震災の教訓と復興まちづくり

松本 誠 まつもとまこと

市民まちづくり研究所 所長
元 神戸新聞調査研究資料室長

提供する価値・伝えたい事

まちづくりのうえで震災の大きな教訓とされたことは、三つあった。
一つは、より高く、より速く、より便利にという技術や経済効率優先の近代的な都市構造や暮らしのありようを反省し、自然との共生をはかり、集中依存型から自律分散型の都市構造に改めていくこと。二つ目は、行政や企業組織に過度に依存することを改め、自助・共助・公助の役割分担を見直し、可能な限り「自分でできることは自分でやる」「近隣やコミュニティー、地域社会でやれることは共同しておこなう」ことを基本に、どうしても公的な仕事に委ねなければならないことだけを公的機関に委ねるという分権的、補完性の原理にもとづいた社会の仕組みをつくっていくこと。三つ目は、そのために住民自治、地域自治の仕組みを再構築していく。住民主体のまちづくり、地域づくりを進めていくこと。

内 容

阪神・淡路大震災以降、「復興10年」という時点を常に意識してきたが、まさかこんな状況下で10年を迎えるとは思いもよらなかった。昨年の日本列島は台風、豪雨・水害、地震と相次いで"災害列島"と化し、年の終わりには史上最大の自然災害ともいわれるスマトラ地震&インド洋大津波災害に見舞われた。まさに大規模災害は地球規模に拡大したといえる。
 そんな中で迎えた「KOBEの復興10年」は、いささか色あせした感がなくもないが、復興まちづくりの側面だけをみても、その「光と陰」はこれからの地球規模の災害への対応に大きな課題を投げかけている。否、大震災が20世紀末の歴史的な転換期に起こったというめぐり合わせが、単なる災害対応を超えて新しい社会のあり方に警鐘とヒントをもたらしてくれたものとして、10年目の検証の意義は大きい。災の教訓が「復興まちづくりに」にどう生かされたのかを振り返るとともに、住民主体のまちづくりを通じて新しい分権型社会における住民自治の仕組みを模索する復興まちづくりの光の部分をお話させて頂きたい。

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