昨今起きている異常気象について、その原因を知りたいと感じている方は多くいるのではないでしょうか。
今回は、気象予報士・技術士・防災士の肩書を持つ南 利幸氏より、温暖化の現状や影響、さらには異常気象による災害から身を守るための天気予報の見方や活かし方について解説していただきました。

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南 利幸氏

気象予報士
技術士(応用理学)・防災士
株式会社南気象予報士事務所 代表取締役

異常気象とは

「異常気象」は、近年になって、より一層耳にすることが多くなった言葉ではないでしょうか。
気象庁によると、異常気象とは気候が「過去に経験した現象から大きく外れた現象」であり、具体的には、定の地域や場所において30年に1回以下の頻度で発生するとされています。
例えば、冷夏や暑夏、寒冬や暖冬のほか、豪雨、干ばつ、台風、洪水、熱波、寒波などは異常気象として取り扱われることが多い事象です。
そして地球の温暖化も、こうした異常気象の原因のひとつに挙げられます。

私たちの身の回りで実際に起こっている温暖化

温暖化の影響で気温が上昇し、近年では最高気温が35℃を超える猛暑日の日数も増えていることは、多くの方がご存知でしょう。40℃を超える極端な高温も毎年のように現れています。
気象庁が発表した「日本の年平均気温偏差の経年変化」によると、日本の平均気温はここ100年あたり1.26℃の割合で上昇しています。1980年代と比べると、この10年間で1℃ほども高くなっているのです。1℃ぐらいならそこまで大したことではないと感じるかもしれませんが、そんなことはありません。

現在、東京は1980年代の長崎と、大阪は1980年代の宮崎と同じくらいの気温となっており、関東は九州北部の環境に、関西は九州南部の環境に変わっています。九州に生息していた昆虫が、現在では関東や関西でも普通に見かけるようになっているのです。ここ数年で起きている豪雨、日照不足、大雪なども温暖化が原因とされています。

日本近海の海面水温は、2020年までの100年間で1.16℃上昇しました。これは、世界の上昇率0.56℃よりも高いことがわかります。海面水温の上昇は、サンゴの白化を引き起こし、魚の生息分布が北の方に移動するなど、日本近海の水界生態系に深刻な影響を与えています。また、日本海の海面水温が上がることで、水蒸気が豊富となり、冬場はそれに寒気が流れ込むことで局地的な豪雪を引き起こしたりしています。

ほかにも、私たちの周りでは以下のような現象が実際に起こっています。

  • ソメイヨシノの開花が早まっている。
  • 日本海北極の氷や高山の氷河が溶け、海水温が上がることにより、海水面が上がって水没する可能性をもつ島がある。
  • 気温の上昇で今後激しい雨が増え、台風が大型化する可能性がある。

身を守るための天気予報の見方とは

異常気象による被害を最小限に抑え、身を守るためには、天気予報を賢く利用するのもひとつの手です。

皆さんは天気予報を見るとき、どのような見方をしているでしょうか。「晴れ」「雨」「晴れ時々曇り」「曇り一時雨」など、天気予報にはさまざまな種類があります。その中でも「所により」という言葉を耳にすることはないでしょうか?

例えば、東京地方で「曇り所により雨」という予報の場合、東京地方全域に雨が降るのではなく、降ると予測される地域は東京地方の50%未満であるということを意味します。この「所により」は局地的な現象を表す言葉で、例えば、2014年の8月に広島で起きた線状降水帯(同じ場所で積乱雲が次々と発生して長時間停滞する自然現象)による長時間の豪雨が引き起こした土砂災害において、その夜の広島県南部の予報は「曇り所により雨で雷を伴い激しく降る」でした。

また、「降水確率」も注目したいワードです。前述の広島の例では、降水確率は40%とされていました。「たった40%で、あんな災害になるの?」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、降水確率とは、あくまでも雨が降る確率を数値化したもので、降る量を示しているわけではないということです。
降水確率40%とは、その一定時間(通常6時間ごと)に1ミリ以上の雨が降る可能性が40%あるということ。つまり、100回同じ予報が出されれば40回は雨が降るという計算となります。
したがって、降水確率100%であっても、小雨程度の雨がずっと降り続く場合もありますし、逆に降水確率20%でも、バケツをひっくり返したような豪雨が起きる可能性もあるのです。降水確率が低くても豪雨となるリスクが低いわけではないので、単純に降水確率だけで判断せず、詳しいお天気情報にも注視すべきです。

また、夏場の予想気温の見方についてもポイントをお伝えしましょう。
天気予報で発表される気温は、風通しの良い日陰で計測されています。そのため、真夏に「予想最高気温35℃」とされた場合、比較的涼しい場所での気温が35℃である、ということになるのです。屋外の日差しが当たる路面の温度は、60℃以上になることもあります。
夏場は、天気予報の予想気温よりも実際は高く感じられることを意識して、熱中症対策をするとよいでしょう。

まとめ

異常気象の原因や温暖化がもたらしている現状について、また、身を守るための天気予報の見方について、ポイントをピックアップしてお伝えしました。
私の講演では、「楽しく、わかりやすく」をモットーに、本記事でお伝えした温暖化や天気予報の見方についてさらに深く掘り下げ、解説しています。気象にまつわることわざや、異常気象から身を守る豆知識も豊富にお伝えしていますので、ご興味がある方は、ぜひ本講演も聴講していただけるとうれしいです。

南 利幸  みなみとしゆき

気象予報士・技術士(応用理学)・防災士 株式会社南気象予報士事務所 代表取締役


キャスター・アナウンサー

NHK総合「おはよう日本」などで活躍する気象キャスター。気象情報にまつわる駄洒落を連発し、明るいキャラクターで親しまれている。地球温暖化問題と環境、天気との関係や影響について、分かりやすく楽しく解説。具体的な事例を紹介しながら、その詳細な原因や正しい対処法を伝えている。

プランタイトル

「なるほどお天気学」地球温暖化と異常気象
現場の安全を守るための天気予報の見方、聞き方、活かし方

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