弱小から常勝へ~東北楽天・北海道日本ハムに学ぶ勝てる組織の作り方~

鳥越規央 とりごえのりお

統計学者
江戸川大学客員教授

内 容

2005年からパ・リーグに新規加入した東北楽天ゴールデンイーグルス。
初年時の成績は、なんと首位から51.5ゲーム差のダントツの最下位だったのも記憶に新しいと思います。

しかし、それからわずか9年で日本一を勝ち取る球団に変貌した最大の要因、それは“セイバーメトリクス”(選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)を取り入れたことでした。

下位に甘んじていた頃の楽天の戦力を、セイバーメトリクスで紐解くと、田中将大、岩隈久志(2012年にメジャー移籍。)に代表される投手力は、パ・リーグの中でも屈指の陣容でした。その反面、決定的な弱点は長打力の低さ。4番5番の能力が他球団に比べ劣っていることが明白でした。そこで導かれた補強ポイントが「右の長距離打者」の獲得です。

球団社長自らが、メジャー17年で434本塁打を誇るアンドリュー・ジョーンズ(AJ)の獲得交渉を行い成功。また同時に、AJをチームで孤立させないために、ヤンキースをFAとなっていたケーシー・マギーも獲得。AJによる長打力の補強だけでなく、選手個々人の性格もデータに基づいた分析した上で、チーム内の人間関係にも配慮した補強を行います。力を発揮できる環境の整備も同時に行うことが、チーム改革には必須なのでした。

一方、パ・リーグの名門球団でありながら、長年弱小球団であった日本ハムファイターズも、北海道移転を機に、あらゆる局面に「データ」を活用することを断行しました。この改革で最も重要視されたのは、経験則や“勘”といった不確定要素を排除することでした。その結果、経営陣・選手・スタッフ全員が同じベクトルに向か って進むことができる強い組織を作り上げました。それは2012年ダルビッシュという絶対的エースが抜けても連覇を果たしたことで、その効果は証明されました。

以上のように、プロ野球チームにおける、選手補強、選手育成、選手起用は、一般企業にとっての 人事計画、商品開発、在庫管理と同義です。それらを有効活用し、強い軍団を作り得た組織が、勝利をつかむのも共通かと思います。

データ重視と聞くと、なんとなく血が通っていないとお思いになるかもしれませんが、決してそうではありません。勘や、好き嫌いといった主観を排除し、様々なデータから導き出される客観的で公正な評価こそが、あなたの組織に本当に必要な人材を確保させ、また今は結果が出せていなくとも、眠らせている才能を目覚めさせることができる近道であると思います。

これらの球団が優勝を争える組織に変貌した秘訣を、具体例をふんだんにまじえ、お話しいたします。

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