オンライン講演にはライブ配信やオンデマンド配信、併合(ハイブリット)型など一定の方法がありますが、講師の撮影場所や講演内容、聴講者の聴講状態などの諸条件は毎回異なり、一つとして同じ形態ものはありません。

私はこれまで20件以上、オンライン講演の運営をお手伝いしてきましたが、全てが異なる条件で、時には他の講演とは形態の大きく異なるものもありました。
今回は、変わり種の2つの事例をご紹介いたします。

啓発・市民営業事務 熊崎枝里

■目次
第1回
講演テーマ: 障害者の就活・就労ガイド
講師   : 紺野 大輝 氏
主催者  : M市福祉団体様 様
開催日時 : 2021年2月下旬
講演時間 : 1時間30分
聴講者人数: 250人以上
使用ツール: Zoomビデオウェビナー
講演タイプ: C. 講師から個別視聴者へ生配信

ホテルのデイユースプランを使って収録

本案件の主催者様は、M市の福祉団体様。毎年12月に発達障がい研修会を実施されており、前年度も担当させていただきました。

当初は昨年(2020年)12月開催で講師の選定を進めていましたが、新型コロナウイルスの第二波が到来し、今年2月、オンライン形式での実施で延期されることとなりました。

本案件の講師の紺野大輝さんは、自ら「脳性麻痺による脳原両上肢機能障害(2級)」という障がいを持って生まれます。法政大学をご卒業された後、ある会社に就職されますが、そこで障がい者雇用に関しての企業の理解不足を感じられます。次に就職した企業は1800名の社員をもつ大企業で、人事課に配属されます。その経験をもとに、2015年から障害者雇用に関しての講演を始められました。

求職側と求人側の両方の視点から、企業が障がい者雇用についてどのように対応すべきなのか、また周囲はどのような配慮をすべきなのかを、わかりやすく解説されます。その前向きな生き方や優しい話し方に聴講者からの評価も高い講師です。

そんな紺野さんから、今回の収録場所の手配を頼まれました。通常だと、貸会議室やスタジオを用意しますが、リハーサルもあるため、紺野さんの自宅周辺の場所で探しました。いろいろと探していた時に、弊社スタッフから「ビジネスホテルを使うのはどうだろう」と提案がありました。昨今のコロナ禍もあり、ビジネスホテルでは平日のデイユース(日帰り)プランを多く出しているようでしたので、紺野さんのご自宅近くにある大手ビジネスホテルのデイユースプランを予約しました。

開催日2週間前にリハーサルを行いましたが、ホテルの客室とはいえ有線LANもあり、講師が座って話せるためのパソコン用テーブルや椅子もあります。カメラ付きのパソコンさえ持ち込めば、十分な収録ができます。
また、昼間のホテルは人の出入りも少なく静かな環境で、かつデイユースプランなら半日で5,000~6,000円程度で借りられるため、スタジオや貸会議室と比べるとかなりリーズナブルです

リハーサルでは、講師の顔が暗く見えたり、隣で掃除機の音が聞こえるなどの問題があったため、当日は、講師側に明るめの場所に移動していただくこと、ホテル側には本番の時間帯に掃除機をかけないことを依頼しました。

ビデオウェビナーではQ&A機能を活用

本案件で使用したZoomのビデオウェビナーは、一方向のセミナーに向けたツールであるため、Zoomミーティングのように聴講者と講師が顔を合わせながら話をしたりすることはできません。主催者(ホスト)と講師(パネリスト)以外は、画面が表示されないようになっているため、聴講者の反応がわかりづらい、講師と聴講者のコミュニケーションがとりづらいといったデメリットがあります。

そこで、本案件では、講師と聴講者とのコミュニケーションをとる方法としてビデオウェビナーのQ&A機能を活用しました。
Q&A機能は、聴講者が講師や主催者に質問ができ、質問された側は「聞く」「応答済」「却下」という3つの項目で回答できます。もちろん、講師側が聴講者に質問することもできます。聴講者は、Q&Aに対してアイコンの「いいね」を押すことができ、一番「いいね」が多かった順番に質問を表示させることも可能です。

本案件では、質疑応答の時間を設けていましたが、あらかじめ聴講者には講演中いつでも質問を受付けている旨伝えていました。おかげで、講演が終わるまでに多くの質問が寄せられました。

今回は時間の関係もあり、以下の2つの質問に絞って、ご回答いただくことになりました。
①脳性小児まひなどの症状がある場合、知的な処理スピードを考慮して業務を配分した方がいいのか?
➁精神障がい者の採用経験はあるか?あれば採用時、配慮すべき点は?

紺野さんからはいずれも丁寧にご回答いただきましたが、特に➁に関して、紺野さんの会社自体も精神障がい者を採用した経験があり、フレックスタイム制を用いて対応していることなど、具体的な方法をご教示していただきました。

聴講者からは、「今後の方針を検討するのに役立った」「障がい者と採用者の立場から話していただけたため、障がい者雇用への対応が具体的でわかりやすかった」と高い評価をいただけました。

第2回
講演テーマ: あきらめない心
~前向きに生きることで必ず道は開ける~

講師   : 伊藤 真波 氏
主催者  : M 教育団体 様
開催日時 : 2021年3月上旬
講演時間 : 1時間30分
聴講者人数: 約200人
使用ツール: Zoomビデオウェビナー
講演タイプ: :D. 録画配信タイプ

Zoomとビデオカメラによるバイオリン生演奏の配信

本案件は、年に4回開催されている「市民大学」の一講座として、毎年ご用命をいただいている案件です。
本年度は、今年(2021年)1月頭にリアルで開催される予定でしたが、緊急事態宣言の影響で、3月にオンラインで延期開催されることになりました。

講師は、元パラリンピック水泳選手の伊藤真波さん。伊藤さんは、看護師を目指していた20才の時にバイク事故にあい、右腕を失われました。希望を見いだせないどん底の治療生活でしたが、家族や周囲の根気強いサポートもあり、何とか復活することができました。その後、義手をつけて看護学生に戻り、めでたくご卒業され、看護師としての就職も果たされます。そして、リハビリを兼ねた水泳に興味を持ち始め、パラリンピックを目指されるようになります。2008年の北京パラリンピックで初出場を果たし、100m平泳ぎ 4位。2012年のロンドンパラリンピックでは、100m平泳ぎ 8位に入賞しました。2015年にはご結婚され、翌年長女をご出産。片手だけを使った育児がテレビで特集され、多くの人に感動を与えました。

講演では、ご自身のこれまでの人生を振り返りながら、どのように立ち直っていたのかを心をこめて話してくださいます。一語一語感情を込めた話し方に引き込まれていき、まるで伊藤さんの人生を疑似体験している気分になります。
私も何度か伊藤さんの講演をサポートさせていただましたが、そのたびに伊藤さんから生きる力をいただいています。そして、講演の最後には、義手を使ったバイオリンの生演奏が披露されます。義手を器用に使いこなしながら奏でられる音色は、せつなさの中に力強さもあり、伊藤さんの「あきらめない心」が伝わってきます。

本案件でも、バイオリンの生演奏を披露していただくことになりました。オンライン講演の運営はあっても、生演奏の収録は初めての経験です。そのため、設備の揃った本社のスタジオで収録をすることにしました。

収録当日、生演奏では伴奏音楽を同時に流すことになりました。そのため、伊藤さんには本番の1時間前にスタジオに入っていただき、リハーサルを行いました。Zoomだと、音が割れてしまう可能性もあり、生演奏だけはビデオカメラで別撮りをしました。手始めに、Bluetoothのスピーカーから伴奏音楽を流し、バイオリン演奏と音楽を合わせました。
カメラのフレーム越しに、伊藤さんの立ち位置を決めてから仮録画をし、録画した映像を確認しました。音割れもなく、きれいな画質で録画されていました。

講師のモニターはスクリーンを使用

通常、講師は自分の前に置かれたPCの投影資料を見ながら話をしますが、時々、カメラの位置と講師の目線が合わず、講師の目線が下向きで撮影されてしまうこともあります。

今回は、オンデマンド配信ということもあり、より視聴者に訴えかけられるように講師の視線をカメラに合わせたいと思っていました。そこで、資料はスクリーンに投影させ、スクリーンの目の前にwebカメラを配置。講師がスクリーンを見ながら話を進めたとしても、カメラに講師の目線が合うように、カメラの高さを調整しました。すると、講師がカメラを向いているような形で撮影ができました。

その結果、収録後の動画を見ていると「決してあきらめない」「あきらめてはいけない」という伊藤さんの気持ちがより強く伝わってくるようでした。

収録後は、町のケーブルテレビで限定配信されました。主催者様から聴講者の反応をお聞きしたところ、「生きる勇気をもらった」「あきらめない心の大切さがわかった」など、前向きな感想をいただいたということで、大変嬉しく思っています。

オンラインのカタチは多彩。臨機応変に対応できるサポート体制

今回はオンライン講演の一部の事例を紹介しましたが、他にもさまざまな形態があります。主催者様からのご要望はもちろんのこと、時には講師からのリクエストもあります。そんな時は、主催者様のことを考え、どのような形で開催するのが一番かを考えます。

主催者様と講師との間を橋渡しし、最高の形で講演を実現することが、私たちの使命です。弊社では、主催者様や講師の方々からのさまざまなご要望に臨機応変に対応できるよう、常日頃からサポート体制を整えています。
今後ともお客様の笑顔が見られるよう、オンライン講演の運営サポートをしていきます。

【この記事を書いたスタッフ】

熊崎枝里 くまさき えり
岐阜県出身。学生時代に打ち込んだ陸上競技の経験から社会人になってからもマラソンをしています。趣味は旅行で、国内海外ともに知らない土地に行くことが好きです。マラソン大会を兼ねて旅行することも多く、最近は47都道府県制覇を目指しています。
お客さまに喜んでいただくことを第一に考え、人と人とのつながりを大切にし、お客さまに安心して任せていただける存在でありたいと思っています。丁寧かつ迅速な対応をいつも心掛けています。

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