「人材育成のため複数の研修を実施したいが、運営担当者の負担が大きくなりそうなのが心配」あるいは「どの研修が成果を上げているのか、よくわからない」と感じてはいないでしょうか?

それらの課題には研修管理システムの導入が効果的です。今回は研修管理システムの機能やメリット、選定のポイントについて解説します。さらにおすすめのシステム9選も紹介しているので、研修ご担当者様はぜひ参考にしてください。

研修管理システムとは

研修管理システムとは、社内の研修情報を一元管理するためのシステム、またはソフトウェアのことです。特に、研修を含む社員の学習状況の管理ツールは「Learning Management System」、略して「LMS」とも呼ばれます。

運営側はこのシステムを使って研修プログラムを作成し、教材や資料を配布(配信)します。またシステムを介して受講者の参加率や進捗状況なども管理でき、受講者ごとの成績や研修後の全体成果のデータを収集して分析する、といったことも可能です。

受講者側はシステムから研修に申し込み、受講後には評価やフィードバックを受け取ることができます。またeラーニングやウェビナーなどのプログラムを通じて、さらに学びを深められます。

研修管理システムの導入メリット

研修管理システムの導入メリットとしては、主に以下の5つの点が挙げられます。

メリット1.研修の一元管理と効率化

1つ目のメリットは、研修に関するデータを集約して、効率的に活用できることです。

組織内でバラバラに研修の計画を実施していると、全体の人材育成の状況が把握しづらくなります。また、効果が出ている研修とそうでない研修の比較も難しく、無駄な研修を見直す機会もなく闇雲に継続してしまうなど、非効率を生む原因にもなります。

すべての研修を一元管理するシステムを導入することで、戦略的に人材育成を進められます。

メリット2.学習進捗やスキルの可視化・共有

2つ目のメリットは、社員の学習の進捗や、保有するスキルが可視化されることです。

研修管理システムがあれば、個々の社員の研修への参加履歴や、eラーニングなどの学習の進捗についての情報を一目で確認できます。上長や人事担当者はそこから社員の現在の知識・スキルレベルを把握し、不足している分野を見極めて適切な教育機会を与えることが可能です。

また社員自身もシステムで自身のデータを確認できるため、次のステップに進むために、どのような学習をすればよいかを主体的に判断するようになります。

メリット3.研修のコスト削減

3つ目のメリットは、研修にかかるコストの削減です。

すべての研修を一元管理することで、研修ごとバラバラに運営するよりも予算やコストが管理しやすくなります。研修の成果だけでなく、運営業務に関わる工数の見積もりや算出が容易になり、その面でもコスト削減につながります。

研修管理システム自体にも初期費用などの利用料はかかりますが、長期的に見れば全体としてはコストを抑えることができるでしょう。

メリット4.担当部門の業務負担軽減

4つ目のメリットは、研修担当者の負担軽減です。

受講者の出欠管理や教材の手配など、研修を実施するたびに数多くの事務的な業務が発生していないでしょうか。研修管理システムを活用すれば、これらの務作業の工程の多くを自動化し、担当者の手間を大きく減らすことが可能です。

メリット5.キャリア開発や人事評価への活用

最後のメリットは、キャリア開発や人事評価への活用です。

社員が「どのような研修を受講してどの程度のスキルを身に付けたか」というデータが可視化・蓄積されれば、一人ひとりに適切なキャリア支援が提供できるようになります。

またキャリア開発プランを策定したり、スキルレベルを人事評価に反映したりする機能を備えた研修管理システムもあります。

研修管理システムの主な機能

それでは研修管理システムでは具体的に何ができるのでしょうか。主な機能として以下の6つを紹介します。

①eラーニングプログラムの配信

1つ目の機能は、講座の映像などをオンラインで配信できる「eラーニング機能」です。受講者はインターネット環境と端末さえあれば、いつでもどこでも研修が受講できます

事業所の拠点が複数ある場合、同じ時間、同じ場所にすべての参加者を集める研修の開催は困難です。だからといって拠点ごとに研修を実施していると、知識やスキルレベルに差が生じてしまいます。

eラーニングのプログラムとして配信すれば、どの参加者も同じ時期に同じ内容の研修を受講でき、計画的に人材育成を進められます。

②実施案内や出欠確認などの事務管理

2つ目の機能は、「実施の案内や出欠確認などの事務管理」です。研修担当者と参加者とのやり取りをシステム上で完結できるようになり、事務作業の大部分が体系化ないし自動化されます。

研修管理システムを使用しない場合、どのように対応しているでしょうか。研修の日時や内容についての案内も、事前に研修の対象者リストを入念に確認し、毎回アドレスを送信先に指定して、手動でメールを作成しなくてはなりません。

また申込みの対応や当日の出欠状況から、事後の研修課題やアンケート回収に至るまで個別に管理しなくてはならず、担当者には大きな負担がかかります。

事務作業の効率化により、担当者は人材育成プラン作成や研修企画などのもっと重要な業務に集中できるようになります

③成績や進捗の履歴管理・分析

3つ目の機能は、「社員ごとの研修成績や学習進捗の管理・分析」です。システムに受講履歴やテスト結果などのデータを集約し、管理画面で所定の操作を行えば、それらの情報がリストやグラフなどのわかりやすい形で表示されます

もし「どの従業員が・どの研修を受講し・どの程度のスキルを習得したか」を紙の資料で管理しているなら、作業は非常に属人的で煩雑となります。さらに資料化すらしていなければ、担当者以外は次にどのような研修の機会を提供すればいいのかもわかりません。

社員それぞれの状況に応じて成長を支援するには、学習に関するデータを一元管理できる機能が必要です。

④受講者への個別フォロー・サポート

4つ目の機能は、「研修実施後の受講者への個別フォローやサポート」です。

対面研修の欠席者に対して後日オンラインで動画配信したり、研修後の疑問点や理解できなかった箇所などを、システム上で復習できたりする機能を持つシステムもあります。

こうした機能がなければ、研修担当者は個別の質問や要望に、メールや対面で対応せざるを得ません。

システム上で受講者からの反応をまとめて確認し対応できれば、業務効率化が可能です。

⑤ストレス測定

5つ目の機能は、社員のストレスチェックです。

従業員のメンタルヘルスに対する企業の管理責任が重視される中、2015年、厚生労働省は労働者50名以上の企業を対象に、年1回以上のストレスチェック実施を義務化しました。

ストレスチェック用プログラムを簡易な操作で作成したり、所定の調査票を提供したりするシステムがあります。これらの機能を利用すれば、手間なくストレスチェックを実施できます。

⑥人事評価との連携

6つ目の機能は、「人事評価システムとの連携」です。

学習管理と人事評価を1つのシステムに集約すれば、研修を通じて得られた知識やスキルを可視化し、評価に反映できます。また反対に、評価の結果を踏まえて今後身に付けるべきスキルを提案し、それを習得するための研修プログラムを作成することもできるでしょう。

システムを上手く使うことで、評価と教育が一体化した効率的な人材育成が可能になるのです。

研修管理システムを選ぶポイント

現在はさまざまな研修管理システムがあります。その中から満足度の高いシステムを選ぶためのポイントを解説します。

point1.研修業務の課題とシステム導入目的の明確化

まずは自社の人材教育や研修における課題と「何のために研修管理システムを導入するのか」という目的を整理し、明確にしましょう。

研修管理システムにはそれぞれに特徴があり、細かな機能は異なります。搭載機能が自社の課題の解決を網羅するものでなければ、十分な導入効果は得られません。

例えば「オンタイムでの研修を1回実施するだけで終わってしまい、理解が不足している社員の個別フォローにまで手が回っていない」という課題があるなら、eラーニングなどで追加の学習ができるシステムを選ぶのがおすすめです。

point2.教材の豊富さやアレンジの柔軟性

教材の豊富さやアレンジの柔軟性も、研修成果に影響する重要なポイントです。

特に簡単にプログラムをカスタマイズできるシステムであれば、自社独自の内容を盛り込むことも可能です。受講者にとって「自分事」と感じられる事例や設問は、そうでない教材よりも学習意欲と理解度の向上をもたらすでしょう。

また自社ですでに作成済みの資料を教材として学習管理システム上で配信できる機能があれば、さらにコンテンツを充実させることができます。

point3.操作のしやすさ・ユーザビリティ

操作のしやすさも、システム選定のポイントです。

研修管理システムは研修担当者だけでなく、すべての社員が受講者として操作するものです。個別にレクチャーをしなくては使えないような、複雑なシステムはかえって導入責任者の負担を増やしてしまうでしょう。

ユーザビリティが考慮されており、ITに詳しくない人でも直感的に操作できるシステムを選ぶのがおすすめです。

point4.費用・コストパフォーマンス

導入前には費用やコストパフォーマンスもしっかり確認しておきましょう。

基本機能のパッケージは安くても、オプションをつけることで総額が高くなるシステムもあります。また利用する社員数に応じて料金体系が変わるものもあります。

何年間使い続けるかや、「最低限必要な機能」と「あったほうがよい機能」を洗い出して整理し、予算の範囲に収める工夫が必要です。

point5.セキュリティ対策の信頼性

研修管理システムには多くの個人情報や経営に関する機密が保存されるため、セキュリティにおける信頼性は重要です。

システム提供会社がセキュリティ認証を受けているかや、通信の暗号化、外部のネットワークから接続制限やシステム稼働監視体制など、セキュリティ対策をしっかりとチェックしましょう。

point6.導入後のサポート体制

サポート体制が整ったシステムを選べば導入後も安心です。

システム導入から現場でスムーズに活用できるまでは、さまざまな疑問が生じるでしょう。実装や操作についてどの程度レクチャーしてもらえるか、もしものトラブルのときにはすぐに対応してもらえるかどうかなどを事前に確認しておきましょう。

おすすめの研修管理システム9選

最後におすすめの研修管理システム9選をご紹介します。
※料金体系はすべて2024年4月現在のものです。

①AirCourse(エアコース)

AirCourseは850以上のコースからなる動画研修コンテンツを内蔵したeラーニングシステムです。動画研修受け放題の「コンテンツプラスコース」の他、自社で保有するコンテンツや自作のアンケートなどを組み合わせて自由に研修プログラムを作成できる「ベーシックコース」があります。

AirCourseは管理機能が充実しており、それぞれの受講者の学習進捗がレポートとして一目で把握できるようになっています。また直感的に操作できるユーザビリティの高さも人気の理由です。

コンテンツプラスコースはライセンス1つにつき月額600円(税別)、ベーシックコースは月額360円(税別)。どちらも初期費用は0円です。

②CAREERSHIP(キャリアシップ)

CAREERSHIPは2022年にクラウド型LMS市場の売上シェアNo.1を獲得した、人気学習管理システムです。TOYOTAや三菱商事を初めとする多くの大手企業で導入された実績があり、複雑な組織構造にも対応した柔軟な配信と権限管理が特徴となっています。

CAREERSHIPには、ただ研修コンテンツを配信するだけでなく、社員一人ひとりのスキルを管理したりキャリアマップを可視化したりといった、人材育成に役立つ機能が豊富に搭載されています。

CAREERSHIPには3つの利用プランがあります。料金については公式webサイトから見積りをとる必要があります。

③etudes Plus(エチュードプラス)

etudes Plusは定額制・受け放題が特徴のeラーニングサービスです。階層別・スキル別に体系化されたコースを、受講者はマニュアルがなくても、直感的に操作できます。

また教材制作や効果を高める学習方法など、人材教育や研修企画に関する知見やノウハウをまとめたコンテンツを提供しており、企業の社員教育担当者をサポートする仕組みを豊富に備えています。

利用料金は、サイトから資料請求して問い合わせることができます。

④KnowledgeDeliver(ナレッジ・デリバー)

KnowledgeDeliverは、「教材作成」「学習」「運用管理」の3つの機能を搭載した学習管理システムです。さらにweb会議ツールとの連携も可能で、ライブ授業やオンラインセミナーも同じシステムで管理できます。

企業ごとのカスタマイズにも柔軟に対応しています。さらに近年注目が高まっている、オープンバッジ(世界共通規格によるスキル・知識のデジタル証明書)も発行も可能です。

ユーザー数に応じた利用料金を設定しており、100ユーザーで55万円(税込)、ユーザー数無制限のプランではサーバ1つあたり330万円(税込)となっています。

⑤LearningWare(ラーニングウェア)

LearningWareは20年以上にわたり、研修から学校教育まで2,800以上の企業に幅広く利用されてきた実績豊富なeラーニングシステムです。「3社以上からの要望があれば実装する」をモットーに、高頻度のバージョンアップで新機能の追加や改良を行うことを強みとしています。

LearningWareでは自社に必要な機能だけを選定できるため、無駄なコストをかけずに高機能のシステムを利用できます。基本機能を備えたスタンダードプランは月額4万円から(税別、初期費用別途)となっており、その他に自社独自で教材を作成できる「ライトプラン」、より専門的な講座を受講できる「プレミアムプラン」があります。

⑥learningBOX(ラーニングボックス)

learningBOXは、教材やテストが簡単に作成でき、成績管理機能によって社員の研修理解度や学習進捗を一目で確認できる学習管理システムです。学習者ごとに強みと弱みを把握し、適切なフィードバックを行うことができます。

また操作性の高い問題作成フォームも特徴で、自社で保有する動画やPDF資料、レポートなどをアップし、簡単にeラーニングに転用できるのも魅力です。

利用料金は、最も手頃な「スタータープラン」で100アカウント利用した場合に年間およそ3万3,000円となっており、10アカウントまでなら無期限・無料で機能を試せます。

⑦playse. ラーニング(プレースラーニング)

playse.ラーニングは5,000以上の教材コンテンツを内蔵したeラーニングシステムです。トレーニングマップ機能がついていて、どこまで学習が進んでいて、次は何を学べばよいかが一目でわかるようになっています。

さらに自社でカリキュラムを作成する際は、簡単なテンプレートが利用でき、カスタマーサポーターによるサポートサービスもついています。

利用料金は、サービス資料・教材一覧のダウンロードで確認可能です。入手方法は公式webサイトをチェックしてみてください。無料トライアルサービスも用意されています。

⑧Schoo for Business(スクー・フォー・ビジネス)

Schoo for Businessは実務に直結するオンライン研修に加えて、学びのマインドを育む自己啓発学習のコンテンツも豊富なオンライン学習サービスです。

8,000本以上の動画コンテンツのほかライブ形式の「生放送授業」も特徴で、講師と受講者の双方向のやり取りから、受講者が主体的に研修に取り組む姿勢をうながします。

利用料金は定額制で、動画が見放題の「Schooビジネスプラン」で、1つのIDにつき月額1,500円(税抜)となっています。

⑨SpeedLMS Pro(スピードエルエムエスプロ)

SpeedLMS Proは、顧客企業からの要望に沿って機能を開発していくセミオーダーメイド型のeラーニングシステムです。ベースとなるシステムに機能を追加していくため、ゼロから開発するほどコストはかかりません。

SpeedLMS Proの開発費は、目安として従業員規模100名の企業の研修管理システムで約40万円としています。オーダーする機能や規模によってその他の実績例も公開されていますので、公式webサイトをチェックしてみてください。

研修管理システムで研修計画の効率化を実現

研修管理システムを導入すれば、社員の効率的な教育とコスト削減、事務作業の自動化による研修担当者の負担軽減が実現します。上手に活用すれば、効果の高い研修計画を立てられるようになるでしょう。

現在は各社からさまざまな研修管理システムが販売されています。最適なシステムを導入するには、自社の目的や課題に合ったものを選ぶようにしましょう。

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