「健康経営」という言葉に、大手企業の経営者を中心として注目が集まっています。健康経営は従業員の健康を維持・増進することで、組織としての生産性を上げる経営手法です。ただし「従業員に『しっかり健康管理をするように』と言っても、なかなか浸透しない」と悩む経営者も少なくありません。
従業員が自身の健康を疎かにしているように見えるのは、自分に合った健康管理の方法を知らないだけかもしれません。今回は健康経営アドバイザーである柴田真梨子氏に、誰でも今日からすぐに実践できる健康管理のポイントをお聞きしました。
講師自身、元々はインストラクターとして精力的に活動していたにも関わらず、慣れない環境での妊娠や育児の疲労やストレスから顔面神経麻痺を患うという実体験を持っています。ただ運動しているだけでは健康ではいられないという講師自身の気づきから、バランスを重視した健康管理法について解説していただきます。
【監修・取材先】
柴田真梨子氏
健康経営アドバイザー
健康経営エキスパートアドバイザー
メンタルヘルスマネジメントⅡ種・Ⅲ種
疲労や不調は我慢するべき?仕事と健康の関係性
ひと昔前は、多くの職場で「『疲れていてできない』は甘え」「体調不良は気合で何とかするべき」といった言葉を耳にすることがよくありました。そしてそれが、疲労や体の不調を感じても誰にも言わず、我慢しなくてはならないという風潮につながっていました。
しかし、疲労や不調を我慢し続けているとストレスが蓄積し、最後にはメンタルヘルスに深刻な影響を及ぼす可能性があります。早期に体を休めていればすぐに回復したはずなのに、メンタルの病を併発してしまい、1年以上の療養が必要になってしまうケースもあるでしょう。その従業員が復帰できるようになるまで他のメンバーが業務を負担し、結果的に組織全体の生産性が低下してしまうという事態にもなりかねません。
そのような結果を避けるためには、まず従業員自身が疲労や体調不良を感じたときに、すぐに周囲に相談できる職場の風土をつくることが大切です。管理職を始め従業員一人ひとりが健康についての知識を身に付け、正しい健康管理によって生産性を向上させるという意識を持つ必要があります。
仕事と健康は従業員だけの問題ではない、「健康経営」のメリット
健康管理は決して従業員個人の問題ではありません。なぜ健康経営が多くの経営者から注目されるかというと、経営側にとっても大きなメリットがあるからです。ここでは3つの観点から健康経営のメリットを解説していきます。
①少子高齢化時代にも人材を確保
少子高齢化が進む現在、どの業界も人材不足が深刻な課題となっています。若手人材が十分に確保できない今、既存の従業員に定年後も働いてもらう必要がでてくるでしょう。
従業員に若いうちから正しい知識をもって健康な体づくりに取り組んでもらい、少しでも長く活躍してもらうことが人材不足の解消につながります。
②保険料の低減
日ごろから従業員が健康管理につとめ、医療機関に受診する頻度が減ることで、医療費が減少します。従業員と企業が負担している社会保険料は、この医療費によって変動するため、医療費の減少は、結果的に社会保険料の低減につながります。
③従業員のパフォーマンス改善による生産性向上
心身共に健康でいることで、人生をイキイキと豊かに過ごすことができます。前向きな気持ちで取り組むことで仕事にもやりがいを感じられるようになり、疲労やストレスを抱えた状態で働くよりも、高いパフォーマンスが期待できるでしょう。
一人ひとりのパフォーマンスが改善すれば、組織全体の生産性が向上します。
明日から実践!仕事で成果を出すための健康管理「3つの柱」
それでは健康経営に取り組むために、従業員には具体的にどのような健康管理法を奨励すればよいのでしょうか?
健康管理の実践で大切なのは、「食事」「運動」「睡眠」の3つの柱を意識することです。自身の現在の健康状況と生活習慣を見直して、この3つのうち不足している部分はどれかを冷静に分析します。
ここでは正しい健康管理を行うために、「食事」「運動」「睡眠」のそれぞれにおいて実践すべきポイントを解説します。
①食事
食事は、各栄養素の「量」のバランスが大切です。
私たちが日々口にしている食べ物は、主に赤黄緑の3つの栄養素に分けることができます。
- 赤/肉や卵、魚などに含まれる 体をつくる栄養素
- 黄/米やパン、麺類などに含まれる 体を動かす栄養素
- 緑/野菜やくだもの、きのこなどに含まれる 体を守る栄養素
上記の3つの栄養素が含まれる食べ物を、それぞれ適切な量だけ摂ることで、健康を維持・増進できます。
しかし、毎日の食事管理で食品の量を厳密に計量するのは容易ではありません。そこで、自身の「手」を1食あたりの分量の目安にしてみましょう。詳しくは以下の通りです。
※上記はデスクワーク中心の人の場合。体を動かす職業などでは1.5倍~2倍が目安。
このように食事をするときは「肉の量が手のひら1枚には足りないかな」など、各栄養素の食品を自身の手と見比べてみましょう。
②運動
運動には主に3つの種類があります。それぞれの効果と自身の状態を照らし合わせて、できることから日々の習慣に取り入れましょう。
- 有酸素運動(ランニングやウォーキング)/脳梗塞や高血圧の予防
- 筋肉トレーニング(筋トレ)/体脂肪の蓄積をおさえる
- ストレッチ/疲労回復やリラックス効果
一般的に「運動」と言うと「有酸素運動や筋トレを行わなくてはならない」というイメージがあり、健康管理のためにこの2種類の運動を実践しようと考える人が多くいます。しかし仕事が忙しくて疲れているときには、ランニングや筋トレに取り組むのが難しいこともあるでしょう。
そのようなときには就寝前のストレッチがおすすめです。適度に体をほぐしてリラックスした状態で眠りにつくことで、翌日に疲労を持ち越さない効果があります。大切なのは「疲れていてランニングや筋トレができないから」と運動そのものを諦めてしまうのではなく、できることを取り入れて運動習慣をつけることです。
③睡眠
忙しいビジネスパーソンにとって、睡眠は「量」より「質」がポイントになります。
睡眠の質を上げて、短時間でも深い眠りで十分な休息をとるには、まず3時間前に食事を終わらせておきます。眠ろうとしても、胃腸が食べ物を消化しようと忙しく働いている状態では、体は眠るための体勢が整っていません。消化を終えて、胃腸もちゃんと休んでいる状態で入眠することが大切です。
仕事で食事の時間がどうしても遅くなってしまう場合は、量を控えめに、胃腸が食べ物を楽に消化できるようにしっかりと噛んで食べるようにします。
また睡眠の質を上げるためには、入浴が効果的です。入浴すると全身の筋肉が緩んで、リラックスできます。さらに肩までしっかりつかることで、水圧によるマッサージ効果も期待できます。
さらに心地よい眠りに入るためのポイントとして、入浴のタイミングも重要です。お風呂から上がって60分~90分経った頃に、体温が下がる瞬間があります。そのとき脳をリラックスさせる副交感神経が優位になり、入眠に理想的な状態となるのです。
そのため就寝の60分~90分前にお風呂から上がれるよう、逆算して入浴するのがおすすめです。
正しい健康管理を実践すれば、もっと仕事の生産性は向上する!
「バランス良く食べないとと思うけど、なかなか実践できない」「健康のためにジョギングを始めたけれど続かなかった」「早めにベッドに入ったのに、いまいち疲れがとれない」と悩むビジネスパーソンも多く見受けられますが、ちょっとした工夫で日常に健康習慣を取り入れることができます。研修で正しい健康管理法について学んでもらい、従業員のヘルスリテラシーを高めることが健康経営への第一歩です。
今回お話を聞かせていただいた健康経営アドバイザーの柴田氏の講演では、より発展的な健康管理の方法を数多く紹介しています。さらに健康経営の取り組みにおいて従業員のメンタルヘルスケアが重視されているなか、身体だけでなく心の健康法についても学ぶことができます。
今話題の健康経営に興味のある経営者の方や、従業員の生産性向上・離職防止などに効果のある研修をお探しのご担当者様は、ぜひ社内研修としてご検討ください!
柴田真梨子 しばたまりこ
健康経営エキスパートアドバイザー、メンタルヘルスマネジメントⅡ種・Ⅲ種
フィットネスクラブ(運動指導)を経て、子供〜大人まで4000人の指導に携わる。結婚を機に大分へ移住。不慣れな地でのストレスで顔面神経麻痺に。現在3児の母として【食事×運動×睡眠×メンタル】指導を実践。セミナー(メタボ予防、子供・産後ママ向け身体作り、睡眠改善等)、テレビ出演など幅広く活躍。
コンサルタントスポーツ関係者・指導者
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