森は海の恋人
~人の心に木を植える~

畠山重篤 はたけやましげあつ

NPO法人森は海の恋人 理事長

提供する価値・伝えたい事

森と川と海は一つです。どのような形で保全するのか、これからの問題ではないでしょうか。
宮城県のカキ養殖業者で、「森は海の恋人」運動を中心に、環境教育の実践例などをお話を致します。

内 容

海を考えるときは、川と森のことも考えなければいけません。
 例えばカツオ漁では川が重要。カツオはカタクチイワシを食べ、カタクチイワシは動物プランクトンを食べ、動物プランクトンは植物プランクトンを食べる。雨水が森の腐葉土を通って川へ流れ、植物プランクトンを育てる養分が海へ流れ込むのです。このように、森と川と海は一つなのです。

 昔、小学校の先生に教えられ何となく理解していたつもりの食物連鎖が、実はとてつもない意味かあったのです。例えば1キロの魚が誕生するには、その10倍の餌(小魚)が必要。10キロの小魚には100キロの動物プランクトンが、100キロの動物プランクトンには1000キロ(1トン)の植物プランクトンが必要なのです。
 さらに、植物プランクトンは光合成生物ゆえに海に溶け込んでいる二酸化炭素を固定化しています。海にも大森林が存在しているのです。じつは温暖化の切り札は海の森の復活しかないとも言われています。

 私は「森は海の恋人」運動で山への植林活動を続けています。運動の名前は、宮城県気仙沼湾に注ぐ大川上流域に住む歌人、熊谷龍子さんの歌から取りました。熊谷さんはナラ林に覆われた場所に住んでいます。私が山と川と海とのつながりを話すとびっくりされていました。普通は、海から山を見ることはありませんからね。日本は雨が多い国で、川が血管のように海へ流れ込んでいます。腐葉土から流れ込んだ水が田んぼの稲を育て、海の魚介類をはぐくんできました。

 また、川は人や物を運ぶ動脈。上流の人は下流の人のことを考え、下流の人も上流の人のことを考えてきた。現代社会は、新幹線や高速道路などの交通網の発達で横のつながりが強くなり、川と海のような縦のつながりがなくなって、人と人との関係まで切ってしまった。ある県の川の流域では「よい子は川で遊ばない」という標語が立っています。現代の教育は子どもを自然から遠ざけ、自然の中で五感を働かせて遊ぶことがなくなっています。私は山間部の子どもを海へ招待する環境教育を続けています。これによって、山間部の子は、歯を磨く際に歯磨き粉の量を気にするほど、海のことを考えて生活するようになりました。

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