「金鳥の夏、日本の夏」でお馴染みの殺虫剤メーカー「金鳥(大日本除虫菊株式会社)」。
渦巻き型蚊取り線香を発明し、インパクトのあるCMでブランディングも成功。
ところが、平成に入ると、市場環境の変化に加え、競合他社が強気の営業で業界シェアを脅かすようになります。

ケンカのできる営業にしてくれ

そんな社長の想いから、当時金鳥で営業部の研修担当をしていた八橋和由さんと、「スベらない商談力」メソッドで数々の企業に旋風を起こした小森康充さんの、5年にも及ぶ研修がスタートします。

インタビュー最後回となる今回は、ブランディングに成功していたにも関わらず、なぜ小森さんの研修を導入したのか、研修を継続したことでどのような変化が起きたのかを八橋さんと小森さん、そして同社宣伝部の笹岡さんにお聞きしました。
「ケンカのできない営業」から「ケンカのできる営業」へと変革できた成功のポイントが見えてきます。
自社の営業に悩みを抱えている研修担当者の方、そして経営者の方にはぜひともご一読ください!

大日本除虫菊株式会社 
第二営業部部長 八橋和由さん
1993年に入社。営業部を経て、2006年から2018年までマーケティング部に所属。営業部員の研修を担当。2013年から2017年まで5年連続して小森氏の研修を導入した。
宣伝部 笹岡可奈子さん
2014年に入社。営業部時代に小森氏の講演会に参加。現在は宣伝部に所属する。講師 小森康充さん
P&G営業本部にて初代トレーナーを経験したあと、マックスファクターや日本ロレアルなど外資系会社で20年の営業キャリアを積み、2009年に営業力強化コンサルタントとして独立。営業、リーダー研修の講演では継続依頼が多数。

■目次

「ケンカのできる営業にしてくれ」社長からの直々の依頼

システムブレーン(以下、SB) (第1回より)そこまでブランディングも成功し、消費者にも認知されているにも関わらず、なぜ小森さんの営業研修を採り入れることになったのでしょうか?

八橋  小森さんの研修を採り入れる前までには、少し長い話がありまして、そこからお話しをさせていただきたいと思います。
当時の弊社は営業部員に関する研修プログラムがなく、全国の支店や部署で必要に応じて、セミナーなどを受講するという形でした。そのため皆の知識やスキルがバラバラでした。

ちょうどその時、私は営業研修の担当となり、まずは営業全体のスキルを一定レベルに引き上げようと、自らいろいろなセミナーや講演を受講しながら弊社の業務にマッチするような講師を探していました。弊社では1年に1回、全営業部員が集まる会議があるのですが、その基調講演の講師を探していまして、ネットサーフィンしていたら「システムブレーン」という講師派遣会社の存在を知りました。
早速問い合わせの電話をしたところ、営業の方がすぐその日に来社されました。その雑談の中で「営業向け研修の講師」も同時に探していると。その時に紹介されたのが小森さんでした。

小森さんはP&G出身ですが、P&Gさんは、これまで国内会社がシェアを占めていた日用雑貨業界の中で革命を起こした外資系会社いうこともあり、個人的にリスペクトしているところがあった。
システムブレーンさんから小森さんの紹介をうけて当時の上司に説明したところ、上司が小森さんの講演を聴きに行ったんです。そこでは、顧客との関係性を構築し(心の窓を開き)、クロージングする方法を示した「スベらない商談力」講演があり、それを聴いた上司から「ぜひ、小森先生に基調講演をお願いしよう」と。そして、(小森さんに)全営業部員の前で講演していただきました。小森さんの講演を聞いて完全に腹落ちしました。「今、わが社に必要なのはこれだ!」と確信しました。

SB どんな点が良かったのでしょうか?

八橋 平易な言葉でわかりやすく、全てが実践的であったことです。これまで、いろいろな講演を聴いてきましたが、中には横文字ばかりをズラズラと並べて、内容がわかりづらいものもありました。でも、小森さんの研修はとにかくわかりやすかった、腹落ちした、それに尽きると思います。

SB  それから、研修を小森さんに依頼することになるわけですね。

八橋 実は、その講演には弊社の社長も参加していました。講演後に、社長と小森さんの面談の場を設けました。その時に社長が「うちの(営業)社員はおとなしくて優等生ばかりで、ケンカができん。ライバルと戦ったら引いてしまう。ケンカのできる営業にしてくれ」と小森さんに依頼したのが始まりです。

これまでのうちの営業は、売上目標を達成する意識が低かった。うちのメイン商品である殺虫剤は天候に左右されるので、売上が落ちても、「冷夏だった」「長雨で天候不順だった」などの言い訳ができてしまう。売上の低下が営業力の低下によるものと、考えることもなかったですね。
売上ではなく企業ごとのシェアに注力すればよかったのですが、そういった概念が当時は低かったのも良くなかったのかもしれません。

SB 「ケンカができない」というよりは「ケンカを知らなかった」という状態だったのかもしれませんね。

八橋 そうですね。ケンカのやり方も心得もわからなかった。一方でライバル企業は、押しの強い営業で、着実にシェアを増やしていった。そこに社長も危機感を感じていたのかもしれません。
だから、小森さんの研修を採り入れて、営業をテコ入れすることにしました。研修を構築しようとするタイミングもあって、小森さんに依頼することを決めました。

小森さんの営業手法が社員全体の共通言語となった

▲左手が金鳥の八橋さん、右手が講師の小森さん

SB それから5年間小森さんの研修を継続するわけですが、研修を受けてからどのような変化がありましたか?

八橋 社内全体の意識が大きく変わりました。というのも、上から下まで全ての社員が5年にわたり小森先生の研修を受けました。そのため、小森さんの考え方が社内の共通言語となりました。この「スベらない商談力」研修に出てくるキーワード「(顧客の)心の窓を開ける」「クロージングする」「5ステップ」などは、(研修を終えた)今でも日常会話で営業皆が使うほど浸透しています。それが最大の変化です。

SB 確かに。上司だけが(小森さんの)研修を受けた場合、その上司の教える力が未熟であれば、うまく研修内容が伝わらないかもしれない。逆に新入社員だけが受講していたら、上司にその考え方が理解されていないから、上司が新入社員の考えと乖離した指示を出してしまう危険性もある。それならば、上から下まで一気に研修を受けた方が、みんなの認識も共通のものになり、相互理解が図れますよね。同じ方向を向けたことで、目標設定も明確になったのではないでしょうか?

受講後成約率も格段にアップ!押しに負けない営業に

八橋 そうですね。それまではゴールもぼんやりとしていましたが、まずは小森さんと明確な目標を定めました。それに向けてクロージングすることを最終目標に定め、研修計画を立てました。
(営業部員の)上から下まで小森先生の研修を受けたわけですから、例えば、上司と新入社員が一緒に商談に行ったとして、商談の終わりに上司が後輩の前で「よろしくお願いします」と単にお願いするだけでは終われなくなった。上司も自らしっかりとクロージングするようになるので、成約率も格段と上がりました。
弊社全体の販売シェアでいうと、研修が始まって以降アップトレンドに変わりました

SB 競合環境が厳しい中、シェアをアップトレンドへと変えるとはすごいですね

八橋 そうですね。販売シェアも増加しましたが、何よりも営業部員全体に共通認識できたのが一番の功績です。これまで私も自分なりにいろいろと研修を受けてきましたが、営業に対する認識や知識がバラバラでした。小森さんには、管理職研修や次世代リーダー研修もお願いしていたのですが、営業部員全体で共通の認識がもて、同じ方向にベクトルを向けることができました。ここで組織全体がようやく「ケンカのできる営業」になったと感じています。

ベストプラクティスを社内に根付かせる

SB ここまで長く小森さんの研修を継続してやる予定はありましたか?

八橋 実は、なかったですね(笑)。一番最初に課長クラスが小森さんの研修を受けましたが、そこで営業現場の第一線に、小森さんのメソッドが腹落ちしたんですよ。
小森さんの手法を実践しようとしたときに、スムーズに進めるため、次は支店長クラス、中堅の営業社員(次世代リーダー)、最後に若手社員(入社10年未満)順番で最終的には全員、小森さんの研修を受けました。営業研修の次は管理職研修、次世代リーダー研修という具合に、どんどん広がっていきましたね。

SB よく(小森さんのメソッドが)「腹落ちした」とおっしゃっていますが、どんな点が腹落ちしやすかったのでしょうか?

八橋 そうですね。営業研修では、家庭や営業先での事例を入れながら説明してくださるんで、とにかく理解しやすかったです。メソッドを理解したら、次は実践です。次回の研修までに実践して、結果を報告します。
例えば、「スベらない商談力」研修でいうと、最初に顧客の「心の窓を開く」ことから行います。しっかりとお客さんの話に傾聴して、信頼関係を築いてから、リード(誘導)していきます。そのテクニックを次の商談に使って、その結果を発表します。ほとんどの社員が小森メソッドを用いると、成果につなげることができた。成功例は、次回の研修で発表することが課題として決まっていました。

▲小森さんの「スベらない商談力」研修で活用するストーリーマップ

小森 私の営業研修を受けたら、必ずといっていいほど成功例が出るんですよ。「このメソッドを使ったら、クロージングできた」とか「リスニングテクニックを使ったらスーパーのバイヤーの心の窓を開くことができて、シェアを拡大できた」とか。毎回、素晴らしい成功事例が上がってきます。それを発表することで発表者は自信が持てますし、聞いている方も次に使ってみようという気になる。まさにベストプラクティスですよね。研修で何度も繰り返すことでより身に付いていきます。

八橋 研修前と研修後で、自分がどれだけ成長したのかを感じられるので、成功事例を発表するということは良かったと思います。

SB とはいえ、いつも成功するとは限りません。失敗した事例についてどのように対応されていたのですか?

小森 そうですね。研修の場で失敗例も皆で共有するようにしていました。
まずは、私の方でどういうバイヤーで、どんな資料を持って行って、どんな流れでもっていったのか、しっかりと発表者にヒアリングします。ここで発表される失敗例は、他の受講者も同じような経験をしていることが多いんです。だから、しっかりとヒアリングしながら、その時の情景を再現してみま。そうすることで問題点が見えてくるんです。
「資料のこの部分が悪くてバイヤーの心の窓が閉じてしまった」とか「冗談で言ったことが相手の癇に障った」とか。問題点を受講者全員で検証し、次回、どのよう攻めるべきか作戦を立てます。
失敗例を発表する時に、中には「運が悪かった」という受講者もいますが、失敗も成功にも何らかの理由があるのです。何が成功した又は失敗した要因なのか、しっかりと理由を考え、その要因を知ることが重要です。その要因は、1回だけの経験ではわかりません。研修の中で、何度も仮定、実践、評価、改善を繰り返すことで、成功要因が分かり、各受講者を成功できる体質に変化させることができるのです。

八橋 私自身もこの小森メソッドのおかげで、状況を想定し、どんな失敗が起きそうか、そのため何をしなければならないかがわかるようになりました。成功のメソッドがしっかりと身に付いている感はあります。

小森メソッドを次世代に伝えるOGSM委員の存在

SB ベストプラクティスの事例は会社の財産となると思いますが、これも次の世代に引き継いでいかなければ泡となって消えてしまいます。

八橋 そうなんですよ。せっかく研修後に社内によい雰囲気が生まれても、しっかりと理解して知識を継承する人がいないと、そこで終わってしまいますよね。
そのため、研修後の次のステップとして小森さんから提案されたのが、小森メソッドを次世代に教えるOGSM委員です。この委員は、各支店にいる20~30代の若手の中から支店長が選び、集められます。次世代リーダー研修という名のもとに、小森さんが徹底的にこのOGSM委員に小森メソッドを叩きこみます。この人たちは私たちの間で「ミニ小森さん」と言っているんですが、このミニ小森さんが各支店には必ず1人はいて、部署内に小森メソッドを発信していくわけです

その「ミニ小森さん」たちも、今では課長クラスとなり、今度は次の世代に伝えています。本日一緒に同席している笹岡さんも、OGSM委員からこの「スベらない商談力」の本を教科書にして小森メソッドを習っている世代ですよ。

笹岡 私は直接、小森さんの研修を受けたことはないんですが、「心の窓」「クロージング」などの言葉は今でも普通に社内で使っています

八橋 研修後も研修で習ったメソッドが社内で継承されていくこれは小森さんの研修が他とは違うところではないでしょうか。小森さんの研修は、その場だけの付け焼き刃的な知識を与えるものではなく、結果の出せる小森メソッドを組織内に根付かせるためのシステムを構築し、長期的な目線で組織強化を考えたものでした。小森さんが、今の弊社の「ケンカができる」組織の基盤を作ったといっても過言ではありません。

小森 ミニ小森が今でもしっかりと育っているは嬉しい限りです。実際、次世代リーダーとなるトレーナーは、未来の会社のかじ取りに、とても重要な役割を担っています。このトレーナーたちが若い人を育て、その人たちは今、会社の中核を担う存在となっています。

八橋 やはり、研修は継続して実施することに意味があるのだと思います。研修1回限りでは、今の(ケンカができるという)営業基盤はできませんでした。

SB 小森さんの研修を継続して受ける前はどのような研修を実施していたのでしょうか?

八橋 知識系で単発のものが多かったですね。業界のことがわかるので、それはそれでいいんですけど、1年たてば「去年何したっけ?」という話になる。つまり、頭に残っていないんです。それに対して、小森さんの研修は確実に頭に残るし、着実に力になる。5年間継続して実施したことで、会社のベースとなる考え方はできました。会社の研修担当者としては、そこが重要なんではないかと思います

小森さんの魅力、それは否定しないこと

SB 最後に、小森さんの魅力を教えてください。

八橋  そうですね。簡単にいえば、「否定しないこと」ですかね。失敗しても、間違ったことを言っても、否定しないから、何でも言いやすい。そしてすぐに「素晴らしい!」と褒めてくれるんです。これで簡単に社員のモチベーションもあがるんです。先生はとにかく褒め上手、気づかせ上手。受講者の当事者意識が高かったです。みんな、積極的に研修に参加していました。
それから、数人の社員と小森さんとで行うランチ会も良かったようですよ。その時に、研修で言えなかったことを相談していたみたいです。そういった研修外でのきめ細かなフォローも小森さんの魅力だと思います。

小森 ランチ会ではざっくばらんにプライベートや仕事のことを話します。講師だからと斜に構えるのではなく、同じ目線で話します。そうすると、心を開いてくれるので、その後の研修がより効果的なものになるのです。

八橋  研修資料がこの「スベらない商談力」1冊だけというのも、とてもシンプルでわかりやすくていいですね。研修では他に資料は配られません。こちらに必要なことを書き込んでいます。

▲八橋さんが研修で使用した本にはぎっしりと必要事項が書かれてある

SB かなり読み込まれた感がありますね。

八橋 これは、大事な私の営業バイブルです。こんな感じで、研修時にかなり書き込みました。今でも付箋を貼って必要な時に読んだりしています。

SB 小森さんの研修は八橋さんの中でも強い影響力を与えたんですね。社員一人ひとり、ひいては組織全体を育てる小森さんの研修は、営業力で問題を抱えている企業に光明を見出す術(すべ)になるかもしれません。本日は貴重なお話しをありがとうございました。

本記事で紹介している研修プラン
スベらない商談力
元P&Gトップトレーナーが教えるナンバー1営業に勝つ法則

金鳥様が2013~2017年の5年間に採用してきた研修プラン。おとなしかったこれまでの営業の姿勢を「ケンカのできる」姿勢にまで変え、全社の販売シェア向上に貢献した。「商談は、お客様の心の窓を開くことから始まる」という前提のもと、お客様の心の窓を開き、クロージングするためのメソッドを論理的・実践的にわかりやすく紹介している。

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