先日、編集者、文筆家、メディアコンサルタントの影山裕樹さんのオンライン講演を立ち合いました。
まちを編集する出版社「千十一編集室」代表で、カルチャー書の出版プロデュース、編集制作、オンラインコミュニティの運営など多岐にわたって活躍する影山裕樹さん。そんな影山さんの弊社では初となる講演会が開催されました。
講師事務所からwebexを使って地方の広報を担当する方々に向けて配信。ローカルメディアのあり方を説いた本講演をレポートいたします。

人材育成担当チーム

■目次
講演テーマ: ローカルメディアで地域を変える ~地域振興のためのメディアづくり~
講師   : 影山裕樹 氏
聴講者人数: 50人
講演タイプ: B.講師から会場・個別聴講者へ生配信
配信ツール: webex

ローカルメディアの衰退と編集の仕事の多様化

東京の出版社を経て独立し、現在は、まちを編集する出版社「千十一」編集室の代表である講師の影山裕樹さん。アート、カルチャー書の出版プロデュース、webや紙媒体の編集、執筆活動の他、近年は、「CIRCULATION KYOTO」(2017)、「KOBE MEME」(2018-19)など全国各地の地域プロジェクトやクリエイター向けワークショップの企画立案、ディレクションに加え、2017年にwebマガジン「EDIT LOCAL」を立ち上げるなど、多彩な活動をされています。

本講演では、かつて発展していたマスメディアが衰退し、多様化する編集の業務と、ローカルメディアのあり方、地域活性のヒントについてお話しいただきました。

まずは、「ローカルメディアは、東京のマスメディアの二番煎じと思っている方多いが、本当にそうなのか?」というテーマで、地方から発信されて話題になった成功事例をたくさんご紹介いただきました。
本講演の参加者は、地方で広報を担当する方々で、どうやって地方から発信すべきなのか、課題を抱えている方も多く、影山さんが紹介されたローカルメディアの成功例は目からウロコの内容だったようです。ここで、本講演で取り上げられたローカルメディアの成功例を一つご紹介します。

ローカルメディアの成功例「城崎温泉 本と温泉」

これまで城崎温泉を舞台にした本をお洒落に装丁し、城崎温泉で限定販売した出版レーベル「本と温泉」についての活動が紹介されました。
これは、2013年、志賀直哉来湯100年を機に城崎温泉の45歳以下の若手経営者たちが立ち上げた出版レーベルで、これまで、志賀直哉『城の崎にて』(2013年)、万城目学『城崎裁判』(2014年)、湊かなえ『城崎へかえる』(2016年)、tupera tupera『城ノ崎ユノマトペ』(2020年)を発刊しています。
万城目学さんの本が温泉に入ったまま読めるようにとタオル地のカバーに加え、撥水加工を施した紙に印刷されていたり、湊かなえさんの本がカニの殻をイメージしたものであったりと、しっかりと城崎温泉の土地柄をアピールしつつも、東京の代官山に売っているかのようなお洒落な装丁でSNSでも話題になりました。しかも、現地でしか購入できないプレミア感もあって、在庫切れの状態が続くこともあったそうです。この本を手に入れるためにやってくる観光客も増え、その相乗効果で観光客の増加にもつながったとのことです。

ここで重要なのは、地域の魅力を考えながら、どうやって話題性を出したのかということです。文学の町というイメージを保持しつつ、人気作家を採用し、これまでの本の形にとらわれない装丁、かつその土地に行けなければ買えないという限定感が話題性につながりました。ローカルメディアが成功した一例といえます。
https://www.instagram.com/p/CLwfzeUBYkK/?utm_source=ig_web_copy_link

話題性を高める魅力発信の方法の気づきにつながった実践ワーク

後半では「ローカル×メディア」と題して、普段気も留めないような地元の商品や店など(ローカル)を、紙やweb以外でどういった形でPRするのか(メディア)を考えて、発表する実践ワークが開かれました。
リアルな講演であれば、チームに分かれ、「ローカル」と「メディア」と書かれたカードにそれぞれのキーワードを書き出し、テーブルの上で発表するという形がとられますが、今回はオンラインで個別の参加ということもあり、個人単位で発表するという形式になりました。

このワークショップでは、例えば、ローカルとして「地元リサイクルショップ」、メディアとして「町内会のごみ拾い」とカードに書き入れた上で、ごみ拾いの袋にリサイクルショップの広告をプリントして、リサイクルショップをPRするといった取り組みを発表するというような感じで発表が行われました。普段思いつきもしない解答がいくつも発表され、活発な意見交換が行われました。影山さんによると、過去にこちらのワークで提案され、実際に具体化されたものも多数あるということでした。
質疑応答では、口頭だけでなくチャット機能も利用しました。参加者の方からの「ワークで発表されたものは実現できるのか?」などという質問に対し、影山さんは「〇〇したらできそうですよね!」と的確にアドバイスされていたのが印象的でした。

まとめ

当日は、大きなトラブルもなく順調に講演を終えることができました。
ただ、反省点としては、各参加者の方がwebexへ入退室する際に、通知音がなってしまい、講演中のお話を遮ってしまう場面がありました。今後webexで実施する際は、お客様にwebexの会議室を作成いただく際に、入退室を【音無し】に設定いただくよう事前にご案内できれば良いと思いました。

影山さんの講演はご自身の経験に基づいたもので、実際に地方からどうやって発信すればよいかについて具体的なヒントも多く、ローカルメディアの最前線で働く方々にとって良い刺激になったのではないでしょうか。質疑応答も活発にされて、参加された方々にも好評のようでした。
話し方や間の取り方もお上手で、一時間集中して聴講することができました。ローカルメディアだけではなくメディア全般でおすすめの講師です。

影山裕樹 かげやまゆうき

編集者、文筆家、メディアコンサルタント


コンサルタント実践者作家

千十一(せん・と・いち)編集室代表。書籍やwebなど様々な媒体の編集を手がける他、全国各地で自治体や企業、NPO向けに情報発信の講演やコンサルタントを行っている。著書に『ローカルメディアのつくりかた』(学芸出版社)、編著に『あたらしい「路上」のつくり方』(DU BOOKS)など。

プランタイトル

ローカルメディアで地域を変える
~地域振興のためのメディアづくりワークショップ

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