
講師の講師の皆さまの独自性や魅力をご紹介する「講師のヨコガオ」。
今回は、30年以上にわたり、日本企業の商品やサービスを海外で「選ばれるブランド」へと導いてきたカルチャーマーケティング・コンサルタントの梅澤さやかさんにお話を伺いました。長年の実務経験から生まれた「文化価値転換」という視点・手法は、海外市場での新たな可能性を切り拓くヒントとなるでしょう。
TOPPAN(株)で消費行動分析に従事後、大手デベロッパーの国際PRサイトを手がけ、国際広告賞を受賞。日本ブランドが海外文化の中で“選ばれる”ための「文化価値転換」を専門とするカルチャーマーケティング専門家。消費財・工芸・アートなど270件超のブランド支援実績を持ち、講演・メディア出演多数。
――講演では、どのようなスキルやノウハウをご紹介されていますか?
梅澤 講演では、日本ブランドが海外市場で「選ばれる」ために必要な視点と実践手法を、業種別の事例を交えてご紹介しています。具体的には、以下の点をお伝えしています。
- 日本文化における“当たり前”が、海外でどのように価値になるのか
- 文化に合った「伝わり方」を設計する手法(文化価値転換)
- 成功/失敗事例に学ぶ、評価される条件と文化的な落とし穴
- 中小企業でも実行できる、海外展開に向けた準備と戦略のポイント
――上記のスキルやノウハウはどのようなご経験から生まれたものでしょうか?
梅澤 これらのノウハウは、日本企業の商品や文化の「良い部分」をそのままアピールしても、海外ではうまく伝わらない──そんな課題に向き合い続けてきた実務経験から生まれました。
私のキャリアは、TOPPAN(株)のマーケティング本部での消費行動分析から始まり、その後はクリエイティブエージェンシーにて、大手デベロッパーの国際PRサイトをプロデュース。都市開発という専門的なテーマを、一般の人や海外市場においても価値あるコンテンツとして伝える表現に転換したことが評価され、国際広告賞を受賞しました。
こうした経験から痛感したのは、「売れる」ための核心は、商品やサービスに宿る「文化的価値」を相手の文化にとって意味を持つ形へと転換することだという点です。
その後、伝統工芸・食・アート・デザインなど、270件を超えるプロジェクトに携わる中で、文化背景を読み解く視点と、戦略的に価値を再構築する方法を体系化し、「文化価値転換」というカルチャーマーケティングの独自手法を生み出しました。
現地の文化背景や評価軸に合わせ、日本の「当たり前」に眠る価値を掘り起こし、魅力を再設計することで、海外市場で自然に受け入れられるポジショニングを築くことができます。これが実現できれば、無理に「売り込み」に頼らずとも、最初から市場に根付くポジションを確立できます。
逆に最も危険なのは、自社の言いたいことや「良い」と信じることを一方的に訴求してしまうこと。国内で成功した訴求であっても、それをそのまま翻訳しただけでは海外市場には決して通用しません。
この考え方は、2024年に出版した著書『エグゼクティブはなぜ稽古をするのか』にも通じています。現代の日本人にとって距離がある伝統文化を、「わからない人にどう伝えるか」という視点で捉え直し、体系的に再構築した一冊です。Amazonの禅・心理学部門で1位を獲得し、経営層を中心に多くの反響をいただきました。
ビジネスやグローバル展開の現場においてこそ、文化を「売るための演出」ではなく、売り込む前に、文化の中で自然に価値が認められるように設計することこそが、市場開拓を成功へ導く鍵だと考えています。
――講演活動を通して、どのような世の中を目指そうとされていますか?
梅澤 私が目指しているのは、日本企業が本来持っている文化的な価値に気づき、それを海外の文化や価値観に合う形で伝え直すことで、世界中の人々に活用され、豊かさが広がる社会の実現です。
短期的には、自社の「当たり前」の中に眠る文化的価値に気づいていただくこと、そして海外展開を「特別なこと」ではなく、現実的な選択肢として捉え、行動を後押しすることを講演の目標としています。
長期的には、日本企業の文化的発信力の向上を通じて、地域経済の活性化、そして文化の継承と発展につなげたいと考えています。伝統とビジネスを結びつけ、文化が「誇り」と「実益」の両方として生きる未来を支援していきたい──それが私の講演活動の根底にある思いです。
――講演や研修を検討されている主催者様へメッセージをお願いします。
梅澤 文化には、人や企業の「選ばれ方」を根本から変える力があります。
本講演では、日本企業が見落としがちな「文化価値」に目を向け、それを海外に伝わる形で再構築するための視点と手法を、具体的な事例とともにお伝えします。
すでに海外展開を進めており、現地での共感者・パートナー・販路拡大を目指している企業様には、文化を軸とした「伝わり方」の見直しによって、次の成長の糸口をご提供します。
また、「うちの商品は海外でも通用するのか?」と模索中の企業様には、自社に眠る文化的な価値の見立て方と、それが海外でどのように評価され得るのかをお伝えします。
海外を次の市場として見据える企業様に向け、確かな視点と戦略のヒントをお届けします。

▲講演の様子(©MoonCreativeLab2025)
消費行動分析や、多くのブランド支援を通じて培った独自の手法は、海外でどのように評価されるのかに課題を抱える企業にとって、実践的なヒントが詰まった内容です。
いまある価値を、いかに「伝わる形」で発信するか。その第一歩は、自社に眠る文化的価値に気づくことから始まります。既存の価値を見直し、それを武器に変える視点は、企業の未来を動かすきっかけとなるはずです。

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