昨年(2022)末に文章生成AI「Chat GPT」が登場し、世界を席巻したのは記憶に新しいところです。急激に進化するAIを友好的に思う人もいれば、人間にとって代わると危惧する人もいます。
今後、私たちはAIにどう関わっていけばよいのでしょうか…。
そんな究極の疑問に答えてくれる方がいらっしゃいます。
サイエンス作家の竹内薫さんです。
先日、「AIと共存する未来 ~必要な思考のレッスンとは~」と題した講演会が開かれました。
これまでのAIの変遷を踏まえた上で、そして今後私たちはAIとどのように関わっていくべきかをお話されました。
個人的にも「なるほど」と思えるシーンの多かった講演会の様子をお伝えします。

官公庁・学校・PTAチーム

講演テーマ: AIと共存する未来
~必要な思考のレッスンとは~

講師   : 竹内薫 氏
開催時期 : 2023年6月中旬
主催者  : N会社
講演時間 : 60分
聴講者人数: 会場約200名
講演タイプ: リアル

本講演会の開催の背景

本案件は、医療系組合様が医療従事者会員の方々を対象に定期的に開催している文化講演会で、話題のテーマで話せる講師を紹介してほしいとの問い合わせがありました。講師を15名ほど選び、ご提案させていただきました。問い合わせのあった時期は、ちょうどChat GPTの新バージョン「GPT-4」が公開され、話題になっていたこともあり、AIに明るい竹内 薫さんに白羽の矢が立ちました。

今回の聴講者は、医師や医療スタッフが中心であったため、主催者様から「講演(内容)に医療も絡めてほしい」とご要望をいただきました。その旨を竹内さんにお伝えし、講演に、医療現場でのAI活用事例や業界の今後についても入れていただくことになりました。

タクシーが見つからず会場入りが遅れるも冷静に対処

当日、主催者様から講師のアシストを依頼されていたので、私は講演開始時刻の1時間前に会場入りしました。竹内さんもほどなくして来られる予定でしたが、どうやら観光客が増加したことでタクシーがなかなかつかまらず、到着予定時間から20分ほど過ぎたときに竹内さんを乗せたタクシーが到着しました。講演の開始時刻まであと20分程度でしたが、落ち着いた表情で会場入り口に入ってこられました。会場では、会合が開催されていたので、私の方で控え室にご案内しました。
竹内さんは講演が始まる10分ほど前に、投影用資料があるため、ご自身でパソコンとプロジェクターを接続されました。竹内さんと一緒に登場・終了後退出のタイミングを確認しました。時間が押していたので、できるだけ主催者様と講師の間で伝達ミスや無駄が起きないよう、特に注意を払いました。リハーサルは10分程度しかありませんでしたが、スムーズに進めていくことができました。

AIに対抗するのではなく、使いこなせる人材が重要

司会者の方が竹内さんをご紹介すると、会場からは拍手が沸きあがりました。竹内さんは、壇上に上がると、簡単に自己紹介をした後に、AIの変遷と現状についてお話されました。

今回話題となったChat GPTが世に出る前に、2021年にはロボットが事務処理を行う「RPA(Robotic Process Automation)」ツールが流行り、2022年に入って画像生成ツールが一気に普及。ここ数年ベンチャー企業がこぞってAIを制作するようになりました。ここにきてChat GPTが表れ、あまりにも人間らしい言葉に驚いた人も多いのではないでしょうか。

竹内さんは、次のフェーズはわかっていたそうですが、Chat GPTがこれだけ早く普及することは予想していなかったそうです。

竹内さんは、インターナショナルスクールも運営されていますが、Chat GPTの普及によって、論文や作文をAIに書かせる生徒も増えたのだとか。巷でも、AIが書いた文章は、人が書いたものの寄せ集めなのだから盗用になるのではないか、と議論されていますが、竹内さんは、学生に、剽窃(ひょうせつ)チェッカーを用いて文章生成AIの正しい使い方を教えているそうです。

ご自身も翻訳の仕事でAIを使用していますが、通常人間が3ヶ月かかる量をほんの数分で終わらせてしまうのだそうです。

こうなると、ここで一つ疑問が生じます。AIが人間にとって代われるか、ということです。

Chat GPTはネット上にある文字データを集めて、自動生成しているため、まだ情報の正確性という点で多くの課題が残されています。しかし、それも数年で情報ソースの正確性も高まるのではないかと言われています。
また、 Chat GPTはコーディングやプログラミングもできます。
実際に、近い将来なくなる職業として、コーダーやプログラマー、ライター等を筆頭に、自動運転AIの発達によりタクシー運転手やトラック運転手、DXツールにより販売員や営業、コールセンターのオペレーターなどもなくなると言われています。

竹内さんは、「人工知能に代わられる仕事」と「生き残る仕事」のリストをスライドで見せながら、AIの存在意義について話始めました。

AIの発達でなくなる仕事もありますが、それでも、人間しかできない仕事もあると言います。例えば、交渉が必要な会計士や配慮の必要な介護タクシー、人を育てる学校の先生、複数の要因のある症例を診断したり、体だけではなく心の面でもサポートする医者や看護師、ソーシャルワーカー、心理士など、付加価値のある仕事です。

「そんな付加価値のある仕事は不変的であり、その観点から、AIが完全に人間にとって代わることはできない。Chat GPTも人間のようにうまく文章を作れたり、プログラミングもしてくれるけど、何かを創作するために命令を出すのは人間。結局のところ、人の心へのケアや何かを一から生み出す力は人間にしかなく、AIは人間の存在意義を奪うものではなく、あくまで活用するツールに過ぎない」ということを強く主張されていました。

大変盛り上がった質疑応答

講演中、参加者の皆さんは食い入るように静かに聴講されていました。医療問題に触れたこともあり、医療従事者の皆さんには身近な問題として捉えることができたのかもしれません。
最後の質疑応答では、数名の方が手を挙げられ、熱心に質問されていました。
個人病院を営んでいる方からは「政府が医療業界は最終的にカルテなどの書類を電子化する必要があると言っているが、自分のような個人でやっている病院は自分で対応できないので、どうしたらよいのか」という質問がありました。竹内さんは、病院のIT化のメリットを述べた上で、「ITに特化した人材はたくさんいますので、そういった方を起用するなどの方法があります」と提案されていました。

質疑応答は、10分程度設けられましたが、時間が足りずに、全員の質問には答えられませんでした。講演後、質問できなかった方が、帰り支度をしていた竹内さんをつかまえて、質問されていました。竹内さんは、嫌な顔も一つもせずに、一人ひとりの質問に丁寧に答えていらっしゃいました。新幹線の時間も近づいていたので、竹内さんに「そろそろ時間です」と申し上げると、最後まで回答できなかった方に名刺を差し上げ、「あとはメールでお答えしますので、ここにご質問をメールで送ってください」とおっしゃっていました。竹内さんの大変真摯なご対応に感銘を受けました。

お人柄、知識ともにご推薦できる講師

今回、改めて竹内さんの講演会をアシストさせていただきましたが、AIやITの知識量、話し方、講演内容、お人柄共に申し分なく、大変おすすめできる講師です。講演後、主催者様からいただいたアンケートでは、10点満点中9点の高得点であり、「タイムリーな講演内容だったので受講者の関心につながりました」という感想もいただきました。

今回は医療業種について話をしていただきましたが、竹内さんは幅広い知識を持っていらっしゃるので、他の業種にも対応いただけます。子どもから大人まで、さまざまな年齢や職種、集まりの目的を考慮して、講演内容もアレンジしていただけますので、次回講演開催のご計画がある方はぜひ講師候補としてご検討ください。

竹内 薫 たけうちかおる

サイエンス作家


作家

物理、数学、脳、宇宙など幅広い分野に精通。「人間が縛られている常識は、ただの仮説にすぎない」とし、思い込みで判断しないための考え方を解りやすく解説。また、「AIと共存する未来」「アフターコロナの働き方」「才能を育てる子育て」など、人生の生き方全般について鋭い指摘を展開している。

プランタイトル

AIと共存する未来
~必要な思考のレッスンとは~

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