
保育園における看護師の存在は、年々その重要性が高まっています。しかし、医療職としての専門性を十分に活かしきれず、現場で孤立してしまうケースや、保育士との役割分担が曖昧なまま連携がうまくいかないという課題も多く見られます。特に医療的ケア児の対応や感染症対策など、高度な判断が求められる場面では、看護師の知識と経験が不可欠です。
本記事では、保育園看護師の基本的な役割から、保育士とのスムーズな連携を築くために必要な視点やスキル、そしてそれらを高めるための実践的な研修内容について解説します。チームとしての一体感を高め、より安心・安全な保育環境づくりに向けたヒントをご紹介します。
保育園における看護師の役割とは?
看護師は病院や介護施設だけでなく、保育園でも活躍できる職種で、「保育園看護師」として乳幼児の健康と安全を守る役割を担います。乳幼児は免疫力が未熟で感染症やケガ、体調急変のリスクが高く、医療的な視点を持つ看護師の存在は保育現場で非常に重要です。
私立保育園では規模にかかわらず常勤看護師の配置が義務付けられ、公立園でも「努力義務」として推奨されています。しかし、保育園職員の配置基準を示した「児童福祉施設の設備及び運営に関する基準について」では看護師が含まれておらず、全国で一律に義務化されているわけではありません。
一部の自治体では、新規開園時に0歳児保育や休日保育、看護師の配置を条件とすることもあります。また、「看護師配置加算」を設けて財政的に支援する例もあります。
さらに、0~2歳児を4人以上受け入れる場合には、看護師を保育士として1名カウントできる制度もあります。保育士は保健や医療に関して専門家ではなく、養成課程でも小児看護の学習は限定的です。そのため、現場の保育士や保護者にとっても、医療的判断が求められる病児対応を含め、看護師の存在は大きな安心材料となります。
保育園看護師の主な仕事内容【5つの柱】
保育園看護師の主な仕事内容は以下の通りです。
1.子どもの健康管理と保健対応
園児の体調観察、発熱やケガへの応急対応、健康診断・歯科健診の補助、アレルギー対応や病児の初期対応を含め、日々の健康支援を行います。
2.衛生管理と感染症予防
園内の衛生環境の整備、消毒・換気・感染症の拡大防止策の実施、衛生指導の実施を通じて、感染予防の要となります。
3.保護者・家庭への情報提供
保健だよりや健康情報の発信、予防接種の案内、保護者からの健康相談対応など、家庭との連携を図ります。
4.職員の健康サポート
保育士や他の職員の体調確認、健康診断の連絡調整、園内全体の健康意識向上に寄与します。
5.保育補助
0~1歳児の保育補助、園外活動・行事時の安全管理、緊急対応や病院への付き添いなども担います。
このように、保育園看護師は「医療知識を活かした保育現場のサポーター」として、子ども・保護者・職員の安心と安全を支える多面的な役割を担っています。
保育園看護師に求められる5つのスキルと実践的な役割
保育園看護師には多面的な役割を担っているため、求められるスキルも多岐にわたります。ここでは必要なスキルを5つご紹介します。
1. 観察力と判断力
乳幼児は自分で体調不良を訴えるのが難しいため、わずかな表情や行動の変化から異変に気づく「観察力」が求められます。また、体調不良やケガへの初期対応の場面では、迅速な判断力と的確な応急処置が必要です。
2. 保育現場への理解と柔軟な対応力
保育園は医療機関ではなく、子どもたちが生活し遊ぶ場所です。保育士との連携や子どもの発達段階に応じた対応、行事・保育補助などの“保育の一員”としての柔軟な姿勢が求められます。
3. 衛生管理・感染症予防の知識と実行力
園全体の衛生環境を守るためには、正しい衛生管理や感染症対策の知識が不可欠です。消毒や手洗い指導、集団生活における感染拡大防止のマニュアル整備などを主導的に行う力が必要です。
4. コミュニケーション力と説明力
保護者への健康相談や保健指導、保育士や職員との情報共有においては、相手に合わせて丁寧に伝えるコミュニケーション力が求められます。専門知識を噛み砕いて説明し、信頼関係を築く力が重要です。
5. 予防医療の視点と教育的支援力
日々の保健指導や健康教育では、「予防」の視点が重要です。園児に楽しくわかりやすく伝える工夫や、保護者や職員に対して健康意識を育てる“教育者”としての役割も期待されます。
このように、保育園看護師には医療的スキルだけでなく、保育の現場に寄り添う総合的な実践力と対人スキルが求められます。こうした力を育むには、現場での経験に加え、研修を通じた継続的な学びも重要です。
なぜ研修が必要なのか?現場の課題と背景
保育園看護師は、医療の専門知識に加えて、保育現場ならではの観察力や柔軟な対応力、保育士や保護者とのコミュニケーション力など、多様なスキルが求められる職種です。しかし現実には、こうしたスキルを体系的に学ぶ機会が少なく、現場で悩みながら手探りで対応している看護師も多く見られます。
たとえば――
- 子どもの体調変化を見逃してしまう不安
- 保育士との役割分担や連携に悩む
- アレルギー対応や感染症予防に対する責任の重さ
- 保護者対応や保健指導への自信のなさ
これらは、実務上よく見られる課題です。保育園看護師は“ひとり職種”であることも多く、孤立しやすく、相談相手がいないという心理的な負担も抱えがちです。
また、保育士は病児対応や医療的判断を専門外とするため、看護師が園内で医療と保育の“橋渡し”役として期待されているにもかかわらず、現場でのサポート体制が不十分な場合もあります。
このような背景から、実務に即した研修を通じて、役割理解・連携力・対応力を高めることは不可欠です。研修によって現場の困りごとを具体的に解消できれば、看護師本人の負担軽減だけでなく、園全体の安心・安全の向上にもつながります。
効果的な「保育園看護師向け研修」の内容とは?
保育園看護師に必要なスキルは、病院勤務とは異なり、保育現場特有の観察力・連携力・予防指導力・説明力など、他者との協働と日常の中での対応力が求められます。
そのため、効果的な研修では単なる知識のインプットにとどまらず、実際の園での業務を想定した体験型・参加型のプログラムが重要です。
研修に含むべきポイントの例
① 現場に即したケーススタディ
体調不良児への対応、アレルギー事故時の対応、保護者からの相談対応など、実際の園で起こりうる事例を取り上げ、判断力と対応力を鍛えます。
② 保育士との連携を意識したコミュニケーション演習
保育士との役割分担の明確化や、情報共有のポイント、伝え方の工夫などをロールプレイで学ぶことで、「連携の仕方がわからない」という悩みを解消できます。
③ 衛生管理・感染症対策のアップデート
新しい感染症への対応や、園内の衛生チェック方法、指導の工夫など、日々変化する現場の課題に対応できる知識を習得します。
④ 保健指導・情報発信のスキル強化
保護者への「保健だより」の作成方法、伝え方の工夫、信頼関係の築き方などを学び、説明力や発信力を高めます。
⑤ 孤立しがちな看護師同士の交流の場
他園の看護師と意見交換できる時間を設けることで、「自分だけが悩んでいるのではない」と気づき、安心感や視野の広がりを得ることができます。
このように、保育園看護師の業務や役割に即した“現場密着型”の研修こそが、実務で本当に役立つスキルを育てる鍵です。
看護師自身の専門性と自信を高めると同時に、保育士や保護者との信頼関係づくりにもつながるため、園全体のチーム力・安心感の向上にも貢献します。
弊社の「保育園看護師向け研修プラン」のご紹介
ここでは上の内容を踏まえ、実績の高い講師陣による研修プランをご紹介します。いずれのプランも現場に即した内容で、再現力が高いものばかりです。
保育園等における安全管理研修「ヒヤリ・ハットの活用
本研修では、保育園看護師向けに「ヒヤリ・ハット」の活用法や事故予防の実践的手法を解説します。講師は園長職や救命処置法の普及経験を持ち、保育現場のリスクマネジメントに精通。危険予知や保育のPDCA、事故報告書の活用など、安全な園づくりに役立つ内容です。
保育園看護師研修(仮)
看護師・保育園・養護教諭・看護学校教務など医療と教育の現場に長年携わる梶原なおみ氏が、子どもの心と体を守る看護師の役割を再確認し、保育現場で求められる“寄り添う力”や“いのちのケア”についてお話します。保健室の看護師先生としての豊富な経験をもとに、子どもとの信頼関係の築き方、保護者支援、性や心の成長に関わる対応についても実践的に解説します。
保育園看護師研修(仮)
看護師・保健師として企業や自治体で長年健康教育とメンタルヘルス支援に携わってきた村田陽子氏が、保育園看護師が現場で活かせる「心のケア」と「伝わるコミュニケーション」術をお教えします。ストレスへの気づきや保育士・保護者との信頼関係の築き方など、感情に寄り添う実践的な内容を通じて、心身の健康と人間関係を支える力を養います。
保育園看護師研修(仮)
病院副院長や大学教授として医療・心理・教育現場を横断的に経験してきた岸田敦子氏が、保育園看護師として求められる命の向き合い方から、クレーム対応・虐待予防・心のケアに必要なコミュニケーション術まで実践的に解説します。自己尊重を育てる視点から、子ども・保護者・職員との関係構築に役立つ学びが得られる内容です。
【保育士・小学校教職員向け】子供のアレルギーともしもの時の事故対応
看護師・医療経営士として保育現場の安全管理に精通する三浦あかね氏が、子どものアレルギー対応や、誤飲・やけど・骨折などの事故発生時に看護師がとるべき初期対応を、講義と実践を通じてお伝えします。見逃されやすい“症状の出ないアレルギー”への理解も深め、安全で安心な園づくりに直結する実務力を高めます。
保育園看護師研修(仮)
「いざという時、あなたは迷わず動けますか?」医療現場で30年の経験を持つ森山佐恵氏が、保育園看護師に求められる医療対応力を実践的に指導します。発熱やけが、誤飲などの緊急時対応から感染症予防まで、園で“今すぐ使える”判断と行動を学びます。命を守る基礎力を高める実践型研修です。
看護師の力を“チームの力”に変えるために
保育園における看護師の役割は、ますます重要性を増しています。看護師個人の力を最大限に活かすには、園全体での理解と連携が不可欠です。
そのためにも、実践的かつ参加型の研修を通じて、看護師が「チームの一員」として活躍できる環境づくりを進めていく必要があります。
本記事では、保育園看護師の対応力を高める研修をご紹介しました。ここでご紹介しているプラン以外にも、コミュニケーションや保護者対応、危機管理などさまざまなプランをご提案できますので、お気軽に弊社までご相談ください。
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