近年、コンプライアンス研修への関心が高まっています。社員の知識不足によるコンプライアンス違反行為で企業価値を損なう例は少なくありません。
この記事ではコンプライアンス研修の目的や盛り込むべき内容、成功のコツを詳しく解説。また、おすすめの研修プランも紹介します。
今、なぜコンプライアンス研修が必要なのか
まずは今、ビジネスシーンでコンプライアンス研修が求められている背景を説明しましょう。
コンプライアンス違反による不祥事の例
IT技術などにより情報が瞬時に広がる昨今、コンプライアンスへの知識不足が思わぬ不祥事を招きます。
例えば「情報漏洩」。注意すべき行為は、社員が社外秘の情報を直接誰かに話すことだけではありません。部外者がのぞき見できる状況を知っていて放置したり、中途採用した社員に転職前の顧客情報を聞き出したりするのもNGです。
また社内のハラスメント行為が、SNSやメディアへの告発で明るみになることも。
無知ゆえに下請法や著作権法、景品表示法などに「うっかり抵触してしまう」事例も看過できません。
コンプライアンス研修で会社への信用失墜を防止
そのような状況を未然に防ぐためにもコンプライアンス研修は有効です。
信用を築くのには時間がかかりますが、失墜するのは一瞬のこと。罰則や罰金が科せられるのみならず、顧客や社員が流出し、最悪の場合は倒産することもあります。不祥事が起こってから「知らなかった」では許されません。
研修で正しい知識を身につけ、信用失墜のリスクを防止しましょう。
コンプライアンス研修を実施するメリット
コンプライアンス研修によって得られるメリットには、次の3つがあります。
①法的トラブルを回避し、信頼性を向上できる
失った信用を取り戻すのにかかる莫大なコストは、研修で未然に防げます。
➁社員が安心して働ける環境を作れる。
健全な風土を育めば、社員が日々前向きに業務に取り組めるようになり、ビジネスの成果にも好循環をもたらします。
③評判を高めて企業として競争力を強化すできる
企業価値が上がると優秀な人材や良質な顧客が集まりやすくなります。業界内でも競合社に差をつけることができるでしょう。
コンプライアンス研修に盛り込むべき内容
それではコンプライアンス研修にはどのような内容を盛り込むのが良いのでしょうか。
業務に関する法律知識
まずは「業務に関する法律知識」です。特に企業活動と関連度の深い法律を以下に4つ紹介します。
・個人情報の保護に関する法律(個人情報保護法)
営業や人事、IT、経営など、顧客や人材情報を扱うすべての社員が対象です。データの収集・管理・廃棄までの取り扱い方や注意事項を学びます。
・労働基準法
マネージャー層は労働基準法で定められたガイドラインを常にアップデートし、誤った「古い常識」に基づいて長時間労働や低単価労働を強いる状況を避けねばなりません。
・下請代金支払遅延等防止法(下請法)
業務を外部発注する人に必要です。取引先にとって「不当な契約」にならないための条件を学び、順守しましょう。
・著作権法
特に広報や宣伝、販促など、情報発信に関わる担当者には不可欠の法律です。
情報セキュリティ強化
「情報セキュリティ」も重要です。誰もがスマートフォン1台で気軽にSNSに投稿でき、瞬時に情報が広まってしまう現代では、特に気をつけたいテーマの1つでしょう。
個人情報保護法に関わることのほか「SNSで反社会的・差別的発言や誹謗中傷をしない」といった常識的な行動にも目配りしておきたいところです。本人が「匿名だから実生活に影響ない」と好き勝手していたら、別のユーザーに会社を特定された事例も多くあります。
さらに会社の機密情報を漏らさないことや、支給したPCやスマホなどの機器、資料などを不用意に持ち出し粗雑に扱わないことについても、職場全体で意識を合わせておきましょう。
ハラスメント
セクシャルハラスメント、パワーハラスメントは、コンプライアンス違反行為の代表格です。育児・介護休業法に関わるマタニティハラスメントやパタニティハラスメント(育児休業をとる男性への嫌がらせ)にも注目が高まっています。
とはいえ新しい概念で、「何がハラスメントに該当するか」という感覚に今ひとつ自信がなく、職場でのコミュニケーションを過度に恐れている社員もいるかもしれません。
そうした人も研修を通じて事例を学ぶのが有効です。ハラスメント行為を起こさないためにはどのような対策が有効で、発生してしまった場合にはどのような対処をすべきかを考えましょう。
行き過ぎた公私混同
特に小規模な会社では「業務ルール=担当者個人のルール」となってしまっているケースも少なくありません。勤務時間中に長々と私用電話やSNS投稿をしていたり、会社の支給品を私物化したりしている社員はいないでしょうか。あるいは個人的な好き嫌いで部下に業務を割り当てている役職者はどうでしょうか。
こうした「行き過ぎた公私混同」もコンプライアンスに反することを、研修でしっかり認識しましょう。公私混同の姿勢は、経費を使い込む不正や、社会と感覚がずれたワンマン経営の企業体質と地続きです。
コンプライアンス研修の4つの実施方法
コンプライアンス研修を実践する4つの方法について解説します。
社内講師による研修
1つ目は「社内講師による研修」です。
社内で運営する場合、人事や法務、内部監査などの部門や各部門の教育担当者などから講師を選出したり、チームを作ったりします。業種や事業内容に即した教材や資料を用意したうえで、直接社員に知識を共有する場を設けましょう。
社内研修では座学だけではなくディスカッションやグループワークもぜひ取り入れてください。対面式の社内研修のメリットは、異なる価値観を持つ者同士が意見交換することで、問題意識が高まり、理解が深まりやすくなるとともに社内にノウハウがたまる点がメリットです。一方、運営側の負荷が高めなのがデメリットです。
社外講師による研修(対面)
2つ目は「社外講師による対面講習」です。
専門家を会社に招くパターンのほか、社員が社外セミナーに参加するパターンもこれに該当します。
知識と経験豊富な専門家が講師なので、社内準備の負担を抑えて質の高い研修を提供できます。また参加者が「話を聞く姿勢」に入りやすいという特長もあるでしょう。講師のスケジュールに左右されることや、金銭面でのコストがデメリットです。
社外講師による研修(オンライン)
3つ目は「社外講師によるオンライン研修」です。
配信システムやWeb会議ツールの普及で、オンライン研修でも講師との質疑応答や、参加者同士のコミュニケーションができるようになりました。
オンラインなら悪天候や交通機関トラブルなどに左右されません。また普段から業務で多忙な人も、比較的負担に感じることなく参加できます。
また、場所代や機材代も不要で、対面研修よりコストを抑えられます。ただし参加者の細かな反応が分かりづらく、熱量にムラが出やすい点はある程度覚悟が必要です。ネットワーク接続トラブル対策や参加者の環境確認にも配慮しなければなりません。
eラーニング
4つ目は「eラーニング」です。
PCがあれば受講できるeラーニングは、基礎知識を復習して定着させたり、参加者が「自分の感覚が今の社会とずれていないか」をチェックしたりする場合に特に使いやすいでしょう。
低コストで導入可能ですが教材は一般的な内容のものが多く、会社に合わせた細かなアレンジは困難。研修内容の一部をeラーニングに置き換えるなど、他の方式と組み合わせるのが理想的です。
失敗しないコンプライアンス研修のポイント
最後に参加者に「意味のない研修だった」と思われないためのポイントを説明します。
1.目的を明確にし、目指すゴールを設定する
コンプライアンス教育の目的は大きく分ければ2つで、「正しい知識を得て法に抵触しないこと」と、「違反が起こる組織や環境を作らないこと」です。
後者をさらに細かく段階化すると「コンプライアンスを順守し続けること」「疑わしい事例の指摘や、問題に対する適切な判断ができること」「行動規範を実践し、企業理念を実現すること」となります。
上記のレベルを手掛かりに、参加者や企業が目指すべきゴール(=成果)を設定すると、研修担当者は企画を立てやすくなるでしょう。
2.実施方法を選定する
目的と到達点を決めたら、それに合った内容や実施方法を選定してください。例えばゴールが異なる新入社員とマネージャーとをまったく同じ内容にするのは、あまり得策といえません。
また単発で終わらせず継続的に行うこともポイントの一つです。定期開催し、毎回参加者から評価アンケートなどのフィードバックを受けて次回の内容に活かすとより良いでしょう。
また実施タイミングも重要です。他社で不祥事が起こったときなどは特に社員の関心が高まっています。「同じ過ちを起こさないために」という切り口で計画してみてはいかがでしょうか。
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コンプライアンス問題は年々関心が高まっています。違反行為による企業の信用失墜を防ぐため、コンプライアンス研修を行うことには大きな意義があります。
しかしかつては存在しなかった法律や古い常識が通用しない情報セキュリティ、繊細なハラスメントの概念などに、社内対応の限界を感じている方もいるのではないでしょうか。
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