「人生100年時代」と言われる現在、シニア世代の間で、早くから認知症予防に取り組んで、老後を豊かに生きることに関心が高まっています。各種メディアで「脳の活性化」や「脳のトレーニング」のために様々な手段が紹介されていますが、その中でも音楽に合わせて仲間と一緒に体を動かすエアロビックは、レクリエーション性が高く習慣化しやすいため、人気を集めています。

今回はシンプルでゆっくりとした動きで、高齢者や車椅子の人でも気軽に取り組める“スローエアロビック”について、長年“体操のお兄さん”として運動の楽しさを幅広い世代に伝えている天野勝弘氏に解説していただきます。

【監修・取材先】
 ビジネスファイターズ合同会社 代表
俳優 体操のお兄さん 日本スポーツ協会公認エアロビックコーチ
天野勝弘氏

高齢者でもできる簡単な運動でも、脳の活性化に効果がある?

スローエアロビックは、10分間継続して取り組んでも息が弾む程度の“低強度”の運動です。「そんな軽い運動で、本当に脳の活性化の効果が得られるの?」と疑問に思う人も多いかもしれません。しかし、最近の研究(※1)によって低強度の運動は、水泳や速歩きなどの中強度の運動と同等、場合によってはそれ以上の効果が得られることが判明しました。例えば、健康な人にとって、10分間自転車を漕ぐことは、「体を動かしている」という認識にもならない程の楽な運動でしょう。けれど、たとえ10分であっても自転車に乗ることで、脳の中の海馬で新しい神経細胞が増え、また前頭前野を刺激して活動の効率を高めることが分かっています。

※1 参照:平成30年 筑波大学「短時間の運動で記憶力が記憶力が高まる!

海馬と前頭前夜は物事を正しく記憶したり正確な判断を下したりといった、認知機能に関わる大切な器官です。日常生活で意識的にこの2つを活性化させることで、認知機能の向上に大いに効果があるといえます。

高齢者が楽しく運動するには、簡単な“スローエアロビック”がおすすめ!

高齢者が低強度運動を始めるのなら、音楽とともに楽しく体を動かすスローエアロビックがおすすめです。ここではスローエアロビックの魅力と基本の動きについて解説します。

なぜ低強度運動のなかでも、スローエアロビックがいいのか?

スローエアロビックの魅力は、ただ体を動かすだけでなく、楽しくポジティブな気持ちを引き出せることです。

まず、スローエアロビックは基本的に1人で行う運動ではありません。インストラクターに声をかけてもらいながら、仲間と一緒に取り組むものです。特に人に会う機会も減って家にこもりがちという高齢者にとって、スローエアロビックは大勢で集まって賑やかに過ごし、前向きな気持ちになれる良い機会となります。

さらに、スローエアロビックは音楽に合わせて体を動かし、楽しむことを目的としています。参加者のほとんどは、終わったときに「楽しかった」「清々しい」そして「もっとやりたい」という気持ちになることでしょう。認知機能をより向上させるためには、脳を活性化する運動を継続的に取り組むことが大切です。スローエアロビックは、まず参加者の「楽しい」という気持ちを引き出すことで、低強度運動を習慣化する効果があります

スローエアロビックの基本の動きに挑戦しよう!

スローエアロビックの動きは、基本的に以下の3つしかありません。
① 胸を開く

② 体側を伸ばす

③ 体をひねる

実際にスローエアロビックに取り組むときには、この①②③それぞれを2パターン、合計6パターンほどの動きを、リズミカルに繰り返します。

③の「体をひねる動き」でも、例えばフレアツイストとショートツイストという2つの動きができます。腕を下に伸ばした状態で体をひねり、腕がフレアスカートのようにヒラヒラと揺れるのがフレアツイスト。体をひねりながら、拳を下から突き上げるように腕を振るのがショートツイストです。

同じ「体をひねる」という効果でも、動きにアレンジを加えることで、最後まで飽きずに取り組めるでしょう。参加者が覚えやすいようにシンプルに、①②③の効果をしっかり感じられるアレンジにすることがポイントです。
画像: 日本エアロビック連盟公式サイトより引用


▲スローエアロビックの動き

スローエアロビックの効果

スローエアロビックには、日頃は運動する機会のない高齢者の心拍数を適度に上げ、呼吸を促す効果があります。実施する際は、参加者に、しっかりと呼吸し、脳に酸素を行き渡らせるよう意識させることがポイントです。
他にも、スローエアロビックには、体幹のコンディションを整える、姿勢を良くする、バランスを良くするなど、転倒防止の効果が期待できます。

スローエアロビックで高齢者が脳を活性化するポイント

最後に、主催者やインストラクターの立場で、スローエアロビックの効果を高めるポイントを紹介します。

① 参加者の世代に馴染みのある歌を選ぶこと

スローエアロビックに楽しく継続的に取り組んでもらうには、参加者の世代に合わせた選曲が大切です。

特に高齢者にとって、今TVで流れている音楽よりも、自分たちが若かった頃に流行った曲のほうが馴染みがあり、ワクワクした気持ちでスローエアロビックに取り組むことができます。「スローエアロビック教室で、昔懐かしの曲がたくさん聞ける」と思ってもらえれば、参加者のリピート率も増えるでしょう。

② 運動中も参加者に積極的に声かけを行うこと

スローエアロビック中は、通常の動作の指示に加えて「発問」「助言」「評価」の3種類の声かけを心がけましょう。

「発問」とは「腰をしっかりひねっていますか」などの問いかけ、「助言」は「もうちょっと腕を伸ばして」などの改善のアドバイス、そして「評価」は「皆さん、とても上手にできていました」など褒めることです。
ただ指示を出しっぱなしにするのではなく、相手をしっかり見て適切な声かけを行うことで参加者の自己肯定感を高め、さらに前向きな気持ちを引き出します。

スローエアロビックで楽しく脳の活性化に取り組もう!

楽しいスローエアロビックなら、脳の活性化に効果がある低強度運動に習慣的に取り組むことができます。

さらに今回お話を聞かせていただいた天野氏の講演では、スローエアロビックの基本の動きに加えて、下半身の運動機能を維持・向上するための動きなども紹介しています。高齢者にとって、転倒防止などに効果がある下半身(特につま先を持ち上げる脛の筋肉)の強化は、脳の活性化と同じくらい重要です。

高齢者の心身の健康をトータルで向上させることを提唱する天野氏の「スローエアロビック」。新しいレクリエーションをお考えの介護施設の方や、自治体主催のイベントをお考えの担当者様は、ぜひご検討ください!

天野勝弘 あまのかつひろ

俳優 体操のお兄さん 日本スポーツ協会公認エアロビックコーチ

多くのテレビドラマ、CMなどに出演している俳優。NHK『おかあさんといっしょ』第9代“体操のお兄さん”。 子ども向けのファミリーコンサートや体操教室は1500公演を超える。また、高齢者向けにスローエアロビックの指導も行っている。幅広い世代の“体操のお兄さん”として活躍中。

健康音楽教育・青少年育成

プランタイトル

軽運動で脳を活性化!
「人生100年時代」を豊かに生きるために!
~みんなでスローエアロビック~

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