企業を取り巻く環境は刻一刻と変化しています。変化の厳しいこの時代に生き抜くためにも、社員の人材研修は特に重要です。
研修にはそれなりの費用がかかりますが、その費用の一部を公的機関が負担する「助成金制度」があります。
今回は、自社研修に活用できる助成金の種類と申請方法を詳しく見ていきましょう。

■目次

従業員の研修に使える助成金の種類

産労総合研究所が実施した「2020年度教育研修費用の実態調査」によると、2019年、企業が社員一人当たりにかけた研修費用の実績額は35,628円になり、前年度より1,021円アップしたという結果があります。今後この額は減少する傾向にあると予測されていますが、コロナ禍など先の見えない状況で、企業が生き残るためにも、人材教育は重要な柱となります。

とはいえ、全ての研修費用を負担するにも、企業に負担がかかります。そこで、厚生労働省など公的機関は研修に使える助成金制度を設けています。
従業員の研修に使える助成金には、主に以下の4つがあります。

  • 人材開発支援助成金(旧:キャリア形成促進助成金)
  • キャリアアップ助成金
  • 社内型スキルアップ助成金・民間派遣型スキルアップ助成金(旧:東京都中小企業職業訓練助成制度)
  • 労働移動支援助成金(受入れ人材育成支援奨励金)

今回は、これらのうちよく使われる「キャリア形成促進助成金(人材開発支援助成金)」「キャリアアップ助成金」「東京都中小企業職業訓練助成制度」の3つについて詳しくご紹介します。

人材開発支援助成金(旧:キャリア形成促進助成金)

まずは、人材開発支援助成金(旧:キャリア形成促進助成金)の概要や申請方法について詳しく見ていきましょう。

概要

人材開発支援助成金とは、企業などが雇用する労働者に対し、業務に関連した知識やスキルの習得に向けた教育・研修を行う際、経費・期間中の賃金などの一部を助成するものです。厚生労働省の制度で、全部で7つのコースが業種を問わずに受けられるコースは以下の4つとなります。

特定訓練コース…正社員向けの10時間以上の訓練やOJT(※1)やOff-JT(※2)を組み合わせた訓練。
一般訓練コース…正社員向けの20時間以上のOFF-JT(※2)訓練
教育訓練休暇付与コース…有給教育訓練休暇等制度又は30日以上の長期教育訓練休暇制度を導入し、労働者がその制度を利用して休暇を取得して受けた研修
特別育成訓練コース…有期契約労働者(パートなど)向けの正社員転換または処遇改善を目的とした訓練

※1 OJT…実務を体験させながら、業務を覚えてもらう教育手法
※2 OFF-JT…職場から離れ、セミナーや研修などを行う教育手法

申請方法

申請は、以下のステップで行います。

  1. 各支給要件を満たしているかどうか確認する
  2. 職業開発推進者を選任する
  3. 事業内職業能力開発計画を策定し、対象の訓練コースや助成金額を管轄の労働局に確認する
  4. 研修開始日の1ヶ月前までに訓練実施計画書を作成し、各都道府県労働局提出する
  5. 研修を実施する
  6. 研修が終了した翌日から2ヶ月以内に、支給申請書と必要書類を管轄の労働局に提出する
  7. 助成金の支給決定

助成金の上限金額

助成金の上限金額は、コースによって異なります。

※生産性要件を満たす場合…訓練開始日が属する会計年度の前年度から3年後の会計年度の末日の翌日から5か月以内に割増し分の支給申請をした場合。

キャリアアップ助成金

では、次にキャリアアップ助成金の概要や申請方法、上限金額について確認しましょう。

概要

有期契約労働者、短時間労働者、派遣労働者など、いわゆる非正規雇用労働者を企業内でキャリアップ促進するため、正社員化、処遇改善などの取り組みを行った事業者に対して助成金が支払われるものです。これも人材開発支援助成金と同じように厚生労働省の制度で、以下の7つのコースがあります。

正社員化コース…非正規雇用労働者を正規雇用労働者に転換、または直接雇用した場合
賃金規定等改定コース…全て、または一部の非正規雇用労働者の基本給などを2%以上増額したり、昇給したりした場合
健康診断制度コース…非正規雇用労働者を対象として、法定外の健康診断制度を新たに規定し、4人以上に実施した場合
賃金規定等共通化コース…非正規雇用労働者と正社員に共通の職務に応じた賃金規定などを新たに規定・適用した場合
諸手当制度共通化コース…非正規雇用労働者と正社員に共通の諸手当制度を新たに規定・適用した場合
選択的適用拡大導入時処遇改善コース…非正規雇用労働者に対し、社会保険の適用拡大の措置を導入して新たに被保険者とした場合
短時間労働者労働時間延長コース…非正規雇用労働者の週所定労働時間を延長することで、新たに社会保険を適用した場合

申請方法

申請は、以下のステップで行います。

  1. 支給要件を満たしているかどうか確認する
  2. キャリアアップ計画を策定する
  3. 対象の訓練コースや助成金額を管轄の労働局に確認する
  4. 各コース実施日の前日までに、管轄労働局にキャリアアップ計画書を作成・提出する
  5. 就業規則改訂など、それぞれの取り組みを実施する
  6. 賃金の6か月分を支給した日の翌日から2ヶ月以内に、必要書類を管轄の労働局に提出する

※コースによって、申請書提出までの期間が異なるケースがありますので、3.で管轄の労働局にしっかり確認しましょう。

助成金の上限金額

キャリアアップ助成金の上限金額は該当する非正規雇用労働者の数や取り組み内容によってさまざまですが、ここでは基本の支給金額の上限を一覧にしてみました。この基本上限に加え、基本以上の処置を行った場合プラスで加算されるものもあります。
※詳しくは、「令和3年度向けCUパンフレット」を参照

非正規雇用労働者を正規雇用に転換することが目的の助成金なので、有期雇用労働者を正規雇用に転換する場合に最も助成額が高く設定されています。

社内型スキルアップ助成金・民間派遣型スキルアップ助成金(旧:東京都中小企業職業訓練助成制度)

最後に、社内型スキルアップ助成金・民間派遣型スキルアップ助成金について、概要や申請方法を見ていきましょう。

概要

文字通り、東京都内の中小企業、または中小企業の団体が従業員に対して社内外で短時間の教育・研修(職業訓練)を行う場合、研修費や受講料の一部を助成するものです。短時間とは以下のように規定されています。

  • 社内で受講する場合(社内型スキルアップ助成金)…6時間以上12時間未満
  • 外部に移動して受講する場合(民間派遣型スキルアップ助成金)…3時間以上20時間未満

いずれも集合型訓練が基本ですが、社内で受講する場合に限り、同時かつ双方向のオンライン訓練も認められています。また、助成対象となるのは訓練時間の8割以上を出席した従業員に限られますので、欠席や遅刻が多い場合は助成対象とならないことに注意が必要です。

申請方法

申請は、以下のステップで行います。

  1. 支給要件を満たしているかどうか確認する
  2. 対象者や研修カリキュラム、日程を決定する
  3. 必要書類の作成方法など、企業・団体の所在地を管轄する職業能力開発センターに確認する
  4. 研修の実施期間に応じ、交付申請書を管轄する職業能力開発センターに申請期限までに提出
  5. 研修を実施する
  6. 研修が終了した翌日から概ね2ヶ月以内に実施報告書を提出し、審査が完了次第、助成金請求書を提出する

助成金の上限金額

上限金額は、社内・社外で異なります。

  • 社内…[助成対象受講者数]×[訓練時間]×430円(団体の場合、訓練に要した経費-収入の額を上限)
  • 社外…1人1コースあたり、受講料や教科書・教材費の1/2(上限20,000円)

助成金を利用する際の注意点3つ

助成金を利用する際は、以下の3つの点に注意しましょう。

①対象となる研修かどうか確認する

助成金は研修であればすべてに適用されるわけではありません。必ず、助成金ごとに支給要件が決まっています。そのため、助成金の対象となる研修かどうかきちんと確認してから申請を行いましょう。

➁募集期間を確認する

助成金には必ず募集期間が設定されています。いつから募集が始まるか、いつまでが締め切りなのかしっかり確認しましょう。申請期限に間に合わず助成金が適用されなかったケースも聞きますので、厚生労働省や管轄の職業能力開発センターのホームページをこまめにチェックするようにしましょう。

③書類不備に注意する

助成金の申請は要件も多く、その内容も複雑なので、書類不備がないかどうかは提出前によく確認します。不安な場合は、社会保険労務士など専門職の力を借りると確実です。

コロナ禍でのオンライン研修にも使える?

コロナ禍でのオンライン研修の場合、上記の助成金は基本的に利用できません。雇用調整助成金を利用するか、東京都のオンラインスキルアップ助成金を利用しましょう

■雇用調整助成金

新型コロナウイルス感染症の影響で事業活動を縮小せざるをえない事業主が、労働者の雇用を維持するため、一時的に職業訓練や休業を行うとき、休業手当や賃金などの一部を助成する制度。オンライン職業訓練も対象となっています。
詳しくは「雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)」を参照。

■オンラインスキルアップ助成金

東京都では、 都内中小企業等向けに、新型コロナウイルス感染症の影響などで在宅勤務が続く中でも従業員が自宅でオンラインセミナー、eラーニングなどを通じてスキルアップするための訓練にかかる経費の一部を助成しています。
詳しくは「オンラインスキルアップ助成金(中小企業人材スキルアップ支援事業)」を参照。

募集期間や要件をチェックし、上手に研修助成金を活用しよう

従業員の研修はさまざまですが、中には国や都道府県の助成金を活用し、企業の負担を軽くできる場合があります。特に、よく使われる人材開発支援助成金、キャリアアップ助成金、東京都中小企業職業訓練助成制度はおさえておきましょう。

また、コロナ禍でのオンラインスキルアップの場合、上記の助成金はほとんど使えませんが、雇用調整助成金やオンラインスキルアップ助成金(都内中小企業のみ)を利用できます。募集期間や要件を間違えないよう注意し、上手に研修助成金制度を活用しましょう。

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