厳しい残暑が続く中、全国各地で開催された夏の人権啓発・人権教育講演会も終盤です。今回は法務省が掲げる主な人権課題の中より「障害のある人」に関する問題として、講師の金澤泰子さんと金澤翔子さんの講演をご紹介させていただきます。

【金澤泰子さん プロフィール】
金澤翔子の母。1962年、明治大学入学。書家の柳田泰雲・泰山に師事。1990年、東京・大田区に「久が原書道教室」を開設。著書に『愛にはじまる』(ビジネス社)、『天使の正体』『天使がこの世に降り立てば』(共にかまくら春秋社)、『翔子の書』(大和書房)、『涙の般若心経』(世界文化社)、その他多数。久が原書道教室主宰。東京芸術大学評議員。日本チャリティ協会理事。

【金澤翔子さん プロフィール】
1985年、東京生まれ。1990年(5歳)のときより母・泰子に師事し、書道を始める。2005年(20歳)に銀座書廊において初の個展「翔子 書の世界」を開催。その後、建長寺(鎌倉)、建仁寺(京都)、東大寺(奈良)などで個展を開催。2012年のNHK大河ドラマ「平清盛」の題字を揮毫。2013年には国体開会式に於いて巨大文字を揮毫。紺綬褒章受章。著書に『小さき花』(小学館)、『希望の筆』(佼成出版)、『翔子』(角川マガジンズ)、『お母様大好き』(いきいき株式会社)がある。

■金澤翔子さんによる席上揮毫

(*席上揮毫(せきじょうきごう)・・・揮毫(きごう)とは、毛筆で何か言葉や文章を書くこと。大衆の前で揮毫を披露する事を「席上揮毫」と呼ぶ。(wikipediaより))
700名以上の方が集まり満席となった会場が静まり返る中、翔子さんの席上揮毫から講演会がスタートします。人権講演会ということで翔子さんが選ばれた言葉は「共に生きる」。全ての人の幸せと平和を願う翔子さんの心が込められたような力強い書に、会場は拍手喝采です。

 

■金澤泰子さんによる講演

翔子さんの席上揮毫に続き、泰子さんによる講演会です。泰子さんが42歳の時に翔子さんを授かり、生後52日目の時に医師から翔子さんがダウン症であると宣告を受けられたそうです。絶望で日々涙にくれていた当時の心境を吐露された上で、幸福感に溢れる毎日を送る今の生活に至るまでのご自身の思いや考えの軌跡を振り返りながらお話しされました。


「授かった翔子がダウン症と宣告された時、私は想像を絶するような地獄の中にいました。今のように世間の理解やダウン症の情報なども少ない時代、私は翔子を隠すように育てていました。そんな翔子も小学生となり普通学級で学んでいたのですが、何をやっても遅くて上手く出来ず、運動会でもいつもビリ。ある時、私は担任の先生に「先生申し訳ありません」と謝ったことがありました。しかしその先生は「金澤さん、そんなこと仰らないでください。翔子ちゃんがいてくれるお陰でクラスのみんなが優しくなり、穏やかで落ち着いたクラスになっているのです」と仰って下さいました。先生のその言葉はまさに福音で、絶望の淵にいた当時の私はとても救われました。翔子はビリでいいのだ、翔子と一緒にビリの人生を歩んでいこう。そう決心をすることができたのです」。

しかし、その後翔子さんが4年生になった時の担任の先生から、特別学級のある別の学校へ行ってくれと言われたそうです。

「この時、私は学校側と大喧嘩をして、楽しく学校へ通っていた翔子を不登校にさせる日が続きました。毎日ひとり家で悩み苦しむ中、私はそんな気持ちを書にぶつけるようになり、朝から晩まで10歳の翔子に教えながら一緒に般若心経を写経していました。難しい漢字ばかりの般若心経の写経は、大人でさえも慣れていないとかなりの気合が必要だと思います。しかし翔子は一度も「嫌だ」「やめて」などのことは言わず、書を教える私にいつも「教えてくれてありがとう」と言ってくれました。後に分かったことですが、翔子はIQなどの知性は低い一方で、極めて感受性が高い子です。この時も私の苦しい胸の内を察し、自分が我慢して書を学ぶことで私を励ましてくれていたのです」。

泰子さん曰く、この時の写経を通じて翔子さんは書の基礎だけでなく、我慢や忍耐ということを身に着けることが出来たとのことです。

「翔子が一人暮らしを始めて1年が経過しました。直ぐにギブアップして家に戻ってくると思っていましたが、一度も家に帰ってきたことはありません。翔子の行いは全てがゆっくりで時間がかかりますが、でも一つひとつ目標を立てて出来ることを増やしていきました。ハンバーグや味噌汁、チャーハンなどの料理も一人で出来るんですよ。今は本当に幸せな毎日を過ごすことが出来ています。苦しい闇に落ち込む時はあっても、必ず明るく大きな光は差し込みます。出来ると信じて見守ることが大切です」。

■翔子さんによるパフォーマンスの披露

講演の最後に泰子さんが翔子さんを呼びこみ、舞台に登場した翔子さんによるダンスとボイスパーカッションによるパフォーマンスの披露です。翔子さんが大好きなマイケル・ジャクソンの曲に合せてPVさながらのパフォーマンスに、会場の皆さんも手拍子で応援します。そして会場が温かい空気に包まれる中、講演会は終了しました。

 

 

天使がこの世に降り立てば
~ダウン症者の書家 翔子と歩んできた道~

金澤泰子・翔子 かなざわやすこしょうこ
書家


母親である金澤泰子さんのご講演と、娘である金澤翔子さんの席上揮毫(書道実演)の2部構成となります。… (続きを読む)

 

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1948年12月10日に世界人権宣言が採択され、日本では1949年に法務省と全国人権擁護委員連合会により12月10日を最終日とする1週間を人権週間とすることが定められました。毎年、全国各地で計画・開催される人権啓発講演会へ向け、おすすめ講師や講演テーマをご提案いたします。

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