西洋から学ぶリーダーシップ
リーダーに求められるのは「決断力」と「奉仕の精神」

黒岩 徹 くろいわとおる

元毎日新聞欧州総局長
東洋英和女学院大学教授

提供する価値・伝えたい事

紳士・淑女もイギリスのリーダーになるべき人なのでリーダーシップと重複する面がある。
私は毎日新聞ロンドン支局長時代、サッチャー首相に夫婦で首相官邸の晩餐会に招かれた。
そのときサッチャー首相にリーダーとしての最も大事な要件は何か、と訪ねると「決断力」との答えが返ってきた。
さらに西欧でリーダーとして尊ばれるのは、「ドント・パニック」の精神、ユーモアの精神である。だが最大の要件は、人のために尽くす、キリスト教的サービスの精神であろう。
日本人も、ユーモアはなくとも、パニックにならず、人のために尽くす態度が実はリーダーに求められるのではなかろうか。

内 容

<内容・進行例>
■リーダーシップ向けの場合
1.「決断力の必要性」
 サッチャー以外にナポレオンの部下グルシー将軍の例。

2.「前例主義の排除」
 日本の官僚にあるような前例主義は、西欧のリーダーにはない。世界最大の保険会社ロイズの再建は前例主義との決別にあった

3.「責任をもつ、とる」
 リーダーは責任を回避してはならない。ノブレス・オブリージとはなにか。ワーテルローの勝利はイートンのラグビー運動場から生まれた。

4.「ドント・パニックの精神」
 イギリス紳士・淑女のパーティーで招待主の家に泊まって、間違って隣の部屋を開けたところ、シャワー直後の全裸の淑女に出くわした紳士がいる。紳士は、少しもあわてずに「エクスキューズ・ミー・サー(失礼、殿方)」と言って、自分は淑女の裸を見たわけでなく、男を見たと咄嗟に言わなければならぬ。私(講師)の英人親友は、私を見て「お前なら、サンキュウー・マダムといってしまいそうだ」と言った。

5.「ユーモアの精神が必要」
 ユーモアが歴史上政治的力を発揮した例さえある。

6.「人間的幅の広さを示すため、豊かな趣味が必要」
 趣味の幅はイギリスが一番。ラット・ハンティング(ネズミ狩り)まである。歴代英国首相はみな多趣味。サッチャー首相だけ政治が趣味で、異色政治家。

7.「人のために生きる」
 ロンドンのホスピスの医師が、末期がん患者は死の近いことを告げられると落ち込んで土気色になるが人生最後に顔を輝かせる。その契機は、自分の人生で人のために尽くしたことを思い出し、生きたかいがあったと自覚するときである。リーダーや紳士もまた人のために生きようとしている。

■紳士・淑女の条件を加味した講演の場合
1.「マナーを正しく」
 マナーは人に不愉快に思わせないこと。エリザベス女王の晩餐会で肘をテーブルにつけて いるものには、女王が「お体が悪いのですか」と聞く。これを二度まで聞かれたら、もう二度と晩餐会には招 待されない。もし聴衆のみなさんがバッキンガム宮殿の晩餐会に招待されたらテーブルに肘はつかないにように。

2.「フェアの精神」
 イギリスに最初にいったとき、2歳になる息子が友人と遊んでいて覚えた最初の英語が「ノット・フェア(公正じゃない、ずるいよ)」。フェアであることが紳士・淑女の条件。スポーツもフェアを要求される。たとえばゴルフの打数はフェアに申告すること。英国議会で嘘をつくことは、最もアンフェアとして排斥される。

3.「独創性が重要」
オックスフォード大の入試では独創性が重要視された。イギリスの科学者のノーベル賞受賞者は科学者の数の割合でいけば世界一。変わった人間が尊ばれる。変わった(curious)という言葉は英語ではプラスの語感がある。

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