5月に新型コロナウイルス感染症が5類感染症へと移行した2023年。講演の開催方法は、コロナ禍以前のようにリアル開催に戻り、対面式で多くの講演・研修が開催されました。それでも、一定数オンライン開催も残り、オンラインとリアル開催のハイブリット開催も目立った年となりました。

そんな2023年を、市民・ビジネスパーソン・経営者・安全大会の対象者別に、開催形式の傾向と人気講演テーマで振り返ります。各市場の営業担当者が、来年主流となる講演スタイルや注目されそうなテーマを予測。ぜひ来年の講演テーマやプラン作成にご活用ください!

1,市民(官公庁・医療福祉・学校・PTA)

①開催傾向

官公庁、学校、医療機関等が主催した市民対象の講演・セミナーにおいては、完全にコロナ禍の制限が撤廃されたことにより、リアル開催は8割まで増加。

オンライン開催は、昨年(34%)より、15%減の19%となりました。しかし、学校・PTA主催の講演については、オンライン開催が3割近くといまだに高いニーズはあります。
オンライン講演といっても、完全オンラインのものは少なく、リアル開催+アーカイブ(オンデマンド)配信のハイブリット型を選択するケースが9割以上を占めました。

➁人気講演テーマベスト10

順位 2022年 2023年
テーマ 割合 テーマ 割合
1 教育・青少年育成 27.00% 教育・青少年育成 15.47%
2 人権・平和 22.00% 文化・教養 13.53%
3 文化・教養 9.00% 人権・平和 13.01%
4 福祉・介護 9.00% 福祉・介護 9.14%
5 男女共同参画 6.00% 健康 8.26%
6 健康 4.00% 環境問題 3.16%
7 防災・防犯 4.00% 男女共同参画 2.81%
8 環境問題 3.00% 地域活性 2.64%
9 意識改革 3.00% 防災・防犯 2.11%
10 地域活性 3.00% 意識改革 1.93%

今年は、これまで実施していなかった医療機関や公的機関主催の開催件数も増えたことから、テーマは細分化される形となりました。

市民対象の講演テーマ1位は昨年同様「教育・青少年」。こちらは、従来の学校教育や子育て、いじめ問題などのコンテンツに加え、今年の4月にこども家庭庁の発足を受けて、「ヤングケアラー」「子どもの貧困問題」など子どもにまつわる社会問題のコンテンツに注目が高まりました。

また、2023年に65歳以上の高齢者比率が3割近くとなり、一方で「人生100年時代」が囁かれる中、市民向け講演・講座では、従来の「高齢者福祉」や「在宅介護」の話題に加え、「終活」や「フレイル・認知症予防」などのアクティブシニア向けのコンテンツも人気がありました。

また、シニア予備軍となる第二次ベビーブーム(1970~74年生まれ)の団塊ジュニアが50代となり、2024年は2人に1人が50代以上になると言われています。このことから、大人になってから学び直しをする「リカレント教育」や「リスキル」などのコンテンツもニーズが高かったです。

③2023年の総評と予想される2024年の傾向

2023年の傾向としては、オンラインからリアル開催に移行し、2024年もこの流れが続き、9割近くがリアル開催になると予想しています。

テーマでは、2024年度以降も引き続き「教育・青少年育成」が根強い人気になると考えています。
2024年は、こども家庭庁が発足2年目となり、政策の具体的な取り組みが拡充される中で、新たな部署や組織がつくられたり、啓発活動の一環として、より幅広い内容で子どもに関するテーマの講演依頼や企画の相談が増えると予想しています。
要望が高くなりそうなコンテンツとしては、「ヤングケアラー」「子どもの貧困問題」「教育格差」「虐待」など、子どもの福祉に関するものが引き続き求められます。また、男性の育児休暇取得が義務化されたもののなかなか普及していないことから「男性の子育てに関する意識改革」なども挙げられます。

また、50代以降のアクティブシニアを対象にした「健康生活」や豊かに生きるための「考え方改革」のトピックも引き続きニーズが高まると考えています。

2024年夏にはパリオリンピックとパラリンピックが開催されるため、オリンピック、パラリンピック関連の講師やテーマの問い合わせが増えるだろうと予測しています。

④市民対象の講演プラン作成のヒント

市民対象の講演テーマに関しては、世の中で話題となっている社会問題やトピックが、講演テーマに採用されるケースが多いです。そのため、ニュースなどで常に新しいワードを拾い、それを講演テーマに盛り込むと、主催者様の関心を引きやすくなります。
講演プランの内容には、説得力を持たせるために、ご自身の活動や経歴など裏付けとなる根拠を記載することをおすすめしています。
講演プラン開発につきましては、弊社スタッフもお手伝いしていますので、お気軽にご相談ください。

2.ビジネスパーソン(社内研修・労働組合)

①開催傾向

ビジネスパーソン対象の講演では、コロナが5類に移行してから、リアル開催が昨年の2倍に急増し、6割がリアル、4割がオンライン開催という結果になりました。
特に、労働組合主催の講演については、全国に支部のある大規模な組合の場合、オンライン講演の方が、移動の手間や費用もかからず組合員が公平に参加できることから、いまだにオンライン講演の需要が高い傾向にあります

また、オンライン講演においては、リアル開催をライブ配信するハイブリット型が主流です。一度ハイブリット開催を行ったところは、再度ハイブリットを希望するケースも多く見受けられました

➁人気講演テーマベスト10

順位 2022年 2023年
テーマ 割合 テーマ 割合
1 コミュニケーション 15% コミュニケーション 10.54%
2 モチベーション 11% リーダーシップ 10.28%
3 リーダーシップ 11% モチベーション 10.14%
4 その他ビジネストピック 8% 安全管理・労働災害防止 5.01%
5 意識改革 7% その他実務スキル 4.74%
6 人材・組織マネジメント 6% 顧客満足・クレーム対応 3.16%
7 メンタルヘルス 5% 意識改革 3.03%
8 時局・経済 4% その他ビジネストピック 2.90%
9 安全管理・労働災害防止 4% 時局・経済 2.90%
10 ワークライフバランス 4% 文化・教養 2.90%

2023年の講演テーマは、例年通り、コミュニケーション、モチベーション、リーダーシップの三強が上位3位入り。今年の傾向としては、コロナ禍明けで現場労働が本格化し、労働安全への意識が高まり、「安全管理・労働災害防止」のテーマが増えました。
また、社会的にコンプライアンス問題が増えたことから、管理職研修では「パワハラ防止」などのテーマ、またサービス・販売業においては昨今問題となっているカスタマーハラスメント対応のため「顧客満足・クレーム対応」のテーマが人気となりました。

一方で、昨年はテレワークにおけるコミュニケーション研修に人気が集まりましたが、今回は、テレワークから対面ワークへのギャップを埋めるためのコミュニケーション研修が増えました。
例えば、コロナ禍でオンライン研修を受けていた入社3年目の若手社員が、対面ワークとなり、教えてほしい時にどう伝えたらよいかわからないという問題が浮上。そのため、同僚や先輩社員と関係性を再構築するためにコミュニケーション研修を行いたいというケースがありました。

また、2022年以降引き続き「アンコンシャスバイアス」や「SDGs関連」も根強い人気がありました。

③2023年の総評と予想される2024年の傾向

開催方法についてはリアルとオンライン、2023年と同じ割合で推移するものと想定しています。オンラインに関しては、リピート率が高く、オンライン開催だけをご希望するケースも増えています。

講演テーマについては、やはり三大スキルは普遍的なテーマであり、このあたりの順位の変動はないものと考えています。
ただ、コンテンツ内容については、例えばコミュニケーション研修であれば、2023年後半から問合せが出始めた「Z世代等との世代間コミュニケーション」や「心理的安全性」等、モチベーションアップ研修であれば物流・建設業界の『2024年問題』解消のための「人材不足対策」「人材定着・エンゲージメントの向上」など、その時流にあったコンテンツが選ばれる傾向にあり、2024年上半期もこのコンテンツが支持されるものと予想しています。

人材育成の研修については、新しいスキル・知識の機会を提供する「リスキリング」のテーマも引き続きニーズが高いと考えております。

④ビジネスパーソン対象の講演プラン作成のヒント

ビジネスパーソン対象の講演・研修の大きなテーマは普遍的ではありますが、内容(コンテンツ)は時流に影響されやすいため、常にビジネストピックやKWにアンテナを貼っておく必要があります。
また、ビジネスパーソン対象の人材研修では、ワークを用いるケースも多いですが、中にはワークを不要とするケースもあります。テーマが決まってから、ワークの有無を決める場合もあるため、講演・研修プランのページに「ご希望でワークを取り入れることも可能です」というように一言添えておくと、研修担当者の感触も良いように感じます。

3.トップマネジメント市場(経営者向け講演・会員向けセミナー)

①開催傾向

コロナ禍以前の生活に戻り、経営者対象の講演では9割近くがリアル開催となりました。2023年は、コロナ禍で自粛されていた連続開催の販売促進セミナー、会員向けの勉強会も積極的に開催されるようになりました。
ただし、いまだに1割近くはオンライン開催の案件があります。こちらに関しては、ほとんどがリピート開催であり、リアル+一定期間のアーカイブ配信というハイブリッド型のパターンが多いようです。

➁人気講演テーマベスト10

順位 2022年 2023年
テーマ 割合 テーマ 割合
1 その他ビジネストピック 25% その他ビジネストピック 27.12%
2 時局・経済 16% 時局・経済 15.48%
3 経営哲学 10% 経営哲学 10.32%
4 コミュニケーション 7% 文化・教養 6.61%
5 文化・教養 6% 安全管理・労働災害防止 6.35%
6 その他実務スキル 5% コミュニケーション 4.76%
7 安全管理・労働災害防止 5% その他実務スキル 3.97%
8 リーダーシップ 3% リーダーシップ 3.44%
9 営業・販売・マーケティング 3% 健康 2.65%
10 人材・組織マネジメント 3% モチベーション 2.51%

経営者対象の講演テーマでは、昨年(2022年)とあまり順位の変動はありません。コンテンツにおいては、物流・建設業の「2024年問題」、ウクライナ戦争やパレスチナ・イスラエル戦争の「国際情勢」が依然としてニーズがありました。

また、2023年はサッカーワールドカップで日本チームの躍進、ワールド・ベースボール・クラシックで世界優勝を飾るなど、スポーツ業界が大変な盛り上がりを見せました。中高年が多い経営層は、スポーツに関心も高いことから、サッカーや野球、バスケットボールなど有名選手や監督講師のご相談が多くありました

2023年の春に盛り上がった生成AIの「チャットGPT」ですが、こちらは意外とブームが盛り上がらず、それよりはDXへのニーズが高まったという感があります。

2022年後半から需要が増えた「インボイス」「カーボンニュートラル」というワードも、2023年の後半から問合せがやや減少しているようです。

③2023年の総評と予想される2024年の傾向

2023年は、コロナが5類となり、オンライン講演はぐっと減りましたが、2024年もこの数値はさらに減少するのではないかと考えています。

講演テーマに関していえば、2023年は、テーマがばらつき、ビックテーマがなかったという印象があります。2024年も同様に、あるテーマに集中するという傾向はないものと考えられます。

とはいえ、2024年11月にアメリカの大統領選挙や2024年1月に台湾総統選挙が開催されることから、日米や日中関係などの「外交」や「国際情勢」のテーマに注目が集まりそうです。
2024年問題』もいまだに打開策が見えていないことから、引き続きこちらのテーマでのご相談も増えてきています。

④経営者対象の講演プラン作成のヒント

経営者対象講演会では、一概に経営者の集まりといっても、①得意先顧客の仕入先会/協力会、➁仕入れ先の得意先会/ユーザー会、③銀行などの金融機関の融資先会、④地域の経済団体(同友会や会議所)、⑤同業界内の業界団体など、さまざまなパターンが考えられます。
そのため、講演プランを作成する際に、このような聴講者層のペルソナをしっかりと定めた上で、聴講層の具体的な悩みにアプローチできるように、さまざまな引き出しを持っておいた方がよいと考えています。主催側の関心事に沿って、講演内容をアレンジできれば、より受注されやすくなります。

4.安全大会

①開催傾向

コロナの5類移行により、安全大会市場もようやく復活の兆しが見えてきました。
開催件数は昨年の2倍に増え、そのほとんどがリアル開催(89%)となりました。
オンライン開催は昨年の半分の1割程度となりましたが、全国に支店を持つ大手の建設会社では一度オンラインで安全大会を実施し、5類移行後もそのまま継続しているところもあります。この部分に関しては、来年(2024年)以降もオンラインを選択されると考えています。

②人気講演テーマベスト10

順位 2022年 2023年
テーマ 割合 テーマ 割合
1 安全管理・労働災害防止 69.08% 安全管理・労働災害防止 78.37%
2 その他実務スキル 4.35% その他実務スキル 5.06%
3 コミュニケーション 3.86% コミュニケーション 2.81%
4 意識改革 3.86% 健康 1.69%
5 危機管理・コンプライアンス・CSR 3.86% 危機管理・コンプライアンス・CSR 1.40%
6 防災・防犯 3.38% 意識改革 1.12%
7 メンタルヘルス 2.42% モチベーション 0.84%
8 健康 1.93% リーダーシップ 0.84%
9 モチベーション 1.45% 防災・防犯 0.84%
10 文化・教養 1.45% メンタルヘルス 0.56%

安全大会の上位3位のテーマは2022年と2023年で変化はありませんでした。ただし、2023年からはコロナ禍制限が完全解消され、全産業に対しての労働災害による死傷者数が増えていることにより、これまでの落語家などによる娯楽要素の強い講演内容から、労働災害ゼロを真剣に目指すヒューマンエラー対策等のコンテンツに需要がありました。
また、建設業界の「2024年問題」にも注目が集まり、「働き方改革」「人材定着」「採用対策」等の人材系コンテンツも目立ちました。

③2023年の総評と予想される2024年の傾向

コロナ禍の間に開催できなかったところが、5類移行をきっかけに相次いで実施するようになり、開催件数は昨年より倍増しました。2024年はさらに増加するものと予想しています。
安全大会は、協力会社との関係強化と親睦目的が強いことから、ほぼ対面(リアル)での開催となる見込みです。
テーマに関して、1位「ヒヤリ・ハット」や「ヒューマンエラー」防止等の「安全管理・労働災害防止」、2位「その他の実務スキル」、3位 安全な声かけなどの「コミュニケーション」の上位3テーマは、2024年以降も大きな変化はないと考えています。

また、建設業界や製造業界では、深刻な人材不足が続いているため、「働き方改革」「人材育成」のテーマも外せません。

④安全大会の講演プラン作成のヒント

安全大会の講演テーマを作成する際は、建設業界、製造業界、サービス業界など、業界によって課題も異なるため、それぞれの業界に応じた具体的な課題を挙げて、その解決策やヒント、具体的事例等を示すとよいでしょう。

また、安全大会によっては、娯楽要素を望むところもあります。安全大会は「眠い」「つまらない」と言われがちであるため、随所にワーク等を盛り込むと、参加者受けも良いようです。

2024年も新しい感動と学びをお届け!

さまざまなスポーツの世界大会が開かれた2023年。3月のワールドベースボールクラシックで侍ジャパンが優勝、7月の世界水泳大会は10個のメダルを獲得するなど、日本勢の健闘が目覚ましい1年となりました。

来年はパリオリンピックも控え、日本全体が一体感を感じられる機会が多いことでしょう。
弊社としても、2024年も、講師の皆様と聴講者、主催者の方々の一体感が得られ、気づきと感動を与えられる講演・研修を実現できるよう、社員一丸でサポートしていく所存です。

講師の皆様、今年1年間、弊社の活動にご支援いただき、ありがとうございました。開催件数もようやくコロナ禍以前に戻り、来年はますます活気あふれる一年になると予想しています。
来年も引き続きよろしくお願いいたします!