コスト削減や業務改善は経営に必要だとわかっていても、従業員の感情としては「面倒な作業が増える」「本業が疎かになる」などの気持ちもあることでしょう。
コスト削減や業務改善は、一時的なものではなく継続的に行っていくもので、やりたくない気持ち、やらない理由があるとなかなか進みません。着実に業務改善を進めるため、複数社の上場準備経験のある経営コンサルタント・平野貴之氏が、社員をやる気にさせつつ業務改善できる方法、フレームワークを伝授します。
【監修・取材先】
平野貴之氏
経営コンサルタント
なぜ業務改善が必要なのか
業務の流れが悪いと、以下のようなことが起こります。
- 品質が落ちる
- コストが増す
- 納期が遅れる
さらに、これらの理由により、売り上げや利益が下がります。すると、さらに従業員のモチベーションも下がり、品質が落ちたりコストが増したり、効率の悪化から納期が遅れるといった悪循環に陥ってしまいます。
しかし、業務改善が行われて従業員のモチベーションが上がれば、品質を高められるだけでなく、コストも減らせ、その結果、納期も早まるという好循環が生まれます。業務改善はそのために必要なのです。
業務改善のメリット
業務改善が行われていない状態では、業務の流れが複雑になっています。その理由は、業務の内容に無駄やムラ、ダブりなどがあるためだと考えられます。そこで、業務内容を改善することで「無駄・ムラ・ダブり」を減らし、業務時間の短縮へとつなげます。業務時間が短縮されれば、働き方改革の実現や従業員のストレス低減も進むことでしょう。
また、業務の流れが複雑で「無駄・ムラ・ダブり」がある状態は、ヒト・モノ・カネなどの業務リソースを無駄に消費している状態と言えます。つまり、無駄なコストがかかっているのです。これもまた、業務改善を行うことで品質が上がり、コストも削減できます。品質アップによる売り上げ増加も期待できるため、利益改善の実現につながるでしょう。
業務改善に効果的な3つのフレームワーク
業務改善には、3つのフレームワークがあります。
- フローを書いてみる
- 「なぜ」を5回繰り返す
- 問題を因数分解する
「フローを書いてみる」とは、業務フローを一度すべて洗い出してみることです。業務フロー(業務の流れ)を書き出し、必要に応じて図や表などを用いながら、業務の無駄・ムラ・ダブりを洗い出します。その中で、業務が改善されない本当の原因を追求していくことで、業務改善を実行レベルまで落とし込むのが「業務フローを書き出す」というフレームワークです。
「『なぜ』を5回繰り返す」とは、「なぜ、時間がかかるのか」という最初の問いを見つけたら、次にその答えである「出荷に時間がかかるから」を手がかりに、「なぜ、出荷に時間がかかるのか」と次の質問を導き出すやり方です。このやり方で「なぜ」を5回繰り返すと、業務改善されない本当の理由が追求でき、業務改善を実行レベルまで落とし込めるというわけです。
「問題を因数分解する」とは、一つの問題から要素を洗い出して「見える化」することを指します。例えば、売り上げが伸び悩んでいるとすれば、数量と単価の問題に分けられます。さらに、数量は新規で投入する商品、既存の商品に分けられ、単価の問題は質と量に分けられます。このように、要素を一つひとつ分解していくことで、どの要素を最も改善すべきか明らかにし、そこへ注力するのが「問題を因数分解する」フレームワークです。
ここでは「『なぜ』を5回繰り返す」について、さらに詳しく見ていきましょう。
「なぜ」を5回繰り返す
では、トヨタの業務改善の「『なぜ』を5回繰り返す」というフレームワークについて、例を使って詳しく解説します。
「『なぜ』を5回繰り返す」というフレームワークは、前述したように最初の問いとその答えから次の質問を導き出す行程(なぜ)を5回繰り返して、業務改善の障害となっている真の原因を見つけ出す仕組みです。例えば、以下のように質問を繰り返していきます。
- なぜ、時間がかかるのか?
→出荷に時間がかかるから。 - なぜ、出荷に時間がかかるのか?
→倉庫内のどこに何があるか明らかでないから。 - なぜ、倉庫内のどこに何があるのかが明らかでないのか?
→入荷した際に、製品を倉庫内の適当な場所に置いてしまうから。 - なぜ、入荷したものを倉庫内の適当な場所に置いてしまうのか?
→保管場所を決めていないから。 - なぜ、保管場所を決めていないのか?
つまりここでは、5の「なぜ、保管場所を決めていないのか」が、本質的な業務改善につながると考えられます。保管場所をあらかじめ決めておけば、入荷した際に指定された場所に置けばよいため、倉庫内のどこに何があるか明らかになります。探す手間がなくなるため、入荷時の作業時間は大幅に短かくなることでしょう。そして、倉庫内のどこに何があるかが明らかになれば、出荷にかかる時間自体も短縮され、1の「時間がかかる」という問題が無事解決します。
従業員の業務改善へのやる気をあげるために
では、従業員の業務改善へのやる気を上げるために、経営者や上層部は何をすべきでしょうか。
まず、業務改善がうまくいかないのは、経営者や上層部が、業務改善の理由として「会社のメリット=利益の改善」を強調してしまうためです。従業員にとって、業務改善はやり慣れた方法をわざわざ変えることであり、面倒で直接的な評価につながらないという思い込みがあります。変化を嫌う性質は少なからず誰もが持っており、無意識に「いつかなんとかなるだろう」「誰かがやるだろう」という思考になりがちです。
しかし、最初にご紹介したように、業務改善には「ストレス低減、業務時間短縮」といった従業員にとってのメリットもあります。経営者や上層部が強調すべきなはこの部分であり、従業員にとって大きなメリットがあることを前面に押し出さなくてはなりません。可能であれば、業務改善の進み具合を評価し、人事評価の基準に加えるなどしてモチベーションアップにつなげることも重要です。従業員一人ひとりが業務改善にメリットを感じられれば、結果として利益の改善につながるでしょう。
平野氏の講演ではさらに、楽しくコスト・業務改善をしていく方法についても解説します。業務改善に悩む企業経営者や管理職の方々より高評価をいただいております。ご興味のある方は、ぜひシステムブレーンまでご連絡ください。
平野貴之 ひらのたかゆき
経営コンサルタント
コンサルタント
過去に【倒産】【上場】2つの異なる経験。それらを活かして中小企業経営専門の経営コンサルティングを行う。著書『会社の売上を伸ばしたければ社長は「現場」に出るな!』は、題名は過激だが多くの経営者から共感の声があがっている。講演も「大変わかりやすく、お人柄も素晴らしい」と高い評価を得ている。
プランタイトル
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