
リーダーシップは誰でも身に付けることができます。学習や実践訓練を通じて獲得できる能力です。そのため社内にリーダーを配置するには、実績がある人材を外部から探すより、自社の従業員を育成するほうが合理的です。
今回は、リーダーシップ研修のポイント、研修で習得できる知識やスキルを解説します。担当者おすすめの研修プランもご紹介しますので、人材育成計画にご参考ください。
今、リーダーシップ研修が求められている背景
まずはリーダーシップ研修を企画する前に、実施目的と、研修が必要とされている背景を理解しておきましょう。
不確実な社会情勢や急速な技術変化
リーダーシップ研修とは、不確実な社会情勢や急速な技術の変化に対応し、チームを導いていく人材を育成する方法の1つです。
近年では気象変動や感染症の流行など、予測困難な事態がビジネスにも大きな影響を与えています。同時にIT技術が仕事のやり方や消費者行動を急激に変化させ、市場のグローバル化を推し進めました。
このような状況では、これまでの常識やノウハウに頼るだけの企業は、市場で競争力を失ってしまい、事業の維持が難しくなります。
どの国でも、急速な変化に素早く対応し、自分とチームの考えや行動を柔軟に変えることができるリーダーが必要とされているのです。
労働人口減少による人材不足
国内の労働人口の減少も、リーダーシップ研修への関心が高まっている理由の1つです。
国内の労働人口は2022年の段階で「6,902万人」と前年比で約5万人減少し、労働力人口比率は「62.5%」となっています(総務省統計局「労働力調査(基本集計)2022年平均」より)。企業間の人材獲得競争は年々激しくなっており、現在では外部人材を採用するよりも、社内人材をリーダーとして育成する方がより現実的な選択肢となっています。
また組織内からリーダー候補を選ぶほうが、従業員のモチベーションとパフォーマンスが、ひいては組織の生産性や競争力が高まることが期待できます。
年功序列制度から成果主義へのシフト
国内の産業界のもう一つの大きな変化は、年功序列モデルから成果主義へのシフトです。
旧来の年功序列モデルでは、年齢や勤続年数に応じて役職が決定していくため、「同じ組織に長く勤めること」がリーダーの必須条件でした。しかし、成果主義では入社年次ではなく、個人の成果や組織への貢献度に応じて評価や報酬が決定されます。そのためリーダーになるには、何よりも仕事で実績を出さなくてはなりません。
これからの時代のリーダー育成に重要な4つのポイント
こうした背景を踏まえて、これからの時代に求められるリーダー育成に重要なポイントを、全部で4点解説します。
1.リーダーシップは「才能」ではなく「能力」
一般的に、リーダーシップは「生まれ持った素質」のように考えられがちですが、実際には「才能ではなく能力」です。つまり学習や実践訓練を通じて、後天的に習得できるものといえます。
リーダーの能力といえば、マネジメント能力を思い浮かべがちです。しかしリーダーシップとマネジメント能力は同じものではありません。マネジメント能力が「チームの日々の業務を最適化するための力」である一方、リーダーシップは「大きな変化に対応すべき状況での決断力、メンバーのビジョンを一つにして導く力」が問われます。
これらは個人によって得意不得意はあるものの、研修で強みを伸ばしたり、弱みを補ったりすることが可能です。
2.成果を「行動」で測れる評価体系が必要
リーダー人材を育成するには、組織として成果を「行動」で測れる評価体系が必要になります。
従来の国内企業では、リーダーシップの発揮は、社員本人の資質や意欲に頼るのが一般的でした。そしてリーダーの評価は、チーム全体の売上などの見えやすい結果や、評価する人の主観的な印象だけで判断されていました。
しかしこれからの時代は、最終的な結果だけでなく、行動を数値化して評価体系に組み込むことが重要です。例えばチーム内のコミュニケーションの質や頻度、イノベーションや改善の提案数、顧客満足度やリピート率などを指標として採用しましょう。
これらの定量的な評価をフィードバックすることで、リーダー候補者のさらなる成長を促すことができます。
3.イノベーションを起こすのは、多様な人がリーダーとなる組織
現代のビジネスの現場では、多様な働き方の人材がリーダーとして組織にイノベーションを起こしていく傾向があります。
例えば妊娠・出産でキャリアが中断された女性たちは、労働人口の多かった時代には活躍しづらい状況でした。しかし現在は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(女性活躍推進法)」の後押しもあり、多くの企業が女性活用に積極的に取り組んでいます。
外国人、持病や障がいのある人などについても同様です。さまざまな立場や考え方を持った人材がリーダーとして活躍することにより、違う観点から物事が見られるようになり、組織全体でイノベーションが起こりやすい風土が醸成されるのです。
4.リーダー候補社員のビジョンを生かす柔軟な支援体制
リーダー育成の成果を最大限にするためには、組織全体で柔軟な支援体制を整えることも忘れてはいけません。
旧来のリーダー育成といえば、候補者たちを型にはめて組織内の出世競争に邁進させるのが一般的なやり方でした。しかし現代は多様な人材のニーズやキャリア目標に合わせる姿勢が求められています。
具体的にはリーダー候補の希望や家庭の状況に応じた対応、キャリアプランニングに関する面談、挑戦や失敗を許容して学ぶ姿勢を評価する組織風土が大切です。例えばリーダー候補者であっても、育休や子育てを理由とした時短勤務を希望するのであれば、組織としてそれに応じて組織体制を整える必要があるでしょう。
リーダーシップ研修で習得できる知識やスキル
次に、リーダーシップ研修で具体的にどのような知識やスキルが習得できるのかを見ていきましょう。
①チームマネジメント能力
リーダーには、日々の業務や目標への進捗を管理するためのチームマネジメント能力も必要です。
チームマネジメント能力とは、チーム全体の目標やメンバーの役割の設定、成果を分析して業務を改善していくスキルのことです。
研修でチームマネジメント能力を磨けば、目標達成度や生産性の向上、チームのコミュニケーションの円滑化が期待できます。
チームマネジメントにおすすめの研修プラン
メンタリスト日本チャンピオンが教える!!!
心理的安全性が生む「成功するチームビルディング」
~定着率が上がり、成長し続けるチームを作る!~
心理的安全性を高め、定着率と生産性の向上を目指す管理職向け研修です。メンタリスト日本一の講師が、部下の心を動かす対話術や信頼関係を築くコミュニケーション術を実践的に伝授。チームが自ら動き、成長し続ける組織づくりをサポートします。
組織力の高め方
~甲子園・日本一のチームが実践するチームワークアップ術~
甲子園出場や全国優勝へ導いた脳力アップトレーナー・川谷潤太氏が、若手~中堅リーダー層に向け、実践的なチームワーク術とコミュニケーション力を伝授。職場の連携を深め、組織力を高めるヒントが満載の研修です。
スターバックスで学んだ人材マネジメント術
~スタッフの能力を最大限に発揮させるには~
元スターバックス人材開発マネージャー・目黒勝道氏が、スタッフの主体性と笑顔を引き出す「スタバ流」マネジメント術を伝授。理念浸透、現場主導の工夫、育成の仕組みなど、あらゆる業種で応用可能な人材マネジメントの秘訣をお届けします。
どんな会社でもできる“奇跡の職場”のつくり方
~社員にやる気を持たせるマネジメント~
3Kと呼ばれていたお掃除専門会社TESSEIを、現場力を重視した改革によって「おもてなし創造会社」へと変えた矢部輝夫氏が、部下のやる気を引き出す現場主導の改革術を伝授。どんな会社でも実践可能な、現場力を活かした人づくりと組織づくりのヒントが満載の研修です。
②コミュニケーション能力
リーダーシップ研修ではリーダーの職務で求められるコミュニケーションスキルが磨けます。
リーダーである以上、メンバーには勤務態度に関する注意など、ときにネガティブなことも伝えなくてはなりません。メンバーがそれを素直に受け入れられるかどうかは、リーダーのコミュニケーションスキルにかかっています。
また、常日頃から上手な声かけを心がけ、信頼関係を築くことも大切です。
コミュニケーションにおすすめの研修プラン
~ONE TEAM、ONE HEART~
ラグビーに学ぶ個人の成長とチーム・組織の活性化
ラグビー元日本代表・今泉清氏が、現場で活かせるリーダーシップとチーム強化の極意を伝授。脳科学や孫子の兵法も交え、個人の成長と組織の活性化を両立させる実践的なマネジメント術をお届けします。管理職・リーダー層に最適な研修です。
言葉を変えれば組織が変わる!
やる気を引き出す魔法の言葉「ペップトーク」
ペップトークとは、スポーツ選手の競技前に指導者やリーダーが述べる「短い激励のメッセージ」。職場や教育現場でも活用できるシンプルでポジティブな言葉を使ったペップトークについて学べます。
信頼される部下・慕われる上司が行っているデリバリースキル
~愛され、信頼されるコミュニケーションメソッド~
2大テーマパークでの人材育成経験を持つ今井千尋氏が、信頼される部下・慕われる上司に共通する「応援される技術」を伝授。第一印象から伝え方、聴き方まで、実践的なワークを通して、愛され信頼されるコミュニケーション力を育みます。
ヨシモト式 新感覚の対人スキル!
職場を活性化する ツッコミュニケーション®
吉本芸人の会話術を応用した“ツッコミュニケーション®”で、職場の空気が変わる!放送作家・篠原充彦氏が、笑いを活かした対人スキルを伝授。初対面でも信頼を築き、営業・プレゼン・チーム連携に活きる実践的なコミュニケーション力が身につきます。
③柔軟な対応力と迅速な意思決定力
リーダーシップ研修に参加すると、変化する状況への対応力や迅速な意思決定力が養われます。
現代のリーダーには、起きてしまった事態に対処する能力だけでなく、自身で数年先の市場を予測し、それに向けて行動する力が重要です。「市場は常に変化していくもの」という認識をもとに、仮説・検証をしていける習慣があれば、どんなときにも冷静な判断が下せるようになるでしょう。
対応力・意思決定力におすすめの研修プラン
適切な情報分析と意思決定力が身に付く
クリティカルシンキング
「5分会議」で注目の沖本るり子氏が、リーダーに求められる“考える力”を育成。クリティカルシンキングを通じて、論理的かつ多角的に物事を捉え、的確な意思決定と部下への伝達力を強化。組織を動かす思考力を実践形式で身につけます。
戦国武将に学ぶビジネスに必要な意思決定
令和の時代だからこそ求められる決断力を身につけるためにはどうすれば良いのか、戦国武将の事例をもとに考え、実践する研修です。知識として歴史を理解できるだけでなく、課題に対して「自分ならどうするか」を考える力を身につけられます。
④交渉・調整力
経営陣や取引先・顧客に対する交渉力や調整力も求められます。
リーダーはチーム外の関係者に対しても、互いに納得できる合意点を協議するシーンが多くあります。リーダーの交渉力・調整力は、チームの予算やリソース確保から、組織内でのチーム評価、業務やプロジェクトの進捗にまで大きく関わります。
交渉・調整力におすすめの研修プラン
人を動かす最強の交渉力
20年以上の弁護士経験を持つ荘司雅彦氏が、ビジネスに不可欠な“人を動かす交渉術”を伝授。対立や利害の異なる場面でも成果を生み出す説得・交渉の型を、豊富な事例と共にわかりやすく解説。リーダーに求められる交渉術が身につく実践型研修です。
雑談力・交渉力向上研修
リーダーに求められる“対話で導く力”を鍛える実践研修。話し方研究の第一人者・櫻井弘氏が、対立を調整し、組織内外で円滑な合意形成を実現する「話し合い型交渉術」を伝授。雑談力も磨き、信頼されるリーダーとしての影響力を高めます。
問題解決能力
リーダーは業務上のトラブルや目標未達など、複雑な課題に直面します。問題解決能力は、事実を整理し、原因を特定し、最適な解決策を導き出す力であり、意思決定の質を高めます。現場での判断力が問われる場面では、業務の停滞を防ぎ、組織全体の成果向上に直結する重要なスキルです。チームが困難に直面した際、冷静かつ論理的に対応する姿勢が信頼を生み、強い組織づくりに貢献します。
問題解決能力におすすめの研修プラン
思考力、問題解決能力向上の3つのポイント
元P&Gアジアパシフィック最優秀マネージャー・小森康充氏が、ビジネスリーダーに不可欠な「思考力」と「問題解決力」を高める3つの視点を伝授。論理的思考に基づく結論導出、過去の経験の活用、問題の早期発見力を磨き、組織成果に直結する判断力を養います。
問題解決能力アップ
~ノウハウとテクニック~
IT経営コンサルタント・久保田浩二氏が、業務改善に直結する「問題解決力」を中堅社員向けに基礎から教授します。問題の定義、絞り込み思考法、ツール活用の実践を通じて、現場で即活かせるノウハウとテクニックを伝授。グループワークで実践力も強化します。
人材育成能力
リーダーは自身の業務遂行だけでなく、部下を育て組織の力を底上げする役割を担います。人材育成能力は、部下の特性を見極め、適切なフィードバックや成長機会を提供する力です。職場でのOJTや評価面談、業務の任せ方など様々な場面で活用され、長期的な組織の成長や人材の定着に寄与します。メンバーの成長が組織の競争力向上につながるため、リーダーにとって不可欠なスキルです。
人材育成能力におすすめの研修プラン
テレビの世界で学んだ
強い組織を産み出す人材育成術
放送作家・村瀬健氏が、芸人育成の現場から学んだ“人が育つ組織づくり”の極意を伝授。命令型でなく“共にやる”スタイルのリーダーシップを、親しみやすさ・公平性・対話力を軸に解説。管理職必見の、人を活かす育成術が学べます。
「町工場の娘」が生き残りをかけた大改革
~経営難から脱却するためのIT化戦略と人材育成~
創業者の急逝により急遽社長に就任したダイヤ精機株式会社の諏訪貴子氏によるリーダーシップ研修です。赤字経営だったダイヤ精機をV字回復させた経営手腕やIT導入、人材戦略について、実例を交えた話は次世代リーダーに必聴の内容です。
リーダーシップ研修の実施手順
リーダーシップ研修を効果的に行うには、自社の人材戦略と業務課題に基づき、計画的に進めることが重要です。以下のステップに沿って実施しましょう。
Step1: 課題とゴールを明確化する
まずは、研修を通じて何を解決したいのかを洗い出します。たとえば「若手社員のリーダーシップ不足」「中間管理職のマネジメント力向上」など、組織内の課題を明確化し、そこから逆算して目的(=到達点)とゴール(=達成基準)を設定します。
Step2:対象者を設定する
目的に応じて、受講すべき層(若手社員、中堅社員、管理職など)を明確にします。現場の声や人事データを踏まえて選定することで、研修の効果を最大限に引き出せます。
Step3: カリキュラムを設計する
リーダーシップの基本理論や実践例に加え、グループワークやロールプレイング、ケーススタディを取り入れ、受講者の主体性を引き出す内容にします。思考力・判断力・コミュニケーション力を多面的に育む設計がポイントです。
Step4: 実施形式・日程・場所を決定する
オンラインか対面か、自社開催か外部研修かを決定します。参加者の業務負荷を考慮し、無理のないスケジュールを設定することが重要です。ハイブリッド開催も選択肢の一つです。
Step5: 講師を決定する
講師は、目的に沿った専門性や実績を持つ人物を選びます。社内講師で補える場合もありますが、客観的な視点や最新の知見が必要な場合は、外部のプロフェッショナル講師を選定するのがおすすめです。
Step6:教材・ワーク資料の準備
カリキュラムに合わせてテキストやスライド、ワークシートを準備します。自社に合わせた課題を反映したオリジナル教材を作ることで、受講者の納得感が高まります。外部講師の場合は、資料を講師側が準備することもあります。
Step7: 参加者に案内する
開催日時、場所(またはオンラインURL)、持ち物、研修の狙いなどを事前に周知し、モチベーションを高める工夫をします。スムーズな参加を促すことで、当日の集中力にもつながります。
Step8: 研修を実施する
当日は、アイスブレイクや全体の流れ説明を行い、受講者の緊張をほぐします。講義だけでなく、質問や意見交換の時間を設け、双方向型の進行を意識しましょう。研修担当者はタイムマネジメントと環境整備に注力します。
Step9:フォローアップと効果測定
研修後はアンケートや振り返りワークで参加者の学びを定着させます。また、実務への変化を測るためのフィードバック面談や360度評価などを通じて、成果を定量・定性の両面から評価し、次回の改善へつなげます。
このように、単に実施するだけでなく、事前準備から事後フォローまでを一貫して設計することで、リーダー育成の効果を最大化することが可能です。
リーダーシップ研修ならSBにおまかせ!
リーダーシップを高めるためには、研修でマネジメントやコミュニケーション、柔軟な対応力や迅速な意思決定能力、さらに交渉や調整の能力などを習得しましょう。また受講者のレベルにマッチした内容であることも大切です。
システムブレーンには内容や対象レベルも多種多様なリーダーシップ研修プランがあります。市場別の専任スタッフが、適切な研修プランをご提案することもできますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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