場所や時間に関係なく学習することができるeラーニング。研修に導入することで、運営の効率化やコストダウンなど様々な利点をもたらします。

今回は企業研修にeラーニングを導入するメリットと、学習効果を最大限に引き出すための方法などを解説します。

eラーニングとは

そもそも、eラーニングとは、パソコンやタブレット、スマートフォンなどの情報機器からインターネットに接続し、主に「学習管理システム」を使って学ぶ方法を指します。

多くの学習管理システムには、受講者がログインして利用する「受講機能」と、管理者が受講履歴や成績管理を行う「管理機能」があります。また、教材を動画で配信することもできるため、作業の手順やコツの習得などを、実習形式で伝えることも可能です。

eラーニングを導入する4つのメリット

eラーニングの導入は、受講者と管理する企業側の双方にメリットがあります。以下の4つの視点から紹介します。

受講者のメリット① 受講場所・時間が自由

eラーニングの最大のメリットは、受講者が場所や時間にとらわれず利用できることです。パソコンやスマホなどの情報機器とネットワークさえあれば、受講者の都合の良いタイミングで学習を進めることができます。

受講者のメリット② 学習効果向上と学習水準の統一

eラーニングは、受講者全員が同じ学習教材を使用するため、講師の教え方に左右されず、均一な教育の質を維持できます。また、受講者が繰り返し学習ができるほか、学習管理システムに記録された成績を元に、自身の強みや弱みを把握しながら学ぶことができます。

企業側のメリット① 受講者の学習管理を容易にでき、フォローアップがしやすい

企業の研修担当者は学習管理システムの管理機能を用い、オンラインで進捗状況やテスト結果の把握などを行えます。学習管理を一元化することで、受講者一人ひとりの習熟度を正確かつ簡単に把握することが可能です。
例えば対象者全員の中から、進捗が停滞している人を絞り込んでリマインドメールを送ったり、一定の成績に達していない人を抽出したりするなどができ、管理者にとっても業務効率化につながります。

企業側のメリット② コスト削減

集合研修を開催すると、講師の派遣費用や会場費、配布資料の印刷費などのコストがかさみます。eラーニングを導入すると、コンテンツ以外の費用を抑えられるため、全体的なコストダウンを実現できます。

eラーニングの選び方と研修設計のポイント

企業は、さまざまな種類があるeラーニングシステムやサービスの中から、自社の課題に合うものを選択しなければなりません。最適な選択のための研修設計ポイントを解説します。

ポイント1.受講者の学習環境を確認する

まずは社内の状況を正確に把握しましょう。
受講者の学習環境はそれぞれ異なります。情報機器が普及したとはいえ、例えばパソコンに限定してしまうと、自宅に端末を持っていない可能性も想定されます。
現在は従来のパソコン向けだけでなく、スマホやタブレットを使ったモバイルラーニングが主流です。
また教材をダウンロードできるシステムを導入すれば、受講者が印刷して移動中などにも学ぶことができて効率的です。

ポイント2.他の研修形態と組み合わせて設計する

次は研修形態を設計します。
eラーニングや集合研修など、複数の方法を組み合わせた学習形態を「ブレンディッドラーニング」と呼びます。組み合わせ方に決まりはありませんが、どちらか片方だけの方法で実施するのと比較して、両方のメリットを得ることができます。
例えばeラーニングで事前学習した後に集合研修を実施すれば、それぞれ学習内容のインプット(予習)とアウトプット(演習・実習)の場として活用可能です。また順序を逆にすると、集合研修で得た学びを、eラーニングでさらに深めることもできます。

ポイント3.自社の目的や環境に合う企業を選ぶ

そしていよいよ企業選定です。
eラーニングシステムを提供する企業は数多く存在します。研修の実施目的や企業のIT環境に合わせてシステムを選択することが重要です。
選定基準の一例として、自社の業務内容により適う教材が必要であれば、自前でコンテンツを制作できる機能があるかどうかをチェックします。一方で既製コンテンツだけを使用するならば、教材の内容が研修目的と合致しているか、それが常に最新の情報に更新されるか、その結果費用はどのぐらいかかるのか、などの確認が必須です。
また、管理者が難なく使いこなせる程度の操作性であるかも、比較検討する上でポイントとなるでしょう。

ポイント4.レベルやニーズに応じたプログラムを選ぶ

次は学習プログラムの内容を検討します。
受講者のレベルに合致し、対象者に学んでもらいたい内容を、プログラムから選ぶ必要があります。
初学者レベルから専門的レベルといった、全受講者のレベルをカバーしているかも重要です。また難易度だけでなく、パソコンやスマホなどの異なる端末間でも進捗・履歴を同期できるかなど、進め方にも配慮しましょう。いずれも受講者の学習意欲にも関わってくるため、十分な検討が必要です。

ポイント5.教材をカスタマイズもしくは独自に用意する

最後に、必要に応じて教材の準備をします。既存の教材をカスタマイズする方法と、独自に作成する方法とがあります。
また、教材の種類も、配布用の紙媒体の資料をデータ化するものや、講師が実際に講義をしている様子を動画に収録するもの、ナレーションに合わせスライドで展開していくものなどさまざまです。
自社で過去に起こった事例や、自社で活用されている教育方法などを盛り込むと、受講者がより主体的に取り組めるようになります。

eラーニングが普及した背景

続いて国内外問わず需要が高まっているeラーニングが、ここまで普及した背景について解説します。

通信環境や端末性能の向上

eラーニングが定着した背景には、インターネット回線の高速化のほか、スマホ・タブレットなど情報機器が進化し、個人に普及したことが挙げられます。
サービスとしては1990年代に登場し、2000年代に入ってから、企業の人材育成に積極的に取り入れられるようになりました。

コロナ禍をきっかけに需要が急増

新型コロナウイルスの流行による行動制限の中、自宅にいながら学習ができるオンライン研修やeラーニングが重要な役割を果たしました。
矢野経済研究所が行った「国内eラーニング市場についての調査」(2023年4月)によると、提供事業者の売上高は、2019年度に対して2022年度には「約1.6倍」に増加しています。
また市場調査会社であるレポートオーシャンは、世界のeラーニング市場について、2030年には2021年の「約5.4倍」に達すると推計しています。
したがってeラーニングシステムは、国内外を問わず今後も市場拡大すると予測されます。

従来の研修スタイルとの比較

最後に、eラーニングと、従来の研修スタイルである集合型研修やオンライン研修を比較します。

集合型研修との違い

集合型研修は、一度に多数の社員へ同じ内容の研修を行うことができるという点で、効率的です。また対面で実施するため受講メンバー同士の関係性向上や、講師に直接質問が可能といったメリットもあります

一方で、企業側には研修会場の選定や設営のほか、資料の印刷、講師の手配など、細かな事前準備が必要です。また費用面でも会場費や講師への謝礼など、多くのコストがかかります。
その点、eラーニングなら運営側は時間的・経済的コストを抑えることができます。さらに受講者にとってもスケジュール調整などがしやすくなり、便利です。

オンライン研修との違い

eラーニングとオンライン研修はいずれもオンラインの学習形態です。
eラーニングは、受講者がそれぞれのペースでコンテンツを利用し学習するオンデマンド型です。一方、双方向型であるオンライン研修は、リアルタイム配信を行うことで、講師と受講者がコミュニケーションを取りながら学びを進めます。
したがって知識習得を重視するテーマにはeラーニングが、技能や交流を重視するテーマにはオンライン研修が向いているといえるでしょう。
事前にeラーニングで基礎を習得した上で、後日グループワークやロールプレイなどの体験型オンライン研修に参加し、より実践的なスキルや知識を身に付けることも可能です。

他の開催形式と併合することで研修効果がアップ

人材育成や社員教育に、研修は必要不可欠です。業務の進め方や働き方が多様化する今、eラーニングを導入すれば、さまざまな業界や業種に合わせた研修が可能です。
また、集合研修など従来の方法との併用も効果的です。弊社では集合型・オンライン型研修の講師派遣や運営サポートを行っています。eラーニングと併用することで、研修効果もさらにアップします。お気軽にご相談ください。


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