管理職共通の悩みといえば、「職場の若い世代の人たちと話が合わない」「休憩時間に部下と何を話せばいいのか分からない」など、職場での世代間コミュニケーションによるものです。

お互いの考えや感情を気軽に表現できない関係性は、業務上のコミュニケーションにも悪影響を与えます。必要な報告や連絡が滞ってリスクが発生したり、会議で新しいアイデアが出にくかったりといった問題が生じます。

世代の垣根を取り払い、コミュニケーションが活発な職場をつくるには、「笑い」「笑顔」づくりが有効です。今回は大喜利ファシリテーター・山本ノブヒロ氏に、職場の誰もが自ら発信する「ボケ型人材」になれる、「笑いの方法論」を解説していただきます。

Your Image【監修・取材先】
山本ノブヒロ氏

大喜利ファシリテーター
学習環境デザイナー

職場の世代間ギャップはコミュニケーションの障害になる?

▲イメージ画像

さまざまな世代が一緒に働く職場では、管理職が若手社員と雑談しているとき「こんなオジサンの話に共感してもらえないだろうな」「若い人たちにはこのネタはわからないかな」と躊躇ってしまう、言いたいことを言えずにいる場面が見られます。

このとき、多くの人は「ウケない」=「面白くない人だと思われる」ことで、評価が下がること、否定されることを恐れています。損をしたくないために「何も言わずに黙っておこう」と考えてしまうのです。

特にここ10年ほどの間に、世代によって文化的土壌が大きく異なる状況が生まれました。主にテレビ番組などを観て育った世代と、デジタルネイティブと呼ばれるYouTubeやSNSを中心に情報収集してきた世代では、確かに日常会話でお互いの感覚の違いを感じることはあるでしょう。そのため職場でも「この話題もどうせ分かってもらえない」と、消極的な態度になってしまうのです。

しかし、本当に若い世代と理解し合うのは難しいのでしょうか?実際には「ウケないこと」を自分自身が恐れてしまう、その消極性から、ますます世代間の溝を深めてしまっているのかもしれません。

次の章では「ウケないこと」が怖くなくなる、「オモシロの科学」の考え方を解説します。

職場の世代間ギャップにも効く、「オモシロの科学」とは?

▲「オモシロの科学」をx軸とy軸に表現して解説する山本氏(画像提供: 大喜利ドットジェーピー、エヌアライアンス株式会社)

「ウケなかったこと」に傷つくのは、漠然と「自分が劣っている」と考えてしまうからです。では、もし「なぜウケなかったのか」が論理的に説明できたとしたらどうでしょう?

「ウケなかった要因は〇〇だから、次は××すれば大丈夫」というように、原因と解決策が明らかになっていれば、自分でよりよく訂正・修正ができるのです。「自分にはセンスがないから何を言ってもダメだ」と落ち込む必要もないのです。このように、「ウケる」「ウケない」を構造的・論理的に分析し、センスや才能にかかわらず誰もが「面白い発信」を実践できるようにするのが、「オモシロの科学」です。

山本氏は、「オモシロの科学」の一例として、『人が「面白さ」を感じるためには「共感性」と「意外性」の2つの要素の掛け算が必要』と語ります。

例えば、お笑い芸人が「あるあるネタ」を披露するときは、必ず観客も知っているであろうという物事をネタにします。これが「共感性」です。ですが、当たり前のことをそのまま言っても観客にはウケないかもしれません。より相手を楽しませ、笑顔にするためには「そっちかあ!」「それは思いつかなかった!」と相手に思わせる「意外性」も必要なのです。

この「共感性」と「意外性」を数値化し、掛け算すると捉えます。つまり、どちらかが負の値であればマイナスになってしまうのです。逆にどちらの値も正になるとき、その話を相手は「面白い」と感じてくれます。x軸とy軸の座標として図に書いてしまうとわかりやすいです。右上のプラスの象限に入れば、発信者のメッセージは「ウケる」のです。
つまり、「思ったように伝わらない」=「スベってしまう」とき、それは相手のなかで「共感性」か「意外性」の値が負になっていることが要因です。このように、ウケるかどうかは数学的に分析、判断することができます

もし自分の発信がウケなかった場合でも、この「共感性」と「意外性」の座標にあてはめて分析すれば、うまくいかない要因が特定できます。要因がわかれば、次の場面では話をより面白く修正できるのです。

管理職も先輩社員も、もちろん若手や新入社員も、オモシロの科学を知れば、もうスベることを恐れる必要はないのです。自分のセンスの問題ではなく、相手の感性のウケるゾーンにたまたま入らなかっただけなのですから。

「笑い」で職場の世代間コミュニケーションを活性化させる3つのポイント

次に、この「オモシロの科学」の考え方を活かして、管理職や先輩社員が職場の世代間コミュニケーションを活性化させるときに意識したい3つのポイントを紹介します。

1.ポジティブなコミュニケーションには「ボケ型人材」「ウケ型人材」両方が必要

まず取り組むべきなのは、自ら「笑い」を発信する「ボケ型人材」のマインドを育てることです。「オモシロの科学」を味方につけ、ウケないことを恐れなくなることで、「ウケなかったら自分が損をする」と身構えるのではなく、「他の人と感情をシェアできたら楽しい、嬉しい!」「もっと気づきや感想をシェアしたい」というポジティブな発想ができるようになります。

そして、特に管理職や上司にとっては「ボケ型人材」と同じくらい重要なのが、「ウケ型人材」のマインドです。

まずは話を聞く側も「オモシロの科学」の理論を知って「笑えなかった原因は単に共感性の値が低かったから」というように、話し手自体を否定せず温かく受け止める姿勢です。
例えば職場の誰かの冗談を笑えない、話の意味が分からない、となったときに「若い人のセンスはわからない」や「おじさんの話は面白くない」などと、世代で相手を切り捨てるのではなく、「今のは自分が知らない話題で共感性を損ねただけ」と考えられるようになります。

相手も自分も悪者ではないのだから、共感できること、意外な発見の種をくれる相手としてのリスペクトも育ちやすく、「意見を聴きたい」「本音を話してほしい」という姿勢につながる。マインドが整っていれば、誰もが安心して発信できるようになり、自ずとコミュニケーションが活発になるでしょう。

2.「二者関係を良くする」という目的を忘れない

職場に「笑い」を取り入れるのは、あくまでも同僚やチームメンバーとのコミュニケーションを活性化させて、理的安全性や信頼関係を築くためです。「笑わせる」という手段にばかり意識を向けて、本来の目的を見失ってはいけません。

例えばテレビで漫才コンビのうちの1人が相方をからかうのを真似て、上司が部下をからかうのは絶対にNGです。なぜならテレビの漫才コンビは、視聴者という「第三者」を笑わせることを目的としてネタを作っており、職場での「笑い」とはそもそも目的が異なるからです。

もし上司が職場でそれと同じことをすれば、2人のやり取りを聞いていた周りの人たちは笑うかもしれません。周りに笑ってもらえた上司は気分が良いでしょう。しかし、からかわれた部下は上司を信頼できなくなり、上司と部下の二者間コミュニケーションはうまくいきません。これでは本末転倒です。

特に管理職や上司、先輩社員など立場の強い側は、職場での「笑い」は第三者のためのものではなく、あくまで発信する自分と話を聞いている相手との二者関係を良くするためのもの、と心がけることが重要です。

3.「笑い」の実践は、最初は「無責任な話題」から

心からの「笑い」で職場のコミュニケーションを活性化させるには、まずはあまり業務と関係のないトピックスでの実践が大切です。

業務に関連した事柄であればあるほど、組織の中での「責任」と「立場」がそのまま持ち越されます。自社に関連した内容で不適切な冗談を言ってしまわないか心配になったり、上司の発言を笑ってよいものか分からなくて困惑したりと、ビジネスパーソンとしての意識が邪魔をして、自然な笑顔のコミュニケーションが取りにくくなるでしょう。職場内で「雑談が大事」と言われる最大の理由がこれです。話題が無責任であればあるほど、話しやすく聴きやすい、本音のやり取りができるのです。

そのため、まず、管理職や年上の社員が純粋にコミュニケーションを楽しむマインドを育むために、なるべく仕事と関係ない話題を用いた研修やトレーニングの場を設ける必要があります。

大喜利ファシリテーター山本ノブヒロ氏は、そのための場として「大喜利ワークショップ」を活用しています。業務とあまり関係ない話題、且つ一定時間で切り替わる「お題」を活用することで、上司も部下も気軽に「自分が面白いと思うこと」を発信するエクササイズを通して、世代の違いを越えて楽しさを共有できる関係性が生まれます。

コミュニケーションに「笑い」を取り入れれば、職場の世代間ギャップは怖くない!

▲山本氏が開いている「大喜利ワークショップ」での一面。さまざまな世代から楽しいネタが飛び交う(画像提供: 大喜利ドットジェーピー、エヌアライアンス株式会社)

職場の世代間ギャップを解消し、互いに気軽なコミュニケーションを楽しめるようにするには、まず「相手に笑ってもらえない=自分が劣っていると思われる」ことへの恐れを克服することが大切です。

今回お話を聞かせていただいた山本ノブヒロ氏の講演では、すでに紹介した「共感性×意外性」の座標以外にも、さまざまなアプローチから再現性の高い「笑顔づくりの方法論」を解説しています。さらに講演内で、参加者みんなが大喜利を楽しむグループワークの時間も設定。若手社員から年配の社員まで、一緒に大喜利に挑戦することで、世代が違ってもお互いに共感しあえるポイントが沢山あることを発見できることでしょう。

「世代に関係なくコミュニケーションが活発な職場をつくりたい」「若手社員が早く職場に馴染めるようにしたい」とお考えの研修企画ご担当者様は、ぜひ社内研修としてご検討ください!

山本ノブヒロ やまもとのぶひろ

大喜利ファシリテーター 学習環境デザイナー 「オモシロの科学」で組織を強くする研修講師

中一からの引きこもりで「笑い」の効力を実感。大学院修了後は会社勤務の傍ら、オオギリストとして活動。【大喜利ワークショップ】開発、日本初「大喜利教室」開校。企業研修として「コミュニケーション」「相互理解」「ユーモア活用による健康経営」「大喜利メソッド®の課題設定・課題解決」など好評を得ている。

コンサルタント

プランタイトル

「大喜利体験」+「オモシロの科学」で学べるコミュニケーション術 ~笑顔づくり3つの秘伝&3大NGワード~

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