いかに食べるかは、いかに生きるかにつながる

高見澤たか子 たかみざわたかこ

ノンフィクション作家

提供する価値・伝えたい事

食卓から新しい文化を発信する
スローフードで、生き方を問い直す

内 容

対人関係がうまくできない人間が増えている。あるいは家庭内のコミュニケーションの欠如、すぐキレル子どもたち、極端な自己中心主義の大人たち。さまざまな人間性のゆがみが、いま私たちの暮らしを脅かしています。
なぜ?どうして?これから子どもたちをどう育てていけばいいの?老後はどんな目的を持って生きればいいの?

 こうした問いに対する答えの一つがいま世界に広がりつつあるスローフードの考え方です。「手軽に早く」食べられる大量生産、大量消費のファーストフードに対して、「安全でからだにいいもの、土地独特の伝統食っくり食べよう」というスローフードの呼びかけは、イタリアから始まり、たちまち人々の心を捉えました。
 生産者と消費者を結ぶ試み、有機農業の野菜や配合飼料を使わずに育てた家畜の肉や卵、これまで私たちは何も知らずに買っていた食品の由来を確かめ、考えながら食品を買うようになる、それだけで私たちの暮らし方は変わります。自分で考え、自主的に選択する習慣が、生き方を変えていくのです。自然でおいしい食べ物を求めようとすれば、さまざまな人がかかわりあい、協力しなければならないことに気づくからです。

 家族や友人とで食卓を囲むことの大切さも再認識されています。からだにいい食べ方やデリケートな味覚をできるだけ早い時期から子どもに教えること、昔からの伝統食を次世代に伝えていくこと、それが親たちの責任であり、また食卓を通じての親子のおしゃべり、笑いが、子どもの心の順調な発達に欠かせないものであることをさまざまな研究や調査が明らかにしています。心をときほぐし、人間らしい感性を育むための「食育」もスローフードの重要な目的です。
「健康的な食事」として、日本食がますます世界で注目されていることを考えると、日本の伝統食を、超高齢社会の只中にある私たちがもっと積極的に取り入れていく工夫が大切です。健康で長生きするための秘訣は、実はそれぞれの地域に伝わってきた食べ物にあることに改めて気づくのです。祖先から受け継いできた食文化をスローフードという新しい視点から見直す時が来ています。

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