近年よく耳にするVUCAという言葉。
VUCA時代において、企業や個人が予測困難な状況に直面することが増えています。
VUCA時代を生き抜くためにはどのような人材育成や組織づくりが必要なのでしょうか。
本記事では、VUCAの概要を説明するとともに、VUCA時代を勝ち残るための人材育成のポイント、社員に習得させたいスキル等を紹介します。最後には、VUCA時代に最適な研修プランも紹介しているので、ぜひご覧ください。
VUCA(ブーカ)とは
VUCA(ブーカ)とは、現代社会の不確実で複雑な環境を表す言葉で、以下の英単語の頭文字を組み合わせた造語です。
- Volatility(変動性): 変化が急激で予測が難しい状況。
- Uncertainty(不確実性): 先が読めない不安定な要素が多い状況。
- Complexity(複雑性): 多くの要素が絡み合い、単純な解決策が見つかりにくい状況。
- Ambiguity(曖昧性): 上記が組み合わさり、明確な答えがなく、判断が難しい状況。
元々は1990年代の冷戦時代に先が読めない変則的な軍事状況を表す言葉として使われるようになりました。しかし、急速な技術革新やグローバル化、地球温暖化等、経済においても予測不可能な事象が起こるようになり、2016年のスイス・ダボスで開催された世界経済フォーラムで、「VUCAワールド」という言葉が使われ、ビジネスシーンにおいて一気にその名が広がりました。2020年には、従来の様式を根本から覆した新型コロナウイルスのパンデミックも発生。VUCAは、このような予測不可能な時代に、ビジネスにおけるリスク管理や戦略策定において大切な概念と言えます。
VUCA(ブーカ)時代に起こりえること
VUCA時代では、予測困難な状況が頻発し、企業や個人はその状況に対応するための準備が求められています。ここからは、VUCA時代に起こりえる具体的な出来事について解説します。
想定していないことが多々発生する
VUCA時代においては、パンデミックのように社会全体に大きな影響を与える、予測不可能な事態が頻発することが特徴的です。グローバル化が進む一方で、地球温暖化や少子高齢化といった問題も深刻化しており、これらに伴う制度の変化や社会的な影響を完全に予測することは不可能でしょう。
つまり、これまでの常識が通用しない状況が増え、誰もが想定外の出来事に直面する状況から避けられない時代に突入しているのです。
市場を覆す新サービスの登場
VUCA時代では、革新的なビジネスモデルを持つ新サービスが市場に参入し、業界が大きく変わる可能性があります。例えば、映画業界では「Netflix」が登場しました。映画館やDVDレンタルに依存していた業界に対し、Netflixはインターネットを通じてどこでも映画やドラマを視聴できるストリーミングサービスを提供し、視聴スタイルを劇的に変えました。
また、日本ではまだまだ普及率が低いですが、金融業界では「Revolut」のようなフィンテック企業が現れ、手数料がほぼ無料で国際送金や通貨交換ができるサービスを提供し、従来の銀行に大きな影響を与えています。こうした新サービスが市場を根本から変革していく可能性は、今後もますます増していくでしょう。
従来の考え方、育成方針が通用しなくなる
VUCA時代では、これまでの常識や育成方針も通用しなくなる状況が生まれつつあります。企業が持つ資産や人材が、技術の進化や市場の変化に伴い、むしろ経営の足枷となる「負債化」が進んでいます。また、リモートワークやフリーランスといった新しい働き方の普及により雇用形態も変化しています。
さらに、学生インターンの普及により新卒社員の経験やスキルの幅が広がり、一律の育成方針では対応が難しい状況です。そのため、入社前にスキルを適切に評価し、状況に応じた柔軟な育成戦略が求められています。例えば、ITエンジニアの新卒社員であれば、経験者と未経験者で分別する。そこから経験者の中でも学校等で勉強をした経験か企業やフリーランスとしての実務経験があるかどうかでグルーピングする必要があります。それだけ各個人間のスキルレベルが違い、全員が同じ研修を受けるような従来の方針が通用しなくなっているのです。
VUCA(ブーカ)時代における人材育成や組織づくりのポイント
組織が変化に対応し、持続的に成長するためには、効果的な人材育成と組織づくりが欠かせません。ここでは、複雑で急速に変化する環境に適応するために組織が取り組むべき重要なポイントを紹介します。
個性を育て、多様性のある人材を抱える
組織が予測不可能な事態に適応するためには、均一なスキルセットを持つ人材を育てるのではなく、個々の特性や強みを活かすことが大切です。それぞれが異なるスキルを持つことで、多様な課題や状況に柔軟に対応できる組織が形成されます。
また、育成だけでなく採用も欠かせません。多様性を重視した人材採用も大切であり、異なる背景や価値観を持つ人材を積極的に採用することで、組織全体の柔軟性や対応力が向上するでしょう。変化の激しい現代において、一つの視点に固執せず、多様な意見や価値観を受け入れる文化を育むことが、組織の持続的な成長に繋がります。
管理職を早く育成する
組織が課題に迅速に対応するためには、実行権を持つ管理職を早期に育成することが大切です。これは、現場での迅速な判断と行動には必要不可欠と言えます。ただし、権限を委譲する際には、育成対象者のスキルや経験に応じて段階的なアプローチが求められます。急に大きな責任を負わせるのではなく、小さな成功体験を積み重ね、自信と実力を持った人材を育てていくことが組織の強化につながります。
企業ビジョンや目標を徹底的に浸透させる
VUCA時代において、企業のビジョンや目標の明確化、それらを組織全体に浸透させることは極めて大切です。予測が困難な状況だからこそ、明確なビジョンが指針となり、社員一人ひとりが自律的に意思決定を行う際の基準となります。組織内の企業ビジョンや目標の浸透は、組織全体が同じ方向に向かいながら、柔軟に対応する力が強まります。
ビジョンが浸透しているからこそ、変化に直面しても組織の軸がブレず、スピーディーな判断が可能になるのです。
人材育成制度を改善する
予測不能な現代において、人材育成制度の改善も不可欠と言えます。従来の一律的な方針では、多様なスキルや背景を持つ人材に対応しきれません。これからは、柔軟な育成方針を取り入れ、複数のロールモデルを設定することで、各個人の成長を支援する必要があります。
また、内閣府よりAIやIotなどの最先端技術を活用して、経済発展と社会問題の解決を両立する未来の社会を目指す「Society 5.0」という経済目標が発表されました。そのSociety 5.0の実現を見据え、デジタル技術に対応できるスキルやリテラシーの向上も重視すべきです。これにより、変化の激しい時代に対応できる強固な組織を築けます。
意思決定のフレームワーク「OODA」を取り入れる
組織として迅速な意思決定が求められる場面では、OODAループを導入することが効果的です。OODAは下記4つのステップから構成され、刻々と変化する状況に即応するためのフレームワークです。
- Observe(観察)
- Orient(状況判断)
- Decide(意思決定)
- Act(行動)
従来のPDCAサイクルが長期的な改善プロセスに適しているのに対し、OODAは変化が激しい環境で迅速に意思決定を行い、すぐに行動に移せる点が強みです。この柔軟でスピード感のあるアプローチは、不確実な状況下での適応力を高め、組織全体の対応力を向上させるために非常に適しています。
VUCA時代に社員に身につけさせたいスキルや強み
企業は急速に変化する環境に対応するために、今まで以上に社員のスキルや強みを育成することが大切です。これから紹介するスキルは、不確実な状況に備え、社員一人ひとりが柔軟に対応できる力を養うために必要なものと言えます。
新しい技術に対する情報収集力
AIやビックデータなどの技術が急速に進化しているVUCA時代では、これらの最新情報を常にキャッチアップし、使いこなす能力が求められます。ただ情報を集めるだけでなく、それを適切に選別し、具体的な業務やプロジェクトに適用できる力が大切です。
DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進も含め、新たな技術を取り入れることで生産性を向上させ、競争力を維持することが欠かせません。情報を適切に活用するスキルを磨くことで、変化の激しい環境下でも柔軟に対応できる強みを持つ人材を育成できるでしょう。
課題を仮説立て解決する能力
予測できない事態に対応するためには、仮説を立てて課題を解決する能力が必要です。
例えば、パンデミックの影響で浴衣業界が売上低迷に直面した際、福井県の小杉織物は浴衣の布を使ったマスクを製造し、危機を乗り越えました。このような従来の計画やデータが通用しない状況では、臨機応変に仮説やアイデアを立て、それを基に柔軟な対応が求められます。
迅速な決断ができる能力
市場環境が急速に変化するVUCA時代では、迅速な意思決定が求められます。テクノロジーの発展や新たなサービスの普及により企業を取り巻く状況は常に変わり続けています。決断に時間をかけすぎると、状況が変わり、せっかくの決断が無意味になるリスクがあります。
また、決断後の行動が遅れた場合も、競合企業に先手を打たれビジネスチャンスを逃すことになるでしょう。迅速に決断し、即座に行動に移す能力は、企業が市場の変化に対応し、競争優位性を保つために不可欠な力です。
コミュニケーション能力やマネジメント能力
VUCA時代において、多様な価値観やバックグラウンドを持つ人材が共に働く環境では、優れたコミュニケーション能力が不可欠です。加えて、職場内で多様な意見や考え方が受け入れられる心理的安全性が確保されている職場であれば、社員が自由に意見を共有でき、安心してチャレンジできる風土が熟成されるため、イノベーションが生まれやすく、組織全体のパフォーマンスも向上します。これらを実現するためにも、コミュニケーションスキルとマネジメント能力が求められます。
合わせて読みたい
「職場のコミュニケーション研修って何の意味があるのだろう」とい…
現代のビジネス環境は、技術革新やグローバル化により、複雑化して…
めまぐるしいIT技術の進歩に伴い、DXは今やすべての業界で避け…
VUCA(ブーカ)時代における人材育成やマネジメントの重要性
VUCA時代において、従来のトップダウン式の組織経営は限界を迎えつつあります。不確実性が高まる中では、現場の声や意見を反映したボトムアップ式の組織運営が適切です。個々の社員が主体的にキャリアを切り開く「キャリア自立」が求められる時代だからこそ、社員一人ひとりが持つ力を最大限に引き出す人材育成が欠かせません。
また、企業が競争力を維持し、優秀な人材を流出させないためにも、マネジメントの重要性も高まっています。優秀な人材を育成しその人材を確保できるマネジメント力を持った中核社員をいち早く育てていくことが肝心と言えるでしょう。
そのための手段として、研修が有効です。次章では、VUCA時代に高めるべき課題解決力や決断力、コミュニケーション能力を高めるために最適な研修プランをご紹介します。
VUCA時代に社員の必須スキルを鍛える研修プラン5選
ディズニー流マネジメント研修~「考える」ができるチームを作る7つの習慣~
元ディズニーランドのアトラクション責任者として15年の経験を持つ石坂秀己氏が、豊富な実績を基に、マネジメントの本質を伝える研修です。人材流動が激しい現代において、チーム全体のポテンシャルを引き出すための具体的な方法を伝授します。楽しく学びながら、リーダーシップを強化できる研修です。
決断力向上のための9原則
P&Gアジアパシフィックで最優秀マネジャーを受賞した営業力強化コンサルタント、小森康充氏。そんな彼から長年の営業キャリアと人材育成の経験をもとに、営業マネジャーに必要な決断力を高めるための具体的な方法を学べる講座です。優先順位の設定や問題解決のアプローチを9つの原則にまとめ、実践的なスキルを習得できる内容となっています。
結果を出し続ける組織のマネジメント~問題思考から解決志向の時代へ~
株式会社エナジーソースの代表であり、モチベーションコンサルタントとして活躍する高村幸治氏が、組織の課題解決に焦点を当てた新しいマネジメント手法を伝授します。問題解決ではなく解決志向にシフトするための実践的なアプローチが学べます。PDCAサイクルが機能しない、従来の管理手法に限界を感じている管理職の育成にピッタリな講座です。
非エリートの思考法 2流が1流を超える仕事術
竹内慎也氏は、リフォーム訪問販売や人材大手求人広告営業を経て、営業コンサルタントとして独立し、営業マネジメントの実績を数多く持っています。この研修では、どん底からトップ営業マンへと成長した経験を基に、実際の業務で成果を出すための具体的な思考法や仕事術を学べます。自己管理や目標達成能力を高め、自信を持って仕事に取り組むためのノウハウが詰まった研修です。
脱・新人、脱・若手~ 20代のうちに知っておくべき大切なこと ~
防災士でありながら、やる気を引き出すナビゲーターとして知られ、株式会社Gentleの代表取締役を務める中村成博氏。新入社員や若手社員を対象に、仕事の本質を理解し、やる気を持続させるための方法を学べる講座です。仕事のできる人とできない人の違いや、やる気スイッチについて学び、これからのキャリアを築くための実践的なアプローチが学べる機会となるでしょう。
VUCA時代に研修で勝ち抜く!
複雑で予測困難なVUCA時代において、企業や個人に求められるスキルや対応策はますます多様化していきます。本記事では、そのような時代を生き抜くための人材育成や組織づくりの重要性、さらには具体的なスキルの向上を目指せる研修プランをご紹介しました。今後のビジネスにおいて、これらの知識や方法論をぜひご活用ください。
あわせて読みたい
場所や時間に関係なく学習することができるeラーニング。研修に導…
社員のモチベーションアップや企業の生産性向上につながる「キャリ…
ビジネスシーンでの礼節をしっかり身に付けてもらおうと実施したビ…
他の記事をみる
業務外の講師への取次は対応しておりません。