オンライン講演では、資料を共有しながら解説する講義型あれば、本案件のように道具を使って実演しながらやり方をレクチャーする実演型もあります。
オンラインで実演をする場合、気を付けなければならないのがカメラワークです。
講義型と同じようにカメラを定点にして映し出しているだけでは、聴講者に伝わりづらく、必要な知識を伝授することが難しくなります。
本案件では毛布やパイプ椅子を使って救護法の実演がありましたが、3台のカメラを使い臨場感たっぷりに撮影し、配信することができました。
当日のカメラワークの方法と参加者の反応についてご報告いたします。

安全大会 担当 坂井かすみ

■目次
講演テーマ: 突然、大切な仲間・家族が心肺停止!~臆することなく救命処置をするために~
講師   : 野村 功次郎 氏
主催者  : A会社 様
開催日時 : 2021年6月
講演時間 : 90分
聴講者人数: 250人
講演タイプ: A. 会場からの生配信タイプ
配信ツール: Zoomビデオウェビナー

ハイブリッド型から完全オンラインに

本案件の主催者様は機械製造を行うA会社様。毎年6月に開催している安全大会で労働災害ゼロを目的とした講演を行いたいと、今年(2021年)3月頃にご依頼が来ました。「講師は、以前にお呼びして好評だった野村功次郎さん」「日時は6月●日」「オンラインの方法は、中規模ホールを使ったハイブリット型(オンライン+リアル開催)で」と、すでに詳細が決まっており、こちらとしても講師のスケジュールを確保するだけでした。

主催者様も普段から配信ツール「Zoom」を使いこなしていることもあって、オンラインに対しての不安はないご様子。当初、運営サポートは必要がないとのことでした。

講師のスケジュールも確保でき、あとは開催を待つばかりとなりました。ここで何事もなく実施されていれば、この場で紹介することもなかったでしょう。しかし、コロナ禍ではそうは簡単にもいきません。案の定、4月末に3回目の緊急事態宣言が出されました。

そうなると、中規模ホールでの一部リアル開催が難しくなります。急遽、主催者様の方で予約してあった中規模ホールをキャンセルし、完全なオンラインに切り替えることになりました。完全オンラインに切り替えるということは、配信場所を確保しなければならないということになります。配信場所は早い段階で主催者様の会社の会議室に決まりました。

講師はご自身の自宅や事務所からの配信も可能でありましたが、「救護法の実演があるため実際に配信会場から講演を行いたい」ということでA会社の会議室に来社することで話が決まりました。

実演のカメラワークをどうするか

講師の野村さんは、元々は消防士を23年勤め上げ、現在はその経験をもとに防災のスペシャリストとして救急救命の基本や方法をわかりやすく解説されています。野村さんの講演には、①動画やスライドを多用していること、➁緊急時にその場にあるものを使った救護方法を聴講者が実際に参加して実演して紹介することといった特徴があります。

リアル開催であれば、会場にいる参加者を数人指名し、ステージに上がってもらって実演することが可能です。ところがオンライン講演では参加者に参加してもらうことはできません。しかも、通常のオンライン講演では、スライド資料を共有しながらバストアップの講師の姿のみが画面に映し出されるため、全体が見えません。

講義型であれば、それだけで十分でありますが、実演となると撮影方法を考えなければなりません。
救護法の実演では、数人が参加するために時にはカメラを引いて全体を映したり、時にはポイントとなる箇所をアップしたりして、カメラワークに動きを与えないと、参加者に概要が伝わりづらく、せっかくの救護法も習得できないまま終わってしまう可能性もあります。

そこで、参加者によりわかりやすく実演内容を伝えるため、カメラワークを工夫することになりました。主催者様からは、カメラは何台必要か、どんな位置に配置すべきか、どんな角度から撮ったらいいのかなど、カメラワークに関する質問が寄せられました。
これについては、事前の主催者様、講師、弊社で行う三者打ち合わせで、大体の方針を決めました。講師が資料を使って共有する際は、講師の前にあるPCのカメラを使い、その横に実演用に2台のカメラを設置することになりました。実演用の2台のカメラは三脚に固定し、一つは全体を引いて撮影するズームアウト用、もう一つはあるものにズームして撮影したい時に使うズームイン用として使用。この2台のカメラにはそれぞれカメラマンがつき、ズームインやズームアウト操作を行いますが、カメラを切り替えるスイッチング役も必要となります。主催者様の方で動画撮影に詳しいスタッフがいるということで、スイッチングはその方にお願いすることになりました。事前打ち合わせでは、スイッチングを行うタイミング、どのカメラに画面を替えると効果的に映すことができるのか、詳しく話し合いました。

実演では、椅子や毛布を担架に使って人を運ぶ方法が紹介されました。例えば、パイプ椅子に患者をのせて運ぶ場合はズームアウト用のカメラで全体的に引いて撮り、毛布でけが人を固定するときには毛布を結ぶ手元をズームイン用のカメラで近づけて撮るなど、実演シーンをリハーサルして、どこでズームインするのか、どこでズームアウトにするのか、大まかに決めました。ここでポイントなのは、ズームインとズームアウトの特徴を知り、使い分けることです。

以下の通り、ズームインとズームアウトにはそれぞれの効果と使うべきタイミングがあります。

効果 タイミング
ズームイン ・細部を見せられる
・その部分だけに集中させることができる
・視点を誘導できる
・何かやり方を示すときなど、足元や手元など、その部分に集中させたい時
ズームアウト ・全体の状況を知らせることができる
・正体を知らせる、種明かしできる
・全体の状況を説明したい時。

またカメラワークには、水平に回転させる「バン」、上から下・下から上と縦に動かす「ティクス」などの手法がありますが、オンライン講演においてはズームイン・アウトだけで十分です

講演で実演がある場合は、このズームイン、ズームアウトの効果を知り、どのタイミングで行うのか、講師と話しあい、実際のリハーサルで行ってみるとよいでしょう。

本案件でも、当日、開始時刻の1時間前に、カメラワークのリハーサルを行いました。どのような見え方をしているのか、臨場感よく伝えるためにはどのカメラを使い、どのようなワークの方がよいか、最終確認を行いました。

視聴覚教材を多用した効果的な講演

前述通り、講師の野村さんは、動画やスライドを多用される方で、オンライン講演においてはそれがとても良い効果をもたらします。今回は「大好きな家族や仲間、同僚がもし心肺停止をしたら?」という設定で、救護方法をレクチャーしました。最初は、心肺停止状態とはどんな状況で起きやすく、またどんな危険性があるのか、スライドを使って解説。その後に、初期救命の必要性を説いた5分程度の動画を流します。野村さんは、停止した心肺に電気ショックを与え、正常なリズムに戻すAED(自動体外式除細動器)の推進も行っており、この動画ではAEDがなかったことで亡くなったケース、そしてAEDがあったこどて助かったケースを、心情に訴えるような音楽とともに実際の患者が映った画像をスライドショーで紹介しています。亡くなったケースには16才の女の子がおり、そのご家族によって書かれた手紙からは「いとおしい娘がいきなりいなくなることの残酷さ」そして「AEDさえあれば生き続けることができたかもしれない悔しさ」が伝わってきて、涙する人もいました。

初期救急の必要性を実感した後に、実際に人が倒れた場合に毛布や椅子を使った運搬方法、そしてAEDのやり方を実演するため、より強く記憶に残ります。

3台のカメラを使って多彩な角度から効果的に撮影され、その場にいるような感じで、実演シーンを視聴することができました。定点カメラではこのような臨場感は演出できなかったと思います。
本案件は、複数カメラを使って効果的にカメラワークを行い、より臨場感をもって参加者に知識を伝授することができた成功事例といえます。

カメラワークを難しいと感じたら

今回は、主催者様の方で、カメラやスイッチングに詳しいスタッフを用意できましたが、実際には用意できないケースの方が多いと思います。弊社では、そのようなケースを見越して、カメラやスイッチング操作に長けたスタッフが常駐し、オンライン運営をサポートしています。有料にはなりますが、配信ツール自体の使い方がわからない、撮影にこだわりたいといった主催者様から高い評価をいただいています。難しいカメラワークや、ややこしい配信も全てお任せできるプランもありますので、ぜひご検討いただけますと幸いです。

【この記事を書いたスタッフ】

坂井かすみ
金融業界を経て、システムブレーンに営業事務として入社しました。
趣味はドライフラワーアレンジメント、ドライブ、特に旅行が大好きで、国内海外問わず様々なところに訪れて、その場所の文化や自然に触れることが好きです。(ご当地の食べ物も)
仕事ではお客様へ丁寧な対応を心掛けながら、事務として営業のサポートをしております。

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