
担い手の高齢化や物価高による資金難に直面し、長年愛されてきた地域の祭りが今、存続の危機に瀕しています。「祭りの灯を消してはならない」――そう決意して立ち上がった一人の起業家がいます。
東日本大震災の後、青森ねぶた祭で人々が心から笑顔になる姿を見て祭りの可能性を確信し、現在は全国の祭り支援に奔走する加藤優子さんです。 加藤さんに、企業や行政、住民の垣根を越えて関わり合い、地域を元気にする仕組みづくりのヒントについてお話を伺いました。
武蔵野美大卒。震災後訪れた青森ねぶた祭を機に、祭りの持つ力と地域の抱える課題を痛感し「オマツリジャパン」を2014年に創業。全国の祭りを多面的にサポートし、祭りを軸とした地域活性化や文化継承、企業連携など、祭りと社会の新たな接点づくりに取り組む。「ガイアの夜明け」NHK「視点・論点」他、掲載新聞多数。
――オマツリジャパン代表として全国を駆け回っていらっしゃいますが、まずはこの活動の原点となったきっかけを教えてください。
加藤 私の原点は、東日本大震災から5か月後に訪れた青森ねぶた祭にあります。当時は日本全体が自粛ムードで、青森にも深い痛みや不安が広がっていました。しかし、ねぶたに明かりが灯り、お囃子が街に鳴り響いた瞬間、会場が爆発するような熱気に包まれ、地元の方々が一気に満面の笑顔になったのです。
祈り・鎮魂・前を向く力…祭りのエネルギーを肌で感じ、全身が震えるほどの衝撃を受けました。「この文化を未来へ残したい!」という強い思いが、現在の活動の始まりです。
――そこから全国の祭りを巡る中で、どのような社会課題を目の当たりにされたのですか?
加藤 全国各地の祭りを巡るうちに、これほど人の心を動かし、地域のつながりを育んできた祭りが、実は資金や人手の不足で存続の危機にあるという現実を知りました。担い手の高齢化、人手不足、さらに昨今の物価高や警備費の上昇などにより、運営費の負担も大きくなっています。地域によって事情は様々ですが、限られた人員と予算の中で、懸命に祭りを続けている現場は少なくありません。中には、コロナ禍を機に、そのまま途絶えてしまった祭りもありました。
祭りには人を笑顔にし、地域を元気にする爆発的なエネルギーがあります。だからこそ、私はこの文化を絶対に絶やしたくないと考え、「祭りを社会全体で支えていく仕組みを創る」という課題に取り組むようになりました。
――そうした現場での強い思いが、現在の講演活動へと繋がっていったのですね。
加藤 はい。全国の現場を駆け回るなかで、「祭りは当たり前にあるものではない」ということを実感してきました。だからこそ、その素晴らしさだけではなく、背景にある担い手の努力や地域の抱える課題についてももっと多くの人に伝えたい」と強く思うようになりました。
各地での課題解決のための取り組みや、担い手の方々の努力や工夫をお伝えすることで、「自分も地域の祭りを盛り上げるために何か始めてみよう」と一歩踏み出す人を日本各地で増やしたいという思いで講演を続けています。
――今後の活動を通じて、どのような社会を目指していきたいですか?
加藤 目指すのは、オマツリジャパンのビジョンでもある「あらゆる垣根を越えて、祭りに想いを寄せ、笑い合える世界」です。世代や立場、国籍を越えて、誰もが祭りに参加し、笑顔で大切な人と時間を過ごせる社会。そして、企業も行政も地域も一体となって祭りを支える仕組みができ、その営みが次の世代へ自然と受け継がれていく未来です。お祭りは誰もが親しみを持てるテーマだからこそ、会場の皆様と楽しみながら、明るく前向きな未来へのヒントを共有していきたいですね。
――最後に、講演を検討されている主催者の方や、受講者の皆様へメッセージをお願いします。
加藤 祭りと聞くと一見ニッチなテーマに思われるかもしれません。しかし祭りが抱える課題の背景には、少子高齢化に伴う人口減少や地域経済の縮小があります。また、祭りというテーマには、地域活性化、文化継承、コミュニティづくり、気候変動への対応、さらには起業やソーシャルビジネスなど新たな経済のあり方まで、これからの地域づくりを考えるための多くのヒントが詰まっています。
12年間にわたり全国の祭りに携わってきた経験と、各地で見てきた具体的な事例を交えながら、分かりやすくお話しいたします。楽しみながら学んでいただけるよう、開催の趣旨や参加者層に合わせて内容を柔軟に構成しますので、ぜひお気軽にご相談ください。会場の皆様が、楽しみながら前向きな一歩を考えられる講演をお届けします。

▲加藤さんの講演風景(画像:加藤さん提供)

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