働き方の変化やオンライン会議の増加などを背景に、会議の品質向上と効率化が求められています。
この記事では、会議を成功に導く「ファシリテーター」の重要性と、ファシリテーター研修で得られるスキルや効果について説明します。
記事後半では、社内研修におすすめのファシリテーター研修プランもご紹介していますので、研修計画にご活用ください。
ファシリテーション・ファシリテーターとは
オンライン会議などが増えた昨今、会議の円滑な進行をうながす「ファシリテーション」が重要です。まずは、その意味や重要性について解説します。
ファシリテーション・ファシリテーターとは何か
「ファシリテーション(facilitation)」とは、「会議やミーティングなどの集団で行う活動において、一定の成果を得られるよう進める方法」のことを指します。またその役割を担う人を「ファシリテーター(facilitator)」と呼びます。
ファシリテーターはその場の進行役であると同時に、目標達成の専門家です。限られた時間の中で、参加者一人ひとりと、あるいは参加者同士の意思疎通を図りながら、会議を運営します。
参加者が満足できる合意形成まで、会議をリードすることがファシリテーターの役割です。
増加するオンライン会議におけるファシリテーターの重要性
コロナ禍をきっかけにリモートワークを導入する企業が急増し、オンライン会議の機会も多くなったのではないでしょうか。
テレワークが普及した現代において、オンライン会議は意思決定のための最善の選択肢の1つです。一方、対面の会議と比較して「発言しやすい空気作り」や「議論の活性化」などの難易度が高くなるのが、オンライン会議の課題です。
そこで鍵を握るのが、会議を進行するファシリテーターの存在です。「『時間内にメンバーの意見を引き出し、チームにとってよりよい結論を出す』という目的を、いかに達成するか」が、ファシリテーションのポイントです。
ファシリテーター研修が求められる背景
ファシリテーターの能力を身につけるには、研修の受講が有効です。多くの企業で今、ファシリテーター研修のニーズが高まっている4つの背景について説明しましょう。
背景①働き方改革:会議の効率アップ
1つ目は、「残業時間の削減を初めとした働き方改革の影響で、会議の効率化が求められていること」です。
「効率的な会議」とは、無駄な時間やプロセスをなくして迅速かつ的確に、意志決定や合意形成に至る会議です。例えば、議題に沿って進めていたのにも関わらず話がそれてしまったり、時間内に話がまとまらずに終了時刻を延長せざるを得なくなったりするケースは、非常によくあります。
ファシリテーターが進行すれば、軌道修正を行いながら会議の目的遂行が可能です。
背景②働く人の多様化:異なる意見の収集と合意形成
2つ目は「働く人の多様化に伴い、会議の質が変化していること」です。
ビジネスの現場にも子育てや介護中の人や外国人などが増加し、働き手が多様化している今、社員の価値観もさまざまです。そのような人たちは、かつては会議への参加権や発言機会自体がなかったり、遠慮して意見を表明しなかったりしたかもしれません。
しかしこれからの組織は、そうした多種多様な意見も尊重することが大事です。すべての参加者にとって、より納得感のあるプロセスで、結論への合意を得なければなりません。
ファシリテーターは、参加者全員が対等に議論できるよう、中立的な立場で進行します。少数派社員でも自由に意見を発表できるようリードするスキルは、結論や会議そのものの質を向上させます。
背景③技術変化:リモートワークやweb会議の普及
3つ目は、「リモートワークやweb会議が普及したこと」です。
リモートワークが浸透し、働き方の選択肢が増えました。勤務形態の1つとして、一部の曜日もしくは全日で、通勤・出社が不要となっている職場もあるでしょう。わざわざ同じ場所に集合せずとも、自宅や出先にいながら会議に参加するのも可能になりました。
またweb会議システムや通信環境が発達したのも一因です。数年前までは「ビデオ会議システムが設置された特定の会議室でしかリモート会議ができない」「会議室の機器の予約が必要」という企業も多くありました。
しかし現代では、PCやスマートフォンのZoomやTeamsなどを用いて、企業でなく個人であっても、気軽にリモート会議を設定・開催できるようになりました。
背景④業務改善・組織変革:アイディアやイノベーション創出
4つ目は、「業務や組織の劇的な変革が、自由なアイディアから生まれること」です。
例えば現場の社員が「実現できたら面白いけど、この会社では無理かな」「私の意見は少数派だからどうせ通らないだろう」「波風立てずに早く終わらせて、決まったことに黙って従ったほうがいい」などと思い込んではいないでしょうか。そうした組織では、従来のやり方の会議で上がらなかった意見が無数にあるでしょう。
多くのアイディアが発表され議論されなければ、それによって新たな発想や価値を生み出すこともできません。
ファシリテーターによる会議は、企業を抜本的に変える商品やサービスの創出、制度や業務フローの改善などにもつながります。
研修で習得できるファシリテーションスキル4選
ここからは、研修で習得できるファシリテーションの基本スキル4種類を詳しく紹介します。
①場のデザインスキル
「場のデザインスキル」とは、会議の目的や目標を確認し、それを達成するために、参加者が話しやすい環境を作るためのスキルです。
アジェンダ設定から座席レイアウト、備品まで、当日の最善の進行を想定して、ファシリテーターは事前準備をします。そして会議の目的や目標はしっかりとメンバーに共有します。
②対人関係スキル
「対人関係スキル」は、参加者の発言を受け止め、さらなる考えやアイディアを引き出し、意見を言いやすい場を作るスキルです。
メンバー同士や、メンバーとファシリテーターとの心理的距離を縮めながら、参加者自身の心の奥にある思いまで引き出せるよう、対人関係を構築する術を学びます。
③構造化スキル
「構造化スキル」とは、議論で出た意見を、ロジカルシンキングなどの手法を用いて、分かりやすく構造的に整理するスキルです。
ファシリテーターには、参加者の考えや認知の言語化をサポートし、多岐にわたるアイディアから論点を絞り込む力が求められます。
④合意形成スキル
「合意形成スキル」とは、会議の目的や目標に向けて、可能な限りメンバーが納得できる意志決定をうながし、合意を得るスキルです。
会議では多数決やポイント制などの手法を取る場合もありますが、決め方はそれだけではありません。結果と対立する意見を持っていた参加者にも不満が残らない決め方を採用し、取りまとめます。
これはファシリテーターのスキルが最も試されるポイントでもあります。
SBおすすめのファシリテーター研修プラン12選
ここからは、ファシリテーターに必要なスキルを学べるシステムブレーンおすすめの研修プラン12選を紹介します。
「参加型体験学習」の意義とファシリテイター
教育委員会などでの講師実績もある岩山 仁氏による研修プラン。ファシリテーターの役割やそのポイントだけではなく、コミュニケーションスキルの基礎を、講義と実践の両面から学べます。
ミーティングの成果を高めるファシリテーションスキル
組織の目標を達成するためのプロセス促進
元客室乗務員の岡林温子氏に、ファシリテーションスキルを学ぶプランです。この研修そのものをファシリテーションによって進めるため、受講体験を通じて理解を深められます。ファシリテーションスキルを身につけて、リーダーシップも強化しましょう。
効果的な会議の進め方
~ファシリテーションスキルを磨く~
P&Gや日本マクドナルド等のグローバル企業で、人事部門の最高責任者を歴任した斧出吉隆氏による研修プラン。効率の良い会議の進め方を、グループワークなどを交えながら習得できます。
会議を上手く取り仕切って成果を挙げるファシリテーション研修
経営コンサルタントの上妻祐司氏が、ファシリテーターの役割や、事前に必要な準備のポイントなどについて伝えます。また、会議中のトラブルへの対処方法などを、ロールプレイを通じて身につけることができます。
参加者の主体性を引き出す会議の極意
~ファシリテーターのスキルが会議を変える~
釘山健一氏は「ファシリテーター養成人」として年間100本の講演実績を持ちます。ファシリテーターについての基礎知識はもちろん、「合意形成を目指した会議」の重要さや、その実現に必要なスキルについて伝えます。
会議がみるみるうまくなる ファシリテーション基礎講座
日本ファシリテーション協会会員で、基礎講座の講師でもある古賀弘規氏による研修プランです。ファシリテーションの基礎知識を得られるほか、会議の肝となる合意形成を行うための5つの要素を、実践プログラムを体験しながら学べます。
流れが速い! VUCA時代のファシリテーションとは?
ワークライフバランスコンサルタントの小澤絢氏による研修プラン。ファシリテーション未導入の、従来型会議の課題を理解したうえで、VUCA時代の会議に求められるスピード感について学べます。また、生産性の高い会議のコツも伝授します。
ファシリテーター養成研修
数々の企業や医療機関などでファシリテーターとして活躍してきた嶋田至氏による研修プランです。ファシリテーションの基礎スキルから、会議を上手く進行するためのコツなどを、模擬会議やその振り返りなどから習得できます。
会議ファシリテータ養成プログラム
下村裕篤氏は20年以上にわたり、コーチングやファシリテーター養成講師として人材能力開発に携わってきました。3日間にわたって行われる本プランでは、ファシリテーターに求められるスキルについて、技法や評価までを、実践形式で身につけられます。
【オンライン版】オンライン会議でのファシリテーション講座
~ オンラインの良さを活かし、使いこなすために! ~
オンライン会議に特化した研修プランです。組織開発コンサルタントの新名史典氏が、オンライン会議の「良さ」と「制限要因」の両面を解説。参加者との関係を作るためのルール決めのほか、資料の活用法など、ポイントや気をつけるべき点についてわかりやすく伝えます。
「会議の作法」研修
中島崇学氏はNECで30年以上にわたり勤務。人事や広報を歴任し、全社規模での組織開発に携わりました。その経験を元に、ファシリテーション・リーダーシッププログラムを開発・提供しています。講師が「菩薩型ファシリテーション」と名付けた会議の効率化作法を学び、成果をアップさせましょう。
ソニー型ファシリテーション研修
~無駄会議を無くして効率的なアイデア創出を加速するもうひとつのリーダーシップスキル~
ソニーで10年近くの海外赴任を経験した松野尾萌氏は、さまざまな国籍の人々と働いた知見を持ちます。本プランでは、グループに分かれて課題に関する議論に参加しながら、グループ同士で議論の進め方を講評し合います。
研修を通じてファシリテーターを育成するメリット
続いては、研修を用いてファシリテーターを育成するメリットを研修参加者、チーム、企業の視点から解説します。
メリット1.[参加者]リーダーシップスキルの向上
ファシリテーションのスキルは「リーダーシップスキルの向上」にもつながります。
「会議の目的や目標を理解した上で、ゴールに向けて場を活性化させる力」は、チームビルディングにも共通します。また会議の場で、主催者でなく参加者としてスキルを適用できれば、チーム全体に貢献できます。ファシリテーションスキルは次世代リーダーの能力開発にも有効です。
メリット2.[チーム]会議の効率化
ファシリテーターの役割の1つは「設定した時間内に結論に至るよう導くこと」です。
話題がそれたり、アイディアが出なかったりなどで長引きがちであれば、成功事例や最新のトレンドの話題を提供します。このような、アイディアへのインスピレーションや軌道修正がメンバーへ良い刺激となり、議論の活性化や会議の効率化につながります。
メリット3.[チーム]納得度の高い合意形成
メンバーが納得できる結論を達成できるのも、組織にとっての大きなメリットです。
ファシリテーターの進行によって会議内で参加者同士が活発に意見交換するプロセスを経ると、「不完全燃焼」状態が起こりません。結論を出す際にも満足のいく合意形成に着地しやすくなります。
メリット4.[企業]業務の品質向上
会議が変われば、業務の品質も向上するでしょう。
納得度の高い結論であれば、参加メンバーに主体性が生まれ、割り当てられた業務に対してもそれぞれが意欲的に実行できます。モチベーションが向上すると、業務の品質アップも期待できます。
メリット5.[企業]組織活性化
有意義に感じられる会議の積み重ねは、組織そのものの活性化にもつながります。
会議で互いの意見を尊重し、建設的な意見交換をしながら認め合うことでチームワークが向上します。会議体だけでなく、組織や企業全体で見ても、よりよい関係性を構築することができるでしょう。
ファシリテーター研修の対象者
それでは、ファシリテーター研修を受講するべき対象者とは、具体的にはどのような階層の社員なのでしょうか。
次世代リーダー層
リーダー職や管理職につく前の段階の社員が、ファシリテーションスキルや知識を身につけることには、大きな価値があります。
なぜなら昇進後に新たなスキルを習得するのは、大変だからです。また、さまざまな立場の相手とコミュニケーションを取ったり、マネジメントしたりする際にも、ファシリテーションスキルは役立ちます。
中堅社員
中堅社員は社内の中心的な仕事を担うことが多く、上司や後輩など、周囲との良好な関係構築も求められる階層です。個人の成果の域を超え、チームの成果への貢献を意識するのにもファシリテーター研修は最適です。
「相手の発言を引き出す」「場を作る」といったスキルを養えば、日頃担当している業務も、より円滑に進められるようになるでしょう。
管理職
ファシリテーター研修は管理職にも、もちろん不可欠です。会議を開催する立場として、効率的に会議が進行できる能力の獲得は急務でしょう。
部下から多くのアイディアを引き出せれば、チームの成果も向上します。また他部門や取引先との連携を強化し、組織全体の生産性・信頼性を高めることも期待できます。
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ファシリテーター研修の効果を最大化するポイント
最後に、ファシリテーター研修の効果を最大化するための3つのポイントを、以下にまとめました。
1.グループ討議や模擬会議など実践プログラムを組み込む
まずは「グループ討議や模擬会議など実践プログラムを組み込むこと」です。
ファシリテーターとして必要なスキルは多岐にわたります。4つのファシリテーションスキルについて学びを深めるだけではなく、実践形式でシミュレーションすることが大切です。
実践型プログラムには2つの利点があります。1つは模擬会議でファシリテーターを務めた経験を、実務に応用できる点。もう1つは、座学で得た知識が、実習を通じて定着しやすくなる点です。
2.自社の課題や目的に応じ内容をカスタマイズする
2つ目は「自社の課題や目的に応じて内容をカスタマイズすること」です。
どの階層社員向けなのか、主にどんなスキルを習得してもらいたいかなど、研修の目的を明確にしましょう。それが達成できる内容であるかどうかを念頭に、予算や時間、研修スタイル等の条件を加え、絞り込んでいくことが大切です。
3.信頼できる講師に依頼・相談する
最後は「信頼できる講師に依頼・相談すること」です。
例えば講師に自社と同業種の企業での研修実績がある場合、受講者にとってなじみのある事例を盛り込んでもらえるため、実務に役立つ可能性が高まります。
また講師選びにおいて、講師としてのマナーや所作に問題がないかなども加味しましょう。そのうえで「自社が求める研修内容を提案してもらえるか」が重要です。
働き方が多様化しweb会議などが増加する中、会議の効率化と成果向上が求められています。ファシリテーター研修を受けて社員のファシリテーションスキルが向上すれば、個人だけでなく組織力のアップにもつながります。
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