最近ビジネスの現場でよく耳にする「メンター制度」。人材育成に関する用語というのはわかるけれど、具体的にどのような制度か知らない人も多いのではないでしょうか?
今回は制度の概要とそのメリット、さらにメンターを育成するための研修について解説します。
本記事の後半部分でシステムブレーンのおすすめメンター研修も紹介しているので、ぜひ人材育成の参考にしてください。
導入企業が増えている「メンター制度」とは
まずはメンター制度について再確認しておきましょう。ここでは類似の人材育成方法であるコーチングやOJTとの違いについても説明します。
「メンター制度」の概要
「メンター制度」とは、相談役の先輩社員を1人つけることで、主に新入社員をマンツーマンでサポートする人材育成の手法です。
新入社員は働くなかで気がかりなことや悩みを抱えたとき、すぐに担当の先輩社員に相談できるため、不安やストレスが軽減します。直属の上司や業務上の教育にあたる先輩社員とは異なる立場から支援するので、部署を越えたコミュニケーションの活発化にも有効です。
メンターとメンティー
サポート役の先輩社員を「メンター」、サポートされる新入社員や若手社員を「メンティー」と呼びます。メンターは「指導者、助言者」を意味します。
メンターは、メンティーとは異なる部署・職種の入社3年~5年目の社員が選ばれるのが一般的です。部署の利害関係から離れた比較的年齢の近い社員であれば、メンティーも気軽に相談できます。
メンタリングとは コーチングやティーチングとの違い
また「メンタリング」とは、対象に精神的支援や助言を行うことを指します。
マンツーマンでの指導やアドバイスと聞くと、業務上必要な知識を伝える「ティーチング」、あるいは対話によって本人の学びを促す「コーチング」と混同してしまうかもしれません。しかし、コーチングやティーチングがあくまでも業務の目標を達成するための指導であるのに対し、メンタリングは精神的な伴走に重点を置いているのがポイントです。
OJTとの違い
同じく新入社員の育成方法に、「OJT(On the Job Training)」があります。
OJTは、新入社員と同じ業務を担当する先輩社員が「仕事のやり方を指導し、現場の即戦力へと育てること」を目的としています。そのためOJTも、メンタル面のサポートを重視するメンター制度とは別のものです。
メンター研修を導入する企業の4つのメリット
ここでは企業がメンター研修を導入する4つのメリットを解説します。
メリット1.若手社員の早期離職防止
メンター制度には若手社員の早期離職を防ぎ、人材を定着させる効果があります。
まだ組織に馴染めていない新入社員にとって、メンターは非常に心強い存在です。例えば直属の上司からの厳しい指導に悩んでいた場合、「同じ部署内の先輩に相談すると、そのことが上司の耳に入ってさらに怒られるのでは」と不安が募るかもしれません。
一方、別の部署の先輩社員になら気軽に相談でき、1人で悩みやストレスを抱え込むこともありません。
新入社員が孤立感を抱えたまま退職してしまうリスクを避けることができます。
メリット2.メンター社員の能力開発
メンター研修では、メンターを務める社員自身の新たな能力を開発します。
メンターは、メンティーとの面談などを通じてマネジメントや人材育成の方法を学べます。相手のモチベーションを引き出す上手なコミュニケーションなども必要になるでしょう。こうしたスキルは、将来的に管理職を目指すうえで活かすことができます。
メンター研修はメンターにとって、組織の中での自分のポジションを再確認し、今後のキャリアプランを考える良い機会となるでしょう。
メリット3.社内コミュニケーションの活性化
メンター制度をきっかけとして、社内のコミュニケーションが活発になる可能性もあります。
メンターとメンティーは、年齢の近い別の部署の社員同士です。そのため、業務上はあまり交流する機会のない部署につながりができます。さらにメンターとメンティーそれぞれが、同じ立場同士で交流する機会も増え、部署の壁を超えて横のつながりが生まれるのもメリットです。
メリット4.女性社員へのキャリア支援
女性社員のキャリアを支援したい企業にも、メンター制度はおすすめです。
若手の女性社員のなかには、結婚や出産と並行してキャリアを継続させるイメージがつきにくいと悩む人もいます。その場合は、実際にライフイベントを乗り越えて活躍している先輩社員をメンターとして相談役にすることが効果的です。身近にメンターというロールモデルがいることで、若手社員はキャリアプランを立てやすくなるでしょう。
またメンター側も、メンティーから信頼されることで組織の中での自己効力感が増し、管理職を目指すきっかけになるというメリットがあります。
メンター研修で学ぶ5つの内容
次に、メンター研修では具体的にどのようなことを学ぶのかを見ていきましょう。
①メンターの意義や役割
メンター研修では、まず「メンターとは何か」という意義や役割について学びます。
メンターを任された社員は、ただ業務上の指導をするのとは違い、メンティーのメンタル面をサポートすることが大切だと理解してもらうことが重要です。
メンターの役割はメンティーが早く組織に馴染み、業務でも最大限のパフォーマンスを上げられるよう手助けすることです。研修の段階からその目的をしっかりと共有することで、メンター社員のモチベーションアップを図ります。
また「より良いメンターとは何か、メンティーに対してどのように接するのが最善か」について自ら考え、答えを得るプロセスを含むこともあります。
②メンタリングの技術:傾聴
メンター研修では、メンティーと接するうえで必要な「傾聴」などのメンタリング技術も習得できます。
「傾聴」とは、話し手に心を開いてもらうために用いる技法です。積極的に相手の話を聴く姿勢を意識し、その気持ちへの共感を表します。
傾聴の具体的なスキルとして、相手の話のテンポやトーンに合わせる「ペーシング」が挙げられます。また相手の話をちゃんと受け止めていることを示し、思い違いがないか相互確認するための「要約」や、相手が本当に伝えたいことを引き出す「質問」も重要です。
メンタリングの大部分はコミュニケーションなので、メンティーが心を開きやすくなる傾聴は非常に大切なスキルです。
③メンタリングの技術:コーチングとフィードバック
またメンタリングではコーチングの技術が活かせる場面もあります。
例えばメンティーから相談を受けたとき、もっと本人が行動するべきだと感じる内容の場合もあるでしょう。そんなときも無闇に相手を否定せず、メンティー自身で問題解決できるように対話を重ねるのがコーチングの手法です。
また、メンティーの積み重ねてきた成果や褒めるべき点を見つけ、良いところを伸ばすためのフィードバックについても学びます。
④メンタリングの技術:実践型ワークやロールプレイ
メンター研修には、講義を聞くだけでなく、参加者自身が主体的に取り組むワークやロールプレイの時間もあります。
自分自身のキャリアを振り返って「メンターになる心構え」を整理したり、タイプの異なる2人のメンティーとの疑似面談をしたりします。
⑤メンタルヘルスやハラスメントの知識
メンティーを精神的にサポートするうえで、メンタルヘルスの知識は欠かすことができません。
メンターとして精神的な不調にいち早く気づければ、休職や離職などの深刻な事態になる前に手を打てます。
また相談を受けたときの一次対処や、不適切なメンタリングを提供しないために、ハラスメントの基礎知識についても学んでおく必要があるでしょう。
SBのメンター研修おすすめプラン
システムブレーンでも人気講師によるメンター研修を多数ご用意しています。以下におすすめプラン10選をご紹介します。
人材マネジメント革新セミナー
~コーチングから一歩進んだ“メンタリング”の実践へ~
NPO法人「国際メンターシップ協会」で理事を務める講師による、「自立型高成果人材」を育成するためのプランです。経営者やリーダー層に対して、効果的なメンタリングプログラムの導入方法を伝授します。
元コンサルタントで現プロコーチが教える、 リーダーに必要な、ロジックと共感のコミュニケーション術
管理職のメンターコーチを務める講師が教えるコミュニケーション術。ロジックと感情の両面から、リーダーとしてメンバーに接する際のポイントを伝えます。ビジネスで役立つ「聞く力」と「話す力」が習得できます。
アドラーに学ぶ部下育成の心理学
ベストセラー『あたりまえだけどなかなかできない33歳からのルール』(明日香出版社)を含め多数のビジネス書を著作している講師から学ぶ、部下育成のための心理学研修。大手企業の管理職、役員、社長など様々な立場で部下を束ねてきた経験をふまえ、リーダーシップやチームビルディングについて解説します。
社員をやる気にさせてを業績向上させる『メンタリング・マネジメント』
メンターによって人材の価値を最大限に高めるリーダーシップ理論である「メンタリング・マネジメント」を学びます。大手電機メーカーをはじめ多数の企業で研修の実績がある講師による、講義とワークを組み合わせた研修プランです。
自立(律)社員を創造するメンタリングマナー人財育成法
年間登壇数100回以上、これまで1万名以上に向けて研修や講演、コンサルティングを実施してきたメンタリングマナー専門家の講師による人財育成研修。自発的に考え、動く「自立(律)型社員」を育成するための知識と技術を、体系的に習得できます。
コーチングを活用した
チューター(新人育成担当者)育成セミナー
米国CTI(コーチング・リーダーシップのトレーニング機関「Co-Active Training Institute」)認定コーチである講師による、新人教育担当者向けプランです。相手の可能性を引き出すコミュニケーション術や、目標達成への段階に応じたコーチングのスキルなどが習得できます。
どんな問題もイキイキ乗り越えられる社員を育てる頼もしいリーダーになる。自立型人材を育てるメンタリング
数々の企業や起業家を支援してきたコンサルタントである講師が伝授する、自立型人材を育てるためのメンタリング術。今の時代に求められるリーダー像から、メンタリングの理論と実践まで、総合的に学ぶことができます。
シニア社員が活性するメンター制度
産業カウンセラーである講師による、シニア社員にスポットを当てたメンター制度の方法論を学べるプランです。組織活性化の鍵となるのは、シニア社員の活用。実際のプログラム事例から、シニア社員をメンターとして育成する方法を伝えます。
良きメンター(指導者)が早期離職を防ぐ!
新入社員のやる気を育て自律型社員に育てる仕組み
「自律型人材開発プロデューサー」の講師が、メンター制度によって早期離職を防止する仕組みづくりを提案します。多くの企業が抱える早期離職の問題点を明らかにし、新入社員や若手社員を支援してやる気を引き出す方法を習得しましょう。
リーダーに求められるメンタルへルスマネジメント力!
~ラインケア力を磨いて“強い組織”づくりへ~
人材育成コンサルタントである講師によるメンタルヘルスマネジメント研修。メンタルヘルスの観点から、職場の理想的なコミュニケーションとは? 個人やペア、グループでのワークを交えた内容で、身に付けやすいのが特徴です。
メンター研修・メンター制度の注意点
最後にメンター研修やメンター制度の注意点を紹介します。以下のポイントに気をつけましょう。
制度や研修目的についてしっかり理解してもらう
メンター制度は通常業務に加えて新たな役割を追加するため、ときにメンターとなる社員にとって負担となります。疲れ果ててしまわないよう、状況や時期によっては業務やメンタリングの負荷を調整しましょう。そのように全社で支援することを伝えた上で、組織全体に大きな利益となることを理解してもらう必要があるでしょう。
時間やコミュニケーションツールを整える
研修だけでは、メンター制度を円滑に進めることはできません。メンタリングの基盤となるのは、メンターとメンティーの密なコミュニケーションです。
異なる部署に属する社員同士が十分なコミュニケーションをとるためには、会社側が業務時間内にメンタリングのための時間を確保しなければなりません。柔軟なスケジュール調整のためには、互いのチームのメンバーに対して制度を正しく認識してもらう働きかけも不可欠です。コミュニケーションツールを用意する必要があります。
相性によるリスクを知り、組織で支援する
メンターとメンティーは常に相性の良い組み合わせになるとは限りません。どちらか、もしくは両方がお互いに対して苦手意識を持ってしまった場合、メンター制度がかえってストレスになり、会社への不信感や早期離職の要因となってしまう可能性もあります。
導入にあたっては、メンターやメンティーが相性などの問題を感じた際に相談できる窓口を設け、双方の負担が大きくなる前に、組み合わせの変更などの対処を行うと良いでしょう。
メンター制度を成功させるためには、専門家による研修で、対象社員に意義や方法論を学んでもらうのが有効です。システムブレーンではメンターの役割やメンタリング技術について学べる豊富な研修プランをご用意しておりますので、社内研修をお考えのご担当者様はぜひご検討ください。
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