2021年の総務省「社会生活基本調査」によると、男性の家事・育児参加率は3割を超えたものの、参加時間を見ると女性の半分以下に過ぎません。一方で、国は2022年に10月から「産後パパ育休」を導入し、男性のより積極的な育児参加を支援しています。

共働き世帯が増える中、今後さらなる男性の育児・家事への参加が急務となってくるでしょう。そこで本記事では、家事シェア研究家でありご自身も8歳の子どもを持つ三木智有氏に、家事育児シェア方法と、仕事と家庭の両立について解説していただきます。

Your Image【監修・取材先】
三木智有氏

家事シェア研究家
子育て家庭のモヨウ替えコンサルタント

なかなか解消しない夫婦間の家事・育児時間

男性の育児や家事参加率は年々増えており、5年に1度行われる総務省「社会生活基本調査」(2021年調査)によれば、6歳未満の子どもを持つ世帯において夫の家事の1日平均時間は、30分となり、2001年の結果(7分)と比べると、4.2倍増加したことになります。
育児にかける時間も、夫の1日平均時間は2001年の25分に比べ、2021年は65分となり、2.6倍ほど増加しました。
夫の家事・育児時間そのものを見ると増加しているように見えますが、妻の家事・育児時間と比較とするとその差は歴然です。女性は1日のうちで2時間58分を家事に、3時間54分を育児に割いており、夫の時間に比べて妻が家事にかける時間は5.9倍、育児にかける時間は3.6倍ほど多いことがわかります。

また、日本における夫の家事・育児時間(6才未満の子どもを持つ世帯)は、他の先進諸国に比べ、低水準であり、一方で女性の家事・育児負担も他の諸国に比べて高い結果(※下図参照)も出ており、なかなか男女差が是正されていない実態が明るみとなっています。

引用: 男女共同参画白書 令和2年版「生活時間の国際比較」より

男性が育児・家事に積極的に参加することのメリット

日本では共働き世帯が増える一方で、いまだに、男性にとって家事や育児は「手伝いでするもの」という当時者意識にかけた考え方がいまだに根強く、実際に参加している男性の行動もその延長線上にあるという事実は否めません。

男性が育児・家事に積極的に参加することで、男性が家事や育児を「自分ごと」として捉えるようになり、「やってあげる」から「やらなければならない」という意識の変革につながります。
そして何により、夫婦の信頼関係はもちろん、子どもとの関係も良くなります。
夫婦が家事や育児を分担することで、妻が自由に過ごせる時間、夫婦で過ごせる時間も増えます。家事や子育ての悩みもシェアできることで、互いに「力強い存在」「頼れる存在」となり、夫婦の信頼関係も深まります。

また、子どもたちも家事・育児に積極的な父親の姿を見て育つため、自然と手伝うようになります。

逆に、夫が育児・家事に参加しない場合、妻の負担ともにストレスも増え、妻が家庭内でイライラするようになります。子どもも、そんな父親の姿を見て育っているので、家の手伝いをしようとしません。ワンオペは妻の孤立感を深め、夫婦の信頼関係に溝をもたらします。妻の不満が高まり続ければ、最悪、離婚につながることも考えられます。

現代社会では、男女ともに家事・育児を助け合ってやっていくのが当たり前になりました。そのため、今の時代に夫が家事・育児を行わないのは、デメリット・リスクが大き過ぎるのです。

家事育児シェア方法とは?

前述のように、現代では夫婦が家事・育児を助け合って家庭を築いていくのが当たり前になりました。そのような社会では、家事・育児をシェアするという考え方がおすすめです。「家事や育児を分担する」と言うと、仕事を分担する、本当はしたくないけれどやらなければならないからする、という消極的なイメージが拭えません。

しかし、「家事・育児のシェア」と考えることで、家事や育児を共有する、分かち合うという意味に変わります。家事・育児シェアには、家事をみんなでして効率的に回していく家族の信頼関係を結んでいく——という2つの意味があります。

家事は誰か一人がメインで行い他の人は手伝うもの、という従来の考え方から、家事はその家に住む全員で分かち合う(シェアする)ものである、という考え方に移行するのです。そうすれば、家族がみんな一緒に家事に取り組み、家事の時間を共有することで信頼し合い頼り合える関係を養えるのではないでしょうか。

 家事・育児シェアの具体的な実践方法

それでは、家事・育児シェアを具体的にどう実践すればよいか、3つのやり方をご紹介します。

①家事シェア習慣術

家事・育児シェアの習慣をつけるためには、どのようなチームプレーをするのがよいかを考えましょう。「パートナーを教育しよう」とか、「女性なんだから家事をしないと」「得意な方が家事をすればいい」といった考え方に縛られないようにしてください。「お互いが生活する中で助け合うにはどうしたらよいか」を考えましょう。

このやり方は非常にシンプルです。「○○していない方が、○○をする」というもので、「パラレル家事」と僕は呼んでいます。例えば、「料理をしていない方が、食器洗いをする」「朝食を作っていない方が、子どもの身支度をする」など。もちろん、すべての家事でこれを実行するのは難しいため、初めは1つか2つ、できるところからスタートしてみてください。

「パラレル家事」は習慣化しやすいだけでなく、不公平さを減らしてチーム感を高めるというメリットがあります。自分は家事をしているのに相手がのんびりしていれば、なんとなくイライラしてしまいます。しかし、「パラレル家事」なら同じ時間に協力して家事を行うため、不公平さを感じにくくなり、チームで家事をしているという連帯感も生まれるのです。

➁担当型のシェア方法

家事・育児シェアのもう1つの方法として、担当制を導入するというやり方もあります。担当制で重要なのは、「お互いに心地よく家事を委ね合えているかどうか」。各々が勝手なルールで勝手に家事を行うのではなく、家事のやり方を話し合い、お互いが納得できる落とし所を見いだすことが重要です。

家事のやり方やルールはさまざまで、育ってきた家庭環境や、社会に出てからの生活習慣によっても異なります。そのため、自分のルールを一方的に押し付けるのではなく、相手のルールを理解した上できちんと話し合いをすること。それが担当制のポイントです。

しかし、どうしても家事の話し合いが進まないということもあるでしょう。そんなときは、思い切って家事のやり方を相手に委ねてしまいましょう。お互い細かいルールの違いがあっても、「そんなものだ」「違って当然」「任せたのだから、気にしない」と割り切ることができれば、家事のルールをきっちり詰められなくても、担当型でうまくやっていけるでしょう。

③シュフ型のシェア方法

最後に、シュフ型の家事・育児シェア方法をご紹介します。どちらかが専業主婦(夫)である場合や、パートナーの家事・育児スキルがあまりにも低い場合、やり方が違い過ぎて相手に頼みにくい場合などにおすすめの方法です。

シュフ型の家事シェアでは、家事全体をマネジメントする「シュフ」が存在します。そして、「シュフ」が他のパートナー(ヘルパー役)に指示を出しながら家事を回していきます。多くの専業主婦(夫)家庭では、たいていこのやり方が採られているのではないでしょうか。ただし、この方法を回すためにはコツがいります。

それは、家事の時間を決めて「シュフ」がスムーズに指示を出せるようにすることです。シュフ型の指示がうまくいかないケースで圧倒的に多いのが、シュフ側は指示を出しにくく、ヘルパー側は何をすればいいかわからない、となってしまうことです。シュフ側が指示しやすい状況であれば、ヘルパー側もするべきことが分かります。そうなれば、家事・育児シェアも効率的に行えるようになるでしょう。

男性が仕事と家庭をうまく両立させるために

男性が仕事と家庭を両立させるには、今回ご紹介したような、本人と家族の考え方・行動の変容とともに、職場の雰囲気や企業の考え方も変えていく必要があります。
講演では、男性と職場・企業の行動変容を促す具体的な施策について、さらに解説します。より詳しくお知りになりたい方は、ぜひ講演にもご参加ください。

三木智有 みきともあり

家事シェア研究家 子育て家庭のモヨウ替えコンサルタント


実践者教育・子育て関係者

フリーのインテリアコーディネーターとしての活動後、本当に居心地の良い家庭には家事育児を夫婦で楽しむ事が大切と知り、家事シェアを広めるためNPO法人tadaima!を設立。夫婦での家事分担だけでなく、子どもへの家事教育を地域で担える場作りも行う。

プランタイトル

人生100年時代に必要な男性のための両立セミナー

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