オンラインによる講演(セミナー)にも著作権が発生します。しかし、それを知らない参加者が勝手に録画したり、配信してしまったりして、主催者とトラブルになるという問題は後を絶ちません。

オンライン講演でよく使用されている配信ツール「Zoom」には、そのようなトラブルを避けるため、参加者に講演を録画させない方法があります。本記事では参加者を録画禁止にする方法と、講演の著作権について詳しく解説していきます。

講演は著作物であり著作権が発生する

一般的に著作権というと本や音楽、絵画などが思い浮かびますが、実は、講演も著作物となり、著作権が発生することは意外と知られていません。

一口に著作権といっても、著作権法の中にはたくさんの条項があり、講演を無断で録画・配信した場合には、著作権法の複数の権利に違反することになるのです。

抵触する法律の権利は以下の通りです。

  • 他人の教材を転用した場合…第21条「複製権
  • 講師の音声を再利用した場合…第24条「口述権
  • 許可なくビデオ撮影した場合…第91条「録音権及び録画権
  • 撮影したビデオを勝手に編集した場合…第90条3項「同一性保持権
  • 無許可で配信した場合…第92条から94条の2「送信可能権」等
    (参考:日本著作権教育研究会:eラーニングと著作権)

上記以外にも、「○○先生の講演」だと言って講師に許可なく講師の写真を使って再配信した場合、肖像権の侵害で慰謝料を請求させられる可能性もあります。

違反したら懲役や罰金が科せられる場合も

著作権を持つ講師や法人に無許可で動画を撮影し、それがばれた場合はどうなるのでしょうか。その場合、著作権法違反となり、個人には10年以下の懲役又は1,000万円以下の罰金、法人には3億円以下の罰金が科せられることもあります
(参考:公益社団法人著作権情報センター)。

さらに講師に無断で録画した映像を配信した場合は、著作権法第23条の公衆送信権を侵害したことになります。公衆送信権侵害は、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金が科せられる可能性もあるので注意が必要です

実際、平成28年(2016年)に、宗教法人主催の公開講演会を個人が無断で生配信し、裁判にまで発展したケースがあります。
当該講演会は4名の講師によって行われましたが、被告は動画配信サービスを利用して講演会の動画をコメント付きで生配信したのです。

動画は生配信でしたが、被告は、生配信とはいえ、配信に使用したツールにはタイムラグがあるため、参加者は講演会に参加した人よりも後に講演会の内容を知ることなり、「まだ公表されていないもの」を送信する「公衆送信権の侵害」には当たらないと主張。この「公衆送信権の侵害」が本裁判の争点となりました。

同時に被告は「動画配信による収益はなかった」とも主張しましたが、裁判所は被告に「公衆送信権の侵害」があったと判断し、原告4名に対して総額15万6,000円の支払いをするよう命じました。

本裁判では、「公衆送信権の侵害」が適用されましたが、講師に無許可で録画したものを配信した場合や講演内容を文字に起こしてインターネット上で公開した場合は、公衆送信権に加え複製権に侵害に当たる可能性も出てきます。

Zoomで参加者の録画を制限する方法

Zoomにはミーティングとビデオウェビナーがあり、それぞれで参加者の録画制限の方法が異なります。詳しく解説していきます。

①Zoomミーティング

Zoomミーティングでは、基本、ホスト(主催者側)が参加者に録画を許可しない限り、禁止される設定となっています。デフォルトで参加者の画面にも「レコーディング」ボタンが表示されますが、これを参加者がクリックした場合、ホストのPCにレコーディング許可のリクエストを求める画面が表示されます。許可しない限り、録画できない形となります。

また、最初から参加者の画面にレコーディングボタンを表示させないこともできます(有料プラン会員のみ設定可能)。手順は以下の通りです。

  1. Zoomのアカウント設定に入り、サインイン
  2. 「設定」➡「記録」タブの「ローカル記録」「クライド記録」をオフにする。
  3. 鍵マークをクリックする。

➁Zoomビデオウェビナー

Zoomビデオウェビナー(有料プランのみ)においては、参加者は録画できない仕組みとなっています。ただし、パネリスト(双方間のやり取りができる参加者)であれば、ローカル(自身のPC)記録が可能です。ホストは、パネリストのローカル記録も制限できます。

➡ホスト、パネリスト、参加者の違いについては、「初めてのオンライン講演~Zoomビデオウェビナー「ホスト」ができることと管理機能の使い方」をご参照ください。

パネリストの録画を禁止したい場合には、組織全体(アカウント設定)とグループ設定で禁止できます。

組織全体(アカウント設定)でローカル記録をオフにする方法

  1. ZoomのWebポータルにサインイン。
  2. アカウント設定に入り、「記録」タブの「ローカル記録」の機能を確認する。
  3. オフになっている場合はそのままにする。オンの場合、オフに切り替えると「”ローカル記録”に対してオフにする 全グループとユーザーに対してオフになります。」という確認画面が出てくるので、「オフにする」のボタンをクリックする。

グループ設定でのローカル記録をオフにする方法

1.グループ管理に入り、録画を禁止したいグループ名をクリック。
2.「記録」タブを選択し「ローカル記録」の機能を確認。
3.オフの場合はそのままにする。オンになっている場合、オフに切り替えると「”ローカル記録”に対してオフにする 全グループメンバーに対してオフになります」との確認画面が出てくるので、「オフにする」のボタンをクリックする。

ローカル記録をオフにすると、パネリストがZoomの録画機能を使った録画をすることができなくなります。さらに、切り替えボタン横のカギマークを押すと、ローカル録画機能をロックし、すべてのユーザーやグループでの必須機能として設定することができます。

とはいえ、PCのキャプチャ機能やアプリで録画できてしまう実情

Zoomのローカル記録をオフにしたからといって、必ずしも講演が録画されないわけではありません。PCに搭載されている画面キャプチャ機能や画面録画などで、参加者はPCに表示される講演動画を録画できてしまうのです
参加者にキャプチャを禁止するアプリを事前に入れてもらうというのも手ですが、それを入れたとしても、PCの画面をスマートフォンやデジタルカメラなどで撮影できるので、それも賢明なやり方とはいえません。

無許可の録画は違法であることを参加者に周知させる

では、講演を録画禁止するためにどのようなことができるのでしょうか?
結局のところ、映画館で流れる「No More 映画泥棒」のマナームービーのように、参加者のモラルやマナーに訴えるしか方法がありません。

講演会を始める前に「講師や主催団体へ無許可での録画・録音は法律違反であること」や「当講演では録画を禁止していること」を明確に伝えることも一つの手ですし、申込書に同様の注意書きを出すところもあります。

「講演は著作物であり、著作権が発生します。講師や主催側に無許可で録画や撮影したり、インターネット上で公開したりした場合には著作権法違反となり、違反すると個人の場合10年以下の懲役又は1,000万円以下の罰金が発生する可能性もあります。」

このような文言を募集や申し込み要項、講演前の待機中に出すスライドに入れ、さらに講演前に注意事項をアナウンスする際に再度伝えるなどし、講演の録画禁止を周知徹底することをおすすめします。

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