「営業は足で稼ぐもの」と言われた時代も今は昔。何事も効率が重視される現代のビジネスシーンでは、営業も限られた時間で確実に顧客の心をつかみ、成約へと結びつけることが求められます。

今回はメンタリスト日本一にも輝いたビジネス心理コンサルタント・大久保雅士氏に、商談で使えるコミュニケーションのテクニックについてお聞きしました。最初の訪問で相手の心をつかむ秘訣から、クロージングの成功率を上げる裏技まで、明日からすぐに実践できる営業方法について解説していただきます。

Your Image【監修・取材先】
大久保雅士氏

メンタリスト
ビジネス心理コンサルタント

なぜ一生懸命話しているのに、人の心をつかむことができないのか?

営業をしていて「一生懸命に商品の魅力を伝えているのに、相手の反応が鈍い」「熱意をアピールしても空回りしている気がする」と、悩むことはないでしょうか?

話せば話すほど相手の気持ちが引いてしまう理由は、一生懸命になるタイミングを間違えているからなのです。

人は初対面の相手と接するとき、誰でも初めは警戒心を抱きます。特に相手が営業であった場合は反射的に「何か売りつけられる」と身構えるものです。その状態で熱意を伝えても、相手には「受注を取りたい」「ノルマを達成したい」という営業側の都合が透けて見えるでしょう。

営業では、まず相手の警戒心を解かなくてはなりません。警戒心を解いて相手の心をつかみ、自分のことを好意的に見てもらったうえで熱意や一生懸命さをアピールする、というのが正しい手順です。

営業は訪問数より、最初の商談で心をつかむことが重要

では、どうすれば顧客の警戒心を解き、心をつかむことができるのでしょうか?

以前は「顧客のもとに何度も訪問して印象づけること」という手法が重視されていました。しかし、インターネットを開くだけで次々に新しい商品やサービスの広告が目に飛び込んでくる情報過多の現代においては、残念ながらアプローチをただ重ねても顧客の記憶に残ることさえ難しいでしょう。

大切なのは、相手を驚かせて「この営業は他とはちょっと違うぞ」と思わせることです。

例えば、酒造メーカーの営業であれば「うちの新商品のビールはどこよりも美味しいので、ぜひよろしくお願いします!」といった話をするのが一般的でしょう。顧客側はこれまでに何度もそうしたアピールをされているので、名刺交換をするとき内心では「またか」と思ってしまいます。

そこであえて「実は、僕はお酒が飲めなくて、自社のビールも一度も飲んだことがないんです」と言うと、顧客は意外な展開に「えっ」と驚き、一瞬警戒することを忘れて相手に興味を覚えます。そこで「でも、うちのノンアルコールビールは飲みやすくて、僕も飲み会でいつも注文しているんですよ」と話すと、顧客に「お酒が飲めない営業」「ノンアルコールビール」といういくつかのワードを印象づけることができます。

このように顧客の予想を裏切ることが、ファーストアプローチで相手の心をつかむコツなのです。

明日からすぐ使える!人の心をつかむ商談のコミュニケーション術3選

顧客の警戒心を解き、こちらに興味を持ってもらうことができれば、次はいよいよ本格的な商談に移ります。ここでは商談を、①アイスブレイク ②提案 ③クロージングの3つに分けて、それぞれで使えるテクニックを紹介します。

①アイスブレイク(雑談)

「商談の最初の雑談が苦手で…」と悩む人が多くいますが、実は彼らが本当に苦手なのは雑談そのものではありません。ほとんどの場合、雑談から本格的な提案へと切り替える瞬間でつまずいてしまうのです。

「ところで…」と言って雑談の流れを完全に切ってしまうと、せっかく和やかな雰囲気を作ってきた努力が台無しになります。「今から営業するぞ」という営業側の緊張感が伝わってしまい、顧客も自ずと身構えてしまいます。

雑談から本題へと入るときは、接続詞の使い方を意識しましょう。例えば会話が盛り上がったところで「ちなみに…」と言って、本題に絡んだ話題へうまく移行していきます。「ちなみに、今のお話ですと社長はやはり現場のデジタル化を進めたほうがいいというお考えということですよね?」といった使い方です。

あるいは「そういえば…」という接続詞も便利です。雑談の中でふと思いついたように「あ、そういえば今のお話で思い出したんですが、先日社長に見せてほしいと言われていたデータを今日持ってきたんです」と資料を出せば、会話が盛り上がった流れを受けて、スムーズに本題に入ることができます

②提案

顧客への提案は「やる」か「やらない」かの2択にしてはいけません。成約率を上げるコツは「プランAをやる」か「プランBをやる」かの選択にして、「やらない」という選択を見えにくくしてしまうことです。

さらに「プランAとBのどちらにしますか?」と完全に相手に判断を委ねるのではなく、「御社と同じ業種では皆様Aを選ばれていますから、Aのほうがいいですよね」と、どちらかに誘導します。もし顧客がAがいいと思っていれば決断を後押しできますし、もしBがいいと思っていれば「いや、実は…」と顧客は自分の考えを口に出してくれるでしょう。

このように答えを誘導していくと、顧客がどうしても「AもBもやりたくない」と思ったときも、その理由をきちんと本音で説明してくれます。成約に至らなかった理由が明確になれば、その課題を持ち帰って次回の商談に活かすことができるでしょう

大切なのは、顧客の本音を引き出す提案の仕方を心がけることです。

③クロージング

いよいよ商談の大詰め、顧客に答えを出してもらうクロージングにおいても、とっておきのテクニックがあります。それは一度席を外して、顧客を1人にすることです

「クロージングでは沈黙が大切」と教わった人は多いと思います。これは顧客が頭の中で情報を整理し、きちんと考えられる時間をとるためです。しかし、目の前に答えを待っている営業がいる状態では、落ち着いてゆっくり考えられないというのが顧客側の心理です。

そこで顧客が考え込んで少し経った頃合いを見計らって、「申し訳ありません、ちょっと急ぎの電話を1本かけないといけなくて…」など理由をつけて一度退席します。そうすると営業の存在というプレッシャーから解放されて、顧客はやっと目の前の選択に集中できるようになるのです。

それでも顧客が悩んでしまって答えが出せないケースもあるでしょう。そんなときには「ちなみに一番気にかかっていらっしゃるのはどういう点ですか?」などのシンプルな質問を投げかけ、顧客が考えを整理する手助けをします。

決断を下すというのは簡単なことではありません。顧客が落ち着いて考えられる環境を整えたり、一緒に思考を整理したりと、顧客目線に立って必要なサポートをすることが成約への近道になります。

メンタリストの技を身に付けて、顧客の心をつかむ営業になろう!

「毎日頑張っているのに、営業成績が上がらない」と悩んでいる人も、コミュニケーションのとり方を少し変えるだけで、飛躍的に成果を挙げられる可能性があります。人の心をつかむためのテクニックは、実はどれもごくシンプルなものです。大切なのは「相手がどう感じるか」を客観的に分析し、顧客目線で話しやすいコミュニケーションを心がけることです。

今回お話を聞かせていただいたビジネス心理コンサルタントの大久保氏は、自身も保険営業として数多くの商談を経験しており、そこで磨き上げたスキルを活かして、メンタリストの大会で日本一にまで輝きました。大久保氏の講演では、今回紹介したもの以外にも、メンタリストならではの営業テクニックを数多く紹介しています。

さらに営業という職種に限らず、介護職や管理職向けの研修プランにも対応。リーダーシップ研修や新入社員研修でも、メンタリストの視点からビジネスを成功に導く方法を伝授しています

「顧客の心をつかむことで受注率を上げる戦略に切り替えたい」「カリスマ性のあるリーダーシップ人材を育成したい」「心理テクニックを取り入れることで、現場のメンバーがもっと働きやすくなるかもしれない」とお考えの研修企画ご担当者様は、ぜひ社内研修としてご検討ください!

大久保雅士 おおくぼまさし

メンタリスト ビジネス心理コンサルタント

メンタリスト日本一を決める大会で優勝。その技術を生かし、10年在籍した大手生命保険会社では配属店舗の全てを社内トップクラスへ導く。「心理誘導のプロ」として全国100か所以上で講演・企業研修を行ない、主なテーマである「人の心のつかみ方」は、「とにかく面白い!」と好評を得ている。
コンサルタント

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