高い理想を持って入社してくる新入社員や若手社員の中には、その理想に対する強い思いが逆に弊害となって、周囲との不協和音をもたらしたり、人間関係につまずいたりする人もいます。
問題が起こったときに、「周囲が悪い」と責任転嫁したり、「どうせ認めてもらえないから、言っても意味がないと」諦めてしまったり…。
新入社員がそういった思考パターンに陥らないようにするためには、新入社員自身が問題の発生を自己の責任として捉え、主体的に行動できる力が必要となります。ここでは、そのような人間力を養う方法を、イキイキ組織クリエイター」として、組織コンサルティングなどを手がける梶浦正典氏が解説します。
【監修・取材先】
梶浦正典氏
イキイキ組織クリエイター
ビジネス心理コンサルティング株式会社 主席心理コンサルタント
まずは「最悪の職場」「理想の職場」をイメージさせる
新入社員や若手社員を見ていると、優秀な人材が多い一方で、どうしても問題を起こしまう社員もいます。そのような社員の多くは、“自分なりの理想”が強すぎるという特徴があり、「上司は、(自分の基準に照らして)完璧であるべきだ、(自分から見て)公平であるべきだ」とか、「先輩は自分に対して(自分が望むとおりに)親切に教えてくれるべきだ」などと考えがちです。
そうした社員の視点を変えるためには、どんな角度からアプローチすればいいでしょうか?
私が実施している新人研修では、研修生にまず「最悪の職場」と「理想の職場」をイメージしていただくことから始めます。するとほとんどの方が「会社がこうだったら」「上司がこうだったら」という視点で考えます。そこで「理想の職場に近づけるためには『自分だったら何ができるのか』」という「自己解決型の思考」を身に付けるトレーニングをしていただきます。
責任転嫁型から自己解決型に脱却
自分が責任転嫁していたことを認識できれば、自分で解決しなくてはこの悪循環から抜け出せないことが理解でき、次のアクションとして、自分で問題を解決する発想への転換ができます。
この「自己解決型」思考への転換を促すために、研修では新入社員にいろいろなグループワークをしてもらいます。いずれも非常にシンプルなワークですので、すぐに実践可能です。その中の一部をご紹介しましょう。
- 自分が考える「最悪の職場」と「理想の職場」について列挙し、「誰がどんなことをすると理想の職場になりそうか」をノートに書く。
- その中で、自分以外の人(上司・先輩・同僚など)がすべきと思うことを色ペンでチェックする。
- 他人が動かなければならない項目について、以下のことを新入社員に問いかける。
・それらの項目を改善するために、上司や先輩・同僚は、あなたの望むとおりに実行してくれるか?
・会社は無条件で環境を整えてくれるか?
・もし誰も実行してくれない場合、あなたは実行してくれる人が現れるのを待ち続けるのか?
このワークに取り組んだ新入社員のほとんどが、責任転嫁していた(他責型)部分や「自分はそんな能力はないから」として諦めてしまう(自責型)部分が自分の中にあることを認識します。
その認識が得られたら、次は新入社員同士で、「自分はいったい何ができるのか」を議論します。新入社員はその議論の中で、結局自らが動かなければ周囲は変わらないことに気づきます。
この気づきこそが、新入社員自らが主人公となって切り開いていこうとする「自己解決型」へと切り替わるきっかけとなるのです。
ただ一方的に「思考を自己解決型に転換しろ」と言ったところで、新入社員自身に「気づき」がなければ、心の奥底に存在する「他責型」思考、「自責型」思考に気づけず、自ら進んで思考パターンを変えていこうという意識は生まれません。自らの中に自主的な姿勢を根づかせ伸ばしていくには、この「気づく」という行為が重要となってくるのです。
自分自身の負担を減らすためにも協力者・支援者を作り出す
さて「自己解決型」の思考を身に付けても自分一人でできることは限られています。上司や先輩が協力してくれるか否かで社会人生活は大きく変わっていきます。自分自身の負担を減らし「楽」になるためにも、周囲に協力者や支援者がいる状態を作り出すことは、とても大切です。
なにも上司に媚びを売ったり、同僚に追従したりしよう、というわけではありません。
ここからは、上司や同僚から信頼できる人材・必要な人材・好ましい人材だと認識されるためのアプローチをご紹介します。
【5つの「こそ」っとアプローチ】
- 上司だって人間。怒られた時に『こそ』翌日に「勉強になりました。ありがとうございます」と自ら伝えることで、気まずさを感じているかもしれない上司を救ってあげましょう!
- 注意や指導、叱責など、上司とのやりとりで自分がストレスを感じたときに『こそ』、相手の話を1分間黙って聴く「1分間の奇跡」※にチャレンジ!
※「1分間の奇跡」=相手の話が自分にとって都合が悪い場合、人はストレスを感じ、逃げたいという自己防衛本能が働きます。その本能をコントロールするために、1分間黙って相手の話を聴き、「相手が何を言っているのかわかろうとする」ということを、意識的にやってみます。それが「1分間の奇跡」です。たった1分間ですが、「聴こう」とするマインドは必ず相手に伝わり、関係性が改善されます。信頼関係を築く最高のコミュニケーションである「傾聴」ですが、実際には「聴いているつもりで聴けていない」人が大半だという事実があります。研修では「聴ける人」になるための様々なワーク・ロープレ等を行っていきます。
- オンラインでのコミュニケーション『こそ』、うなずき、あいづちを打ち、オーバーアクションで孤独を感じて焦っているかもしれない上司を救ってあげましょう!
- 不満を感じたときに『こそ』、「困っているので助けてください」とI(アイ)メッセージで素直な気持ちをしっかり伝えましょう!
- 「絶対に相手が間違っている!」と感じたときに『こそ』、リフレーミング(視点を変えて、ほかの枠組みで見直すこと)を意識して、問題を俯瞰で見てみましょう!
これら5つのアプローチを覚えておくことで、これまで「対立者」だった人とも、「協力者」として信頼関係を築けるようになります。
研修では多くのワークに取り組み、実践的なスキルを身につける
新人社員や若手社員の研修では、多くのワークを取り入れています。実践的なスキルは、本人が実際に参加して体感することで身につけられるのです。
新入社員自身に、「自分にはこのような思考のクセがあるから、ここを直そう」「こんな状況のときはマイナスに捉えがちだから、ここは常に意識しておこう」などと考えられる「自己解決型」思考が備われば、その後起こり得るコミュニケーションの問題にも対処していくことができます。さらに、こうしたスキルが身につくことで、「やらされている」ではなく「自らやる」行動力のある社員としての成長が期待できます。
私の講演では、自分自身で夢、仕事に対する誇り、やりがいをつかむために手法を、ディスカッションやワークを混じえて、さまざまな角度からお伝えしています。「主体的な社員を育成したい」「社員に、前向きな思考で会社を牽引していく力を習得させたい」と考えている研修担当者の方におすすめです。
梶浦正典 かじうらまさのり
イキイキ組織クリエイター ビジネス心理コンサルティング株式会社 主席心理コンサルタント
大手信託銀行労組委員長に就任後、心理カウンセラーの資格を取得。社内で悩み苦しむビジネスパーソンと向き合ってきた経験を活かし、聴く人の心を汲む研修・講演活動を展開。「働く人の心に夢と誇りとやりがいを取り戻す」ことをモットーに、誰でも容易に理解できる明快な内容で好評を博している。
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夢と誇りとやりがいを自ら手に入れるための「新入社員研修」
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