労働基準法(以下、労働法)改正における改正のポイントや、改正により自社にどのような影響があるのかを知りたい経営者や管理職層の方も多いのではないでしょうか。
今回は、社会保険労務士法人Nice-one 代表の中山伸雄氏より、労働法の改正による企業の労務管理の変更点や、労使間での良好な関係性を築くためのポイントについて、わかりやすく解説いただきます。

労働基準法関連の改正が成立した背景

大企業では2019年4月より適用となった労働基準法改正項目。中小企業では、時間外労働の上限規制、年5日取得義務などが、2020年4月より適用されていますが、2023年4月からは、月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率引き上げも対象となります
この労働基準法関連の改正の背景には、働き方改革の導入があります。

根底にあるのは、「働く方々が個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を自分で『選択』できるようにする」という理念です。
働き方改革は、日本雇用の約7割を担う中小企業・小規模事業者において、着実に実施する必要があると言われており、職場環境の改善で魅力のある職場づくりが実現でれば、人手不足の解消を進められます。
また、魅力のある職場づくりができるということは人材確保にもつながり、業績の向上、さらには利益増といった好循環が生まれるというわけです。

働き方改革全体の推進として、

  • 労働時間法制の見直し
  • 雇用形態に関わらない公正な待遇の確保

が挙げられます。
それぞれどのような内容かを見ていきましょう。

労働時間法制の見直し

労働時間法制の見直しは、長時間労働をなくし、年次有給休暇を取得しやすくすることで、個々の事情に合わせた多様なワーク・ライフ・バランス、多様で柔軟な働き方の実現を目指すものです。

雇用形態に関わらない公正な待遇の確保

正社員だけでなくパートタイム労働者や派遣労働者など、どのような雇用形態を選択していても待遇に納得して働き続けられるようにすることを指します。多様で柔軟な働き方を選べることで、雇用形態による不合理な待遇差を避けることにつながります。

これまでに施行された主な法改正をおさらい

これまでに施行された労働法改正にはどのようなものがあったのでしょうか。
今一度振り返ってみましょう。

①同一労働同一賃金

同一企業・団体における正規雇用労働者(正社員)と非正規雇用労働者との間に存在する不合理な待遇差を解消するために施行。同一労働であれば、正社員、パート、アルバイト、派遣社員といった雇用形態に関係なく、同一の賃金でなければなりません。また使用者(※1)は、賃金だけではなく、福利厚生や教育訓練についても、同等の業務・役職であれば正規・非正規に関係なく同等の待遇を与えなければなりません。

※使用者:労働法における「使用者」とは、労働者を使う立場にあり、労働の対価として賃金を支払う人を指します。事業主や経営者のほか、従業員であっても、会社/事業者側の立場で一定の権限を持って人事や労務管理などの業務に当たる人も該当します。

➁時間外労働の罰則付き上限規制

建設事業等、一部の業種は、時間外労働の上限は原則として月45時間、年360時間とし、臨時的な特別の事情がなければ、これを超えることはできないという制度を施行。

▲厚生労働省「働き方改革関連法のあらまし(改正労働基準法編)」(2020年3月掲載)より引用

③割増賃金率の見直し

1日8時間以上、週40時間以上の法定労働時間を超えた時間外労働において、大企業・中小企業ともに25%の割増賃金が適用されています。
また、月60時間を超える分に関しては大企業では2020年4月から50%とされており、2023年4月からは中小企業でも25%から50%に引き上げる予定です

④年間5日の年次有給休暇の確実な取得

これまで、有給を取得するには労働者からの申し出が必要でしたが、改正後は、たとえ労働者から有給の申し出がなかったとしても、使用者は、年次有給休暇が10日以上ある労働者に対して、最低でも年間5日の有給を取得させることが義務となります。

➄フレックスタイム制の拡充

これまでのフレックスタイム制は、労働時間の生産期間が1か月までとされていましたが、今回の改正によって、清算期間の上限が「3か月」に延長され、月をまたいだ労働時間の調整により、さらに柔軟な働き方が可能になりました。必ず1か月以内に清算する必要があったこれまでのシステムでは、ある月に総労働時間を超えた場合、その分を時間外労働として割増賃金を払わなければならず、一方で、翌月に総労働時間よりも少なく働いた場合は、その分の賃金が控除される、というような状況となっていました。法改正で制度の選択の幅が広がり、精算期間の上限が3か月となったことで、3か月以内の総労働時間を相殺でき、労働時間を自由に調整できるようになりました。

⑥高度プロフェッショナル制度の創設

高度の専門知識を持ち、職務の範囲が明確で一定の年収要件を満たす労働者を対象にした制度です。労使委員会の決議と労働者本人の同意があることを前提に、労働基準法に定められた労働時間、休憩、休日および深夜の割増賃金に関する規定を適用しない代わりに、年間104日以上の休日確保措置や健康管理時間など、状況に応じた健康・福祉確保措置を講じることができます。

➆勤務間インターバル制度の導入

1日の勤務が終了してから翌日の出社時間までの間に、一定時間以上の休息時間を確保する精度です。働く方の十分な生活時間や睡眠時間を確保するといった目的があります。

2022年度以降順次施行される法改正

2022年度以降の順次施行が予定されている法改正には、どのようなものがあるのでしょうか。
具体的には以下の3つが挙げられます。

  • 月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率引上げ(2023年4月以降)
  • パワハラ防止法(2022年4月以降)
  • 育児・介護休業法改正(2022年4月以降)

2023年4月から中小企業に施行される「割増賃金率引上げ」

▲厚生労働省「働き方改革関連法のあらまし(改正労働基準法編)」より引用

ここでは主に、最初に挙げた「月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率引上げ」について解説します。
これまで、中小企業における残業割増賃金率は25%でした。改定後は、大手企業と同じく50%の引き上げが定められます。
今は多くの企業で、できるだけ残業が発生しないような社内環境づくりが推進されていますが、やはり、現状としてまだまだ残業はなくなっていません。
改正法が施行されたらすぐに対応できるよう、今から、残業を減らせる仕組みや社内のリソース調整を見直し始めるといいですね。

複雑な法改正に対応するための労務管理改革のポイント

複雑な法改正に対応するために、今、早急に求められているのは次のような取り組みです。

  • 管理職に向けて「働き方改革」の勉強会を開き、意識改革を行う
  • テレワークの導入と意識改革で、残業時間を削減する
  • 就業規則の変更により、残業時間を削減する
  • ハラスメント研修の実施とハラスメント相談窓口の設置を通じて、ハラスメントによるトラブルを防止する

取り組み事例としては、ノー残業デーの創設、年次有給休暇の計画的付与、休日数を増やすなどがあります。

私の講演ではこの他にも、働きすぎを防ぐ方法や、妊娠出産・育児・介護など、個々の従業員の事情に応じた働き方と対策について紹介しています。
順次施行されている改正労働基準法の下、労使間の信頼関係を築いていくために、今一度働き方改革の概念や見直しポイントについてもしっかりと学んでおきましょう。ご興味のある方はシステムブレーンまでご相談ください。

中山伸雄  なかやまのぶお

社会保険労務士法人Nice-one 代表 東京商工労務福祉協会 理事長


作家コンサルタント 経営者・元経営者

山梨学院大(法学部)卒。1年間住み込みで新聞配達をしながら社労士取得。生保・労務管理システム各営業を経て独立。9年で従業員17名、1億を売上げ全国でもトップクラスの成長率を達成。労務・人材育成相談実務に加え、中小企業の評価制度構築・評価者研修や従業員育成・労務関係の研修が好評。

プランタイトル

労働法の改正で、企業の労務管理はこう変わる!
労使間の健全・良好な信頼関係維持のために
知らなかったでは済まされない、知っておくべきポイント!

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