心身の健康と生活環境:環境の及ぼす効果

上野吉一 うえのよしかず

中部大学 特任講師

想定する対象者

人や動物の健康に興味・関心のある方
人や動物の心の健康に興味・関心のある方
人や動物の生活環境をより良いものしようと考えている方
人や動物の幸福度を高めたいとお考えの方
動物により幸福な生活をおくらせたいと考えている方

提供する価値・伝えたい事

人以外の動物において、生活環境は食べ物を食べ、寝る場所としてのみあるのではない。豊かな刺激や選択肢がある環境で生活することは、脳の健全性を促し、神経細胞の発達や記憶力の向上が見られたり、健全な心の維持に役立つ。また、生理的な変化も見られ、ストレスの影響が低下したり、免疫機能の向上につながったりする。動物の一種である人にとっても、こうした便益効果は期待され、事実さまざまな影響が明らかにされ始めている。わたし達は、近代化の中で見失った環境とのつながりを、改めて見直し取り戻すことが必要だろう。人もまたホモ・サピエンスという動物なのだから。

こうした観点から、心身の健康に対する環境の影響を解説する。

内 容

健康とは単に病気や怪我をしていないということではない。WHO(世界保健機構)は、身体が健全であるだけではなく、心も健全であり、周囲の人達との関係も良好であること定義している。健康を作り維持するのは、医療による予防や治療によってばかりではない。たとえば、最近の研究では、緑の多い環境を体験すると、脳の働きが安定し、免疫機能が高まるといった効果があることが示されている。これは単なる気分転換によるものではなく、環境との関わりによって生まれる効果である。こうしたことは、当然動物においても示されている。動物も刺激豊かな環境で生活することにより、身体や脳の発達が促されたり、免疫機能の向上といった生理的変化も生じる。人も含めた動物にとって、環境は単に生活する場以上の働きを持っている。近代化の中で生活を合理化・効率化を進め、環境との関わりを単純化してきた。一方で、シアトルのアマゾン本社が、ジャングルの中にあるかのようなオフィスを作り、環境の重要さを見直すといったことが起きている。わたし達は心身の健康を高め、健全な生活を送るために、生活環境を見直す時期に来ている。

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