「投資には興味があるけれど、株価暴落などのリスクが怖くて踏み出せない」と考えている人は多いでしょう。投資で成功したという人を羨ましく思ったり、反対に投資に失敗して資産を失った人の話を聞いて怖くなったりと、今は一般の人も投資に取り組むようになったからこそ、様々な情報が耳に入ってきます。
特に、長く株式市場が好調だった状態から、2024年8月に株価が急落したことは世間に衝撃を与えました。「やっぱり投資は危なそうだからやめておこう」と考えた人もいるかもしれません。しかし、お金の基本さえ知っていれば、決して投資を恐れる必要はないのです。
今回は投資初心者向けに特化して、自身も貯金ゼロの状態からお金について勉強し、主に投資によって資産を築いた櫻井かすみ氏に、投資を始める前に知っておきたいポイントについてお聞きしました。
【監修・取材先】
櫻井かすみ氏
投資コンサルタント
ファイナンシャルプランナー
株式会社トウシナビ代表取締役
【お金の初心者向け】なぜ投資が必要なのか
NISAなどのお得な商品が登場し、かつて一部の投資家だけの関心事だった投資は、ここ数年で一気に一般の人にも身近なものとなりました。しかし投資初心者の人たちの中には「なぜ預貯金だけでなく、投資が必要なのか」と疑問に思っている人も多いでしょう。
その答えは「インフレにより現金の価値が相対的に下がっているから」、つまり貯金をするだけでは資産が実質的にはどんどん減ってしまう時代になったからです。
同じ現金1万円でも、これまで1万円で買えた物やサービスが値上がりして買えなくなってしまうと、相対的にお金としての価値は下がります。
30年以上デフレが続いた日本では「インフレによって資産が目減りする」と言われても、ピンとこない人が多いかもしれません。しかし現在、食品や生活必需品が軒並み値上がりして「生活が苦しくなった」と訴える声もあがっています。これまでと同じように働いていて貯金もしていたのに、支出が増えて、あっという間に余裕がなくなってしまう。それこそがインフレの怖さです。
世界的にインフレが進む中、日銀は持続的・安定的な物価上昇として2%という目標を掲げています。今後も物価や金利は上昇していく見込みで、低金利が続いている日本では現金を持っているだけではインフレに対応できない恐れがあります。2%以上の金利が得られるものに投資をして、自らの資産を守らなくてはなりません。
初心者の投資は危険?リスクへの考え方の3つのSTEP
もちろん、投資には必ず資産が増えるという保証があるわけではなく、反対に資産が減ってしまうリスクもあります。しかし「投資のリスク=大損害」と考えて、無闇に恐れることはありません。
投資のリスクとは、すなわち値動きの振れ幅のことです。一般的にリスクとリターンは表裏一体。短期間で高いリターンを得ようとすると、それだけ値動きの幅が大きい商品を購入する必要があります。しかし、あらかじめ自身の「リスク許容度」、つまり「どの程度までなら値が下がっても大丈夫か」を決めておき、それを基準に購入する商品を選べば、想定外の損失を出す恐れはないのです。
自身のリスク許容度は、3つのSTEPでチェックしていくことができます。
STEP1. | 生活に支障をきたすことがない額 |
STEP2. | 損をしても仕方がないと思える額 |
STEP3. | 精神的にストレスがかからない額 |
例えば、STEP1.の「生活に支障をきたすことがない額」を決めるときは、目安として毎月の支出の半年~1年分は現金として手元に残すことを考え、そのお金に手を付けずに済む程度の損失であれば大丈夫と考えます。
STEP2とSTEP3は個人差があるため、明確な算出方法はありませんが、この2つも非常に重要なチェックポイントです。なぜなら、手元に十分な現金を確保していたとしても、あまりに大きな損失を出してしまうと、メンタルに深刻な影響を及ぼす場合があるからです。
「1日で資産が数百万も減ってしまった」と考えると、ショックでしばらく立ち直れなくなってしまう人もいるのではないでしょうか?損失によるストレスは、家族・友人との関係や仕事に悪影響を及ぼすかもしれません。
そのような状況に陥ることも想定し、本当の意味で自身が許容できるリスクについて考える必要があります。
リスク許容度が決められないという人は、本当に小さな金額、例えば100円程度から始められる投資信託などを選び、ストレスフリーな投資に取り組むのがおすすめです。
過去にも幾度と株価の暴落はありました。金融商品によっても異なりますが、一般的に市場は半年~数年で元の状態へと回復していきます。例え株価の暴落があったとしても、生活の基盤と自身のメンタルを守ることができれば、苦しい時期を問題なく乗り越えられます。
投資の初心者にとって暴落は得体の知れない恐怖のようにも思えますが、経験と正しい知識があれば、投資のリスクもごく自然なものと捉えられるようになるでしょう。
投資初心者が絶対に抑えておくべきポイント
それでは、いざ投資を始めようとするとき、まず何から取り組めばよいのでしょうか。ほとんどの人がインターネットの情報などを頼りに、利回りの良いお得な金融商品を探そうとするでしょう。しかし、投資を始める人がまず最初に手をつけるべきは、実は自身の家計状況を把握することです。
投資に回せるように無駄な支出を減らし、さらに自然とお金が貯まる仕組みづくりをしておくことで、投資で損失を出したときにも生活の基盤が揺らぐことはありません。
まずは銀行口座を以下の3つに仕分けしましょう。
- 使う口座
- 貯める口座
- 増やす口座
「使う口座」は生活費を引き出したり、クレジットカードの引き落としに使用したりする口座です。重要なのは「使う口座」でついでに貯金をしよう、と考えないこと。使った分の残りを貯金するという方法では、毎月確実に貯金することは難しいでしょう。
そのため「貯める口座」を別に作って、毎月給与から先取りで一定額を貯金するのがおすすめです。先取り貯金はシンプルな方法ですが、効果は絶大。投資を始めるにあたって、まずこの「貯める口座」でお金が貯まる仕組みをつくっておくことで、投資のリスク許容度が見えてきます。
「使う口座」と「貯める口座」をしっかり仕分けしたうえで、最後に投資によって「増やす口座」をつくりましょう。毎月の支出と貯金額が可視化できれば、安心して投資に費やせる金額も見えてきます。
一般の勤め人や主婦も投資をするのが当たり前になった今、知り合いの話やSNSなどで様々な情報を見聞きするでしょう。しかし、投資のリスクに対する許容度には個人差があり、他人の体験談に基づいて、投資に費やす額などを判断することはできません。
大切なのは、まず自分自身、あるいは世帯のお金の現状を把握し、「使う」「貯める」「増やす」の3つの流れを整理することです。投資というと難しいイメージがありますが、家計簿レベルの収支管理から始めて、少しずつお金の知識を身に付けていけばよいのです。
投資初心者でも大丈夫!長期的な資産形成に取り組もう!
SNSなどに溢れる投資の成功者の話や、投資セミナーの勧誘の広告などを目にすると、さながら投資は莫大なお金を得るためのハイリスクなゲームのように感じられるでしょう。
しかし投資は危険なゲームなどではなく、日頃の家計管理の延長線上にあるものです。SNSなどの情報に踊らされて、短期間で大きな金額を得ようとすると深刻な損失を出す可能性もあります。しかし世帯の収支を把握し、家計管理を盤石にしたうえで取り組めば、投資のリスクはコントロールが可能なのです。
お金は家族の笑顔を守り、人生を良く生きるためのツールに過ぎません。インフレが進む現代では資産を守るために投資も必要になりますが、大切なのはお金に振り回されることがないよう、正しい知識を身に付けて堅実に投資に取り組むことです。
今回お話を聞かせていただいた櫻井氏も、当初はお金についての知識など無い普通の主婦でした。投資詐欺などの被害に遭って貯金を失ったという苦い経験により、ゼロからお金について学び、今では投資コンサルタントとして活躍。著書『投資への不安や抵抗が面白いほど消える本』は大手書店ランキングで1位を獲得し発売2週間で重版、そして現在も増刷を繰り返し、投資初心者にも多く支持されています。
投資知識のない一般の人の目線で、わかりやすく解説してくれる投資入門セミナーは幅広い層に人気です。ハイリスク・ハイリターンな投資のイメージとは一味違う、堅実で身近な資産運用について学ぶことができます。資産形成に関する講演テーマをお探しの官公庁・公的団体の企画担当者の方は、ぜひ次回の市民向け講座としてご検討ください!
櫻井かすみ さくらいかすみ
株式会社トウシナビ代表取締役 ファイナンシャルプランナー 投資コンサルタント
投資詐欺3回、貯金ゼロ、離婚・無職、再婚直後の不妊治療などで極貧に。極度のお金恐怖症に陥るも、投資の基本を学び、今や純資産1億。著書『投資への不安や抵抗が面白いほど消える本』は発売2週間で重版、大手書店ランキング1位。SNS総フォロワー3万人以上。投資入門セミナーも高い人気を誇る。
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