
職長教育は、建設業や製造業の職長となる人に必要とされる、安全衛生の知識・技能を学ぶ講習です。
この記事では、現場における職長の役割を明らかにしたうえで、職長教育の内容や注意点などについて解説します。
最後に職長教育におすすめの講師11人を紹介しています。安心して働ける現場の体制づくりに、ぜひ役立ててください。
職長は組織における現場管理者
職長とは「職場の長」や「作業グループのリーダー」のことで、現場で働く人を直接指示・管理する立場・役割を担います。
労働安全衛生法では「職長等」と表現されます。企業にとって、職長を「選任する」義務は、法律上、課せられてません。企業が業務を進める上で、必要と判断した場合にその現場に置かれます。しかし企業には「職長を教育する」義務があります。
特に建設業や製造業などでは、現場監督者として任命されています。職場によって実際の呼称は異なり、「班長」「作業長」「工場長」「リーダー」などで呼ばれているケースが多いでしょう。
職長の主な業務内容
では職長は具体的にどのような業務に従事しているのでしょうか。4つの内容について説明します。
①部下の指導・監督
職長は作業現場の中核を担う立場として、作業員への指揮監督を行います。
具体的な作業の指示を出すほか、業務を遂行するうえでは安全にも配慮しなければならないことを日々指導します。知識や技能・心構えなどを直接的に伝え、現場力を底上げする存在です。
②先取り安全衛生管理
職場の「不安全状態」や現場スタッフの「不安全行動」に気を配り、早期に発見するのも現場リーダーの重要な業務の1つです。
「不安全」とは安全性が確保できない状態や、事故の発生原因にまだ対策が施されていない状況のこと。正しい作業の流れ・方法を指導しつつ、仕事場に潜むあらゆるリスクの調査や点検も、作業員に率先して行います。
また万が一、職場で異常や事故が発生した場合には、被災者の救護などに当たります。その後は同じことを二度と起こさないよう、原因を調査・分析し、再発防止策を立てて実行しなければなりません。職長は現場の模範として常に「先取り」で安全衛生管理に従事します。
③品質・工程・原価など、その他の管理
安全衛生以外にも、品質・工程・原価・環境管理など、事業と職場の運営に関わる幅広い業務を担当します。
例えば成果物や提供するサービスの品質をチェックし、作業員に次の指示を出します。完成までの過程や課題を把握して人員配置を調整するなど、細かな判断も職長の仕事です。
④会社と現場との調整
さらに職長は、経営や部署・部門の方針を現場へ、現場からの意見を会社へ伝える、職場内のコミュニケーションの要としての役割を果たします。
それまでの経験や知識に基づき、会社や部署の目標達成のための具体策を考えたり、現場のメンバーから報告された問題を解決したり、さらに上層部へ相談したりします。
職長教育とは 目的と法的義務
職長教育とは「職長が部下にする教育」ではなく「企業が職長にする教育」のことです。ここでは職長教育が重要である理由を説明しましょう。
職長教育の目的
職長教育は、現場で働く人々が安心して作業できる環境を作るため、新たに現場リーダーに就く人が身につけるべき知識や技能を学ぶ体系的な講習です。
作業者の安全や健康を守るためには、リーダーの気配りや声かけ、環境の整え方が大きな影響を持ちます。教育を通じて、事故を未然に防ぐ方法や、働きやすい職場づくりの視点を養います。
チーム全体の安全衛生レベルの向上にも直結します。職場全体の安全衛生水準の向上には、職長教育が欠かせません。
職長教育の法的な義務付け
「労働安全衛生法(安衛法)」では、第60条において、「新たに職務につくこととなつた職長その他の作業中の労働者を直接指導又は監督する者」に対する教育を、特定業種の企業に義務付けています。
職長教育は分類上「努力義務」であり、違反時の罰則を伴うものではありません。しかし労災の防止には大きな意義を果たします。罰則がないからといって職長教育を怠らないようにしましょう。
建設業・製造業などさまざまな業種が義務の対象
もともと職長教育が法律で義務付けられている業種は、建設業や一部の製造業、電気業、ガス業、機械修理業、自動車整備業でした。
さらに2023年からは、法改正により、食料品製造業や新聞業、出版業、製本業、印刷物加工業が加わりました。
職長教育と安全衛生責任者教育との違い
職長教育とよく混同されるものに、「安全責任者教育」があります。安全責任者教育のカリキュラムは、職長教育に2時間のプログラムを追加した構成となっています。
職長教育が「現場作業を直接指示・管理する人」が対象者であるのに対し、安全衛生責任者教育は「協力会社など、複数の事業者が関わる現場で安全管理を担う責任者」に向けた教育です。両者とも「安全と健康に関する基本的な知識と対応力を身につける」という目的は同じです。
ただし建設業などでは1人が「職長」と「安全衛生責任者」を兼任するケースも多く、2つの内容を統合して合計14時間の一体型教育が実施されることもあります。
職長・安全衛生責任者教育研修で身につける知識・技能
それではここからは、職長・安全衛生責任者教育研修のプログラムに組み込まれているテーマを5つ紹介しましょう。
1.作業方法の決定及び労働者の配置に関すること
同じ企業や場所であっても、現場によって最適な作業手順・人員配置は異なり、いつも同じではありません。
現場リーダーは安全で効率的な作業の手順や現場スタッフの適正を考慮した人員配置の判断方法について学び、現場での指導力を高めます。
2.危険性または有害性等の調査及びその結果に基づき講ずる措置に関すること
職場に潜むリスクや有害性を特定し、それを低減する措置を決めるための一連のプロセスを「リスクアセスメント」と呼びます。
職場の安全・健康を率先して推進する立場として、安全衛生の基礎としてリスクアセスメントを講習で学びます。
3.異常時等における措置に関すること
異常とは、機械や設備、人の行動、天候などが、安全な基準から外れている状況のことです。これを放置すると重大な事故を引き起こす可能性があります。
職長教育には、こうした異常を早期に発見し、確実に災害を防止するための措置も含まれます。
4.労働者に対する指導又は監督の方法に関すること
現場の作業員が安全かつ効率的に作業を進められるよう、知識や技能を身につけさせる指導方法についても学びます。作業指示は要点や理由を押さえて明確に、相手の納得度を確認しながら行うのがポイントです。
さらに意欲を引き出す部下の育成法や、仕組みの継続的な改善方法なども教わります。
5.その他現場監督者として行うべき労働災害防止活動に関すること
また、設備や場所の保守管理の方法や、作業員の関心を高め自主的な取り組みを引き出す方法なども含まれます。そして、労災を防ぐのに有効なのが、過去に実際に起こった災害事例を知ること(ケーススタディ)です。
特定の事例を取り上げ、「このような場合はどうすべきか」と立場を置き換えて考えると、実際の現場でのリスク管理・対処に結びつけられるようになります。原因や対策だけでなく、事故の予兆となる異常や不安全状態に気づきやすくなり、日頃の安全衛生管理や指示・管理にも役立つでしょう。
職長教育のカリキュラムと受講形式
続いて、職長教育のカリキュラムや受講形式について説明します。所定の日時に会場で学ぶ形式以外にも、さまざまな選択肢があります。
職長教育のカリキュラム
職長教育は、必要な知識やスキルを12時間で身につけられるようカリキュラムが構成されています。講義や実習を通じて、作業フローの確認や危険予知活動、安全指導の方法などを習得します。
さまざまな主催団体により定期的に開催されており、日程・会場はwebでも確認可能です。オンラインや電話で申し込みを受け付けています。
各都道府県会場での対面講習
もっともオーソドックスな形式が、対象者が直接会場に出向いて受ける対面講習です。
各都道府県の労働基準協会連合会や、建設業の業界団体などが主催しています。開催日や会場を事前にwebでチェックし、各主催者が指定する方法で申し込みます。
出張講習
また、講師を自社や社外の会場(貸会議室など)に呼ぶ「出張講習」形式で職長教育を実施する企業もあります。
日時や会場だけでなく、内容に関しても自社の状況に合わせられるというメリットがあります。都合や好みに合う講師派遣サービスを検討してみてください。
オンライン講習
近年はオンラインでも講習を受けられます。対象者が1つの会場に集合して画面越しに学ぶものや、個人がPCで受けるものなどがあります。
座学スタイルの講義だけでなく、Zoomなどのビデオ会議ツールを取り入れたグループ討議など、実習プログラムもオンラインで受講可能です。
講習についての注意点
対象者へ講習を提供する際の注意点について、3つ補足しておきましょう。
1.受講に資格や更新は不要
職長教育は法的な資格を与えるものではなく、労働安全衛生法に基づき義務付けられた教育です。更新も原則的に不要です。
受講にあたって必要な資格や年齢制限はありませんが、実務経験など、独自の基準を設けている企業や団体もあります。また、修了実績は転職後も有効とされる場合があります。
2.能力向上教育が必要な場合もある
資格ではなく更新も不要です。しかしながら「能力向上教育」と呼ばれる再教育が必要となる場合があることに注意してください。
能力向上教育は、安衛法と厚生労働省のガイドラインにより、企業にとって「努力義務(推奨されるもの)」とされています。具体的には、設備の更新などで仕事内容が変わるとき、もしくは5年に1回を目安として実施します。特に中途採用者には、職長教育の受講履歴を確認しておきましょう。
法的義務ではないが一人親方にも必要
会社に所属していない一人親方の場合でも、講習が必要です。職長教育および安全衛生責任者教育を受けていないと、現場に入れないためです。
法律上の義務はありませんが、安全かつスムーズに業務を進めるため、プロジェクト参加前の受講を推奨しましょう。
SBおすすめ職長教育講師
ここからは、システムブレーンの職長教育講師、11人について紹介します。ぜひ自社の目的に合う講師を見つけてください。
多業種での実務経験とゼネコン安全スタッフ歴を活かし、現場に根差したリアルな安全教育を展開している講師です。職長教育の「リーダーに期待される3つの役割・機能=先取りの安全衛生管理・情報管理・部下の育成」から、リーダーシップ発揮のポイントを学びます。
【人気講演プラン】
リーダーに求められる3つの管理
労働安全一筋60年超のキャリアを持つCSP労働安全コンサルタント。豊富な現場経験と診断力を武器に、職長教育ではリスクアセスメントや管理者研修を通じて、安全文化の定着を支援。実務に即した指導で高い信頼を得ています。
【人気講演プラン】
明日からの安全作業のために
~安全意識の高揚と日常の安全衛生管理~
ゼネコンでの12年超の経験と30年以上の建設現場実績を持ち、特に土木・推進工事の安全指導に強みを持つ専門家です。実務に基づいたリアルな指導と多業種への対応力で、職長教育では即戦力を育てる実践的なカリキュラムを提供します。
【人気講演プラン】
建設業・製造業の労働安全
~安全は家族の願い、会社の望み~
辻太朗氏は、保護具メーカーでの経験と現場に根差した安全コンサルティングを活かし、職長教育において「現場のホンネ」に寄り添う実践的指導が魅力。安全第一の障壁となる課題にも踏み込み、事故を未然に防ぐ「気づき」を育てる研修が好評です。
【人気講演プラン】
「ホンネ」 と 「タテマエ」の中で本当の安全をつくる
鉄鋼業界での長年の現場経験と管理職歴を活かし、ゼロ災害を実現する実践的な安全管理手法に定評のある講師です。ヒューマンエラー防止や危険予知活動に精通し、700回以上の講演実績を持つ。理論と現場をつなぐ職長教育で信頼を集めています。
【人気講演プラン】
ゼロ災害のための効率的な安全管理の進め方
現場の安全を守る要となる職長教育
職長教育は、建設業や製造業の現場の安全を守るのに不可欠な教育制度です。また、教育の実施にあたっては、専門知識と経験が豊富な講師の派遣を、ぜひご検討ください。教育の目的や内容を正しく理解し、労災のない、安心して業務遂行できる環境づくりを目指しましょう。
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