クレーム対応は企業にとって重要な機会です。クレームを伝えてきた顧客への対応の仕方によって、社会的信用を損なう場合もあれば、顧客を自社のファンへと変えられる場合もあります。

今回は、クレーム対応研修のメリットやプログラム内容、さらには研修の効果を高めるポイントを解説します。ぜひ顧客満足度向上に役立ててください。

クレーム対応研修が注目されている背景

まず、今あらためてクレーム対応研修が注目されている背景を知っておきましょう。サービス業界を中心として、現代の企業は以下のような課題を抱えています。

クレーム対応の失敗がもたらす企業価値の低下

クレーム対応に失敗すると、企業はブランドイメージの低下や社会的信用の失墜など、甚大なダメージを負うことになります。

特に現代においては、顧客や消費者もSNSなどによって自身の体験や意見を発信する力を持っています。企業の商品やサービスに不満を感じて改善を求めたのに、たらい回しにされたり形式的な謝罪だけだったりすると、その消費者の悪印象はさらに根深くなるでしょう。今はそうしたたった1人のネガティブな体験が、瞬く間にSNSで拡散されてしまうケースもあります。

また場合によっては訴訟を起こされるかもしれません。訴訟は企業イメージを大きく損ねるだけでなく、さらには裁判費用や賠償金の支払いが発生するリスクもあります。

社員に、クレーム対応研修で適切なクレーム対応スキルを身に着けることは必須課題と言えます。

カスタマーハラスメントの増加

顧客からの不当な過剰要求や暴言・脅迫、ときには暴力を伴う迷惑行為である「カスタマーハラスメント」が近年増加しています。2023年に厚生労働省は、カスタマーハラスメントを精神障害の労災認定基準に加える方針を盛り込みました。

カスタマーハラスメントが注目される背景として、現場の従業員が悪質なクレームに悩まされている実態があります。日本労働組合総連合会(連合)の『カスタマー・ハラスメントに関する調査2022』によると、ハラスメントを受けたことで全体の76.4%に及ぶ人が「出勤が憂鬱になった」「心身に不調をきたした」など、生活上の変化があったと回答しています。

クレーム対応研修の多くは、このカスタマーハラスメント対策も盛り込まれます。

サービス業などの深刻な人材不足

少子高齢化の影響や産業構造の変化による人材の偏りのため、サービス業を中心とした多くの国内企業は、深刻な人手不足に悩まされています。

帝国データバンクの2023年の『人手不足に対する企業の動向調査(2023年4月)』によると、正社員が不足している企業の割合は「51.4%」、非正社員が不足している企業の割合は「30.7%」でした。業種別でそれぞれの割合が最も高かったのが「旅館・ホテル」「飲食店」で、特にサービス業において人手不足が顕著な結果となっています。

同時に、サービス業での離職率の高さも問題となっています。サービス業での離職の理由として、顧客対応へのストレスも上げられます。研修で適切なクレーム対応スキルを身に着けることで、社員の顧客対応への苦手意識を改善し、定着率を高めることができます。

クレーム対応研修のメリット

多くの企業がクレーム対応研修を実施するのには理由があります。ここではクレーム対応研修の具体的なメリットについて確認していきましょう。

メリット①クレーム対応業務への意識変革

クレーム対応研修には、社員がクレームに抱くネガティブなイメージを根底から変える効果があります。

クレーム対応のイメージといえば、一般的に「怖い」「面倒くさい」「無益で損な役回りといったものです。苦手意識や心理的抵抗を感じる人も多いでしょう。しかし研修では、クレームから業務を改善するヒントを得る方法も学びます

社員がクレームが商品やサービスをより良くする貴重な機会と分かれば、それを通じて顧客の要望に耳を傾ける仕事に意義が感じられるようになるでしょう。

メリット②対応スキルの向上とレベル統一

クレーム対応研修では、あらゆるクレームのパターンに応用できる適切な対処法を学びます。さらに演習プログラムなどを経ると、クレーム対応によって顧客の満足度を高めるスキルが身に付きます

またクレームは一次対応の良し悪しによって、顧客に会社自体の姿勢を判断されかねません。一次対応にあたる社員のスキルにバラつきがある状況は、実は企業にとってもリスクが大きいのです。

したがって社員全員に研修を受講してもらい、誰にあたっても同じ水準で応対できるようにするのもポイントです。またこれにより上司も、現場での状況把握が効率化できるようになるでしょう。

メリット③担当者のストレス軽減

クレーム対応研修の大きなメリットの1つが、担当社員のストレス軽減です。研修で顧客への対応を学ぶことは、自分自身の身を守ることにもつながります。

正しい知識がないままクレームに接し続けていると、自分が一方的に責められている気分になってしまうなど、過剰なストレスを感じてしまうことがあります。クレーム対応研修で学んだ基本フローを守り、1つ1つに適切かつ冷静な応対ができるようになれば、精神的な負担を減らせるでしょう。

クレーム対応研修のプログラム例

それではクレーム対応研修では具体的にどのような内容を学ぶのでしょうか? ここでは一般的によく取り入れられる4つのプログラムを紹介します。

1.クレーム対応の基礎知識

まずはクレームに対応するにあたって、知っておくべき基礎知識について学びます。

まずは「クレームをどう捉えるか」という心構えが重要です。ただの苦情ではなく「お客様からの貴重なお申し出」であると認識するようにさせます。

さらにクレーム解決には段階があり、現実的な解決策を提示する前に、まずお客様の心情を考慮しなくてはならないという基本の流れを理解します。

2.基本的から応用までの応対技術

クレーム対応には、基本となる5つのステップがあります。研修では、以下のそれぞれの段階で留意すべきポイントと共に、現場ですぐに活用できる応対技術を身に付けます。

  1. 顧客への共感」:クレームを入れた顧客の心情に配慮する
  2. 背景や原因」:クレームに至った経緯を確認する
  3. 真摯に謝罪」:内容に対して部分謝罪する
  4. 解決策」:顧客の被った不利益に対して具体的な解決策を提示する
  5. 共有」:クレーム内容や経緯、対応を共有し、再発防止につなげる

3.ロールプレイングとケーススタディを用いた実践的トレーニング

クレーム対応研修でも特に重要なのが、実際のクレーム事例に基づく実践的なトレーニングです。

例えば受講者が過去に経験したクレームをロールプレイング形式で再現し、別の受講者はクレームを入れた顧客を演じます。すると「どんな対応なら納得できるか」を、顧客目線で理解できるようになるのです。「あの謝罪の仕方では嫌な気分になっただろう」といった気づきが得られれば、今後の業務に活かせます。

また過去のクレームの事例を共有し、グループ内で正当なクレームと悪質なクレームを分類するワークも効果的です。それぞれのシチュエーションで、担当者に非があるかないかを客観的に判断できます。

4.メンタルヘルスのサポートとストレスマネジメント

クレーム対応では、実際に顧客と接した担当者が精神的な負担を1人で抱え込んでしまうケースが多く見られます。そのためストレスにどう対処するかも重要な課題です。

研修ではセルフケアと職場全体でのケアの両面にアプローチし、周囲に相談したりリフレッシュしたりすることの大切さを学び、ストレスから自分を守る方法を習得します。

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効果的な研修プランを選定するための6つのポイント

研修計画にあたり、一番重要なステップが研修プランやカリキュラムの策定です。ここでは、効果的な研修プランにするために、研修プランを選定するためのポイントをご紹介します。

①研修で自社の目的が達成できるか

どれだけ開催実績の多い研修プランでも、自社の目的に合ったものでなければ効果はありません。研修を企画するときには、まず自社がクレーム対応において抱える課題を明確にし、それを解決できる内容のプランを選定しましょう。

②受講者のニーズとレベルに合っているか

研修内容と、受講者のニーズやレベルにズレがないかも注意すべきポイントです。

一口にクレーム対応といっても、業界や職種によってケーススタディは異なります。さらに管理職向けには、一次対応の担当者では判断できないハードクレームの場合を含むなど、階層によっても内容に違いが生じます。想定する対象者を確認し、適切なプランを選定しましょう。

③実際の事例を取り入れた実践的カリキュラムか

クレーム対応研修では、特に過去の事例から学ぶことが大切です。受講者の業界や職種におけるクレームの事例や、その基本的な対処方法に基づく判断力や応対力を養うことで、今後クレームが寄せられたときも、冷静に返答できるようになります。

④ロールプレイングやシミュレーションがあるか

座学によってクレーム対応の総論を学ぶだけでは、実践的スキルの習得は困難です。ロールプレイングなどを取り入れ、実際に演習をやってみると、より効率的に理解が深まります。またうまくいかなかった場合、それが現時点での自身の課題であると痛感できるでしょう。

⑤プログラムはカスタマイズ可能か

研修は自社の課題解決が目的のため、プログラム内容を自社の実態やニーズに沿ったものにカスタマイズできるほうが効果が高まります

研修を提供する企業のなかには、詳しい内容について相談に応じてくれるところもあるので、一度確認してみましょう。

⑥事後のフォローアップがあるか

実施後のフォロー体制が整ったプランを選ぶと、研修の効果がより高まります。

事後アンケートなどで受講者の達成度を確認したうえで、結果に応じてフォロープログラムを組んでもらえると効率的です。

クレーム対応研修は、単にクレーム担当者のスキル向上にとどまらず、企業の商品・サービス改善にも、担当者のメンタルヘルスのサポートやストレスマネジメントにも効果があります。自社の課題に沿った研修を企画し、クレームを恐れない組織づくりをしましょう。


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