサルはなし。「本番一発勝負」です。
そのために不安材料は、全て事前に潰しておかなければなりません。
当日のスケジュールは、以下の通りでした。
9:00~9:45 講師入室
9:45~9:55 通訳者との打ち合わせ
10:00~11:00 講演
11:00~11:30 質疑応答
私は講師の方が入室するより少し前にスマートフォンとPCをつなげておきました。所定の番号にダイアルして、アクセスコードを入力するだけの簡単な操作で、テレカンをつなげることができました。
講師と通訳者の打ち合わせは10分程度。あらかじめ、資料に合わせて翻訳者の方が専門用語をリストにしており、まずは用語を共有しました。次に、顔が見えないため、翻訳のタイミングを話し合いました。高橋先生に、翻訳してほしい時は少しの間を入れるようにお願いしました。
講演が始まると、途中で通話が途切れることなく、横で話しているようなクリアな音声で聴くことができました。最初は高橋先生の声と通訳者の声がかぶる場面もありましたが、時間が過ぎると高橋先生と翻訳者の息が合うようになり、同時通訳もスムーズに行われました。講演後の質疑応答も活発に行われ、皆さん満足されたご様子。初めてのテレカン講演にしてはおおむねうまくいったと思います。
好評につき第2弾開催が決定
講演終了直後、うれしいことに第2弾の話をいただきました。次の講師は「元政界にいらっしゃった方」というご用命があり、小泉内閣の経済財政担当大臣就任を皮切りに金融担当大臣、郵政民営化担当大臣、総務大臣等を歴任された竹中平蔵先生を推薦し、お願いすることになりました。
聴講者は前回と同じく、アメリカ、香港、東京の投資家の方々。テレカンの使用、当日のスケジュールも前回と同様です。竹中先生は政界に長く携わっており、知名度も高かったため、100名近くの聴講者が集まりました。
講演では、菅政権の基本的性格、マクロ経済運営やデジタル庁の設置など施策の内容を詳しく解説していただきました。聴講者の方々は新政権にどのような影響を与えるのか、また日本の制限的な投資施策がいつ開放されるかなどに興味があるようで、質疑応答はかなりの盛り上がりを見せました。竹中先生もざっくばらんにお答えいただいており、顔は見えずとも和やかな雰囲気が伝わってきました。
聴講者として参加していた他社からも講演依頼が舞い込む
第2弾も大好評のうちに終わり、数日後、今度は聴講者として参加していたサンフランシスコの投資運用会社様より、竹中先生への個別カンファレンスの依頼が来ました。今回の参加者は3~4人程度で、質疑応答を中心とした内容です。人数が少なかったお陰で、座談会のような形で、講師が聴講者一人ひとりとじっくり向き合える時間を設けることができました。
この困難な案件を成功させられたのは、ひとえに未経験の私を信頼し任せてくださったお客様と、実現のためさまざまな無理なお願いを快く聞いてくださった講師の高橋先生と竹中先生のご協力のお陰です。
改めて、この仕事で「最も大切な事は何なのか」「自分の役割は何なのか」を思い返す機会となりました。
新しいことでも「とりあえずやってみる」が私の信条です。
テレカン以外でも、何か新しい形で講演を行ったみたいという方がいらっしゃいましたら、ぜひ私の方までご連絡ください。実現できる方法をご一緒に考えていきましょう!
【この記事を書いたスタッフ】
松田 隆平 まつだりゅうへい
1972年京都生まれ。京都~大津育ち。イベント業界内での転職を経て2005年入社。好きなものはサッカー(歴10年)、読書(歴史、ミステリ、ハードボイルド等)、映画、格闘技、旅行、海、写真/カメラ、靴…etc.。
モットーは「お客様、講師に対して責任を果たし、仕事を通じて社会・ビジネスをより良くすること」。新しいことも躊躇なく対応できることが私の強みだと思っています。こんなことをやってみたいというご希望がございましたら、お気軽にご相談ください。
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