農業と福祉の連携で地域課題を解決!
~最先端の取り組み事例と今後の課題~

波田大専 はだだいせん

松下政経塾 第39期生

想定する対象者

農業者の方、JA職員の方、介護職の方(介護福祉士)、リハビリ職の方(作業療法士、理学療法士)、看護職の方、行政職員の方(農政課・障害福祉課・高齢者福祉課など)、国会・地方議員の方、ケアマネジャーの方

提供する価値・伝えたい事

農福連携に取り組む農家や福祉事業所を全国各地30か所以上を回って得た先進的な取り組み事例を、わかりやすく体系的にまとめてお話させて頂きます。農福連携の取組拡大に向けた成功のポイントや課題についてもご提案致します。

内 容

【キーワード】
 特例子会社/就労継続支援A型事業所/就労継続支援B型事業所/ハローグッバイ/園芸療法/グループホーム/デイサービス/オランダのケアファーム/仕事付き高齢者向け住宅/冬場の農作業/自治体の取組/共生型/


【内容概略】
1.農福連携の効果
 北海道当別町の養鶏場Farm Agricolaでは、就労継続支援A型事業所として精神障がいを持つ人たちを雇用しています。水野智大代表は、長年精神科の看護師として勤務された経験があり、「精神障がいは病院や薬で治療できるものばかりではなく、大自然に囲まれたこの養鶏場で鶏の世話をすることで元気になる人が多い」と語ります。
 北海道恵庭市のグループホームこもれびの家では、認知症の入居者の方々が近隣の農家さんのもとで、タマネギの根切り作業に取り組んでいます。北海道においては農閑期である冬場に仕事がなくなってしまうことも農福連携の大きな課題の1つですが、ここでは冬も屋内で大豆の選別作業を行い、会話を楽しみながら和気あいあいと作業している様子が印象的でした。農作業を通じて、「要介護度が下がった」「失語症が改善して語彙が増えた」等、ADL(日常生活動作)の向上効果が出ています。
 このような農福連携によって得られる効果は、福祉側だけに留まりません。深刻な人手不足に悩む農業現場にとっても、こうした障がい者や高齢者の方々の活躍は大きな力となっています。


2.成功の秘訣は「作業の細分化と単純化」
 例えば、先ほどのタマネギの根切り作業は、①茎を15cm残して切り、②根は全て切り落とす作業です。通常は、この2つの作業を1人の作業者が同時に行いますが、知的・精神障がいを持つ方や認知症の方は1人ではこの2つの作業を正確にこなすことが難しい場合もあります。そのような場合でも、①茎を切る係の人と、②根を切り落とす係の人とで作業を分担し、複雑な作業工程を細分化して単純化することで誰にでもできる作業となります。
 「この人にはこの作業はできない」と決めつけてしまうのではなく、「この人にもできるような作業にするにはどうしたら良いか」という視点で工夫を重ねることが、農福連携の成功の秘訣です。

3.農福連携の課題と自治体の取組み

 農福連携に関心を持つ農業者と福祉事業所のマッチングは、大きな課題の1つです。通常は接点を持たない両者が自力で協力先を見つけることは容易ではなく、行政としても担当窓口が農政課と福祉課に分かれているため内部連携が難しいのが現状です。

 そこで、北海道恵庭市では原田裕市長のリーダーシップのもと平成28年に「恵庭市農福連携による障がい者等就労促進ネットワーク」を立ち上げ、行政主導で農業者と福祉事業所のマッチングに取り組んでいます。

 また、恵庭市では取り組みの事例集や作業マニュアルを冊子やHP、動画で共有している点が印象的でした。先ほどのタマネギの根切り作業の要領等、各地に散在するノウハウを一元的に集積し、広く共有を進めることが取組み拡大に繋がるものと確信しています。

根拠・関連する活動歴

松下政経塾では、「農福連携」を研究テーマとし、全国各地30か所以上の農家や福祉事業所を訪問し、見学やヒアリング、作業体験を通じて農福連携の最前線を現場で研究して参りました。2019年には「認知症サポーターキャラバンメイト養成講習」を修了し、認知症サポーター養成講座の講師として活動を開始。2020年には、「第4回大地の力コンペ」において、「高齢者農福連携ネットワーク」の構想を提言し、「未来シーズ賞」を受賞致しました。2020年3月には「農業と福祉の連携で地域課題を解決!先進事例を追いかけた」というテーマで「アゴラ言論プラットフォーム」にレポートを寄稿。

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