企業における研修のやり方はさまざまですが、PCなど電子機器の発達、手軽な撮影機器の普及などによって、研修を動画で行う企業も増えています。

しかし、初めて研修動画を作る場合、どんなものをどうやって作るべきかわからない人も多いのではないでしょうか。今回は、研修動画の作り方について解説します。

■目次

研修動画の種類別必要なコンテンツ

研修動画には、大きく分けて3種類あります。まずは、それぞれに必要なコンテンツを見ていきましょう。

セミナー(マナー講義、集団研修の動画化など)

セミナー形式の研修動画とは、集団研修が行われているところや、講師が解説しているところを録画し、動画化したものです。講座形式とも呼ばれ、授業のように講師一人が複数人の生徒に対して話す形をとります。

一度しか開催されない研修を撮影して社内に浸透させる、毎年同じ内容で行われる新入社員の研修に利用する、マナー講義を何度も見返して復習する、などの目的で活用されます。講師は受講者が飽きないよう、話し方や再生時間を工夫する必要があります。

マニュアル(作業手順や動作の確認)

マニュアル形式の研修動画とは、業務の作業手順や動作などをわかりやすくまとめた動画で、技術研修形式とも呼ばれます。接客やクレーム対応など、紙やPDF形式ではわかりにくい細部まで動画で理解できるため、効果的に研修が行えます。

これまでは、こうした技術部分は現場のOJTによって教え、足りない部分を紙やPDFのマニュアルで補うという形でした。しかし、動画撮影の技術が普及したことで、先輩社員の手を煩わせなくても済むようになったのです。

メッセージ(自社の理念や製品・サービスの紹介)

メッセージ形式の研修動画とは、社長や経営陣・先輩社員のメッセージを伝えたり、製品やサービスを紹介したりするための動画です。経営陣や先輩社員からのメッセージは社内の一体感を高め、共感を生みやすくなります。

また、自社の製品やサービスを理解するためにも、感覚的に理解しやすい動画の方が紙や口頭での伝達よりも理解が深まります。従業員の意識向上のためにも、情報の周知徹底のためにも効果的な方法です。

動画研修システムを使うメリット3つ

先輩社員や外部のセミナーでなく、動画研修システムを使うことによって、以下の3つのメリットが得られます。

①場所・時間を選ばず、繰り返し視聴可能

集合型の研修では、時間や場所が決められていたため、勤務時間が不規則な人や多忙な人、遠方の支社に勤める人は参加しにくいという大きなデメリットがありました。しかし、動画研修システムなら、受講者は自分の手が空いた時間にどこからでも視聴することができます
また、何度でも繰り返し視聴できるため、反復学習できます。苦手な分野は何度も見て覚え、既知の分野は早送りするなど、それぞれの学びやすいやり方で学ぶことが可能です。

②学習効果が得やすい

動画は文章や静止画だけでなく、動きやエフェクトによって直感的に情報を理解しやすいコンテンツです。音楽やストーリー性を活用できることから、講義などと比べても視聴者の印象に残りやすく、伝えたいことを届けやすいでしょう。

変化のない単調な教材では、受講者の集中力を保つのが非常に難しいのですが、動画なら適度にインパクトを与えながら聴講者の集中力を引き出すことができます。

③コストを抑えて均一な研修ができる

動画研修システムなら、会場を手配したり、参加者の交通費・宿泊費などを負担したりする必要がありません。毎回、研修のたびにこれらのコストがかかっていたのなら、大幅なコスト削減が期待できるでしょう。

動画教材は一度作れば繰り返し使えますので、同じ内容を毎年行う新人研修などであれば、よりコストダウンの効果が実感できるはずです。また、教え方や環境の差による研修効果の差もなくなり、いつでも均一な研修を行えます。

研修動画の作り方

では、実際に研修動画を作る手順について、4つのステップに分けて詳しく見ていきましょう。

手順①目標・目的や対象者に合わせて、テーマ・形式・閲覧方法を決める

研修動画を作るにあたり、まずは目的と対象者を定めて、達成すべき目標(ゴール)を決めます。その目的・目標に応じて、テーマや形式、閲覧方法を決めていきます。
例えば、新入社員に対してマナー研修動画を作成するとします。
以下のような内容で決めます。

目的: 新入社員に社会人としての意識を高め、ビジネスシーンに必要不可欠なマナーを身に付けさせるため、基本的なマナー講座を行う。
対象者:新入社員
目標:お客様対応のできるビジネスマナーの定着
テーマ:ビジネスマナー
形式:セミナー形式
閲覧方法: Vimeo、パスワード付での配信。PC・スマートフォン・タブレットからも視聴可能。

次に研修全体の内容を細分化し、それぞれの研修動画で伝えたいことや制作するコンテンツを一覧にまとめましょう。上記の例でいえば、以下のような形になります。

プログラム 内容 時間
基本的なビジネスマナー ①礼儀の仕方

➁名刺の渡し方

③挨拶の仕方

④お客様の案内の仕方

20分
電話応対 ①受け答え方

➁基本的な敬語の使い方

③メモの取り方

④伝聞の仕方

10分
ビジネス文書の作り方 ①ビジネス文書の基本

➁伝わる文書の書き方

③敬語の使い方

20分

だいたい何分程度の動画にするのか、パソコン・スマートフォンなど閲覧方法はどうするのかも重要なポイントです。繰り返し見るためには個人端末での閲覧がおすすめですが、その場合は社外秘の内容を含まないよう注意しなくてはなりません。

手順②絵コンテ・台本を作る

動画で伝えたいことや長さが決まったら、絵コンテや台本を作りましょう。研修動画は数人で協力して作るのが一般的なので、全員が理解しやすい絵コンテや台本を作る必要があります。

絵コンテではおおまかなイメージイラストと簡単なテキストで全体像を掴み、台本ではさらに具体的な内容に落とし込みましょう。絵コンテや台本を作らずいきなり撮影すると、必要な素材が足りず撮り直すことにもなりかねません。

絵コンテを作成するときは、以下のようなテンプレートを使用すると簡単に作成できます。

絵コンテおすすめの無料テンプレートサイト

  1. tollite
  2. Nayuta TV

手順③撮影する

絵コンテと台本をもとに、映像や音声を収録します。実際に撮影する前に、撮影場所や必要な道具をおさえ、出演者のスケジュール調整を行いましょう。もし、移動して撮影する場合は交通手段の確保も忘れてはいけません。

人がカメラを向いて説明する場合、照明やマイクのセッティングも必要です。マニュアル形式の動画を撮影するときは、複数のカメラをセットして違うアングルからも見られると、よりわかりやすい動画を作れます。

手順④ナレーションを入れる

全体の流れや映像に補足説明を入れたい場合はナレーションを入れます。事前にナレーション役を決め、ナレーション役の人に台本を渡しておきます。撮影した動画を見ながら音声だけを別に収録します。ナレーター役は、コマの時間と読む文字量に合わせて、早すぎずゆっくりすぎない速さでテンポよく話すようにするとよいでしょう。

手順➄編集・公開する

収録した映像や音声を使い、音楽や文字、エフェクトなどを挿入して編集を行います。特に、研修動画はどうしても事務的な説明が多く、受講者の集中力を保ちにくいので、映像にメリハリを持たせて惹きつける工夫も必要です。

編集も一人で行うものではなく、複数人で行うのが望ましいです。どうしても一人で行う場合、この段階で他の人にもチェックしてもらうのがおすすめです。不自然なところ、わかりにくいところを指摘してもらいましょう。

研修動画を作る際のコツ・注意点

研修動画を作る際には、以下の4つのコツや注意点を意識すると、より良いコンテンツを作成できるでしょう。

①受講者自身の気づきを促す

研修動画を見ることで、受講者自身に何らかの気づきを促すような設計にしましょう。適切な情報を与える、ワークやディスカッションなどで感情を動かす、自らの知識・能力・思考プロセスを振り返るポイントを作るなどがおすすめです。

これらはいずれも、受講者が動画の内容を他人ごとでなく、自分ごととして意識するための仕掛けです。当事者意識を持って動画を見ることで、モチベーションのアップにつながり、学習効果を高めることにもなります。

➁スマートフォンからでも見やすく、わかりやすい編集を

近年ではスマートフォンから閲覧する人が多いことを考慮し、スマートフォンでも見やすい画面にすることを意識しましょう。社外秘の内容で、業務用のパソコンからしか見られないように設定する、という特殊な場合を除き、スマートフォンから何度も繰り返し見る方が学習効率を高めやすいです

そのため、パソコンの大画面ではなく、スマートフォンの小さい画面から見ることを想定し、見やすい画面を作りましょう。テロップの文字は大きく表示する、映像の切り替わりやエフェクトは大きな動きにする、などの工夫が必要です。

③1つのコンテンツはより簡潔に

コンテンツ1つ1つを長くするのではなく、テーマを決めて短くまとめることを意識しましょう。1つの動画時間は、数分〜10分程度の長さに抑えるのが理想です。場合によっては、重要なポイントだけを30秒〜1分程度にまとめた動画も良いでしょう。短いコンテンツほどスキマ時間でも受講しやすいため、結果的に学習効率のアップにつながります。

④扱いやすい動画編集ツールを選ぶ

見やすくわかりやすい動画を作るためには、製作者にとって扱いやすい動画編集ツールを選ぶことも重要です。編集の経験が少ない、または未経験者でも扱いやすい動画編集ツールを選ぶためには、以下のような特徴を重視しましょう。

  • 少ないステップで編集できる
  • 操作方法が直感的でわかりやすい
  • 動画を自動生成してくれる
  • フォーマットが充実していて、インパクトのある編集がしやすい
  • 内蔵素材が豊富
  • 外部から取り込んだ素材を管理しやすい

おすすめの動画編集ツール

Teachme Biz:画像や動画にマークやテキストを入れられるので、わかりやすいマニュアル動画にできます。編集作業がステップで案内されるので、未経験でも編集作業が簡単です。

RICHKA:動画編集スキルは必要なく、シーンごとにテキストと素材を入れるだけです。業種や用途に応じた豊富な動画フォーマットが用意されているため、研修動画もラクラク作れます。

tebiki:OJTを撮影するだけで、システムが音声から字幕を自動生成してくれます。100ヶ国語以上の外国語へ自動翻訳も可能なため、ダイバーシティ推進にもおすすめです。

研修動画で、わかりやすく効果の高い研修を行おう

研修動画には大きく分けて、セミナー・マニュアル・メッセージの3種類があります。場所や時間を選ばず繰り返し視聴できる研修動画は、学習効果が得やすいだけでなく、コストを抑えて均一な研修を行うにも役立ちます。

研修動画を作るには、テーマや形式を決めて絵コンテや台本を作り、素材を撮影して編集するという手順が必要です。編集作業が未経験の場合は、扱いやすい動画編集ツールを選ぶところからスタートしましょう。

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