命の大切さ、そして見守る人々の存在を気づかせ、優しい口調で語り掛ける岩崎順子さん。講演後に「心の深いところに届いた」「自分を初めて肯定できた」と涙する人も多く、「心洗われる講演」として好評いただいています。

これまで弊社では何度か岩崎さんにオンライン講演を依頼してきましたが、先日、オープンしたばかりの大阪スタジオで初配信がありました。生配信後に、岩崎さんにインタビューを決行。オンライン講演の魅力や難しさについてお伺いしました。

■目次

画面の向こうに感じられる聴講者の温かいまなざし

――本日はお疲れ様でした。オンラインでも岩崎さんの優しいお人柄が伝わる素晴らしい講演でした。オンライン講演はどれくらいされているんですか?

岩崎 もう十数回させてもらっています。初めて自宅からの配信したときは、緊張しました。私はいつも皆さんのお顔を見ながら、講演させていただいています。オンラインの場合は、皆さんの表情が見えないので、不安なところもありました。

しかし、やってみると、不思議と画面の向こうに聴いてくださっている方々の存在を感じ取れることができました。画面には、主催者様のお顔だけしか映っていなかってんですけど…(笑)。画面の向こうで皆さんがあたたかいまなざしで見ていただいているのだろうなと思いながら話をしました。

――オンライン講演の魅力とは何でしょうか?

岩崎 一番は離れた場所でも実施できることではないでしょうか。例えば、ある時、北陸の皆さんに向けて配信をしていたのですが、その場所は冬に豪雪地帯となります。もし、豪雪など何か天候のトラブルで私が移動できない場合、オンラインでその場から配信できるのが魅力だと思います。

それに、感染対策にもなりますよね。先日講演のためお伺いした学校では、校長室から、各教室にいる先生方に向かって講演の配信を行いました。各教室もソーシャルディスタンスをとって、密にならないように工夫されていたみたいです。
校長室には校長先生が横についてくださったので、聴講していただいている方の反応を知ることができました。

――そうですね。オンラインであってもだれかしら横についていたら、聴講者の反応を知ることができますよね。

岩崎 横についてくださった校長先生が、私の話を聴きながら、涙ぐんでおられたので私も感動してしまいました。今回も、(弊社)スタッフさんがこのように横についていただけたので、安心して話すことができました。

リアル講演後に元気をいただくお見送りの時間

――逆にオンライン講演の難しさとはありますか?

岩崎 あまり難しさは感じなかったのですが、自宅でオンライン講演をしている時は途中で(ネットが)切れたらどうしよう?と思っていました。それに、リアルの時は、講演後に出口で皆様をお見送りするのですが、それができないのが残念ですね。

その時に、来場者の方から元気をいただいていたので。「感動したよ」とおっしゃって手を握ってくれたり、肩をポンポンと叩きながら「涙が止まらなかった」と講演の感想をいただいたり…。ある会場で講演が終わってから、40分間お見送りしたこともあって…。そういう時間がないのは、正直寂しいですね。こんな時代だから仕方がないのかもしれませんけど…。

――わざわざ、お見送りされているのですね。

岩崎 そうですね。講演の後にはできるだけ出口に立って、来ていただいた方にお礼を申し上げるようにしています。皆さんからの率直な感想もいただけるので、とても貴重な時間となっています。激励されることも多く、力をいただきますね。

――講演直後に聴講者が感じたままの意見を聴くことができるというのは、リアル講演の良さですよね。

岩崎 そうですね。でもオンラインであっても、講演後に皆さんから感想を話していただいたりする時間があるときもあり、画面にその方のお顔が映し出されるのでそれはそれで元気をいただけます。
この間のオンライン講演では、10年前に私の講演に参加された方がいて、「会場だったらいけなかったけど、オンラインだったから視聴できました」という方もいらっしゃいました。画面越しに、「久しぶり!元気?」なんて言い合って。オンラインだと、歩くのが大変という人も自宅から参加できるので、そういうところもオンラインの魅力ですよね。

オンラインでも想いは伝わる

――岩崎さんのテーマは「命」であったり、「心」であったりするため、リアル開催で直接面を見て話す方が相手に想いを伝えやすいと思うのですが、そのあたりオンラインでは伝わりづらいなと感じたことはありますか?

岩崎 最初のオンライン講演では私もそのあたりのことを懸念していました。オンライン講演の後すぐに、主催者の方が参加された方の感想をメールで送ってくださったのですが、その中には「心震えた」「救われた気持ちがした」などリアルと変わらない感想が綴られていました。中には、自己開示される方や「自分に出来る一歩を歩んでいきたい」というポジティブな意見もありました。オンラインでも伝わるのだなぁと思いましたね。

――そうなんですね。オンラインであっても、岩崎さんの想いは伝わるものなんですね。

だれかを否定するのではなく、だれしも肯定する

――オンライン、リアル開催に関係なく、岩崎さんが講演する際にこだわってらっしゃる点を教えてください。

岩崎 そうですね。私の講演を聴きに来られた方がだれも傷つかないように意識して話すことは心掛けています。例えば、子どもの虐待をテーマにした講演では、もしかしたら自分ではコントロールできずに当事者になっている方もいらっしゃるかもしれないと思って話しています。「虐待はいけない」とだけ言ってしまうと、どんどん追い詰められてしまう人がいるかもしれません。なので、だれかを否定するのではなく、できるだけ肯定するようにしています

「差別してはいけない」「いじめは、いけない」とだけ言ってしまうと、さらに自分を追い込み、状況を悪化させてしまうかもしれない。そうではなく、人間にはいろんな心があって、そんな心も含めて一度受け入れてあげてくださいと伝えています。そうすることで、自己肯定力も上がると思うんですよ。本来、人って「生きる力」つまり、自分で立ち上がって歩ける力を持っていると考えています。自己肯定力が上がることで、その人が本来持っている「生きる力」も引き出されて、前向きに生きていけると思うのです。

――そうですよね。人は他人に否定されると、卑屈になって、どんどん自己肯定力も下がっていってしまいます。それが、さらなる虐待や差別、いじめの原因になることも考えられます。

岩崎 なぜこういうことをしてしまうんだろうとご本人も苦しんでいると思います。まずはありのままの自分を受け入れて、許してあげてくださいと。例えば、どんなことでもいいんです。辛い中、今日までよくがんばってくることができた。小さなことでも自分に「えらい」「よくがんばったね」と第三者的な視線で褒めてあげると、自分を受け入れられる心か芽生える思います。弱くてもいい。小さくてもいい。弱さは人の優しさがわかるための力。ありのままの自分の心を抱きしめることができれば、心が満たされていく…。本当の強さにつながっていく。私はそう考えています。

私自身は若いころ生きづらさを抱えて死んでしまいたいなぁと思った時期もありました。上手に生きられない自分、失敗をしてきた自分、講演ではそういった体験をもとに感じたことを話しています。もし、私が優等生で何の問題もなく生きてきたとして、「ああした方がいい」「こうした方がいい」と言っても、その言葉は誰かの心には届かなかったのではないでしょうか。

――苦労されたからこそ、岩崎さんの言葉が心に響くのでしょうね。

岩崎 もし、日常生活に疲れて来た方がおられたら、その時間は心をゆるめていただき、本来の元気を取り戻してもらえるような講演をするように心掛けています。

――だから、皆さん、講演の最後に涙を流されたり、岩崎さんに握手を求めたりするのでしょうね。
岩崎さんの講演を聴いて、涙を流して、心のつっかえを落として、そして元気になる。まさに「心の洗濯」ですよね。

岩崎 講演を続けていると親子三代で聴きに来られる方や、30回以上通っているという方もかなりいらっしゃいます。本当に嬉しい限りです。

▲社内スタジオでのリハーサルシーン

――岩崎さんの講演は「心に刺さる」と言われていますが、その理由はどんな点にあるとお考えですか?

岩崎 うーん…。講演でお話をするときは、その場におられる方々に合わせて内容を選ぶようにしています。ライブのような感覚に近いかもしれません。
みなさんの表情を見ながらお話をさせていただきます。「もし、自分だったら」とその話の中に入って聴いてくれることが嬉しいです。来てくれた方々が、会場の空気感、雰囲気、一体感を作ってくださること、ありがたく思っています。

――岩崎さんは、聴講者に寄り添って講演されているので、そのあたりもリピーターが多い要因なのかもしれませんね。本日は、お疲れのところありがとうございました。

岩崎順子 いわさきじゅんこ

いのちの講演家 (公財)和歌山県人権啓発センター登録講師


医療・福祉関係者教育・子育て関係者実践者

いのちの講演や体験談が心の深いところに届くと感動を呼び、人から人へ日本全国での講演は1000回を超える。人権、子ども、親子、高齢者、心、生と死、生きる力、認知症、グリーフケア、災害、戦争をわかりやすい言葉で明るく和やかに講演。参加者の方々とのご縁を大事に響き合える時間を作る。

プランタイトル

コロナ禍の中、人権とはどこか遠くの話ではなく、あなたの身近に、心の中に

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