医療・介護の現場では、医療・介護スタッフが利用者や入居者を看取らなくてはならないケースもあります。人生の最後の時間に寄り添う「看取り介護」には、通常の介護とは別の知識や心構えが必要です。

今回は、看取り介護研修の概要や学べるテーマについて解説し、システムブレーンのおすすめ研修プラン20選をご紹介します。

看取り介護研修とは?

まずは看取り介護の概要と、よく混同されがちなターミナルケア・緩和ケアとの違いについて整理しておきましょう。

看取り介護とは

看取り介護とは、「これから死を迎える人に対して行う介護」のことです。

通常の介護では、スタッフは利用者の食事・入浴などの生活支援をしながら、少しでも長く健康に過ごせるように、身体機能の維持や向上を目的とした介護を行います。

一方、看取り介護では、利用者自身が人としての尊厳を保ちつつ、最期の時間をその人らしく過ごせるように配慮します。無理な延命行為は行いません。医療処置も「痛みを和らげること」が目的です。

ターミナルケア・緩和ケアとの違い

看取り介護と同じく死を迎える人を対象として行われるのが、「ターミナルケア(終末期医療)」です。

看取り介護が生活面でのサポートであるのに対し、ターミナルケアは末期的な心身の苦痛を抑える治療・看護といった医療行為を指します。

「緩和ケア」には、生活面のサポートと医療行為との両方が含まれます。ただし緩和ケアの対象は、命に関わる病気と診断された人とその家族で、終末期の患者に限りません。

看取り介護研修で学ぶ5つのこと

次に、看取り介護研修では何が学べるかを見ていきましょう。ここでは具体的に5つの内容について解説します。

1.看取りの基礎知識と心構え

看取り介護研修では、まず看取り介護の基礎知識を習得します。

たとえ業務であっても、死を目前にした恐怖や身体的苦痛を訴える人と接するのは、少なからずショッキングな体験です。しかし医療・介護スタッフ本人の不安や動揺が、利用者本人に伝わってしまうのも望ましくありません。そのため、常に現場で冷静に対応できるよう、心構えを学びます。

看取り介護研修の受講者は、「不安や苦しみを訴える利用者には、手を握るなどしてスキンシップを図る」といった具体的な対処法を学ぶことができます。

2.身体的サインとアセスメント

終末期に現れる身体的サインと、それをチェックする方法(アセスメント)も、看取り介護研修の重要な内容です。

死が近づいた人の身体には、心機能や血圧の低下、呼吸の変化など様々な症状が現れます。介護中に「食事や水分の摂取量が急に減った」「尿や便がコントロールできていない」などの異変に気づくこともあるでしょう。

それらにいち早く気づけるよう、研修で正しい知識を身に付けます。

3.食事や清潔維持、睡眠など日常生活のケア

看取り介護の段階でも、通常の介護と同じく食事や睡眠といった生活面のケアが必要です。

看取り介護研修でも入浴・排泄・食事の介助、口腔や排泄のケアについて学びます。終末期の患者の多くは身体の痛みにも悩まされているため、できるだけ痛みを感じにくくする体位の知識も重要です。

また終末期の睡眠の状況を把握したり、利用者が痛みや不安に悩まされる場合はどのようにメンタルをケアするべきか学んだりします。

4.さまざまな苦痛への理解と対応

看取り介護を受ける本人には、身体的にも精神的にもさまざまな苦痛が訪れることを理解しなくてはなりません。

終末期には、痛みのほか倦怠感、下痢や嘔吐といった症状が現れることもあります。また死への恐怖という精神的な苦痛も大変なものです。本人の苦しみを介護スタッフは理解し、苦痛や不安を少しでも和らげることを重視してケアを行います。

5.家族へのケアとコミュニケーション

最後は、利用者家族へのケアとコミュニケーションです。

介護を受ける本人だけでなくその家族もまた、差し迫る死別に不安や強いストレスを抱えています。スタッフは家族にもこまめに声をかけて、気がかりなことや希望があれば遠慮なく相談してもらえる関係を築くのが理想です。

また看取りの後は、家族を亡くした人のための相談窓口を紹介するといった配慮も必要です。

看取り介護が注目されている背景

今、看取り介護が注目されているのには、どのような理由があるのでしょうか。ここでは3つの背景を解説します。

背景①死亡者数の増加

1つ目の理由として、国内の死亡者数が年々増加傾向にあり、日本全体が「多死社会」へと向かっていることが挙げられます。

厚生労働省が発表した「2022年人口動態統計(速報)」では死亡数、前年比の死亡増加数ともに過去最多を記録しました。

背景②特養など介護施設での看取り増加

前述の「人口動態統計」によると、2000年代後半から介護施設での看取りが増加していま

最も多い看取りの場所は病院ですが、病床不足の現在、患者家族が自宅で看取りたいと考えていても、難しいのが実状でしょう。現実的には、自宅での看取りの数は2000年以降ほぼ横ばい状態です。

そのため今後は看取り場所として介護施設や病院の割合が増えると考えられており、特別養護老人ホーム(特養)などの施設では急ピッチで看取り介護の体制を整えています。

背景③看取り介護加算の適用

こうした状況を踏まえ、政府は2006年4月の介護報酬改正で「看取り介護加算」制度(※1)を開始しました。

これは以下のような制度で、対象となる施設は、特養やグループホーム、特定施設入居者生活介護の3種類です。

※1 医師が回復の見込みなしと判断した利用者とその家族が、介護施設での看取りを希望した場合、医師・看護師と施設が連携して看取りを行うと施設に対して報酬点数が加算される制度

SBの看取り介護研修おすすめプラン

システムブレーンでも人気講師による看取り介護研修を提供しています。ここでは、おすすめプラン20選を紹介します。


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赤川なおみ

エンディングノートの書き方講師
終活講師

元気に楽しく自分らしく生きるための終活
~今日から始める終活とエンディングノート~

終活講師による、終活とエンディングノートに向けて、一歩踏み出すための研修プランです。終活とは何か? に始まり、エンディングノートの種類や選び方などに至るまで、具体的に終活をイメージできるようになります。


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石川結貴

ジャーナリスト

在宅介護、在宅看取りをするために大切なこと~超高齢化日本の現状と行く末

ジャーナリストである講師が、超高齢化を迎えるにあたって知っておくべき在宅介護の実状を解説します。講師自身もビジネスケアラーとして親を介護した経験もふまえ、日本の制度の問題点や、リアルな介護・看取りのすべてをお伝えします。


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石飛幸三

社会福祉法人世田谷区社会福祉事業団

老衰に医療どこまで
~改めて「平穏死」を考える~

特別養護老人ホームの常勤医として勤務する講師が考える、「大切な人を幸せに送るための看取り」とは。苦しまない自然な最期としての「平穏死」についての研修プランです。人の生死にどこまで医療が関わるべきか、現場の医師の視点で参加者と共に考えます。


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梅宮アンナ

モデル タレント

応相談

人気タレントである講師が、父である有名俳優・梅宮辰夫氏の看取りの体験を語ります。介護と看取り、そして相続という一連の流れを経験した梅宮氏は、多様なテーマで講演が可能です。内容に関しては、お気軽にご相談ください。


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かたぎりゆきこ

アクティビティディレクター 看護師

高齢者からのメッセージ
~生きるとは? 死ぬとは?~

看護師として高齢者や障がい者のケアに長年取り組んできた講師は、自身でも有料老人ホームを経営。多くの入居者の看取り(ターミナルケア)にも立ち会ってきました。その経験から、終末期の高齢者が何を思うのかを学びます。


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金子稚子

終活ジャーナリスト
ライフ・ターミナル・ネットワーク代表

「い(⽣・逝)きかた」は、⾃分で決める~私たちが⾏う“⼈⽣会議(ACP)”~

終活ジャーナリストである講師によるACP(アドバンス・ケア・プランニング)についての研修。ACPとは「人生の最後をどのように生きるか」を本人から家族や介護士に伝え、それに基づくケアを受けるという考え方です。今ACPが注目されている理由を、社会的背景や事例を交えつつ解説します。


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國森康弘

写真家
フォトジャーナリスト

看取り、在宅医療・ケア、地域包括ケアの現場から
~命のバトンリレー

フォトジャーナリストの講師が写真スライドを用いながら、自宅での「あたたかい看取り」の数々の感動エピソードを紹介します。自宅での最期を支える医療・介護の意義を伝え、どうすればそれが実現できるかを考えていきます。


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後閑愛実

看取りコミュニケーション講師
看護師

「これでよかった」と納得できる看取りケア
~いのちの終わりの向き合い方~

看護師で看取りコミュニケーションの専門家として活動する講師による、看取りケアの研修プランです。施設利用者とその家族に満足してもらえる看取りとはどんなものか、実現に必要なコミュニケーションスキルについて詳しく学べます。


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近藤和子

元 東京大学医学部附属病院接遇向上センター 顧問

自然な看取りと在宅医療の勧め

「みんなのMITORI研究会」代表の講師による研修プランです。「自然な看取りと在宅医療の勧め」を提唱して多数の講演活動を行う講師と、人生の最期を幸せに過ごす方法と、それを実現するためのケアについて考えます。


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榊原宏昌

天晴れ介護サービス総合教育研究所株式会社
代表取締役社長

介護現場の職員育成の方法

介護施設の管理者として働いてきた講師による、介護スタッフの育成法についての研修プランです。スタッフの育成担当者向けに、具体的なケアの場面を例に挙げながら、実践的な指導方法を伝えます。


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清水浩司

作家、ライター、編集者

最愛の人を亡くした後のグリーフケアの必要性について

作家である講師が、グリーフケアについて解説します。映画『夫婦フーフー日記』の原作著者として、「大事な人の死を受け入れて、乗り越えていくにはどうすればよいのか?」について学びます。


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田辺鶴英

講談師

鶴英の介護講談
ほっとけ 心でアッパレ介護

講談師である講師が、自身の介護体験を講談調で楽しく伝えます。介護を誰か1人が抱え込んでしまうことがないよう、家族・介護士・地域・行政が協力するシステムを作り、明るい介護を実現しましょう。


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中村伸一

おおい町国民健康保険名田庄診療所 所長

在宅ケアと看取りから学んだ 人生100年時代の健幸学

NHKドラマ『ドロクター』のモデルとなった医師が、地域医療の在り方や、自宅での看取りについて語ります。自宅で最期を迎えることによって、子どもや孫に命のリアリティを伝える大切さを考えます。


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中村 学

笑う門にはいい介護の会 代表
介護人材育成コンサルタント

笑う門にはいい介護
~虐待が抱擁に変わる時~

介護のストレスや看取りへの不安を抱える人へ、笑顔の大切さについて伝えます。講師は元お笑い芸人で、実母の介護経験を経て介護施設の施設長に転身。実用的な内容を、楽しく分かりやすく学びます。


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西島迪恵

ターミナルサポート富山 代表
終活ナース

介護職のための死生観の作り方

看取り介護に取り組んでいる介護施設のスタッフが、仕事で必要になる死生観について学ぶプランです。死に接する機会が少なかったスタッフの精神的ケアに重点を置いています。


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信友直子

映画監督、TVディレクター

『ぼけますから、よろしくお願いします。』

大きな話題となったドキュメンタリー映画『ぼけますから、よろしくお願いします。』の監督が、映画の舞台裏のエピソードなどを交えつつ、老々介護の現実や講師自身の介護体験を伝えます。


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長谷川嘉哉

認知症専門医、医学博士

ストップ・ザ ぼけ
幸せな最期を迎えるために

知症専門医である講師に、認知症の家族と接するために知っておきたいことや、認知症予防について学びます。講師自身の家族が認知症になったときの体験談を交えつつ、認知症を防ぐために今から取り組むべき生活習慣などを紹介します。


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町 亞聖

フリーアナウンサー

十年介護
~母と過ごした奇跡の時間 ~

フリーアナウンサーである講師が、実母の介護体験を語ります。18歳から実母の介護がスタート。華やかなアナウンサー生活の影には、必死の介護がありました。実母を看取った経験をふまえ、看取りの準備と心構えについて伝えます。


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松山大耕

妙心寺退蔵院 副住職

日本人の死生観~どう生きてどう逝くか~

東京大学大学院修了後、副住職として様々な企業・大学・国際会議などで精力的に講演活動を続ける講師。世界中の宗教家と交流して知見を深めた松山氏が、日本人特有の死生観を紹介します。


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丸尾多重子

NPO法人「つどい場さくらちゃん」理事長

「笑顔で介護、介護で笑顔!」
~大切な人が住み慣れた家、地域で暮らし続けるために~

NPO法人「つどい場さくらちゃん」理事長の講師による、在宅での介護・看取りについての講演です。要介護者本人と家族、介護士などが集まり、思ったことを話し合う活動を振り返り、「高齢者が自分らしく最期を迎えるために周囲は何ができるのか」を共に考えます。

看取り介護研修を行う目的

看取り介護研修の目的を解説します。参加者が目的意識を持って取り組めるように、事前に看取り介護研修の意義をしっかり伝えましょう。

介護現場に活かす基本的な知識の習得

看取り介護研修の目的の1つは、現場ですぐに使える知識やノウハウの習得です。

通常の介護と看取り介護とでは、必要な対応がまったく異なります。例えば通常は健康上のリスクのため外出が禁止されている入居者であっても、看取り介護では本人や家族の希望に添うのが大事です。したがって、本人が充実した残り時間を過ごせるよう、できるだけ安全に配慮して外出をサポートします。

そうした知識がきちんと獲得できれば、スタッフは現場でも戸惑うことなく主体的に動けるようになるでしょう。

看取りへの不安緩和

正しい対処方法を知ることは、スタッフの看取り介護への不安緩和にも役立ちます

誰かの死に向き合うことは、人に不安や恐怖感をもたらします。初めての看取りでは誰しも「自分のケアが不十分だったせいで、利用者が心残りのあるまま最期を迎えることになったらどうしよう」と大きなプレッシャーを感じるものです。

研修で網羅的に学んだ知識は利用者だけでなくスタッフ自身をも助けます。「これで十分なケアができる」という安心感につながるでしょう。

最期までその人らしく生きることへの支援

看取り介護は、死を間近に控えた人が、最後の時間を自分らしく充実して過ごせるように支援することです。知識やノウハウはあくまでも手段であり、最善の支援に正解はありません。

研修は、利用者本人や家族に「この場所で最期を迎えられて良かった」と感じてもらうための第一歩です

今後ますます一般的なものとなる看取り介護。終末期の利用者や家族の不安や苦痛を和らげ、最後の日々を満足に過ごしてもらうために、ぜひ看取り介護研修の実施をご検討ください。


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