企業研修にはさまざまな種類があります。人材育成の効果を高めるには、それぞれの研修の対象や一般的な内容を知り、自社の課題解決に役立つものはどれかを検討しなくてはなりません。

今回は階層や職種別の企業研修、全12種類を紹介します。またオンライン研修やe-ラーニングなどの実施形態についても解説しているので、研修担当者の方はぜひ参考にしてください。

企業研修の重要性 ニーズに対するギャップとは

「そもそも研修って本当に必要なの?」と思っている方もいらっしゃるかもしれません。
まずは研修の重要性についておさらいします。

企業における社員研修とは

企業にとって社員研修には個人と企業の観点から以下の2つの目的があります。

①個人: 個々の社員のスキル向上

研修で社員が知識やスキルを習得すれば、それを業務に活かして個々の生産性が上がります。またスキルアップによって対応できる業務の幅が増えると、社員の意欲や組織における役割意識が向上する効果も見込めるでしょう。

②企業: 組織の開発

研修は、組織が事業運営上必要となる人材を確保する合理的手段でもあります。例えば毎年計画的に管理職候補となる人材を育成するために、定期的にリーダーシップ研修を実施することで、企業を牽引する人材を継続的に維持できます。

このように、社員個人と組織全体の両方の観点で、企業研修は重要な役割を果たしているのです。

企業研修へのニーズと実態のギャップ

世界的パンデミックの影響により、国内の中小企業の間でもオンライン研修が一気に広まりました。その後、対面での研修ニーズも回復。新たな研修スタイルが普及した結果、矢野経済研究所の調査によると、2022年度の研修サービス市場は前年度比3.1%増の5,370億円まで成長しました。

しかしその一方で、東京商工会議所によるアンケート調査では、同所の研修講座を利用した企業2,252社のうち30.5%の企業が「研修・教育訓練の方針や計画が無く、体系的に行われていない」と解答。市場と実態とのギャップが浮き彫りとなっています。

このようなギャップを埋めるためにも、しっかりと研修の種類を知り、効果的に計画する必要があります。

階層別研修の種類と内容

ここからは、全12の研修の種類を一挙紹介していきます。まずは階層別研修の種類や内容を解説します。

①新入社員研修

新入社員研修は主に新卒入社1年目の社員が対象です。いち早く会社組織になじみ、現場の戦力になれるように実施されます。

そのため新入社員研修では、企業理念や経営方針の理解、業務で必要とされる基本的な知識やスキルの習得が主なテーマとなっています。言葉づかいや身だしなみなど、社会人のビジネスマナーも必須です。

また新入社員研修には同期や先輩社員と交流を深める狙いもあり、他の受講者とコミュニケーションをとれるグループワークなどのプログラムが人気です。

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②中堅社員研修

中堅社員研修は、一般的に入社3年以降でなおかつ役職に就いていない社員が対象です。通常業務の遂行から1段階上がって、チーム視点での問題解決力やリーダーシップの獲得を目的に実施されます。
中堅社員研修で学ぶ内容はさまざまですが、プロジェクトマネジメント、目標やタスクの管理、後輩の指導といったテーマが人気です。

またこの階層では、職種によって取引先との交渉、他部署連携や社内調整が求められる場面もあります。研修ではそれらで役立つコミュニケーションスキルも習得します。

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③管理職研修

管理職を対象にした研修もあります。

管理職研修のテーマは大きく2つの要素に分けられます。1つは予算や目標の管理、チームビルディングなど役割に応じたスキル。もう1つはコンプライアンスやメンタルヘルスへの理解など、指導者に求められる意識や倫理観です。

また新任管理職向けには、管理職としての基本的知識、上級管理職向けには経営に関わる領域など、それぞれのキャリアに応じた内容を学びます。

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④役員・経営層向け研修

役員・経営層向け研修は、現代のトップマネジメントに必要な戦略的思考や意思決定の力を養うことを目的として実施されます。

経営戦略、リスクマネジメント、経営分析、グローバル対応などです。

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対象者別研修の種類

現在は雇用の流動化や国内労働人口不足といった問題を背景に、組織の人材も多様化する傾向にあります。中途入社社員や外国籍社員に特化した研修を用意している企業もあります。ここでは、この2つの対象者別研修の目的やテーマを解説します。

①中途入社社員向け研修

中途入社の社員向け研修は、対象者が早く新しい職場環境に馴染み、最大限のパフォーマンスを発揮できるようにすることが目的です。そのため研修を通じて社内ルールや専門用語、実際の業務の流れなどを伝えます。また企業の理念を浸透させるのも研修の重要な役割です。

②外国人社員向け研修

外国籍の社員は、日本人の仕事観や日本特有のマナーへの理解が十分でない場合があります。そうした文化の違いが現場では障害となるケースもあるため、基本的なビジネスマナーなどを共有しておかなくてはなりません。例えば時間に厳格な仕事の進め方や、席次の考え方などを研修の機会に学んでもらいます。

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業務・職種別研修

次は業務・職種別研修です。ここでは営業職・企画職・事務職・サービス職・教職員・看護・介護職の6つの研修内容を解説します。

①営業職向け研修

営業の仕事は、現代は人海戦術や訪問数重視ではなく、やりとりを通じて顧客の課題を見出し解決するソリューション営業のスタイルが主流です。そのため問題解決能力の向上を目的とした論理的思考、データ分析、マーケティングスキルなどが人気を集めています。

それに加えて商談を初めとするコミュニケーション向上を目的とした、提案力や交渉力などのテーマにも人気があります。

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②企画職向け研修

企画職向け研修は、事業や商品・サービスを企画する専門職人材が対象です。

さまざまな立場で新しいアイデアを生み出す力を養うためには発想力強化が、事業企画には新規事業の立案といったテーマが最適です。

また営業職同様マーケティングやデータ分析も需要が高いスキルで、さらにそれらを用いて企画を実現するため、企画書作成やプレゼンテーションといったテーマも有効です。

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③事務職向け研修

現代の事務職は、デジタル技術を駆使していかに効率的に業務を処理できるかが問われています。そのためITスキルやリテラシーを身に付けられる研修が人気です。

文書作成ソフトを使用した文書や資料の作成、ITツールの活用や情報セキュリティなどを学ぶほか、電話応対など基本のビジネスマナーや、コミュニケーション研修を取り入れる企業も多くあります。

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④サービス職向け研修

サービス職向けの研修には、一般従業員向けとリーダー職向け研修があります。いずれも顧客満足の向上を基本に据えたうえで、現場に役立つ基本的な接客スキル向上を目的として、接遇マナーやクレーム対応を学びます。

リーダーは、チームマネジメントや店舗運営改善を学びます。

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⑤教職員向け研修

現在の教育の現場では、長時間労働や業務量の多さが問題視されています。そのため教職員向けでは、ICT利活用などによる業務効率化をテーマにした研修が人気です。

また生徒や保護者への対応で求められるコミュニケーションスキルや、子どもの発達や家庭環境などの多様化について学べるプログラムもあります。

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⑥看護・介護職向け研修

看護・介護職向け研修の目的には、現場でのケアの実践的ノウハウ獲得やスキル向上はもちろんのこと、経営側の離職率低下と人材定着などがあります。

そのためケア技術に加えて、メンタル管理やコミュニケーションスキル習得をテーマにした研修が人気です。

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OJTとOFF-JT、オンライン研修など 研修の実施方法

最後に、研修の実施方法を紹介します。

OJT(職場内研修)とOFF-JT(職場外研修)

すべての企業研修はOJT(職場内研修)とOFF-JT(職場外研修)のどちらかに分類できます。

OJTは実務を通じて仕事の進め方を学ぶスタイルで、即戦力人材を育成できます。反対にOFF-JTは通常の業務を離れて受ける研修など、専門的な内容をじっくりと学ぶ教育訓練のことです。

OFF-JTとOFF-JTの比較早見表

OJTとOFF-JTの違いを分かりやすく比較すると、以下のようになります。

OJT OFF-JT
実施場所 実際に業務を行う現場 会議室など現場から離れた場所
講師 上司や先輩社員 外部の専門家など
内容 実務を通して実践的内容を学ぶ 座学などで体系的な知識を学ぶ
メリット 低コスト、即戦力人材の育成 学習に集中できる
デメリット 指導する社員の力量差・負担増 コストがかかる

集合研修

集合研修は、研修の講師と受講者とを同じ場所に集め、対面で実施する研修スタイルです。

研修担当者にとっては会場準備やスケジュール調整、出欠管理などの業務負担があります。しかし一方で、講師や他の参加者とのコミュニケーションが活発になり、研修効果がより深まるというメリットがあります。

集合研修はディスカッションやグループワークなどのプログラムがある研修に適しています。

詳しくは「進化する集合研修~オンライン研修との違い、効果倍増の新しいやり方3選も詳説」を参照

オンライン研修

ZoomやMicrosoft Teamsなどのツールを用いて、講師や受講者が離れた場所からリモートで参加するオンライン研修もあります。

集合研修とは違ってコミュニケーションが一方通行になりやすいのがデメリットですが、移動の手間がない分、参加しやすい点は魅力です。そのため、オンラインの研修は複数のオフィスがある企業や、多忙な社員を対象とした研修でよく用いられます。

➨詳しくは「初めてのオンライン研修でも安心!効果的なやり方と成功させるためのコツ」を参照

eラーニング

eラーニングは、インターネット上の学習システムを利用して学ぶスタイルです。

eラーニングは、受講者が自発的に取り組め、時間のあるときに自分のペースで進められるのがメリットです。集合研修やオンライン研修ではすべての受講者の理解度に合わせて進行していくことはできません。

eラーニングを上手に取り入れれば、受講者それぞれのペースで全員の知識・スキルを一定レベルにまで到達させられます。

コンプライアンスや基本的なビジネスマナーなど、知識のインプットがメインとなるテーマは、eラーニングの研修スタイルに適しています。またビジネススキルの基本理論の部分は、まずeラーニングの形式でじっくりと理解を深めるのが効果的です。

➨詳しくは「研修にeラーニングを 4つのメリットと学習効果を最大化するヒント」を参照

ブレンディッドラーニング

「ブレンディッドラーニング」とは、集合研修・オンライン研修・eラーニングのうち、複数を掛け合わせたスタイルのことです。

例えば受講者には事前にeラーニングで必要な知識を学んでもらい、その後の集合研修で知識を応用するグループワークやロールプレイングなどを行います。

他者に対してアウトプットする時間は、獲得済みの知識を現場でどう活用するか、自分自身の行動と関連付けて考える機会になります。インプットとアウトプットの各ステップを万全にすることで、研修受講後の行動変化がより高度なものとなるでしょう。

研修には内容から実施方法までさまざまな種類があります。まず「何のために研修が必要なのか」という自社の課題や目的を明らかにし、その目的に沿ったものを企画するようにしましょう。そのうえで、その目的を達成するのに最適な内容と形式を選ぶことが研修効果を最大化するポイントの1つです。


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